現地からの声:今も、そしてこれからも続く日豪協力

オーストラリア軍連絡チーム
デビッド・スタンリー陸軍中佐

 あらゆる道は第一歩を踏み出すことから始まると言われますが、現在、日本の派遣施設隊が取り組んでいるジュバ~イエイ間の道路の整備も同様です。ジュバ~イエイ道は、ジュバ(南スーダン共和国首都)の南から、イエイ(同国南部の主要都市)までをつなぐ道路であり、現在進められている南スーダン及び同国国民の発展にとって重要なものです。

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現地の子供たちとスタンリー中佐(中央)

  この道路はすでに交通量が多いということと、乾季が間近に迫っていることから、現段階で整備を開始することは極めて重要なことです。また、内陸国である同国と、その重要な貿易相手であるウガンダ及びコンゴ民主共和国との間の、迅速かつ安全なルートとなるため、この道路整備は南スーダンにとって非常に意義があります。また、この整備により、南スーダンの穀倉地帯となることが期待されている西エクアトリア州との交通が改善され、農家がより多くの作物を生産して市場へ供給できるようになり、ひいては貿易や食料安全保障が改善されることも期待されます。

現地支援調整所の生田目所長と本邦とのTV会議に参加のimg

現地支援調整所の生田目所長と本邦とのTV会議に参加

  国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)は、自衛隊の派遣施設隊が素晴らしい技術を有していることから、この道路の整備を要請しました。このプロジェクトには、日野1尉が小隊長を務める第2施設小隊が意欲的に取り組み、1ヵ月足らずで1000m以上の整備を終えるなど素晴らしい成果をあげています。しかし、同小隊の日本への帰国日が近いことから、本プロジェクトは、近く派遣される3次隊に引き継がれる予定です。
 この道路整備プロジェクトに取り組む日本隊の勤勉かつ献身的な姿勢とその作業スピードは、多くの南スーダン人たちから称賛を浴びています。このプロジェクトが自分たちの生活に役立つであろうと、地域住民みんなが認識しているのです。

現地支援調整所とUNICEFとの会合に参加img

現地支援調整所とUNICEFとの会合に参加

  また、先日、自衛隊の派遣施設隊と現地支援調整所は、オーストラリアやインドのPKO要員とともに、UNICEF、中央エクアトリア州インフラ省(MOPI)との共同プロジェクトに参加し、地元の男子小学校のための横断歩道塗装を行いました。この小学校は交通量の大変多い道路に隣接しており、毎日何百人もの生徒がその道路を横断するため、生徒の安全を確保する目的で本プロジェクトの実施が決定されたのです。

スタンリー中佐とハクUNICEF南スーダン代表(右)img

スタンリー中佐とハクUNICEF南スーダン代表(右)

  このプロジェクトを実施するにあたり、現地支援調整所の浦上3佐が各種調整会議をアレンジし、異なる組織からの参加者間の調整に尽力しました。横断歩道の塗装の日取りとしては、「国連の日」である10月24日が最適だろうということになりました。このプロジェクトは、各国から派遣されているPKO要員にとっても、国連の理念にのっとって南スーダンの子どもたちの安全確保に努めているということを、地域住民に対して目に見える形で示す良い機会となったことでしょう。
 11時半より小学校で式典が行われ、集まったUNMISS関係者や小学校の生徒らを前に、ランザー国連事務総長副特別代表と、ハクUNICEF南スーダン代表がそれぞれスピーチをしました。その後、南スーダン交通警察官により、子どもたちに対して、横断歩道とその必要性について説明が行われました。子どもたちはみな警察官の言葉を熱心に聞いていましたが、その一方で、作業開始を待ちかねていました。

地元の子どもたちと横断歩道を塗装するスタンリー中佐img

地元の子どもたちと横断歩道を塗装するスタンリー中佐

  12時半ごろになると、子どもたちの期待は更に高まり、参加者全員が作業場所へ移動し、塗装を開始しました。時間通りに作業を開始できるよう、地元の交通警察官やMOPI職員、自衛隊の施設隊員らは朝早くから準備をしていました。また、交通警察官は、通り抜けが出来ない理由や、この作業が子どもたちにとって有益であるということを、ドライバーたちに辛抱強く説明し、作業場所を迂回するよう呼びかけてくれました。子どもたちは、施設隊員から、どこを塗装し、どこを舗装すべきでないかを教えてもらいながら作業しました。また、オーストラリア隊やインド隊の隊員も子どもたちに加わり横断歩道塗装を手伝い、子どもたちの熱狂ぶりに皆が感じ入っていました。

横断歩道塗装に加わるオーストラリア隊員(前回投稿者のガーナー大尉)img

横断歩道塗装に加わるオーストラリア隊員(前回投稿者のガーナー大尉)

  缶に入った白ペンキを塗装用ブラシにたっぷりとつけ、子どもたちは順番に塗装をしました。そして、1時間後、参加者全員は、さまざまな国のさまざまな人々の手によって完成した、真新しい横断歩道に見とれていました。この横断歩道は多くの人々の善意と自発的な意志の結晶であり、「国連の日」を祝うにふさわしいものと言えるでしょう。

横断歩道塗装後の記念撮影img

横断歩道塗装後の記念撮影

  話は変わりますが、先日、現地支援調整所と連携して活動している豪軍連絡要員(筆者)の招待により、同調整所の要員がオーストラリアハウスでのバーベキューディナーに参加しました。オーストラリアハウスとは、ジュバで働く豪軍関係者のための宿舎です。調整所の皆さんは招待を快諾してくれました。バーベキューでは、調整所要員と豪軍関係者は互いに面識を広げ、リラックスした雰囲気で家族や仕事について語り合い、国籍にかかわらず、だれもが家族や友人への思い、南スーダンでの業務に対する誇りについて、同じように考えていることを分かち合いました。このバーベキューで私たちは友情を育み、日本とオーストラリアが、今も、そしてこれからも、良き友人であり続けることを確信したのでした。

オーストラリアハウスでのバーベキューimg

オーストラリアハウスでのバーベキュー

バーベキュー後の記念写真img

バーベキュー後の記念写真