現地からの声:ウェイステーション引き渡し式典に参加して

オーストラリア軍連絡チーム
インドラ・ガーナー空軍大尉

 9月20日、4ヶ月にわたって実施されたプロジェクトが完成を迎え、記念式典が開かれました。文民を保護するという国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)のマンデートの下、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のため、さらには南スーダンで最も脆弱で助けを必要としている人々のために、日本隊は2棟の新たな施設を完成させました。

ウェイステーション引き渡し式でのテープカットimg

ウェイステーション引き渡し式でのテープカット

  日本の施設隊は、ジュバ・ウェイステーションの敷地内に、主として幼児や弱者のため、1棟当たり100名の帰還民を収容できる木造の施設を2棟建設しました。ウェイステーションというのは、何千人もの南スーダン人が自分の故郷に帰る途中で、一時的に立ち寄る施設です。残念ながら、現在、ウェイステーションではその収容能力が追いつかず、多くの人々は木の下や間に合わせの小屋で野宿をしています。この2棟の新築の施設は、現在深刻である過密の問題を、大幅に緩和してくれることでしょう。

入居した帰還民img

入居した帰還民

  UNMISSは、「文民の保護」の一環として国づくりを強力に支援するという、平和維持活動の新しい形を取り入れました。この種の国づくりにより、南スーダンの人々が必要としていること、即ち家族や愛する人が危険にさらされることを恐れる必要なしに将来を考えることができる安全さをもたらしています。UNMISSがこのような変化を取り入れて構成されたように、日本の自衛隊も現地支援調整所を設置しました。この新しい組織は、国連、地元政府及び非政府組織(NGO)のような様々な機関等がPKO部隊に持ち込んでくる膨大なニーズに対し、派遣施設隊の資源を最も有効かつ優先度をつけて活用するためのものです。こうした全ての機関等は一様に、現地支援調整所と派遣施設隊による素晴らしい連携事業に一目置いています。

  南スーダンでの国づくり支援において、このような建築作業を行うことは、日本隊にとって初めてのことでした。派遣施設隊は、ジュバ地域における道路補修を数か所実施しましたが、建物を建造したのはこれが初めてです。うまく使うために大変な創意工夫を要する資材と格闘することは、施設隊員にとって難事ではありましたが、称賛に値する任務でした。数十年にわたる内戦の後に故郷へと帰っていく南スーダンの人々に使ってもらえるよう、堅固で耐久性ある施設を2棟建築するために、彼らは多くの困難をうまく克服してきたのです。

 現地支援調整所は、UNHCRの要求と派遣施設隊の能力の双方を満たすタスクにするため、大変な努力を払ってきました。正式なタスクとしてまとまるまでに、何時間も書類作成や会議を繰り返しました。この素晴らしい2棟の施設は、現地支援調整所、派遣施設隊及びUNHCRの間の連携がとれた、卓越したチームワークの好例でしょう。

毎日の作戦会議、豪軍要員(写真の右の2人)も参加img

毎日の作戦会議、豪軍要員(写真の右の2人)も参加

  この引き渡し式は、プロジェクトの作業を実際に行った、陸自施設隊員の思いと心意気が詰まったものでした。派遣施設隊長である松木信孝2等陸佐は、この2棟の施設を建設するまでの隊員の尽力と、南スーダンの人々のために与えられた職務を断固としてやり遂げる献身の心を語りました。UNMISSを代表する来賓のフレッチャー女史と、UNHCRを代表するブコビッチ女史の双方からも、自衛隊が建設した2棟の施設ばかりでなく、その他の自衛隊、日本政府及び日本国民から寄せられた好意と支援に対する感謝が述べられました。スピーチの後にはテープカットがあり、2棟の施設がUNHCRに引き渡されたことが公式に宣言されました。その後、来賓と南スーダンの帰還民の皆さんが一体になって楽しむ文化交流プログラムが始まります。派遣施設隊の隊員たちが、書道の展示や、伝統的な和太鼓、バンド演奏まで披露してくれました。こうしたパフォーマンスのテーマは、派遣施設隊の室井弘章曹長がその卓越した書道の技術をもって書き上げ観衆に示した文字の通り、帰還民の方々と南スーダン共和国の未来にかける「夢」と「希望」なのです。公式の行事が終わると、派遣施設隊の隊員たちは、自分たちが手作りした日本の伝統玩具を帰還民の子供たちに贈呈しました。にぎやかで楽しい雰囲気の中、子供たちは、派遣施設隊の隊員とともに、玩具を手に喜びを全身で表わしていました。

文化紹介(和太鼓)img

文化紹介(和太鼓)

  国づくりというのは、世界で最も若い国である南スーダンにとって非常に重要なことです。それは住居を建築するばかりではなく、道路建設や、通信の整備、能力構築(キャパシティビルディング)などもあります。UNMISSの一員として、派遣施設隊は、南スーダンの人々が自ら国づくりを行うための能力構築に寄与したいと考えています。彼らはその施設作業の知識を現地の人々と分かち合い、UNMISSが去った後でも、現地の人々が自分たちで道路の維持補修と更なる建設を進めていけるようにしたいのです。

  オーストラリア政府は、南スーダンにおいて自衛隊が行う活動が卓越したものであることに注目し、8月末より南スーダン現地支援調整所と連携して業務を遂行するため、我々2名のオーストラリア軍将校を派遣しました。またUNMISSの一員として、軍事連絡要員や司令部要員として、多くのオーストラリア軍人が派遣されています。国連と南スーダンへの支援を継続するため、オーストラリア援助機関(AusAID)もまた、南スーダンの人々のために支援を行う数多くのNGOによって運営される無数の人道支援プロジェクトに深く関わっています。

生田目現地支援調整所長と豪軍スタンリー中佐img

生田目現地支援調整所長と豪軍スタンリー中佐

交流行事に参加する豪軍ガーナ―大尉img

交流行事に参加する豪軍ガーナ―大尉

  2012年10月