現地からの声:雨季の南スーダン

UNMISS司令部要員(施設幕僚)
1等陸尉 新井 信裕

1 はじめに

 昨年7月に独立を果たしてから早いもので1周年を迎えようとする南スーダン。今回は、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)司令部施設幕僚の勤務を紹介するとともに、南スーダンの人々との触れ合いの一面をお届けします。

2 本格的な雨季に移行した南スーダン

 南スーダンでは5月から9月の間雨季に入ります。日本の梅雨とは異なり、短時間に強風・雷を伴いスコールのように降ります。日中の気温は、30℃前後で推移しており、常に40℃を超えるほどの猛暑であった乾季に比べて幾分過ごしやすいと感じています。しかしながら、多量の雨は人々の足止めとなるとともに、UNMISSの施設活動の障害の一つともなっています。

突発的な激しい降雨img

突発的な激しい降雨

3 施設幕僚の業務

(1) 施設幕僚の役割

UNMISS施設幕僚の主な役割は、UNMISSの施設活動全般に資する調整及び日本の施設部隊の活動に資する調整等の2つがあります。UNMISSは南スーダンの独立とともに設立されたばかりのミッションで、その施設活動の重点は南スーダン全土における活動拠点となる国連施設の建設です。私は主に、これら活動拠点の建設・維持に必要な施設資器材の輸送調整を行っています。また、日本の施設部隊が、施設活動を行う根拠となる作業指図(タスクオーダー)発出に必要な調整及び作業実行時における支援を行っています。

施設活動の調整img

施設活動の調整

(2) 勤務上での雑感

ア 施設活動優先順位の決定

日本が南スーダンにPKOを派遣した大きな意義の一つは南スーダンの国づくり支援です。インフラが不十分な南スーダンにおいて道路・橋梁等の補修のニーズは高く、日本の施設部隊への期待は高いです。一方で、UNMISSも昨年7月にミッションを立ち上げ、南スーダン全土における活動基盤となる国連施設の建設に重点をおいています。このような中、日本の施設部隊が行う施設活動については日本の意図する活動内容とUNMISSからの要請事項が必ずしも一致するとは限りません。施設隊の能力・器材運用も限られる中、施設活動の優先順位については繊細なバランスが必要となります。

イ 降雨が及ぼす影響

前述しましたが、本格的な雨期入りを迎え道路状態も悪化しつつある中、特に、活動現場へのアクセスに支障を生じています。作業の指図には工期を明示する必要があるので、降雨がどの程度作業に影響を及ぼすのかを適切に見積ることが求められます。

降雨後の作業現場img

降雨後の作業現場

ウ 不安定な資材確保

 道路補修等には資材、特に砂利が必要ですが、砂利生産業者が直納してくれるような日本の環境とは違い、UNMISSの契約では宿営地近傍の土取り場で部隊自ら採掘・積み込み作業をしなくてはなりません。運搬は、契約に基づき地元の業者が保有するトラックが実施していますが、アフリカ感覚なのでしょうか、調整したとおりの時間・台数を準備できたことは一度もありません。また、この土取り場は地元コミュニティが保有しており、コミュニティとの良好な関係を維持していかなければなりません。不安定な資材確保は工期に影響を及ぼすことから、悩みは尽きません。

土取り場での作業調整img1土取り場での作業調整img2

土取り場での作業調整

4 南スーダンの人々との触れ合い

 南スーダンでの国づくり支援を行う傍らで、現地の人々との触れ合いの機会も多数あります。南スーダンの孤児院を訪問した際、日本の遊びの一つであるけん玉を紹介しました。当地南スーダンでは紛争の影響により父母を失い、住処を追われながらも必死の思いで祖国に帰還した孤児達が多数います。今回訪問した孤児院は年少から成人前までの少女が主に生活していましたが、共同生活の中で将来への確かな希望を胸に力強く生きていこうとする姿が印象的でした。そんな彼女たちにけん玉を紹介したところ、興味を示し、早速けん玉遊びを楽しんでいました。幼い少女たちは飲み込みも早く、その日のうちには玉を大皿、小皿に乗せることができていたほどです。

けん玉を紹介img1けん玉を紹介img2

けん玉を紹介

5 最後に

 当地に展開する日本の施設部隊も6月から第2次隊を迎える運びとなり、本格的な施設活動の実施を期待されています。施設幕僚として施設部隊が効果的で存在感のある活動を実施するための基盤づくりに資するため、これまでの経験を活かし、残り2か月余りの任期において積極的に業務に取り組んでいく所存です。

 平成24年5月