シリア連絡調整要員

平成23年1月
ゴラン高原国際平和協力隊
内閣府事務官 森野久美子

 私は昨年6月から約半年間にわたり、シリアのダマスカスで、ゴラン高原国際平和協力業務に、連絡調整要員として参加しました。ゴラン高原国際平和協力業務は、国連が紛争当事者間(UNDOFの場合はイスラエルとシリア)に立って停戦を監視し、兵力を引き離すという伝統的なPKO(平和維持活動)任務において、日本が部隊等を派遣して後方支援を行うもので、現在日本が活動する国連PKOのうち、最も古い歴史を持つものです。

 中東のゴラン高原に日本の部隊が派遣された平成8年当初から、現地で勤務する日本の司令部要員や部隊が円滑かつ効果的に活動できるよう、シリアとイスラエル両国にはそれぞれ「連絡調整要員」が配置されており、私はこのたび、シリア側の連絡調整要員として、首都ダマスカスにある日本国大使館内で勤務していました。

大使館内事務所での勤務風景img

大使館内事務所での勤務風景

 シリアの連絡調整要員は、ゴラン高原内のUNDOF司令部に所在するファウアール宿営地に勤務する司令部要員の活動を主に支援するため、シリア政府機関、在シリア日本国大使館及び内閣府等関係機関との連絡・調整を担っています。連絡・調整業務には、司令部要員の毎日の活動の報告、同活動のロジ面からの支援、また安全な業務遂行に資するための情報収集等があります。

第29次UNDOF空輸隊の様子img

第29次UNDOF空輸隊(空自隊員がシリアに到着)の様子(左から2番目)

 中東和平プロセスは主にパレスチナ・トラック、シリア・トラックそしてレバノン・トラックに分けられますが、日本がゴラン高原で参加するUNDOF(国連兵力引き離し監視隊)は、このうちの「シリア・トラック」と呼ばれるイスラエル・シリア間の和平交渉における中核となる問題(ゴラン高原の返還問題)に関わる交渉を下支えする上で重要な役割を果たしています。現在、これら和平交渉には目立った進展は見られないものの、現状の悪化を防ぐためには国連の活動は必要不可欠であり、これに日本が参画していくことが、中東の安全保障を守る上でも重要なことだと思います。

大使館前で秘書(シリア人)とimg

大使館前で秘書(シリア人)と

 シリアでの勤務においては、日本とは全く違った気候・文化・歴史環境のもとで、それらに適応し、国際平和のために微力を尽くしてきましたが、今後も一人でも多くの日本人が、このような異文化を経験し、かつ業務を無事に遂行し、これを通じて日本人、そして日本という国の評価を高めることが必要だと感じました。

 最後に、ゴラン高原での業務は日本にとっては歴史が長いミッションですが、その経験を有利に生かし、国際社会における更なる日本の貢献につなげられるよう、関係者の支援・協力が不可欠だと考えます。引き続き、関係者のご支援、ご指導宜しくお願いいたします。

第30次派遣輸送隊長と空港でimg

第30次派遣輸送隊長と空港で