野口英世アフリカ賞ニュースレター 第9号平成25年3月

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第2回野口英世アフリカ賞受賞者決定
医学研究部門・ピーター・ピオット博士 
医療活動部門・アレックス・コウティーノ博士


医学研究部門 ピーター・ピオット博士
(ベルギー)
ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院学長

医療活動部門 アレックス・コウティーノ博士
(ウガンダ)
マケレレ大学感染症研究所所長

2013年3月13日、菅 義偉内閣官房長官より
第2回野口英世アフリカ賞受賞者が発表されました。

ピーター・ピオット博士はHIV/エイズやエボラ出血熱をはじめとした感染症に関する研究にアフリカの現場で長年携わってきたばかりでなく、国連エイズ合同計画(UNAIDS)事務局長を務めるなど、世界で研究と政策の橋渡しを行ってきました。

アレックス・コウティーノ博士は、エイズへの偏見が根強い時代からHIV/エイズ患者の治療を行うと同時に、アフリカの人々の治療の機会を増やす戦略を立て、その方式をアフリカ中に広めました。
授賞式は第5回アフリカ開発会議(TICAD V)の機会に、2013年6月1日横浜市にて開催されます。

受賞者について

ピーター・ピオット博士

第2回野口英世アフリカ賞受賞者
医学研究部門
ピーター・ピオット博士

1949年ベルギー生まれ
ロンドン衛生熱帯医学大学院学長

主な経歴

1974年 ゲント大学(ベルギー)にてM.D.(医学学位)取得
1980年 アントワープ大学(ベルギー)にてPh.D.(微生物学)取得
1992年 熱帯医学研究所(ベルギー)微生物免疫学部教授
1992年 世界保健機関(WHO)世界エイズ戦略 副ダイレクター
1995年 国連エイズ合同計画(UNAIDS)事務局長
2009年 ビル&メリンダゲイツ財団シニアフェロー
2010年 英国インペリアル・カレッジ教授
2010年~ ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院学長
 

受賞業績

ピオット博士は長い間、アフリカに研究の拠点を置き、その成果をアフリカの人々のために還元してきました。

1976年、当時まだ26歳だったピオット博士と同僚は、ザイール(現コンゴ民主共和国)からベルギーの熱帯医学研究所へ送られてきた血液サンプルの中から、集団感染を引き起こしていたエボラ出血熱のウィルスを発見しました。その後ピオット博士が国際調査チームの隊長となり行なった報告が、アフリカでエボラなどの出血熱が集団発生した際の対策の指針となりました。

1983年には、ピオット博士はザイール(現コンゴ民主共和国)で研究チームを率い、当時明らかにはなっていなかった、異性間行為を介したHIV/エイズの流行を発見しました。

その他にもピオット博士は、HIV/エイズの母子感染、結核との重感染などの研究、アフリカ初の国際HIV/エイズ研究プログラムの立ち上げなど、大きな成果をあげています。

研究を行うだけではなく、国連エイズ合同計画(UNAIDS)の事務局長を務めたことや、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の設立などを通じ、HIV/エイズの「研究」と、国際的な「政策」を結び付けた結果として、アフリカでのエイズ死亡率や新規のHIV感染率の低下に大きく貢献しました。

 

ピオット博士からのメッセージ

受賞者に選ばれ、非常に光栄に思い、感謝しています。野口博士は医学研究の歴史上、特別な地位を占め、その研究の独自性が世界で認められています。私がアフリカで、研究、調査、政策、現場での活動に橋を架けようとした時、野口博士が私の研究にインスピレーションをくれました。

日本政府は野口博士の遺産を顕彰するだけでなく、今日の世界的な課題解決のため、アフリカ開発会議を通じアフリカへ献身すると共に、大きな展望を示しています。

力を合わせて感染症に対し成功を収めている一方で、エイズ、結核、マラリアは、特にサハラ以南のアフリカで、制御からは程遠くなっており、新たな病原体も出現しています。私たちはこれからも地域的、世界的な努力を続けなくてはならないのです。

 

アレックス・コウティーノ博士

第2回野口英世アフリカ賞受賞者
医療活動部門
アレックス・コウティーノ博士

1959年ウガンダ生まれ
マケレレ大学感染症研究所所長

主な経歴

1983年 マケレレ大学(ウガンダ)にてM.D.(医学学位)取得
1983年 セント・フランシス・ンサムビャ病院に勤務(インターン)後、マケレレ大学医学部助手となり科学修士号(生理学)取得
1989年 スワジランドへ移動、民間セクター初のHIV啓蒙・予防プログラムを立ち上げ自らもHIV症例の治療に当たる
2001年 ウガンダに帰国、TASO(The AIDS Support Organisation)事務局長
2001年 世界エイズ結核マラリア対策(GFATM)基金を創立した創設グループに加入。その後GFATMの技術審査パネル副委員長
2007年~ マケレレ大学感染症研究所所長
 

受賞業績

コウティーノ博士は30年に及ぶ医師としてのキャリアの中で、HIV/エイズに対する偏見や差別が根強い時代から、自ら何千人ものHIV/エイズ患者の治療を行うと共に、HIV感染者が延命療法を受ける機会を増やすための努力を行ってきました。

アフリカで最も古いエイズ患者支援団体であるTASO(エイズ支援機構・The AIDS Support Organisation)と共に現場で活動し、高いレベルの専門性を支援活動へ導入すると同時に、アフリカで広く適用できるエイズの予防、治療のための戦略モデルを構築し、エイズに打ちひしがれた患者やその家族、地域コミュニティーに大きな力を与えました。

このTASO/コウティーノ博士モデルは、アフリカの最貧困層に焦点を当て、医療が行き届かなかった人々にエイズ治療を施すことに成功しました。TASOでの活動だけでも百万人を超える人々にHIV検査を実施するプログラムを行い、10万人ものHIV感染者が治療を受けました。このモデルはアフリカ中に広がり、世界規模でエイズ対策に影響を与えました。

医療従事者への教育にも重点を置き、TASOなどの機関で能力開発プログラムを大規模展開し、過去10年間で少なくとも3万人のアフリカの医療従事者への研修が行われました。

 

コウティーノ博士からのメッセージ

受賞の知らせを聞き、大きな喜びに圧倒されています。野口博士を顕彰する日本国政府と日本の皆様に認められたことは、アフリカの医師として最大級に認めていただいたことを意味しています。

アフリカでHIV、結核、マラリアに焦点を当て、30年間医学と公衆衛生を実践してきました。そして今、この賞が全ての苦しい日々を意義あるものに変えてくれました。

HIVと共に生きる人々、恩師、同僚、エイズ支援機構(TASO)、マケレレ大学感染症研究所のような素晴らしい機関の協力無しでは、受賞する事は不可能でした。

アフリカで野口博士のように職務を継承する私たちに希望を与えると共に、野口博士の功績を讃え、先見の明を有する日本の皆さんとそのリーダーシップに感謝します。

 

― アフリカと共に歩む ―
第2回野口英世アフリカ賞受賞者の軌跡

ピーター・ピオット博士


ザンビアのリビングストンのコミュニティーにて

国連エイズ合同計画(UNAIDS)事務局長として、国連総会で演説
(写真提供:国連エイズ合同計画(UNAIDS))

アレックス・コウティーノ博士


マケレレ大学感染症研究所(ウガンダ)のHIV診療科にて

HIVセンターを立ち上げた日、多くの村人と共に

野口英世博士、生誕の地より
「夢・希望・笑顔に満ちた“新生ふくしま”をめざして」
ごあいさつ 福島県知事 佐藤雄平


福島県知事 佐藤雄平

ピオット博士、コウティーノ博士、第二回「野口英世アフリカ賞」受賞、誠におめでとうございます。福島県が生んだ世界的な医学者、野口英世博士は、県民誰もが敬慕する存在であり、この度のニュースは福島県民にとっても喜ばしい知らせであります。アフリカの医療の向上という課題に立ち向かうことは、昔も今も多くの困難が伴うものであり、両博士の研究・活動内容における御苦労と御功績に深く敬意を表します。

さて、当県に甚大な被害をもたらした東日本大震災から2年が経過いたしましたが、今なお、15万人余りの県民が県内外で避難生活を余儀なくされています。

その一方で、国内外の皆様からの様々な温かい御支援により、当県は着実に復興への道を歩み始めています。県内では社会基盤の復旧が進み、企業の生産活動も回復しているほか、農産物の輸出再開や、当県出身の新島八重を描いたNHKの大河ドラマ「八重の桜」の放映など明るい話題も増え、復興への歩みが更に加速していくものと感じております。

しかしながら、自然豊かな福島のイメージは原子力災害により深刻な影響を受けており、風評を払拭するためには正確で信頼性のある情報発信が重要であります。そのためには、実際に来て、見て、感じていただくことが極めて大事であり、今回、受賞されました両博士にも、是非、野口博士生誕の地であるこの福島県を訪問していただき、復興に向けて歩んでいる姿や当県の魅力を見ていただきたいと思います。

お二人をはじめ、野口博士を縁にした国内外の皆様とのつながりは、夢・希望・笑顔に満ちた“新生ふくしま”を目指す当県にとって、歩みを進めていくうえでの大きな力となっています。

「感謝の気持ちを胸に努力を重ね、美しいふるさとふくしまを取り戻し、活力と子どもたちの笑顔があふれるふくしまを築き上げて、次の世代へと引き継いでいく。」このことこそが、支援への恩返しとなると考えており、野口博士の医療に対する向上心、困難を乗り越えようとする強い意志を受け継ぎ、この難局を乗り越え、福島の復興・再生を全力で成し遂げてまいります。

 

第2回野口英世アフリカ賞記念切手 デザイン決定

第2回野口英世アフリカ賞記念切手

2013年6月1日に行われる、第2回野口英世アフリカ賞授賞式を記念して、第2回野口英世アフリカ賞記念切手が2013年5月31日より郵便局等にて販売されます。(価格・1シート80円切手10枚・800円)

福島が生んだ英雄、野口英世博士の切手の発行により、福島を応援しようという思いも込められています。

 

それぞれの切手には、野口英世博士ゆかりのモチーフがデザインされています

  • シート全体

     
  • 野口博士愛用の地球儀

    福島県猪苗代町の野口英世記念館で保存されている博士愛用の地球儀を、今回の切手のために、アフリカ大陸を手前にして撮影しました。
  • 使用されたモチーフ

    ・ロックフェラー研究所時代の野口博士
    ・野口博士の母、野口シカさんがアメリカの息子へ書いた手紙
    ・野口博士愛用の顕微鏡
    ・福島県の花・ネモトシャクナゲ
     
  • 野口博士が描いたカンゾウの花

    切手の外枠には、野口博士が描いたカンゾウの花がデザインされています。野口博士は絵画を描くことも得意で、多くの油絵や水彩画を残しています。

野口英世アフリカ賞基金のための御寄付のお願い

本賞の賞金のために、本賞の趣旨にご賛同いただける方々から広く寄付を募っています。皆さまからいただいた善意が、アフリカにおける医学・医療の向上のため活躍されている方々の活動を支えるために使われます。

  • インターネットからのお申込みの場合
    野口英世アフリカ賞ホームページより、基金の管理を担当しているJICA(国際協力機構)の寄付サイト別ウィンドウで開きますへお進み下さい。クレジットカード、銀行・郵便振込、コンビニ振込、いずれかの方法でお支払いただけます。
  • 寄付申込書によるお申込みの場合
    野口英世アフリカ賞担当室より、寄付申込書を送付いたしますのでお電話下さい(電話 03-5501-1745)。用紙に必要事項をご記入の上、お手数ですがJICA国内事業部 市民参加推進課 寄付金事務局(FAX番号 03-5226-6377)までFAXをお送り下さい。追って振込用紙を送付致します。
  • 野口英世アフリカ賞基金への寄附実績(2012年12月時点の累計)
    512,662,972円 [個人1925件,法人322件(計2247件)]
 

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