第4回野口英世アフリカ賞受賞者の決定(医療活動分野) 報道発表令和4年8月3日 内閣府

日本国政府は、第4回野口英世アフリカ賞を、医学研究分野についてはサリム・S・アブドゥル・カリム博士及びカライシャ・アブドゥル・カリム博士(南アフリカ共和国)に対し、医療活動分野についてはギニア虫症撲滅プログラム(カーターセンターとアフリカ関係者のパートナーシップ)に対し、それぞれ授与することを決定した。

医療活動分野
ギニア虫症撲滅プログラム
(Guinea Worm Eradication Program)

ギニア虫症撲滅プログラム史上2番目のヒト疾患の撲滅を目的とした、カーターセンター主導の下でのアフリカ関係者とのパートナーシップによる国際的なキャンペーン。

(写真提供:カーターセンター / L Gubb)
南スーダンでの戦争避難や遊牧民生活様式のため、男女や子供に配給されたパイプ・フィルターはギニア虫症感染対策上の重要な道具となっている。
南スーダン・テレケカ郡・クセダムにて。

第4回野口英世アフリカ賞(医療活動分野)は、カーターセンターの主導の下、アフリカの保健省、地域コミュニティ、非政府組織(NGO)、及び世界保健機関(WHO)や米国疾病予防管理センター(CDC)等の主要パートナーとの協力により、ギニア虫症をほぼ撲滅させたその功績により、ギニア虫症撲滅プログラムに授与される。

ギニア虫症撲滅プログラムは、第4回野口英世アフリカ賞(医療活動分野)を受賞するに相応しい取組みである。カーターセンターは、1986年に同プログラムの主導を開始し、今日では協力パートナーと共に、人々を衰弱させるこの病気の惨劇を根絶するために活動している。この寄生虫感染症は汚染された飲料水の摂取により拡大するため、地域コミュニティでの啓蒙教育や濾過水の使用、感染した際の適切な治療により対処することが可能である。ギニア虫症を治療又は予防するためのワクチンや薬は存在せず、コミュニティ・レベルでの行動変容と信頼構築しかない。しかし、撲滅を達成するためには、遠隔地に赴き、紛争地域でも取組み、アフリカ大陸全域で現地の医療従事者や衛生労働者といった膨大な社会基盤を強化させることが引き続き必要である。1980年代には、ギニア虫症の撲滅を目標に掲げることは大胆な発想であり、簡単なことではなかった。実現するためには、継続的な資金拠出と数十年にわたるコミットメントが求められることになるからだ。ギニア虫症の症例件数は、2021年までに、年間推定350万件からわずか15件へと減少し、8千万人以上の人々の発症を回避することができた。しかし、これらの残された地域や感染リスクのある地域での安全な水へのアクセスは、特に対象地域で動物の感染が確認されていることもあり、引き続き最優先事項とされる。野口英世アフリカ賞委員会は、カーターセンターに対して、そして、コミュニティ・レベル、地域レベル、国家レベル、国際レベルで同プログラムに携わった全ての関係者に対して、その素晴らしい功績を讃えるとともに、史上二番目のヒト疾患撲滅をほぼ達成させたことに祝意を表する。我々は共々に、古くから存在してきたこの病気をもはや過去のものへと確実に追いやるため、引き続き粘り強く警戒しなければならない。

業績概要

カーターセンター(The Carter Center)を中心とする世界的な連合体である「ギニア虫症撲滅プログラム(Guinea Worm Eradication Program)」は、アフリカ及びアジアの国々の保健省や地域コミュニティと密接に協力しながら、ギニア虫症の症例件数を、1986年の約350万件から、2021年にアフリカ全体でわずか15件へと、99.99%以上も削減させた。

ある地域におけるギニア虫症の存在は、安全な飲料水の不足を含め、貧困度合いの厳しさを物語っていることが多い。ギニア虫症、又はメジナ虫症は、水系の寄生虫感染症であり、激痛を引き起こすが、完全に予防可能な疾患である。ギニア虫が出現すると、人々やその家族は、数週間や数カ月もの間、その能力を奪われてしまう。ギニア虫症は、ギニア虫(Dracunculus medinensis)の幼虫を体内に取り込んだミジンコで汚染された飲み水が人の体内に入ることで感染する。水を摂取してから約1年後、成熟したメスのギニア虫が皮膚に激痛を伴う病変を作り、皮膚からゆっくりと体外に出てゆく。感染者が焼けつくような痛みから解放されようと病変部を水に浸すと、ギニア虫がその幼虫を水に放出し、疾患サイクルが最初から再び始まる。

1986年には、アフリカ19か国とアジア2か国で年間およそ350万人がギニア虫症に感染し、約1億2000万人が感染リスクに曝されていた。古くから存在するこの病気は、感染阻止のための行動変容を人々に教育する地域に根差した介入により撲滅されつつある。国家プログラムは、各国の保健省により、国や地方の政治的指導者、非政府組織、伝統的指導者、地域に根差した村のボランティアたちと連携しながら、各国で実施されている。フィルターを提供し、飲み水は必ず濾過するように人々に指導している。ボランティアを訓練し、ボランティアが地域コミュニティに予防法を指導し、ギニア虫の兆候を発見し、無料で治療を提供できるようにしている。疑わしい症例がすぐに報告され、封じ込めることができるように報奨金も支払われている。

ギニア虫症撲滅プログラムによるこのような継続的な努力の結果、ギニア虫症は現在では、アフリカの一握りの国々の最も複雑かつ遠隔な地に限られるようになっている。カーターセンターによると、2021年1月1日から12月31日までの人の症例数はわずか15例であった。このような素晴らしい成果により、ギニア虫症が、寄生虫感染症では歴史上初めて、またヒト疾患では天然痘に次いで2番目に根絶される可能性が出てきている。

ギニア虫症撲滅キャンペーン

コミュニティ・ベースの村のボランティアは、ギニア虫症撲滅キャンペーンの最前線のヒーローであり、世界中で99.99%の撲滅という進展は彼らの献身とコミットメントのおかげである。南スーダン共和国、テレケカ郡、モルジョール村にて。
(写真提供:カーターセンター/ L Gubb)

 

 

 

 

カーターセンターのテクニカルアドバイザー
ダンガボル村(チャド共和国)で行われた報奨金授与式でギニア虫症の検出方法について人々に教えるカーターセンターのテクニカルアドバイザー(LaurèsDossou)(手前)とボランティアのスーパーバイザー(Mende Kelmane Alphonso)。ギニア虫症感染の疑いを報告し、適切な措置を講じた者は、最大100ドルの報奨金を受け取ることができる。 (写真提供:カーターセンター/ J. Hahn)

コミュニティ・ヘルス・ワーカー
報奨金イニシアチブについてアコルニ村(南スーダン共和国)の村人に語るギニア虫症撲滅プログラムのコミュニティ・ヘルス・ワーカーたち(Regina Natube、Morris Abure、Lokore Arkangeloの3名)。
(写真提供:カーターセンター / C. Marin)

カーターセンターのウェブサイトに掲載された記事(英語)