フランシス・ジャーバス・オマスワ博士からの近況報告(第3回野口英世アフリカ賞医療活動分野受賞者)2022年

2019年受賞時の発表はこちら第3回野口英世アフリカ賞受賞者

フランシス・ジャーバス・オマスワ博士
 

受賞業績

グローバルヘルスと社会変革のためのアフリカセンター(ACHEST)所長
保健従事者の教育、研修、定着及び移住を含む世界の保健人材(HWF)危機への対処、また、アフリカはじめ世界での人材重視の保健及び医療制度の構築において多大な貢献を行いました。

受賞後の活動

ACHEST所長として、以下の活動に従事しました。

1. 保健システム・アドボカシー・パートナーシップ

オランダ政府外務省の資金協力により、ケニア、マラウィ、タンザニア、ウガンダ、ザンビアにおいて保健システム・アドボカシー・パートナーシップ(2017~2020)を実施しました。このプロジェクトには、パートナー団体であるAmrefオランダ、ヘルス・アクション・インターナショナル(HAI)及びWemosも参加しました。参加国においてセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖の健康)サービスへのアクセスを向上させるため、制度やより透明性のある政策立案の仕組みの確立に取り組みました。


HSAP会議(駐ウガンダオランダ大使と)

2. ウガンダにおける分野の垣根を越えた協力

ウガンダのンゴラ地区において実施されたこのプロジェクトでは、地元の政治的・宗教的・文化的な指導者や普及員及び市民社会団体らを動員し、人種差別のない、人民を中心にしたプライマリ・ヘルス・ケアを行いました。地域保健ボランティア(VHT)に対し、世帯地図の作成、健康記録簿の管理、健康習慣・衛生の遵守、健康的な生活のためのアドバイスの共有に関する研修を実施しました。VHTは自宅療養者のフォロー、医療機関への紹介、子どものワクチン接種の確保、妊婦を対象とした出産前後のケアに関する相談も行います。地元の指導者たちは毎月会合を開き、コミュニティで生じている問題について現地に応じた解決策を特定しています。

3. 「新型コロナウイルス感染症対策のための国家コミュニティ参加小委員会」の議長

2020年6月、ウガンダ大統領により、「新型コロナウイルス感染症対策のための国家コミュニティ参加小委員会」の議長に任命されました。この任務では、委員会として国家コミュニティ参加戦略(CES)を策定しました。CESは2020年10月に、ウガンダ首相により施行されました。地域保健タスクフォースを立ち上げ、COVID-19対策として、村の世帯地図の作成、家庭訪問、意識啓発、疑わしい症例の照会、在宅医療の提供に関して、コミュニティの医療従事者による地域保健ボランティア向けの研修を行いました。このほか、家庭衛生の推進や、ウガンダのコミュニティにおけるその他の健康に関するニーズにも対応しています。


オマスワ博士と国家Covid-19タスクフォースのメンバー。ウガンダ大統領及び首相と記念撮影(2020年6月)

ウガンダ首相によるCESの施行(2020年10月。保健大臣とフランシス・オマスワ博士)

新型コロナウイルス感染症に関する啓発の促進

日本の国際協力機構(JICA)より助成金を拝受

アムル、ブシア、ムコノ及びンゴラの4地区における試行プロジェクトについては、日本の国際協力機構(JICA)より助成金を受けました。


地域保健ボランティアへの自転車及び機器の受け渡し

亀田和明駐ウガンダ大使に野口英世アフリカ賞の賞牌を見せるオマスワ博士

4. 保健専門職資格の新規取得者に対するオリエンテーション

米国立衛生研究所(NIH)からの3年間の無償資金協力の下、 ACHEST及びマケレレ大学医学校により、保健専門職資格の新規取得者に対するオリエンテーションを実施しました。そこでは、一日研修プログラムを提供し、新卒の保健専門職員がそれぞれの専門分野のインターンシップや業務に入っていくことができるように支援しています。研修は、年に2回、オンラインと対面の両方で行っています。


保健専門職資格の新規取得者たちに語りかけるオマスワ博士(於:ウガンダ)

5. ソロティ大学学長

2021年4月、ウガンダ大統領より、ソロティ大学の初代学長に任命されました。ソロティ大学はウガンダのテソ地域にある、公立の理系大学です。

6. 「Nursing Now」国際キャンペーンの諮問評議会メンバー

「Nursing Now」国際キャンペーン及び「Year of the Nurse 2020」の諮問メンバーに任命されました(現在も在任中)。


ウガンダを訪問した「Nursing Now」評議会メンバー。ナイジェル・クリスプ氏、シーラ・トロウ教授、
アネット・ケネディ国際看護師協会会長、ベアトリス・アムージュNurse Uganda所長、フランシス・オマスワ博士

7. 福島県の親善大使

福島県の親善大使として、ウガンダのセント・メアリーズ・カレッジ・キスビと猪苗代町立吾妻中学校の間で交流関係を築きました。両校の教師や生徒は、現在オンライン会合等の活動を行っています。コロナ収束後には両校が互いに訪問しあい、日本とウガンダの人々の間で、今後長きにわたり、より強いつながりやパートナーシップが築かれることを望みます。
野口英世アフリカ賞記念交流事業

8. 諮問会議メンバー

あしなが育英会「賢人達人会」のウガンダ諮問会議及び三菱商事「グローバルヘルス国際諮問グループ」から招聘を受けました。

9. アガ・ハン大学の卒業式主賓

アガ・ハン大学の卒業式主賓として招かれました。


アガ・ハン大学(ウガンダ国カンパラ)学長とフランシス・オマスワ博士

10. ウガンダの医学の巨匠たち

2021年、ウガンダ医学協会より、ウガンダの医学界への主な功績を綴った「ウガンダの医学の巨匠たち」という雑誌において、歴代トップ25人の一人に選出されました。


医学雑誌:ウガンダの医学の巨匠たち

11. 「フレダ・M・オマスワ及び野口英世保健・社会センター」建設プロジェクト

「フレダ・M・オマスワ及び野口英世保健・社会センター」建設プロジェクトを実施しています。オマスワ博士は第3回野口英世アフリカ賞受賞者スピーチの中で、同博士の家族は、西アフリカで野口英世博士と同様の仕事に従事する中で2016年に亡くなった、ご息女で有望な医者であったフレダ・M・オマスワ博士を記念して命名された同センターの建設に対し、賞の賞金の一部を献金することとした旨述べていました。今回の建設プロジェクトはその公約を受けたものです。センターの基本計画は下図のとおりです。2021年10月に着工し、センターの中核となる3棟(教室棟と男子寮、女子寮)は、2022年中に完成予定です。プロジェクトの完遂には、追加の資金調達が必要となる見込みです。


「フレダ・M・オマスワ及び野口英世保健・社会センター」の基本計画と、建設中の1つ目の教室棟