赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年10月17日

(令和7年10月17日(金) 10:58~11:14  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 (冒頭発言なし)

2.質疑応答

(問)国際通貨基金が発表した最新の経済見通しで、日本の名目GDP(国内総生産)が来年インドに抜かれ、2030年にはイギリスに抜かれて世界6位になるとの推計が示されました。為替や物価の状況などによって予測は変わる可能性もあると思いますが、まず、今回の見通しに対する受止めと、低成長が続く日本経済を成長させるために、今後どういったことが求められるかお考えをお聞かせください。
(答)大きなテーマでありますが、お答えできる範囲で。今月14日に、IMF(国際通貨基金)が公表した世界経済見通しでは、名目GDPについて2026年にはインドに次いで世界第5位、2030年には英国に次いで世界第6位となる見込みと承知をしております。ただし、ドルベースのGDPの増減は、為替レートの動向に大きく影響を受けることに留意が必要であるというふうに考えています。
 なお、2026年にインドが日本を上回る見通しとなったのは、インドは2025年、2026年と6%を超える高い成長率が続くと見込まれることが挙げられます。また、2030年に英国が日本を上回る見通しとなったのは、2025年から2030年の平均実質成長率が日本の0.7%に対し英国は1.4%と日本を上回ること、さらに為替レートがドルに対して円安、ポンド高の傾向にあることが挙げられます。
 我が国が持続的な経済成長を実現するためには、これまで30年続いたコストカット型経済から脱却をし、成長型経済へと移行していかなくてはならない、その際に重要なのがピンチをチャンスに転換するという視点であります。日本の経済成長にとって、急速な人口減少が最大の課題であります。端的に言えば、今後20年間で1,500万人の生産労働人口が失われるということであります。人手不足というピンチに対して、デジタル化やAI(人工知能)の活用、実装などの省力化投資を強力に推し進めていくことが鍵になります。
 ただ、視点を変えれば、人手不足というピンチに直面する中でありますが、諸外国のように失業率の上昇を心配することなく賃上げや生産性向上に注力をできるというところがあります。人手不足というピンチをチャンスに変えて、生産性を極限まで引き上げて、「賃上げこそが成長戦略の要」という考え方で政策を実行していくことで、人口減少、少子高齢化の下であっても持続可能な、力強く持続的に発展する経済、この成長を実現していくことが重要であるというふうに考えております。
(問)最低賃金をめぐる話で、高知県の審議会がまとめた見解に、セーフティーネット水準として、賃金の中央値の6割を注視することを公労使で共有したということが盛り込まれたということなのですが、大臣は常々このEU(欧州連合)の指標を念頭にということを強調されていると思いますけれども、地方でこういう議論が出て明文化されていることについてどのように評価されるでしょうか。
(答)去る8月29日に高知地方最低賃金審議会がセーフティーネット水準として賃金の中央値の6割を注視することを公労使で共有しつつ、本年度の最低賃金を1,023円、71円引上げ、引上げ率7.46%とするという答申を行ったことは承知をしております。かねてから申し上げているとおり、EU指令、これはぜひ皆様にも認識を共有しておいてほしいのは、私はとても大事な指標だと思うからです。
 それはどういうことかというと、EBPM(証拠に基づく政策立案)といいますよね、エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキング、これはやはり我が国はEUから学ぶことがすごく多いと思うのです。なぜかと言えば、27か国の主権国家が集まったものがEUです。それで、いろいろな指標を決めるといろいろな国に利害があるわけです。プラスになる国は喜ぶし、マイナスになる国は反対すると。だからこそ、27か国の主権国家がまとまって、最低賃金の基準はこれとか、そういうことが打ち出されていく、その過程はしっかり我々はフォローする必要があって、それだけの主権国家がまとまってそういう客観的な指標があるなら、あるいは、そういう客観的な基準なら一緒に行動しよう、それでいいではないかとなるということは、私は大変重いものだと思っています。
 今回、特に最低賃金のEU指令で本当に学んだことですけれども、これに限らず我が国がいろいろな政策を打ち出すときに、同じような分野で同じような課題に直面したときに、EUがどういう基準で臨んでいるのかと、これはもう真剣勝負で27か国の主権国家が話し合った結果がそこに結晶としてあるわけですので、私自身としては非常に注目するに値するものだというふうに考えているということは、この場を借りて申し上げておきたいと思います。
 そのEU指令では、賃金の中央値の60%又は平均値の50%が、最低賃金設定に当たっての参照指標として加盟国に示されているところであります。我が国の直近の水準はご案内のとおりで、全体でEUであれば賃金の中央値の60%とされているものが我が国の中央値では47%、EUであれば賃金の平均値の50%とされているものは我が国の平均値では41%にとどまっています。端的に言えば、EU指令の基準から言えば2割方低いということです。
 新しい資本主義実現会議等においても、過去1年にあったことですが、経済団体の複数の幹部は石破内閣の方針に沿って最低賃金を引き上げると、地方の小売業など日常生活を支える企業が破綻するという指摘をされていました。その一方で、先般高知県の地方最低賃金審議会が賃金の中央値の6割を注視するとしたことは、地方の公労使の関係者において最低賃金を引き上げると地方経済が崩壊するのではなく、むしろ最低賃金を引き上げないと地方経済が崩壊するという危機意識が、ようやく共有されるようになってきたことの現れであるというふうに受け止めております。
 私は、そうした地方の危機意識が、昨年度中央の目安は前年比プラス5.0%であったところ、仕上がりは地方の最低賃金審議会が上乗せしたことで0.1%プラス上乗せの5.1%でありましたが、本年度は中央の目安は同プラス6.0%であったところ、仕上がりは0.3%ポイント上乗せのプラス6.3%という結論につながったものと考えています。端的に言えば、地方経済についての危機意識は地方のほうが強いということであります。
 全ての働く皆様に対して明日の心配のない暮らしをお届けできるように、この先の政府の体制のいかんにかかわらず最低賃金を2020年代に全国平均1,500円にするという目標の達成に向けて、関連する施策を総動員した中小企業・小規模事業者の皆様への支援、最大限政府として賃上げ原資を稼ぐ努力をお支えする、協力をするということであります。それを含め、引き続きたゆまぬ努力を継続していくことが必要であると考えております。
 あえてここでもう一つ付け加えておくと、EU指令の基準に基づいて我が国が最賃を実現すれば、2020年代に全国平均1,500円という結果になるというふうに私は考えているということも併せて申し上げておきたいと思います。
(問)トランプ大統領が来られたら、やはりMAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)の帽子をかぶって、赤澤先生が出迎えるような、やはりそういうのも必要なのだろうと思うのですけれども、今日本の、連立かどうか分かりませんけれども、なかなか落ち着かないですね。こういう中でやはり財務省ですとか経産省の中には、役人は代わらないけれども頭だけ代わってしまうと、やはりいろいろ支障があるのかなと。やはり何がしかの形で、内閣府がそれなりのサポートしてくれるような、その連続性がないと、ラトニックさんやベッセントさんの関係も含めまして、そういうふうに心配する人がいます。それをどう受け止めるか。
 もう一つ、最低賃金のほうも、結構歴史的に上げてしまったわけで、これは赤澤先生の熱と力で上げてしまった面があって、その上で、やはりもう少し、しばらく見ていていただかないと心配だという、これは知事の話なのですけれども、そういう人もいるのですけれども、政権が混乱しているところもありまして、引継ぎの候補で一番気になるのは赤澤先生の後をどう上手に引き継ぐかだと思うのですけれども、その辺のお考えを伺えたらと思います。
(答)今のお話を聞くと、1年間閣僚として私がやってきたことについて一定の評価をいただいているということかなと思うので、そこは心から感謝を申し上げたいと思います。その上で、私が今までやってきた仕事を次の体制でどういう形でやっていくかは、これはもう高市新総裁が考え抜かれることでありまして、しかも現時点においては、まだ自民党から総理が出るかどうかも確定をしておりませんので、なかなかコメントしづらいところでございます。
 ただ、私自身は、やはり1年間声をからして訴え続けてきたことについて、例えば最低賃金について申し上げれば、正に中央の審議会よりも大幅に地方の審議会が上乗せしてくると。最低賃金を引き上げないと地方経済が大変なことになるという認識が相当広まってきている。しかも、ワシントンDCで交渉している合間にも、前にもお話ししたかと思いますが、五、六都道府県の知事に電話をかけて最低賃金引上げをお願いしました。私が米国からかけていることに気づかずに吉村知事がコールバックしてくださったのは、午前2時でありました。
 そのようなこともあり、知事たちにも今の水準はEU指令などに照らせば暮らしていけない水準だと、各都道府県に万人単位でそういう都道府県民がおられますよということも申し上げてきました。そういうことで、私自身がいい方向だなと思って好感を持っているのは、この高知県ですか、私自身はやるべきことを実現するためにやっていて、介入しているつもりはなかったのですけれども、政治の介入を防ぐためにこういうEU指令をとおっしゃったので、私からすると違和感でもないですけれども、EU指令の点ではむしろ私が申し上げてきたことをようやく受け入れる都道府県が出てきたということなので、私がやったことは介入かどうかはともかくとして、いい方向性が出てきています。
 我が国の底力といいますか、やるべきことが分かれば本当に力を合わせて大きな成果を挙げて、世界が驚くような発展を遂げるということを繰り返してきた我が国でありますので、その点については心配をしていないというか、高市総裁が考えられた人事でしっかり回っていくだろうと思っています。
 あと、日米交渉については、これはもう当然ながら閣僚間の1対1で大体交渉をしますので、1対3ですけれども、一人一人とやるわけで、人間関係はもちろんあります。英語でいうケミストリーといったものはありますが、私と特にケミストリーがよかった閣僚もおられますけれども、また、私の後任に当たる方が、もしかしたら同じ閣僚と、あるいはそれ以外の方と新たなケミストリーを築いてしっかりやっていかれると思っています。
 そこは党の会議でも繰り返し申し上げましたけれども、やはり自民党には底力のようなものがあって、今回のトランプ関税についてもただピンチではなくて、それをチャンスに変えて国の発展につなげようということについて言えば、まさにそういう議論を選挙の間も通じてやってきたのは我が党だけでありまして、やはり外交とかそういうものについては我が党に一日の長があると、その点も心配はないのではないかというふうに考えております。
(問)党のほうの話ではあるのですけれども、政権の継続性にも関係するので少し聞かせていただきます。今、自民と維新の連立の交渉が始まっています。維新のほうが絶対条件で議員定数の削減、副首都構想、あと社会保障改革などを挙げていますけれども、この点を踏まえて、この協議の行方に期待すること、懸念することなどお考えをお聞かせください。
(答)閣僚の立場ですので、政党間の交渉について何か具体的なことを申し上げるのは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げれば、やはりその時点で私の評価はともかくとして、政界においても新しい風が吹くということについては当然いい面、悪い面があって、否応なくどんどん状況は動いていっているわけですので、その中でいい面が出てくればいいなというのが率直な思いです。私自身は高市新総裁が誕生したことについて、女性初の総裁であるということで、大変大きな評価をしています。
 これは骨太方針に私自身書き込んだことですけれども、意思決定に女性が参画すると意思決定の質が劇的に良くなる。これは統計的にも『存在しない女たち』という本の中に出てきて、和平協定を結ぶときに女性が入っているチームで結ぶと、その協定は長続きすると。女性が意思決定に参画することで平和が長続きするというようなことが、例えば統計的にも示されていたり、そういう意味で国のトップが、まだ総理には選ばれていませんけれども、女性になることの意味は物すごく大きいということで、期待するところ極めて大であります。
 加えて、政党間でそういう国民に見える形でいろいろな問題について大議論が巻き起こるということは、それはプラスマイナスあると思いますけれども、国民の皆様にとって、国にとってプラスの面もあると、とにかく何でもかんでもピンチをチャンスにという発想でやったほうがいいと思っていますので、もう否応なく政界は今動いています。その動きの中で、国家、国民にとって少しでもいい面がより多く出てくることを期待しているということは申し上げておきたいと思います。

(以上)