赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年10月10日
(令和7年10月10日(金) 11:09~11:25 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
(冒頭発言なし)2.質疑応答
- (問)自民党の新執行部の下で公明党との連立協議が難航しています。首班指名が遅れることで、国民生活に必要な物価高対策などの策定にも遅れが生じる可能性もあります。こうした現状に対する受け止めと、次期政権発足までの間に注力されたいことについてお伺いします。
- (答)まず、ご指摘の報道については承知をしております。ただ、政党間の協議状況について閣僚の立場でコメントすることは差し控えたいと思います。その上で申し上げれば、物価高対策については物価上昇を上回る賃上げの実現が基本、本筋であり急務という考えに変わりはありません。これまで全力で取り組んできたのが第一に賃上げに向けた環境整備ですし、第二に政府が直接対処することができる最低賃金の引上げや、官公需による価格転嫁の促進です。こうした取組を引き続き進めていくことが間違いなく本筋であると思っています。
なお、賃上げの効果が出るまでの間の一時的な対応として、これまで令和6年度補正予算や7年度予算、予備費などを用いて所得税減税や低所得世帯向けの給付金、重点支援地方交付金、あるいは政府備蓄米の売渡し、ガソリン価格の定額引下げ、7月から9月の電気・ガス料金の支援などの施策を執行してきております。
こうしたあらゆる政策を総動員しているところでございまして、家計や事業活動に与える影響に細心の注意を払いながら、引き続き経済物価動向に応じた機動的な政策対応を行っていきたいと思っています。
その上で、最後にお尋ねがあった注力したい取組ということであります。高市新総裁が選出をされたわけですが、現時点において石破内閣の閣僚としての職務は当然継続中ということになります。現職にある限り、経済再生、賃金向上、防災庁設置準備などの担当大臣として職責を全うしてまいりたいというふうに考えております。
最低賃金を含む賃上げについて申し上げれば、これについては、石破内閣が「賃上げこそが成長戦略の要」との考え方の下、最低賃金を含む賃上げに全力で取り組んできております。繰り返し申し上げておりますが、本年度の春季労使交渉における賃上げは、昨年度を上回る5.25%、また、最低賃金は前年度比プラス66円、プラス6.3%と過去最大の引上げを実現し、全国加重平均は1,121円、全ての都道府県で1,000円を上回るという結果になっています。その一方で、本年7月の実質賃金は前年同月比でプラス0.3%と7か月ぶりにプラスとなりましたが、8月の実質賃金は、速報ですけれどもまたマイナス1.2%ということで、再びマイナスに転じています。
また、最低賃金近傍の労働者が全国に660万人存在する中、27か国の主権国家がつくっているEU(欧州連合)、その指令でありますが、EU指令によれば賃金の中央値の60%、また平均値の50%が最低賃金設定に当たっての参照指標として加盟国に示されています。我が国の直近の水準はEUが中央値の60%ということですけれども、日本の場合中央値の47%、EUが平均値の50%と言っていますけれども、平均値の41%にとどまっています。端的に言えばEU指令の基準より大体2割低いという水準で、これで本当に安心して暮らしていける水準なのかというのも繰り返し私は問うてきたところですし、今後ともそのことは念頭に、しっかり賃上げをしていく必要があると思っています。
こうした現状に鑑みると、全ての働く皆様に対して明日の心配のない暮らしをお届けできるよう、2029年度までの5年間で物価上昇を年1%程度上回る賃金情勢を賃上げのノルム、社会通念として我が国に定着させるという目標でありますとか、最低賃金を2020年代に全国平均1,500円にするという目標を達成すると、そのことが引き続き重要な課題だと思っています。そのために関連する施策を総動員した中小企業・小規模事業者の皆様への支援を含め、引き続きたゆまぬ努力を継続していくことが必要であると考えています。
特に、最低賃金について付言をしておきたいことは、徳島県は昨年度前年度比84円と過去最大引き上げ980円としたところで、本年度もプラス66円、1,046円と頑張ってくださっていますが、同県の実質賃金はその引上げが行われた昨年11月から本年6月にかけて8か月連続でプラスとなっています。国全体と大いに違う傾向が出ているわけです。
私は、こうした実態を踏まえると、我が国全体で実質賃金のプラスを実現し定着させていく観点から、最低賃金を引き上げることには、現在暮らしていけない水準で本当に苦労しておられる、660万人おられると思われる最低賃金近傍で働いている方たちをしっかり安心して暮らせる、そういう状況に持っていくことに加えて、最低賃金を引き上げることは、国全体の実質賃金をプラスにしていく意味でも大変大きな意義があるというふうに考えております。その考えにはいささかも揺るぎはございません。
次に、防災庁の設置について申し上げたいと思います。世界有数の災害発生国である我が国において、防災の取組は待ったなしです。切迫する南海トラフ地震、あるいは日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下地震、富士山噴火など、大規模災害の発生も懸念されており、平時から不断に万全の備えを行うことは引き続き必要不可欠であるというふうに考えています。
そのため、我が国の防災全体を俯瞰的に捉え、徹底した事前防災、発災時から復旧・復興までの一貫した災害対応の司令塔として、内閣直下に設置をし、平時からの勧告権等を有する専任の大臣の下、十分なエキスパート人材と予算を有する組織として令和8年度中に防災庁を設置する方針を政府として示してきたところでございます。
国民の生命、身体、財産を災害から守り抜くために、人命・人権最優先の防災立国を早急に実現すべく、防災庁設置に向けた具体的な検討を着実に進めてまいりたいと思っています。残された期間も防災庁設置準備室の諸君と最大限よく相談をして、今後どう進めていくのか、スケジュールなども含めてしっかり打ち合わせて道筋をつけてまいりたいというふうに思っています。
最後に、日米関税合意について申し上げますが、「関税よりも投資」との考えを一貫して総理もおっしゃっていましたし、これを主張して日米相互の利益になる投資イニシアチブを提案することで、数少ない国だと思います、世界中の国の中でほぼ唯一関税引下げなしに米側の関税を引き下げることができたという関税合意が成立をしております。
この投資イニシアチブを含む今回の日米間の合意は、日米の相互利益の促進、すなわち日米同盟の更なる強化、経済安全保障の確保、我が国の経済成長の大幅な促進につながることが期待され、一方的に課された関税を甘受することなく、まさにピンチをチャンスに変えるということができたと考えております。
今後は、日米双方が合意の誠実かつ速やかな実施に努めていくことが重要で、昨日も米国の関税措置に関する総合対策タスクフォースを開催し、引き続き政府一丸となって最優先かつ全力で取り組んでいくことを関係省庁と確認をしたところです。
また、今朝も朝8時からラトニック米国商務長官と電話会談を約60分行いました。合意の実施を通じ、日米同盟の更なる強化と両国の経済安全保障の確保、経済成長の大幅な促進につなげていくことを改めて確認したところであります。
一方で、関税措置はなお残っており、政府としては、我が国への影響を十分に把握・分析をし、引き続き中小企業の資金繰り支援などに万全を期していかなければならないと思っています。
総理が次の政権に是非引き継いでほしいと言った賃上げ、最低賃金を含む賃上げ、それから防災庁の設置、更に日米関税合意の誠実かつ迅速な実施といった一連の課題は、いずれも我が国にとって極めて重要である一方、直ちに答えを出すということが難しい課題であります。1年間でできることは全力でやったつもりでありますが、なかなか結論まで出たということになっておりません。私自身、石破内閣が継続する間、引き続き全身全霊を挙げて諸課題の対応に全力傾注してまいりますが、新内閣に対しても責任を持って引き継いでいきたいということを考えております。 - (問)今朝の赤澤大臣とラトニック商務長官との電話会談についてなのですが、なぜこのタイミングで実施をされたのかというのを1点。また、関税合意では5,500億ドルの対米投資について大きな目玉となっておりますが、今月末にトランプ大統領が来日予定で調整しているかと思います。この対米投資についてラトニックさんとの会談でどのようなやり取りがあったのか教えてください。
- (答)本日午前8時から60分間、ラトニック米国商務長官と電話会談を行いました。ご案内のとおり、MOU(了解覚書)を結んだ5,500億ドルの日本からアメリカへの投資、日本にももちろんメリットがある形で、米国に経済安全保障上重要な分野でサプライチェーンをつくり上げるという試みであります。それについては、これから米側が提案する、あるいは我が国側から提案するプロジェクトをいろいろテーブルの上にのせて、戦略上、あるいは法令上の観点も協議をし、実際に実現していかなければならないという中ですので、当然ながら今後とも必要な協議が続いていくことが想定をされます。
そういうものの一環として今日も電話会談をさせてもらったところもありますし、これはあくまで私の推測でありますが、報道されているように大統領来日が近いということで、それに合わせて日米関税合意の中身についても引き続きお互いの進捗状況等再点検といいますか、点検しておきたいという気持ちが米国側にもあるものと思われます。
日米間では、9月上旬の私の訪米後も緊密に連携してきておりまして、本日も私と同長官との間で日米間の合意の誠実かつ速やかな実施について意見交換を行い、合意の実施を通じて日米同盟の更なる強化と両国の経済安全保障の確保、経済成長の大幅な促進につなげていくことを改めて確認をしたところでございます。
これ以上の詳細については、外交上のやり取りであるのでお答えは差し控えさせていただきたいと思います。 - (問)今の質問に関連して、関税合意の実施について伺います。今回の合意を受けて、政府はアメリカ車の輸入を増やす手段の一つとして、フォードのF-150を国交省地方整備局に配備するという案を検討しているという報道が先ほどあったのですが、大臣が把握されている事実関係や実現の可能性について教えてください。
- (答)まず、報道についてはまだ承知をしておりませんでした。その上で繰り返し申し上げているのは、トランプ大統領が大変ご関心が高いのが、コメと、それから米国製の自動車が我が国で走るかどうかというところです。いずれもおっしゃっていることに必ずしも事実と合わない部分もあったりはしますが、大変関心が高いということがありまして、いずれのコメも米国製自動車についても、9月4日に発表した日米の共同声明にも盛り込まれていると、その実施は誠実にやってまいりたいというふうに思っております。
それ以上に、具体的な企業名や、あるいは商品名など、そういったことについては、今この場で何か申し上げられるようなこと、具体的なことがあるわけではありません。もう一つ申し上げれば、F-150についてはトランプ大統領のお気に入りなのですかね。報道でよくトランプ大統領がフォードのF-150をというのを口にされているのを私は承知をしておりますので、きっとお気に入りなのかなというふうに思います。ただ、具体的な詳細で申し上げられることがあるわけではありません。 - (問)今朝の電話会談について、中身については先ほどお話しいただいた以上のものはということだったのですけれども、先ほど大臣がアメリカとしても関税合意の中身の進捗状況を確認しておきたいという気持ちがあると思うということだったのですけれども、今朝の電話会談というのはアメリカ側からの提案だったのでしょうか。
- (答)正直なところ、私もそこまで確認していませんというか、ラトニック商務長官とは、頭を下げてどちらかからお話をしてもらうというような関係ではもうありませんので、私も全くそこのところを気にせず、現時点においてどちら側からの話だったのか私の頭の中にありません。あったとしても多分お答えしないと思います。
これは、5,500億ドルの投資案件も含めて、日米関税合意について言えば、少なくともトランプ大統領の任期中もそうですし、プロジェクトを組めば、それはもう10年、20年続いていくようなものも当然想定されるわけでありますから、今後日米関係というのは、そういう意味で、この合意が元で今までよりもはるかに緊密に両国の閣僚が連絡を取り合うということ、あるいは事務的にはもっと密に意見交換、そういうものを続けるということが確実視されるわけでありまして、そういう中では、皆様からどちらが求めて会話が始まったのですかみたいなことの問いかけがあまり意味をなさないぐらい緊密な関係になっていくだろうというふうに想定をしております。
(以上)