赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年9月29日
(令和7年9月29日(月) 18:49~19:03 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要をご報告申し上げます。経済の基調判断について、「景気は、米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられるものの、緩やかに回復している」と先月から表現を変更しております。
これは、個人消費や設備投資に上向きの動きが続くなど、景気の緩やかな回復基調に変化は見られないものの、米国の関税引上げの影響については、自動車産業を中心に収益や米国向けの輸出の減少といった形で表れていることを表現したものでございます。
先行きについては、雇用・所得環境の改善や、各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されますが、今後の景気下振れリスクには注意が必要です。また、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響等についても引き続き注視する必要があると考えております。
続いて、本日の会議で私から説明したポイントについてご紹介いたします。
米国向け輸出数量は、今年前半の輸出増を受けた反動減もあり、自動車を中心に足元で減少しています。国内の自動車生産は、7月末の津波警報による操業停止の影響もありますが、6月以降低下しています。また、企業収益は高水準が続くものの、関税交渉合意前の4-6月期に製造業、特に自動車産業で前年比減少しています。
一方、7月の関税交渉合意に伴い、企業の景況感は4-6月期を底に、7-9月期以降、改善しています。特に自動車産業では、交渉合意前の調査結果を大きく上回る景況感になっています。また、中小企業のアンケートでも交渉合意の前後で関税の「影響がある」又は「影響がある見込み」とする回答割合が減少するとともに、特にないと答えた企業も増加しており、先行きの不透明感が一定程度解消された可能性が考えられます。
9月16日に我が国に対する自動車・自動車部品等の関税が実際に15%に引き下げられるなど、日米間の合意は着実に実施されていますが、今後も関税が我が国経済に直接的・間接的に及ぼす影響を緊張感を持って注視し、十分に分析する必要があります。
次に、実質賃金の動向と各地域の最低賃金の改定状況です。
まず、名目賃金は昨年後半以降、伸びを高める中、本年7月は特別給与の高い伸びもあり、消費者物価を上回る伸びとなりました。「賃上げこそが成長戦略の要」との認識の下、2029年までの5年間で日本経済全体で年1%程度の実質賃金上昇をノルムとして定着させることが重要です。特に最低賃金について、今年度の最低賃金の改定額は各地域における真摯な議論の結果、39道府県で中央最低賃金審議会の目安を上回る引上げが決定され、特に最低賃金水準の比較的低い地域で中央の目安を大幅に上回る増加となりました。
私はこれについて、地方のほうが最低賃金を引き上げないと地域経済が崩壊するという危機意識が強いことの表れであるというふうに受け止めております。
引上げ幅は過去最大のプラス66円、前年比6.3%増となり、初めて全ての都道府県で1,000円を上回り、全国加重平均で1,121円となりました。
今後、パート時給をはじめ、賃上げの動きが地方にも広がっていくことを期待しております。働けば安心して暮らしていける国、もちろん働けない人も誰一人取り残されない国に向けて、最低賃金を2020年代に全国平均1,500円とすることを目指します。
引き続きこれらの実現に向け、価格転嫁・取引適正化、生産性向上、事業承継・M&Aによる経営基盤強化及び地域で活躍する人材の育成と処遇改善の取組を進めるとともに、成長型経済の実現に向け、GXやDXをはじめとする投資促進、地方創生2.0等に取り組むことが重要であると考えております。
このほか、会議の詳細については後ほど事務方から説明させます。
2.質疑応答
- (問)今月の月例経済報告では、基調判断に「米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられる」と明記されるとともに、個人消費と設備投資の判断が上方修正されました。また、日本銀行は、今月の政策決定会合で保有ETF(指数連動型上場投資信託受益権)の市場への売却も決定しました。日銀の決定も含め今回の変更について、この背景と大臣の受け止めについてお伺いします。
- (答)政策態度が変更されというところですね。それは、ごめんなさい、どこのことを言っておられますか、政策態度の変更というのは。
- (問)基調判断の表現変更と、個人消費と設備投資の判断の上方修正で合っていますか。
- (答)その中でも日銀のETFとJ-REIT(不動産投資信託)にも触れているんですもんね。ちょっと待ってくださいね。
分かりました。月例経済報告の政策態度の変更の中では、変更部分というのは、9月19日に日銀が変更したところの部分ですので、それについてお話しいたします。
先日9月19日に開催された日本銀行の金融政策決定会合では、日本銀行が保有するETF及びJ-REITについて市場への売却を行うことが決定されました。そのように承知しております。日本銀行が保有するETF等は、金融政策の一環として日本銀行が買い入れ保有しているものでありまして、その取扱いについては、基本的に日本銀行において判断されるべき事項であるというふうに考えております。
日本銀行には引き続き政府と緊密に連携し、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を行うことを期待しております。 - (問)今回の月例の判断で、個人消費について「消費者マインドの改善に遅れがみられるもの」という部分を削除して上方修正というふうになったと思いますけれども、これに関連して、その理由として、物価が一定程度落ち着いてきて予想物価上昇率が安定してきているというのも指摘されているかと思うんですが、そういった現状の中で、実際の消費者物価指数も、これは政策の影響というか効果もありますけれども、やや落ち着いている中で、現状、物価高対策の必要性・緊急性とか、こういう局面の中でどのような物価高対策が必要なのかというようなことについてどのようにお考えか。折しも党の総裁選でいろいろ議論されていることもあり、その辺の議論をどのように受け止められているかということも含めて、大臣のお考えをお聞かせください。
- (答)個人消費については、5四半期連続で実質前期比プラスとなるなど、持ち直しの動きは続いていると。消費者マインドについても、本年春頃に弱い動きが見られたものの、足元では持ち直してきております。
もっとも、消費の回復ペースは依然緩やかであり、物価上昇を上回る賃金上昇を安定的に実現し定着させることは引き続き重要な課題であることに変わりはありません。
私としては、物価高対策についても物価上昇を上回る賃上げの実現が基本、本筋であり急務であるというふうに考えておりますが、これまでそういう考えで全力で取り組んできたのが第一に賃上げに向けた環境整備ということで、令和6年度補正予算、7年度当初予算を合わせて1兆円を超える関係予算で、価格転嫁・取引適正化の徹底、あるいは生産性向上、事業承継・M&Aを通じた経営基盤の強化などをやってきたということです。
それが第一でありますし、第二に、政府が直接対処することのできる最低賃金の引上げや官公需による価格転嫁の促進をやってきています。最低賃金については、今年度の中央最低賃金審議会の答申で過去最高となる6.3%の引上げを実現することができ、また、概算要求の枠組みも抜本的に見直し、官公需における価格転嫁を徹底することとしたこともご案内だと思います。こうした取組を引き続き進めていくことが本筋であると考えております。
ただ、その上で、賃上げの効果が出るまでの間の一時的な対応として、これももうご案内のことですけれども、これまで6年度補正や7年度当初予算予備費などで1人2から4万円の所得税減税とか、世帯当たり3万円、子供1人当たり2万円を加算する低所得世帯向けの給付金とか、住民税非課税世帯以外の方も対象とする給付金や、学校給食の無償化など、実現できる重点支援地方交付金、随意契約を活用した政府備蓄米の売り渡し、リッター当たり10円等のガソリン価格の定額引下げ、それから暑い夏の7-9月期の電気・ガス料金支援などの施策を施行していることもご案内のとおりであります。
経済政策については、石破総理が自民党総裁として、賃上げが物価上昇を安定的に上回るまでの間、本当に困っておられる方々を支援するための対応が重要であり、これまで6年度補正や7年度当初予算で様々な物価高対策を講じてきたけれども、これらの対策はどれだけ国民の皆様に届き本当に効果的なものとなっているか、党として検証していただきたいという旨の指示を小野寺政調会長に出されました。
先週26日に小野寺政調会長から石破総理に対する検証結果の報告として、物価高対策について、国と自治体との意思疎通によって更に早められる余地があるのではないか。それから、こども食堂やフードバンク等において、米の入手が大変といった課題が報告されたと承知しております。
政府としては今回の報告を含め、与党における検討や野党との協議の状況などを踏まえながら検討を進めていくものと考えております。
なお、従来行われてきたこども食堂やフードバンクに対する政府備蓄米の無償交付も、先般26日、総理からご発言があったとおり、提供回数の増加や手続の簡素化が進められることとなっております。 - (問)自民党総裁選に関連してお伺いします。日曜日に高市候補が出演した民放番組で、関税交渉の合意内容にある対米投資に関して、「日本の国益を損なう不平等なものが出てきた場合には再交渉の可能性もある」といったようなことを言及されました。
赤澤大臣はこれまで新総裁に引き継いでほしいこととして、関税合意の誠実かつ迅速な実施を求めてこられましたが、この高市候補の発言についてどのように受け止められていらっしゃいますか。 - (答)ご指摘の発言は承知しております。総裁選での議論について、閣僚の立場でコメントすることは差し控えますが、その上で申し上げれば、確認させていただいたところ、高市候補のご発言は、対米投資の決め方に関しまして、中略ですけれども、運用の過程でもし日本の国益を損なう非常に不平等な部分というのが出てきた場合にしっかりものを申していかなければいけない、再交渉の可能性もあるというご発言だったと思います。
その上で申し上げれば、今般の投資イニシアチブの運用においては、当然皆さんご案内の、もう公表されております了解覚書(MOU)に従ってやっていくということで、そのMOUの中で、19項かと思いますが、日米両国の間で意見の相違等が生じた場合には、相互協議を通じて友好的に解決することを意図するというふうに明記されておりますので、高市候補がおっしゃったような対米投資の決め方の中で、運用の過程でもし不平等な部分というものが出てきたらものを申すという場面は、この相互協議を通じて友好的に解決することを意図するという覚書の規定に沿って解決される、それにのっとって解決されるものと理解しております。
いずれにせよ、今般の投資イニシアチブが日米の相互利益の促進、すなわち日米同盟の更なる強化と経済安全保障の確保、我が国の経済成長の大幅な促進につながるよう、具体的なプロジェクトの対象範囲や選定等について米国と緊密に連携を図りながら、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。
(以上)