赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年8月29日

(令和7年8月29日(金) 11:39~12:04  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 (冒頭発言なし)

2.質疑応答

(問)米国との関税交渉について、昨日から予定されていました10回目の大臣の訪米ですが、直前で取りやめとなったかと思います。その背景など具体的な理由についてご説明をお願いします。また、次回以降の訪米の予定は近くあるのか、訪米は近く予定されているのかということに関してもお伺いします。
(答)米国の関税措置に関し、協議するために昨日から訪米予定でありましたが、米側との調整の中で事務的に議論すべき点があることが判明いたしました。その結果、出張を取りやめ、事務レベルで協議を続けていくことになりました。申し上げておくと、私は取りやめたのですが、随行してくれることになっていたメンバーは、ほぼそのまま予定どおり渡米をして協議をしているということであります。
 引き続き、米側に対し、可及的速やかに相互関税に関する大統領令を修正する措置を取るよう、また自動車・自動車部品の関税を引き下げる大統領令を発出するよう強く申し入れてまいります。また、米側とは、日米間の合意の誠実かつ速やかな実施が重要であることを確認しておりまして、相互利益の促進につながる成果を早期に上げ日米双方の成長と経済安全保障を実現し、日米同盟を更に強化していく考えであります。
 改めて強調しておきますが、既に関税は課されていますので、1日当たり20億円という損害を出している自動車メーカーもいれば、1時間当たり1億円の損害を出しているというメーカーもいます。そういうことで、近日中に訪米の予定はあるのかというご質問だったと思いますが、調整が整い次第、一刻も早く大統領令の発出をしてもらうということを、我々は当然考えているということでございます。現時点で、私の訪米日程は決まってはおりませんが、引き続き日米間の合意の誠実かつ速やかな実施の方策について、あらゆるレベルで協議を行っていくということでございます。
(問)今のご回答の中で、訪米予定は調整が整い次第、一刻も早く大統領令を発出してもらうことを考えているというようなお答えをされていたと思うのですけれども、どこかのタイミングで、やはり大臣自ら訪米されて大統領令の発出を求めるという、ここに関しては変わらないお考えでしょうか。
(答)これについてはいろいろなことが考えられますが、現時点において、大統領令の発出までにあと1回は少なくとも私が訪米することになるのではないかということは、私自身は考えております。ただ、具体的な日程は決まっておりませんし、先ほど申し上げたように調整が整い次第ということですので、それがいつになるかというのは現時点で申し上げることができないということであります。
(問)大臣政務官の神田潤一先生が辞職を表明されたり、総裁選があるかもしれないというような国内の内政状況については、トランプ政権のカウンターパートの方は結構よくご存じでいらっしゃるのかどうか伺ってもよろしいでしょうか。
(答)最後のところは。
(問)日本の内政状況について、アメリカ側はご存じかどうか伺うということです。
(答)まず、少しご注意を申し上げたいのは、今神田政務官が辞職を表明したとおっしゃったけれども、私が記事で承知をしている限り、彼は辞職をしてでも総裁選の前倒しを求めることを考えなければならないかもしれないとおっしゃったと、そういう報道だと私は理解をしています。皆様は、本当に重要な仕事をされているので、質問をするときも正確に、丁寧にやっていただくということを改めて申し入れておきたいと思いますが、そこについて何かありますか。
 では、納得いただいたということで、米側がそれについて承知しているかについては、本当にこれは意地悪な言い方をしているのでも何もないのですが、米側にお尋ねいただきたいと思います。私どもは国益をかけた交渉をやっている、それも全力傾注でやっておりますので、交渉の場においてそれ以外の話題が出るということは基本的にありません。最速で国益にかなう、そういう合意を実現したいというふうに考えております。
(問)先ほどのご回答の中で、大統領令の発出までにあと1回は訪米されることになるだろうとおっしゃったと思うのですが、あと1回ということはどういう含意というか、何を意味するのかというのをご教示いただけますでしょうか。
(答)少なくとも1回という言い方をしました。あと1回という言い方ではなくて、少なくとも1回は必要ではないかと私自身は思っているという意味は、事務的な協議が調った後で、それは事務レベルで全て問題点が解消すればいいですけれども、必ず閣僚間で協議をすることというのは残るわけであります。なので、その協議をするために米側の閣僚、ベッセント財務長官、ラトニック商務長官、あるいはグリアUSTR(米国通商代表部)代表と協議をしなければならない機会というのが少なくともあと1回はあるだろうということを申し上げました。
(問)共同文書なのか大統領令の中身なのか、中身はなかなか言及が難しいと思うのですけれども、何かしら事務方で調ったことの政治合意の確認のために少なくとも1回という理解ですか。
(答)日米で確認をしているのは、日米間の合意の誠実かつ速やかな実施が重要である、これは私のほうから米側にFaithfully and swiftlyということを申し上げました。大変ベッセント長官が気に入ってくれて、彼はこのことを何度も繰り返しておりまして、私どもは日米間の合意の誠実かつ速やかな実施が重要であるということを再三確認しているわけであります。
 そこはお互いの懸念点というか、合意をする前に詰めておく点が全部きちっと詰まり次第、しっかりと合意の実施のフェーズに移るということでありますけれども、その前に調えなければならない協議というものがあり、事務方、事務レベルだけで調うとは限りませんので、あと1回はあるだろうということを申し上げております。具体的な中身、あるいはやり取りについては差し控えたいと思います。
(問)1か月ぐらい前の会見でもお尋ねしたことで、物価高対策等について先月28日の会見でお尋ねしたときは、石破総理の21日の発言を引かれた上で、そうした点を踏まえて検討を進めていきたいというようなことをご発言されたと思うのですが、1か月ほどたちまして、現時点で物価高対策、あるいは、より広義の経済対策なり補正予算なりといったことについて、どのようなお考えなりの今後の検討の方針をお持ちかお聞かせください。
 それに関連して、この間最低賃金に関連して、特に目安を超える引上げについての支援策の充実的なことをおっしゃられていると思うのですが、こういったことも経済対策なり補正予算なりといったところに対象として入ってくるのか、そのあたりについても見解があればお聞かせください。
(答)まず、物価高対策については、物価上昇を上回る賃上げの実現に向けて我が国全体で賃金が上がる環境をつくっていくことが基本であり、急務であると考えております。
 その上で、賃上げの効果が出るまでの間の対応として、令和6年度の補正予算や、あるいは7年度予算、予備費などを用いて、1人2万円から4万円の所得税減税でありますとか、世帯当たり3万円に子供1人当たり2万円を加算する低所得世帯向けの給付金でありますとか、あるいは住民税非課税世帯以外の方も対象とする給付金や学校給食の無償化などを実施できる重点支援地方交付金、それから随意契約を活用した政府備蓄米の売渡し、そしてリットル当たり10円等のガソリン価格の定額引下げ、暑い夏の7月から9月の電気・ガス料金支援などの施策を執行してきているところでございます。
 こうしたあらゆる政策を総動員しているところであり、家計や事業活動に与える影響に細心の注意を払いながら、引き続き経済物価動向に応じた機動的な政策対応を行ってまいりたいと考えています。
 そして、最低賃金については、最低賃金引上げの対応について、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」と、我々が成長戦略と呼んでいますけれども、6月13日に閣議決定したものに基づいて、「2020年代に全国平均1,500円という高い目標」の達成に向け中小企業・小規模事業者に対する政策を総動員していくこととしております。具体的には、政府が一丸となって価格転嫁、取引適正化の徹底、そして生産性向上、更には事業承継・M&Aを通じた経営基盤の強化などの施策を講ずることによって、中小企業・小規模事業者に賃上げ原資を最大限稼いでいただけるよう全力で取り組んでおります。
 例えば、従前から最低賃金を含む賃上げの後押しとして、生産性向上に資する設備投資等を支援しているところ、厚生労働省所管の業務改善助成金とか、それから経済産業省所管のものづくり補助金、IT導入補助金等について、本年度以降行われる最低賃金の引上げも念頭に更なる充実策を検討しております。これに加えて各都道府県において中央最低賃金審議会の目安を超える最低賃金の引上げが行われている場合の特別な対応として、交付金等を活用した都道府県における地域の実情に応じた賃上げ支援の十分な後押しを行うことも併せて検討していくこととしておりまして、詳細については今後適時具体化をしていきたいというふうに考えております。目安を超えて最低賃金引上げがあった都道府県の経営者の皆様を最大限支援し、応援をしてまいりたいというふうに考えております。
(問)この間の最低賃金の取組というのはまさに獅子奮迅で、やはり賃上げ担当大臣というのを先生がおっしゃっているように、現行憲法下で初めてなのですね。ということは、大日本憲法下にこれも類似したものがあったのか、やはりこの4文字でこれが出る動きができているわけですけれども、画期的だと思うのですが、今思うと。そこはどういうふうに整理されているのか伺いたいです。
(答)まず、私自身が石破総理から賃金向上担当大臣、今ご指摘があったとおり現行憲法下初の賃金向上担当大臣という役目をいただきました。最低賃金をめぐる状況について石破総理と話している中身ですけれども、私がよく総理に申し上げているのは、最低賃金近傍の労働者の方たちは全国に660万人程度おられます。一番多い東京都で125万人、私の地元である鳥取県で2万人です。2024年度の最も低い最低賃金は951円でありまして、フルタイム労働者が年間2,000時間働くとしても一般的にワーキングプアと呼ばれる年収200万円を下回る水準です。一言で言ってしまえば暮らしていけない水準じゃないかということを私は強く思うということです。
 例えば、EU指令では、「賃金の中央値の60%又は平均値の50%」が最低賃金設定にあたっての参照指標として加盟国に示されています。各国で最低賃金の適用対象は異なるため単純比較は困難ですが、我が国の直近の水準はと言えば、EU指令は中央値の60%と言っているものが我が国は中央値の47%しかありません。それから、EU指令で言えば賃金の平均値の50%ですけれども、我が国の場合41%にとどまっています。
 それから、更に申し上げれば、賃上げ全体への波及効果を考えれば、最低賃金の引上げは石破総理がおっしゃっている2040年頃に名目GDP1,000兆円程度との目標にも直結をすると、大いに関係するものであるということを考えています。なので、総理と私は最低賃金の引上げについて今申し上げたようなことも念頭に、大変強い思いを共有しているということになります。
 今回の中央最低賃金審議会においては、全国平均で6.0%、63円という過去最大の引上げ幅となりました。昨日までに38都道府県の審議会で答申がなされ、そのうち30道府県で中央最低賃金審議会の目安を超える引上げとなっております。ただ、例えば食料関係の消費者物価指数は2024年10月から2025年6月で平均6.4%上昇しており、全体としてこの水準には届いていないわけです。引き続き、2020年代に全国平均1,500円というのは高い目標であり続けていると認識をしておりまして、たゆまぬ努力を続けていきたいというふうに考えております。
(問)いわゆる内閣府の設置法に、もとより4条に所掌事務として賃上げというか、そこは多分ないと思います。だから、多分各省との総合調整業務で総理の特命でやっておられる。でも、この賃上げ担当というのは本当にやろうと思ったら、やはり所掌事務として書き込んで、やはり総合調整のこの部分をやるのだと、こうならないと、これは経営者ですとか自治体の幹部の方の中には、失礼な言い方ですけれども、やはり口約束というのでしょうか、それだけで、先ほどの自治体などについては、上回ったら交付金がいつどれだけ払われるのかとか心配しておられる方などもおられます。
 その辺を含めまして、一回厚生労働大臣と一緒に会見されたらやはり安心する経営者もいると思うのですが、何がしかやはり具体的に応援してくださるというところがないと、中小企業は困るところが絶対あると思うのですけれども、その辺の担保のところはどういうふうにお考えになるのか伺いたいです。
(答)2点申し上げます。まず、おっしゃっていることはごもっともな面がありまして、私が特に何か最低賃金について直接的に法令で規定される権限を持っているわけではありません。一方で、総理とお話をする中で、この賃上げというのは本当にやはり重要だなと。もっと直接的に政府がかかわる、動かしていく努力をする価値は大いにあるなという認識は共有をしておりますので、先ほどおっしゃった私の所掌の中に書いてあること、それとの関係というのは、よくもう一回検討をしてみる必要があるものだなというふうには思います。
 ただ、一方で既にものが動き出しておりまして、我が政府としては、「賃上げこそ成長戦略の要」だということを打ち出しています。そして、またこれまでは賃上げ環境の整備をするのが政府の仕事だと言っていたものを、この5年間で実質賃金毎年1%上昇というのを社会的なノルムとして定着をさせると、そして、また最低賃金についても2020年代1,500円を目指すと。
 これまでは、政府はやはり一歩下がって賃上げ環境の整備をして業界をお支えすると、そこから先の、ある意味賃上げについては、もちろん経営判断の非常に重要な部分ですので、民間が考えられることなので、そういうやり方で来ましたが、一歩踏み込んで賃金のところは全力でお手伝いをするけれども、その分確実に上げていってほしいという、少しそういう意味でかかわりを強めるといいますか、そういう思いがあるのは正直なところであります。
 ご指摘もごもっともでありまして、私どもは、今回、これまで常に賃上げ環境の整備として価格転嫁、それから生産性向上、そして事業承継・M&Aの支援を全力でやってまいりましたが、更に一段力を入れるということに加えて、地方最低賃金審議会の示した目安を超える対応をしていただいた都道府県については、今予算編成に入るところでありますけれども、特段の更なる支援をやると。ただ、これについては当然ながら財務省とも協議をしなければなりませんし、党との議論も当然ありますし、現時点において内容が確定したものではないのでなかなか具体的にこれということを言えないのはご理解いただきたいと思いますが、できるだけ早く予算編成過程の中でこういう支援をさせていただきますということは申し上げたいと思います。
 最低賃金の引上げに間に合う形でという言い方がいいのか分かりませんが、それより早めにご提示できないことについては申し訳なく思っておりますけれども、しっかり目安より引き上げていただいたところについては、上げたかいがあったと思っていただけるようなご支援を最大限やらせていただきたいという思いで、今後の予算編成過程などに臨んでまいりたいというふうに考えております。
(問)連合の会長の芳野さんが、メーデーに総理に来ていただいたり、そこでメーデーで初めて最低賃金を上げることも大きな声で言われた、そういうことも非常に取組をこの間会見で評価しておられたのですけれども、その辺も含めまして、労使関係も含めて新しい形になってきたのかなという感じもするのですが、その辺どうご覧になっているのかお伺いします。
(答)私自身は、いろいろな機会にお話をさせていただき、芳野会長のことは心から尊敬をしております。大変率直にものをおっしゃる方でありまして、最低賃金について話をしたときも、やはり連合だけでもなかなか最低賃金近傍で働いている方たちの実態というのはつかみきれないところがあるという趣旨のことはおっしゃっていたように思います。
 これは、実際客観的に考えれば当然のことでありまして、最低賃金周辺で働いている方たちというのは、恐らく組合のない会社に勤めておられる方たちだと思います。そうなると、やはり連合がなかなかそういう方たちの情報をつかみきれないということをおっしゃったのは極めて率直なご発言でありまして、私はその発言を聞いて、更にやはり政府が取組を強めないと厳しいところがあるのだなということを強く感じたところです。
 いずれにしても、組合で働いている、組合に所属しておられる方たちもそうですし、組合がある会社で組合に所属しておられない労働者の方たちもそうですし、そして最低賃金近傍、会社に組合もなく大変厳しい状況に置かれている方たち、どなたにとってもやはり明日に希望を持ってしっかり頑張って働けば必ず暮らしていけると、今日より明日は良くなると希望を持っていただける状況にしなければなりませんし、また、一方で働けない方たちもしっかり支えていく、そういう日本国でありたいというふうに考えております。
(問)今のやり取りの中の確認ですが、目安を超えた引上げに対する特別な支援というものに関して、今のやり取りの中で来年の予算編成の過程で考えていくので、今は具体的なことはおっしゃれないというようなことをお話しされたと思うのですが、ということは、基本的に、目安引上げに対する特別な支援については来年度予算以降の手当てになるということですか。
(答)そこについても何か議論が確定しているわけではありません。今のご質問でありますけれども、別に経済対策も現時点においてやると決めたわけでもありませんし、そういう意味では臨機応変に。ただ先ほどのお話にもありましたけれども、やはり頑張って目安を超えて上げてくださった都道府県はしっかり応援したいという思いがありますので、そこは臨機応変にできるだけ早く、ある意味で安心していただける、やってよかったと思っていただけるような方向を目指してやっていきたいと思いますが、現時点でどのタイミングでどうするということが具体的に決まっているわけではございません。
 ただ、確実に言えるのは、各省が提出を間もなくします8年度予算の概算要求の予算編成過程の中では、しっかりしたものをつくり上げていきたいということは考えております。
(問)自民党の総裁選前倒しをめぐる動きについてご質問します。先ほど神田政務官の話も出ていましたが、今日、小林史明環境副大臣が自身のSNSで、早期の総裁選実施を求めるとともに必要なら副大臣を辞職する考えを示しました。政府内でこうした発言が相次いでいることについてどのようにお考えなのか、また総裁選の実施を求めるということで、事実上総裁のリコールということだと思いますが、そうした考えを表明しながら政府内に副大臣や政務官という立場でとどまることは適切というふうにお考えか伺います。
(答)まず、自民党総裁選について閣僚の立場でコメントをすることは差し控えたいと思います。その上で申し上げれば、石破総理は先般8月4日の両院議員総会で米国との関税合意について、この後のいろいろな課題をきちんと詰めていかなければならない、また対米輸出だけでも非常に多い品目が存在し、それぞれの事業者の皆様にとって死活問題であることから、きちんと道筋をつけ、いろいろな業種の方々に安心していただくことが政権、我が党の責任といった趣旨を述べられたものと承知をしております。
 4月から始まった日米関税交渉を通じて築き上げられた日米間の信頼関係に基づき、日米両国が力を合わせて経済安全保障上の結びつきを強化し、日米両国で強靭なサプライチェーンを構築しようという大変前向きな合意のモメンタムを決して損なわないよう、日米間で連続性のある取組を積み重ねてまいりたいと私は考えております。そのような思いを込めて、引き続き石破内閣の一員として国民からの声を真摯に受け止めながら、与えられた職責を全力で果たしてまいりたいと思っております。
 また、政務三役の対応についてのお尋ねもありましたが、それについて私がコメントすることは差し控えたいと思います。

(以上)