赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年8月27日
(令和7年8月27日(水) 18:31~18:45 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要をご報告申し上げます。経済の基調判断について、「景気は、米国の通商政策等による影響が一部にみられるものの、緩やかに回復している」と先月からの判断を維持しております。
先行きについては、雇用・所得環境の改善や、各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されます。ただし、米国の関税政策、関税引上げによる企業収益の悪化が見られ始めており、今後の景気下振れリスクには注意が必要でございます。また、物価上昇の継続が個人消費に及ぶ影響等についても引き続き注視する必要があります。
続いて、本日の会議で私から説明した今月のポイントについてご紹介いたします。
本年4-6月期の実質GDP成長率は、前期比プラス0.3%、年率換算でプラス1.0%と5四半期連続のプラス成長となりました。民需の柱である個人消費、設備投資ともに5四半期連続で増加しています。
ただし、回復のペースは依然として緩やかでありまして、輸出や設備投資の伸びに比べると、個人消費の伸びが相対的に弱いものとなっています。その背景として、所得の動向を見ますと、賃上げの進展によって名目雇用者報酬は堅調に増加しているものの、物価上昇率を調整した実質雇用者報酬の伸びは緩やかとなっており、物価高の継続によって家計の実質的な購買力が抑制されていることが伺われます。
こうした中、今月4日、中央最低賃金審議会で最低賃金引上げの目安が示され、全国加重平均でプラス63円、率にして6.0%の引上げと、過去最大の引上げ幅となりました。
その上で、私も地方を回って様々な対話をしておりますが、既に多くの都道府県において、全国の目安を上回る最賃の引上げが決定されてきています。我が国経済にとって、賃上げの動きを全国津々浦々、中小・小規模事業者に広げ、物価上昇を上回る賃上げを実現していくことが極めて重要であると考えております。
また、米国の関税措置については、今般の合意により追加関税率が引き下げられることとなりましたが、各国の動向も踏まえ、我が国経済に直接的・間接的に及ぼす影響を引き続き緊張感を持って注視し、十分に分析する必要があります。影響を受ける事業者の方々に対する資金繰り支援など、引き続き必要な対応を行いながら、経済財政運営に万全を期してまいります。
このほか、会議の詳細については、後ほど事務方から説明させます。
続きまして、米国の関税措置に関し、明日8月28日(木)から30日(土)にかけて、米国を訪問いたします。引き続き米側に対し、可及的速やかに相互関税に関する大統領令を修正する措置を取るよう、また、自動車・自動車部品の関税を引き下げる大統領令を発出するよう、強く申し入れてまいります。
また、米側とは日米間の合意の誠実かつ速やかな実施が重要であることを確認しています。相互利益の促進につながる成果を早期に上げて、日米双方の成長と経済安全保障を実現し、日米同盟を更に強化していくことを考えております。
2.質疑応答
- (問)月例経済報告についてお伺いします。今回、基調判断を維持されましたが、企業部門で自動車産業の求人数が減少するなど、関税の影響と見られる影響も出てきていますけれども、今後の国内外の経済への影響について、どう見られているかお願いします。
- (答)先ほど申し上げましたとおり、景気の先行きについては、雇用・所得環境の改善や、各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されます。
ただし、米国の関税引上げによる企業収益の悪化等が見られている点については十分注意する必要があると考えており、今後とも米国の通商政策の影響による景気下振れリスクをきめ細かく点検してまいります。
その上で、米国の関税措置が今後の日本経済に与え得る影響については、我が国の対米輸出の下押しという直接的な影響と、第三国の対米輸出に係る我が国の中間財輸出や、あるいは各国総需要の下振れによる世界経済減速を通じた間接的影響などが考えられます。
一方で、他国に課される関税よりも我が国の関税が低い水準となれば、我が国にとって有利な競争条件、貿易条件が有利になるということです。あるいは、今般の合意により、我が国に対する米国の通商政策に関する不確実性が低下し、我が国経済を下押しするリスクが低下したことなども踏まえる必要があると考えております。
引き続き、米国の関税措置について、今般の合意や各国の動向による我が国への影響を十分に把握・分析し、それを踏まえ、我が国の産業や雇用に与える影響の緩和に万全を期してまいりたいというふうに考えております。 - (問)関税措置について、冒頭明日から30日まで訪米のご予定があると発表されましたけれども、今回の訪米の狙いについてお願いいたします。
- (答)冒頭申し上げましたとおり、明日28日(木)から30日(土)にかけて米国を訪問いたします。面会相手を含め、それ以上のスケジュールの詳細などを申し上げることは差し控えたいと思いますし、今回の訪米の目的についてお尋ねがありましたが、引き続き米側に対し、可及的速やかに相互関税に関する大統領令を修正する措置を取るよう、また、米側から同じ時期に自動車・自動車部品の関税を引き下げる大統領令を発出するということも確認しておりますので、その2つを強く申し入れていきたいと思っております。
米側とは日米間の合意の誠実かつ速やかな実施が重要であること、これは再三にわたって確認しておりますので、相互利益の促進につながる成果を早期に上げて、日米双方の成長と経済安全保障を実現し、日米同盟を更に強化していくということを考えております。 - (問)26日の会見で大臣は、アメリカと共同文書をつくる際には、合意事項実施のためのレバレッジを確保するとおっしゃっておられましたけれども、今回の訪米ではそのレバレッジが確保される段階になったという理解でよろしいのでしょうか。
- (答)交渉ごとなので相手のあることですから、今回の訪米における米側とのやり取りについて、予断を持ってお答えすることは差し控えたいというか、できないです。
米側とは日米間の合意の誠実かつ速やかな実施が重要であることを確認しており、相互利益の促進につながる成果を早期に上げて、日米双方の成長と経済安全保障を実現し、日米同盟を更に強化していきたいと考えております。
いずれにせよ、今回の訪米の機会を捉え、米側に対し、可及的速やかに相互関税に関する大統領令を修正する措置を取るよう、また、自動車・自動車部品の関税を引き下げる大統領令を発出するよう、強く申し入れていきたいというふうに考えております。
当然ながら、国益をかけた交渉をしている交渉人でありますので、きちんと国益を守れるように、レバレッジといわれるもの、私どもが先方に求めている合意事項について、きちんと実施してもらえるようなレバレッジを確保した交渉をやってまいるというのは当然のことだというふうに考えております。 - (問)今回の訪米に際して、対米投資に関連して、日米で共同文書をつくるという報道があります。それに対する大臣のお考えをお伺いできればと思います。
また、赤澤大臣はこれまで関税引下げを優先するため、文書をつくる必要はないというふうにお話しされていましたが、もし文書をつくるということであれば、方針が変わったのはなぜなのかお伺いできればと思います。 - (答)今回の訪米における米側とのやり取りについて、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますし、加えて、報道については承知しておりますが、それについてコメントすることもいたしません。
その上で申し上げれば、米側とは日米間の合意の誠実かつ速やかな実施が重要であることを確認しています。相互利益の促進につながる成果を早期に上げ、日米双方の成長と経済安全保障を実現し、日米同盟を更に強化していく考えでございます。
米国の関税措置に関する日米協議についてはこれまでも説明してきておりますとおり、ぎりぎりまで折衝を行った協議の経緯や、日米間の合意を誠実かつ速やかに実施していくことが最優先であるとの考え方から、これまで日米間で共同文書は作成しておりません。こうした我が国の考え方、私の考え方は特に変わってはおりません。
今般の合意の内容については、国民の皆様から広くご理解いただけるよう、政府として丁寧に説明してまいります。この点は総理が繰り返しおっしゃっていることでありますので、そうした文脈において、何が必要で何が必要でないか、いかなる対応を取ることが最善であるかという観点から検討し、実行に移していくということについてはしっかりやっていきたいというふうに考えております。 - (問)大臣、先ほどお話がありましたけれども、速やかな対応を求めていくというところ、これまでと変わらず今回もやられると思うのですけれども、大臣が訪米中の間に大統領令の発出をするというところまで求めていくんでしょうか。お願いします。
- (答)そういう意味からいえば、出発する前に出してほしいと。今この瞬間に出してほしいというような考え方でものをやっておりますので、それについては特に何か変わったものではありません。
繰り返し申し上げているように、例えば我が国の自動車産業についていえば、繰り返していますけれども、1時間に1億円ずつ損が出ているという企業があります。1日に20億円の損が出ているという企業があります。そういう状態が続いておりますので、これは一日でも早く、一刻でも早く大統領令を出してくれということについては何ら変わっておりませんので、それは今回頼むのでしょうかと言われれば、行く前から是非そうしてほしいという思いを持っております。それに尽きます。 - (問)総裁選の前倒しの議論についてお伺いしたいのですが、先ほど行われました自民党の総裁選の管理委員会で、総裁選の前倒しを要求する議員の氏名を公表するということが決まりました。総裁選を実際に行うという場合にはかなりハードルが上がったという見方もあると思うのですが、大臣の受け止めをお願いします。
あと、閣内でも中谷防衛大臣が昨日の会見で、総裁選の前倒し実施には否定的な発言をされておられるのですけれども、赤澤大臣は石破総理の最側近として、前倒しに賛同されるのか、もしくは否定的なお考えがあるのか、お伺いできればと思います。 - (答)自民党総裁選について、私は現在閣僚の立場でありますので、コメントすることは差し控えたいと思います。
その上で、石破総理は、私は訪米中でありましたが、先般8月8日の両院議員総会において、米国との関税合意について、この後のいろいろな課題をきちんと詰めていかなければならない。今、正しく私がやっていることであります。対米輸出だけでも非常に多い品目が存在し、それぞれの事業者にとって死活問題であることから、きちんと道筋をつけ、いろいろな業種の方々に安心いただくことが、政権、我が党の責任といった趣旨を述べられたものと承知しております。
先ほどの私のお答えを補足すれば、自動車だけでなくて、相互関税、これについても、一言で言えば、例えば牛肉などは26.4%に今15%が乗ってしまっている形で、これは米側で起きたことではありますけれども、それが続いておりますので、とにかく同時とされる相互関税の修正と自動車・自動車部品関税の引下げについては、一日でも早く、一刻でも早く実現してほしいということもあります。
とにかく、私自身は引き続き、石破内閣の一員として、しっかりと国民の皆様からの声を真摯に受け止めながら、日米の今回の交渉にまつわる必要なことを最速でやっていきたい。引き続き、ゆっくり急ぐということですけれども、国益を守りながら、しっかり取り組んでいきたい、与えられた職責を全力で果たしてまいりたいと考えております。
(以上)