赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年8月26日

(令和7年8月26日(火) 12:14~12:41  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 (冒頭発言なし)

2.質疑応答

(問)今週後半にまた訪米されるのではないかと一部報道が出ています。あと、ラトニック長官がFOXテレビで同じようなことを発言されたようなので、事実関係をお話しできる範囲でお願いいたします。
(答)現時点で私の出張が決まっているという事実はございませんが、引き続き日米間で様々なレベルで意思疎通し、合意の着実な実施に努めていくことに変わりはございません。米側に対し、可及的速やかに相互関税に関する大統領令を修正する措置を取るよう、また、自動車・自動車部品の関税を引き下げる大統領令を発出するよう、あらゆる形で強く申し入れていくこととしております。
 ラトニック商務長官のFOXニュースでの発言については承知しております。ただ、交渉相手ということですけれども、米国の政府関係者が発信されたことについてコメントすることは差し控えたいと思います。
(問)2点目ですが、ラトニック長官はテレビの中で、5,500億ドルの投融資関連で今週後半にも議論するようなことをお話しされていますし、あと、一部そういう報道も共同通信その他で出ていますが、5,500億ドルの投融資計画の文書化の計画の有無について、お話しできる範囲でお願いいたします。
(答)5,500億ドルの投資、我々は出資、融資、融資保証の形でJBIC(国際協力銀行)やNEXI(日本貿易保険)が米国内にサプライチェーンをつくり上げていく経済安全保障上重要な分野であるということについて、力を合わせてやっていこうということでありますけれども、ご指摘の報道は承知しておりますが、米国の関税措置に関する日米協議については、これまで説明してきているとおり、ぎりぎりまで折衝を行った協議の経緯や、日米間の合意に誠実かつ速やかに実施していくということが最優先との考えから、これまで日米間で共同文書を作成するということはしておりません。
 引き続き米側に対し、可及的速やかに相互関税に関する大統領令を修正する措置を取るよう、また、自動車・自動車部品の関税を引き下げる大統領令を発出するよう、あらゆる形で強く申し入れているところでございまして、現状についていえばそういうことになります。
(問)日米関税協議に絡みまして、5,500億ドルの投融資に絡む協議体をつくるという一部報道がありますけれども、これはいつ頃どこにつくるのか、詳細をお話しできる範囲でお願いいたします。
(答)繰り返しになりますけれども、今般の合意では、米国への投資を通じて半導体や医薬品と、経済安全保障上重要な9分野等について、日米が共に利益を得られる強靭なサプライチェーンを米国内に構築していくために日米で連携していくということにしております。このため、JBICやNEXIが最大5,500億ドル規模の出資、融資、融資保証を提供するということを可能としております。
 日米間では、ご指摘の投資イニシアチブを含め、合意の着実な実施について協議しているところでありまして、それ以上の詳細については、日米間で正に外交チャンネルで協議中ということでありますので、発言は差し控えたいというふうに思います。
 いずれにせよ、本イニシアチブ、米側は「Japan invest America initiative」と呼んでいますし、私がもともと名づけたときは「Golden Industrial Partnership」と呼んでおりましたけれども、日米両国の経済安全保障上の結びつきを強化し、我が国の戦略的不可欠性を高めるとともに、日米といいますか、日本の経済成長を更に加速させていく上でも非常に有意義なものであると思っています。引き続き、日米で緊密に連携しつつ、相互利益の促進につながる案件の組成に努めてまいります。
(問)日本郵政が昨日、米国向け郵便物の一部の引受けを停止にすると発表しました。7月30日の米大統領令による免税措置が停止されたことを受けたものですけれども、これに対する赤澤大臣のご所感と、今後郵便物に関して米国と協議されるお考えかどうかお伺いできればと思います。
(答)日本郵便は、米国の輸入関税の納付ルールの変更、これに伴いまして、8月27日より課税対象となる米国向け郵便物の引受けを一時停止すると発表したものと承知しております。
 日本郵便からは、米国向け郵便物の個人間利用の大半は内容品の価格が100米ドル以下であり、引き続き郵送可能であると。それから、代替手段として国際物流サービスでの送付が可能であるということから、利用者への影響は限定的であると聞いております。
 ちょっと補足しておけばよかったかもしれませんが、米国の輸入関税の納付ルールの変更というのが、米国向けの郵便物のうち物品を伴うものの免税対象を現在は800米ドル以下が免税ということですけれども、100米ドル以下に引き下げるとともに、受取人に代わって運送事業者が関税を納税する仕組みに変更予定ということで、8月29日から施行というふうに承知しております。
 更に申し上げれば、受取人に代わって運送事業者が納税するためには、システムの構築が新たに必要となる。端的に言えば、郵送物の種類・価格等の情報を記録し、米国税関に提供するシステム、それの構築が新たに必要になるということであります。
 以上を踏まえて、日本郵便は、8月27日より課税対象となる米国向け郵便物の引受けを一時停止するということが事実関係です。
 その上で、内容品の価格が100米ドル以下であるものが大半であり、加えて、代替手段として国際物流サービス、これは日本郵便が国際物流サービスFedExと提携していますけれども、その送付が可能であるので、利用者への影響は限定的であると伺っているところであります。
 政府としては日本郵便に対し、利用者に混乱が生じないよう代替手段の説明など丁寧な対応を求めてまいります。
(問)以前、赤澤大臣がイギリスの前例を参考に、9月半ばまでに合意の実施ができれば悪くないといった発言をされていたかと思います。現時点でこの認識に変わりがないかということと、進捗状況をご覧になって、現在どのような認識でおられるかお伺いします。
(答)米側からは、今後、適時に相互関税に関する大統領令を修正する措置を取ること、同措置を取るのと同じタイミングで自動車・自動車部品を引き下げる大統領令を発出することを確認しております。
 今後行われる大統領令の修正は米側内部の事務処理であり、米側の対応についてコメントすることは差し控えるというのが原則でありますが、一般論として申し上げれば、これまで私が申し上げてきたことを繰り返せば、相互関税に関する遡及効がついていますので、これがついたまま長期間にわたって大統領令の修正がなされない、例えば半年、1年そのままというようなことはおよそ考えにくいということで、まず、米国において適切に対応をされるものと考えております。
 その上で、丁寧に申し上げれば、なお、各国ごとに事情が異なるため、あくまでご参考ということですけれども、米英間の場合、自動車の関税割当てを含む貿易合意が発表されてから実際発効するまで54日間かかっていると。大統領令を出すまでというか大統領令に署名するまで40日間、更にそこから発効するまで2週間、トータル40日間プラス14日間で54日間ということです。
 その上で、これも私が申し上げたのは、ただし、我が国と英国を比べた場合に、米国は我が国との関係で年間687億ドル、約10兆円という巨大な貿易赤字を抱えている一方で、英国に対しては年間114億ドル、約1兆7,000億円の貿易黒字を有しています。また、日本は台数制限のない合意を世界で初めて勝ち取りましたが、英国は年間10万台という台数制限を上限に関税率を10%とする、台数制限のある関税割当てを得たということで、大いに違いがあって、一言で言うと、英国は米国と交渉するに当たって、我が国より有利な立場であると思うのですね。このために、我が国が54日程度で実現できれば悪くないと言ったのはそういう趣旨であります。
 ということで、その状況については、現時点においても申し上げた発言の内容とか前後関係、あるいは背景とか周辺事情も全部踏まえて、現在何か発言を改めなければいけないとか状況が変わったという認識は持っておりません。
(問)関税交渉を巡って、現在、日米の共同文書をつくることはしていないというところでありますが、今後、アメリカ側から対米投資で共同文書をつくりたいというときがあったときに、日本としては求めている相互関税の修正とか自動車関税の引下げといった大統領令の実施がなければ、日本としては共同文書をつくるということには応じないということになるのか、そこのあたりの考え方を伺いたいと思います。
(答)ご質問に対して答えるに当たっては少し丁寧に話したほうがいいかと思うのでご説明しますが、交渉人として私が考えていることをまず申し上げると、合意した内容が比較的明快であって、内容を確定する、あるいは言葉を変えればピン留めする必要が少ない国は、あまり共同文書を必要としないということです。
 一方で、実現しようとする自分が欲しいもの、合意の内容が結構複雑であったり、それを実際に動かすためにお互いの国でかなり詳細まですり合わせる必要がある、そういう事情を抱えている国は、共同文書をつくりたいというインセンティブというか、そういう意味で、今それぞれ2つ挙げた国の類型がありますけれども、前者はあまり共同文書をつくるメリットを認めない、後者は共同文書をつくるメリットを大いに感じるということで、おっしゃったように、私自身の認識は、共同文書をつくりたい、あるいは、つくることにメリットを感じるのは日米間どちらかといえば米側だと思います。そのことは申し上げておきたいと思います。
 その上で、これも当然ですけれども、交渉人としては、自分の国の国益を実現するために相手の国に認めてもらった合意事項があります。それをきちんと実施してもらうためのレバレッジは確保すると。レバレッジは日本語で言ったら、てこですか、あるいはレバレッジという言い方でご理解いただけるかと思いますけれども、それをきちんと確保してゴールインするような交渉の仕方をするというのがある意味、交渉人の芸のうちなので、そういうことをしっかり考えながらやっていきたいと考えております。
(問)前回、8月15日の会見で、大臣は最低賃金の引上げに対応する中小企業・小規模事業者を後押しするという方針について、都道府県知事に直接伝えて理解を求める考えをお示しになりました。その進捗状況と知事の反応などについて教えてください。
 併せて、中央最低賃金審議会の示した目安を超える引上げが行われる場合の特別な対応についても言及されましたが、知事の対応なども踏まえた上で、具体的にはどのような支援策となるのか、大臣のイメージといいますかお考えをお聞かせいただけるとありがたいです。
(答)最低賃金の引上げは、賃上げを起点とした成長型経済を実現する観点から、極めて重要な課題だと思っています。私自身は現行憲法下で初の賃金向上担当大臣ということでありますので、この最低賃金の引上げについては、並々ならぬ力の入れ方でやらせていただきたいと思っているものでありまして、私としては全国に660万人程度おられる最低賃金近傍の労働者が明日の心配なく日常生活を送ることができるよう、最低賃金を十分に引き上げることの必要性について、全ての都道府県知事と認識を共有したいと考えております。
 この660万人ということについていえば、一番多い都道府県ということでいえば、東京都に125万人おられます。例えば愛知県であれば48万人、福岡県であれば25万人、我が鳥取県であれば2万人ということになります。万人単位でどこの県にも最低賃金近傍で働いておられて、非常に暮らしていくのが本当に大変だと。本当にこれで暮らしていけるのかという思いで日々暮らしている方たちがおられるということです。選挙のたびに私は手を握られて、シングルマザーの方から、若い方から、「暮らしていけるようにしてください」というお声をいただいております。
 このため、私は大村愛知県知事や服部福岡県知事と面談を行ったほか、複数の知事に対して電話等を通じて働きかけを行っております。端的に言えば、米側と交渉が終わった後で、ワシントンD.C.からもお電話を差し上げた知事も何人かおられます。
 そういうことをやってきていますが、事務方からも既に各都道府県に対し、最低賃金の引上げに関する政府の方針、中小企業・小規模事業者に対する支援の考え方についてご説明申し上げた上で、知事にもしっかりお伝えいただくようお願いしているところであります。
 最低賃金引上げへの対応については、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」、これは6月13日に閣議決定いたしましたが、それに基づき、また、当然同じことは骨太方針にも書いてありますが、「2020年代に全国平均1,500円」という高い目標の達成に向け、中小企業・小規模事業者に対する政策を総動員してまいります。
 具体的には、政府が一丸となって価格転嫁・取引適正化の徹底、生産性の向上、それから事業承継・M&Aを通じた経営基盤の強化などの施策を講ずることによって、中小企業・小規模事業者の皆様に賃上げ原資を最大限稼いでいただけるよう、全力で取り組んでまいります。例えば従前から、最低賃金を含む賃上げの後押しとして、生産性向上に資する設備投資等を支援しているところ、業務改善助成金(厚生労働省所管)とか、ものづくり補助金、IT導入補助金等(経済産業省所管)について、本年度以降行われる最低賃金の引上げも念頭に、更なる充実策を検討してまいります。
 また、各都道府県において、中央最低賃金審議会の目安を超える最低賃金の引上げが行われる場合の特別な対応として、今申し上げたような補助金の優先採択とかそういうことに加えて、交付金等を活用した都道府県における地域の実情に応じた賃上げ支援の十分な後押しを行うことも、併せて検討してまいります。目安を超えて最低賃金引上げがあった都道府県の経営者の皆様には最大限の支援をして、応援してまいりたいということでございます。
(問)現在、地方の審議会で最低賃金の目安を超えているのが7割超というような結果が出ていますが、こちらの受け止めについてお願いします。
(答)まず、昨日までに30都道府県の審議会で答申が出され、そのうち23道府県で中央最低賃金審議会の目安を超える引上げとなっていると承知しております。地域の実情を踏まえた議論を通じて、多くの地域で中央の目安を上回る結果となっていることを歓迎いたします。
 その一方で、最低賃金近傍の労働者は、先ほど申し上げたように全国に660万人程度存在します。2023年の賃金構造基本統計調査によるものです。
 EU指令では、賃金の中央値の60%又は平均値の50%が最低賃金設定に当たっての参照指標として加盟国に示されておりますが、国によってもちろん事情は違うので、各国で最低賃金の適用対象は異なるため単純比較は難しいですが、我が国の直近2024年の水準は、EU指令が賃金の中央値の60%というところ、我が国では中央値の47%ですし、EU指令で平均値の50%というところ、我が国では平均値の41%にとどまっています。
 こうした実態に鑑みると、最低賃金については、その近傍で働く労働者の皆様が安心して日常生活を送ることができるようになっているのかと大いに我々としては問題意識を持たなければならないところで、その引上げに向け、なお一段の取組が必要であるというふうに考えております。
 17府県で審議会の議論が継続しておりますが、引き続き「2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向けて、たゆまぬ努力を継続する」とする「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」に配意しつつ、地域の実情を踏まえた真摯な議論が行われることを期待したいと考えています。
(問)最低賃金の決め方に関して、現行の制度では中央審議会で3要素を考慮した上で目安を答申して、それを受けて地方の審議会で実際の額を決めて、労働局長が決定するというプロセスを取っておりますけれども、こうしたプロセス、決め方に関して、一部、日弁連であったりとか市民団体の方々から、審議会ごとの決定が地方格差を生んでいるなど、こうした問題点を指摘する意見も出ていますけれども、この現行制度についてどのようにお考えになられているか、また、制度の見直しについて必要があるかどうか、そのあたりどういうふうにお考えなのか、お願いします。
(答)審議会を含め、最低賃金の決定に関する現行の制度運用について、様々なご指摘・ご意見があることは承知しておりますし、本当に重要な制度であると私は確信しておりますので、そういうものについてはよく自分の中に取り込んでいます。諸外国と異なる我が国の制度やその運用の在り方について、私も一人の政治家として、特に今、現行憲法下初の賃金向上担当大臣という立場でありますので、私なりの考えは持っております。
 その一方で、現在は現行の仕組みの下、地域間格差の是正を図るという閣議決定にも配意しながら、各地域において真摯な議論が行われているところでありまして、現時点において、政府の一員である賃金向上担当大臣として、制度運用の在り方自体に関し、コメントすることは差し控えたいというふうに考えております。
(問)各社の世論調査で支持率が上昇傾向になっています。このことに関する大臣の受け止めと、どういった取組がそういう上昇の傾向につながっているというふうに分析されているか、お聞かせください。
(答)個々の世論調査の結果について、閣僚の立場でコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 その上で、石破総理、そして、官房長官も25日の記者会見で述べられたというふうに承知しておりますが、石破総理は自民党総裁として、我が国が国難ともいうべき厳しい状況に直面する中、先の参院選の選挙結果に対する重大な責任を痛感しながらも、政治を停滞させないよう、比較第一党としての責任、国家国民の皆様方に対する責任を果たしていかなければならないということ、また、参議院における厳しいご審判を踏まえ、喫緊の政策課題について野党の皆様方とも真剣に真摯に協議を行い、共に責任を持って優れた政策をつくり上げてまいりたいといった趣旨を述べられているものと承知しております。
 私も石破内閣の一員として、国民の皆様からの声を真摯に受け止めながら、引き続き与えられた職責を果たしてまいりたい、全力で職務に取り組んでまいりたいと考えてございます。
(問)今、石破内閣の一員としてというお言葉がありました。今日も大臣は朝9時前頃、総理大臣に面会されていると思います。この中で関税に関するやり取りというのはあったのでしょうか。
(答)総理と今日面会いたしましたが、内容については差し控えさせていただきますが、関税について私からいろいろご説明して、総理からご指示あるいはご質問・ご意見などを賜ったところでございます。
(問)大臣は以前、石破総理が総裁選に出馬するなら支持される考えを示しておられました。改めて総裁選を行い、石破総理の再選を目指すべきか、総裁選は実施せずに続投を続けるべきか、どのようなお考えでしょうか。
(答)自民党総裁選について、閣僚の立場でコメントすることは差し控えたいというふうに思っております。
 その上で、石破総理は先般、8月8日の両院議員総会、私は渡米しておりまして出席できませんでしたが、その場で米国との関税合意について、この後のいろいろな課題をきちんと詰めていかなければならない、対米輸出だけでも非常に多い品目が存在し、それぞれの事業者の皆様にとって死活問題であることから、きちんと道筋をつけ、いろいろな業種の方々にご安心いただくことが政権、我が党の責任であるといった趣旨を述べられたものと承知しております。
 私も日米関税交渉を担当している立場から、そういう立場も含めて、引き続き、石破内閣の一員として、国民の皆様からの声を真摯に受け止めながら、与えられた職務に全力で取り組んでまいりたいというふうに考えております。

(以上)