赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年8月16日
(令和7年8月15日(金) 10:16~10:41 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
本日、2025年4‐6月期GDP1次速報値が公表されました。これを受けた私の談話はお手元に配布したとおりでございます。2.質疑応答
- (問)今日発表されました四半期別GDPの1次速報値について談話もいただきましたけれども、大臣のお受け止めについて改めてお答えください。
- (答)本日公表の2025年4‐6月期GDP1次速報値では、名目成長率は前期比プラス1.3%、実質成長率は前期比プラス0.3%と、共に5四半期連続のプラスとなり、石破内閣発足以来、我が国経済はプラス成長を継続しているという姿になっております。内訳を見ると、個人消費や企業の設備投資が5四半期連続で増加するとともに、外需については輸出の増加が輸入の増加を上回り、成長率を押し上げております。月例経済報告でお示ししているとおりに、景気が緩やかに回復していることが確認される結果となったと考えています。
先行きについても、5%を上回る高い伸びとなった春季労使交渉による賃上げ、そして引上げ額の目安が過去最大となった今年度の最低賃金改定など、雇用・所得環境の改善や令和7年度予算の執行等による政策効果の発現が景気の緩やかな回復を支えることが期待されます。ただし、米国の通商政策による景気下振れリスクには留意が必要であり、加えて、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響等も我が国の景気を下押しするリスクとなっております。
政府としては、米国の関税措置について今般の日米間の合意を踏まえ、引き続き必要な対応を行いながら、経済財政運営に万全を期してまいります。あわせて、「賃上げこそが成長戦略の要」との認識の下、2029年度までの5年間で、日本経済全体で年1%程度の実質賃金上昇をノルムとして定着させるとともに、最低賃金を着実に引き上げ、2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向けて、中小企業・小規模事業者の賃上げを促進するため、価格転嫁・取引適正化、生産性向上、事業承継・M&Aによる経営基盤強化及び地域で活躍する人材の育成と処遇改善の取組を進めてまいります。賃上げを起点とする国民所得の向上と、経済全体の生産性向上を目指した政策を推進し、成長型経済への移行を確実なものとしてまいります。 - (問)最低賃金の関係で、昨日福岡県知事と面会されたと思いますが、こうした働きかけは、今後もお続けになるのかどうか。実際もう決まっていくタイミングというのもあると思いますけれども。
あと、昨日のご発言等で、いわゆるヨーロッパとの比較みたいなことを念頭に置くというようなことを強調されておられましたけれども、その目安の議論に当たっての、いわゆる3要素で考えるというものと、念頭に置くというものの関係というのをどのように整理して受け止めればいいかということについて、ご所見があればお聞かせください。 - (答)まず、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」、本年の6月13日の閣議決定です。同日に骨太の方針も決定をし、その中に、両方そろって最低賃金について「2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力の継続をする」ということをうたっております。
私は、地方最低賃金審議会の議論が行われている中、政府として最低賃金の引上げに対応する中小企業・小規模事業者を大胆に後押ししていくとの方針を各都道府県知事にしっかりお伝えをしたいと考えております。限られた時間の中ではございますし、正直申し上げて私も訪米が1回余計に増えたということがありますので、正直本当に限られた時間の中、更に限られたということなのですけれども、私自身、引き続き直接の面談や電話での連絡によってできるだけ多くの都道府県に理解を求めていくと、また、事務ベースでの働きかけも継続していきます。
実際、ワシントンDCにいる間に5、6人の知事に電話をかけてお願いをしたりしております。これについては、しっかり私が申し上げたことを理解した上で、いろいろな働きかけをやってくれませんかというお願いになるわけです。
昨日面談した服部福岡県知事からは、「中小企業・小規模事業者にとって、急激かつ大幅な最低賃金の引上げは経営環境の悪化や雇用の抑制につながりかねない」とし、手厚い支援を検討することについてご要望をいただいたところです。政府としては、先ほど申し上げた閣議決定に基づき、中小企業・小規模事業者に対する政策を総動員してまいります。従前から最低賃金を含む賃上げの環境整備として、中小企業の生産性向上に資する設備投資を支援しているところ、例えば業務改善助成金、これは厚労省所管になります。あるいは、ものづくり補助金、IT導入補助金等、これは経済産業省になります。本年度以降行われる最低賃金の引上げも念頭に、更なる充実策を検討してまいりたいと考えております。
また、各都道府県において、地方最低賃金審議会の目安を超える最低賃金の引上げが行われる場合の特別な対応として、交付金等を活用した都道府県における地域の実情に応じた賃上げ支援の十分な後押しを行うことも併せて検討してまいります。特に、賃上げの3要素とEU指令との関係についてお尋ねがございました。その点について、私は明確な問題意識を持っているので丁寧にご説明しておきたいと思います。
最低賃金審議会、あるいは、地方最低賃金審議会で議論する際に、法令上3つの要件ということですね、これがうたわれていることは、私は当然ながら百も承知をしております。それに基づいて、関係者が労働者側、経営者側、そして有識者ということでお話をしていただき、議論を尽くしていただいて毎年の最低賃金が決まっていくということが我が国のルールということになっております。それは念頭に置いた上で私が知事さんたちに申し上げているのは、今の最低賃金というのはEU指令の基準に照らしてみると低くないですか、そして、これ、私の認識なのですが、今の最低賃金で働いている方たちは暮らしていくのが本当に大変ではないですか、暮らしていけないと感じておられませんか、ということです。
具体的な数字を挙げれば、EU指令だと相対的貧困というか、最低賃金のレベルを設定するに当たって賃金の中央値の60%、又は賃金の平均値の50%ということがうたってあります。それは計算してみると驚くほど、うちの国でもそうなのですが、ほぼ同じ金額になります。我が国で言えば1,200円です。それと比べたときに、我が国の場合、EU指令だと最低賃金は賃金の中央値の60%でないと、又は、平均値の50%でないと最低賃金として十分でないという基準なのですけれども、日本に照らすと、その60%に当たる中央値との関係で言えば47%です。それから、平均値、EUであれば50%という基準ですけれども、日本だと41%です。
そういうお話を私は知事に申し上げた上で、知事のお勤めになっている都道府県でも何人の方々が最低賃金周辺で働き手となっておられ、フルタイムで働いても暮らしていけないのではないですかと、そういうことについて知事にもやはり考えを巡らせていただいて、その上で、日々経済人と接するときに働きかけをお願いできないでしょうかというのは私が申し上げていることです。
具体的に申し上げれば、最低賃金周辺で働いておられる方は、日本全国で今660万人います。東京都で125万人、昨日訪れた福岡県で25万人です。私の鳥取県で2万人おられます。選挙のたびに私の手を握って「暮らしていけるようにしてください」というお願いをされるシングルマザーの方も、若い方も、そういう方たちだと私は理解をしています。
なので、我が国の最低賃金のルールは理解をいたします。ただ、その上で、その結果としてEU指令と比べて大変暮らしていきづらい水準になっていないでしょうかと。そのことについて知事、どうお考えになりますかということは、毎回聞かせていただいております。 - (問)ベッセント長官がアメリカでテレビに出演されて、日銀の総裁と電話をしましたと。日銀のインフレ対応が後手に回っているという個人的なご意見を表明されて、それを受けていろいろ思惑で市場も動いたりしていまして、また経済界などでも利上げを求める声はあったりすると思います。一方で、この間自民党、与党の先生などには日銀の利上げに非常に慎重になってほしいという方のほうが多い印象もあるのですけれども、大臣として現時点でご所見をいただければ。
- (答)切取り報道だと思います。ベッセント長官の、私も非常に過去に懲りたので丁寧に前後を見るようにしていますが、日本に利上げを求めると本当に言っていますか。言っていないですね。事実に基づかない質問というのはやめていただきたいと思います。
何を言っているかというと、ベッセント長官は日本の利下げはbehind the curveだと思うけれども今後上げていくだろうということをおっしゃっているので、日本の利下げについて何かしろということは一切おっしゃっていない、事実関係として、それで正しいと思いますがいかがでしょうか。 - (問)ベッセント長官のテレビでの発言に対するご所見をお願いします。
- (答)私は利上げの水準についても何か申し上げる気はありませんし、日銀が私どもとアコードで結んだ2%の物価目標をきちっと実現をしていただく中で、我々は、それをしっかり1%を上回るぐらいの水準の賃上げをノルムとして定着させることを5年かけて目指しているわけで、その形がうまく実現をできれば経済としては成長型の経済にしっかり移行していくものだというふうに理解をしております。
- (問)本日公表された4‐6月期のGDPでは、米国の関税政策のマイナス影響というのは大きく見られなかったと思うのですが、日米合意で今後15%の関税が、自動車関税、相互関税と恒久的にかかっていくことになると、今後輸出量の減少であったり、それが日本企業の収益悪化などにつながっていく可能性もあると思うのですけれども、今後の日本経済への影響についてどのようにお考えになられているかお願いいたします。
- (答)8月7日に公表した年央試算では、物価高や米国の関税措置、世界経済の成長鈍化等の影響があるものの、2年連続で5%を上回った賃上げによる所得の増加や各種政策効果が経済を下支えする中で、実質GDP成長率は2025年度に0.7%程度で、2026年度は内需に支えられて0.9%程度を見込むとお示しをしました。引き続き、米国の関税措置について今般の合意や各国の動向による我が国への影響を十分に把握、分析をし、それを踏まえ我が国の産業や雇用に与える影響の緩和に万全を期してまいりたいと思っております。
その上で、年央試算でお示しをした経済の姿が実現できるよう、賃上げを起点とする国民所得の向上と経済全体の生産性向上を目指した政策を推進し、成長型経済への移行を確実なものにしていきたいというふうに思っております。
恐らくご質問の背景には、いろいろな研究機関がどれぐらいの関税によって日本経済を引き下げる効果があるか、いろいろな試算を出されていますけれども、私どももそういったものもやっておりますが、そういうことを念頭に置きながら、しっかりと影響の緩和をするということに万全を期していきたいというふうに考えております。 - (問)関税の関係で、先日大臣が出演されたテレビ番組で自動車関税の引下げ時期について、まだこちらは決まっていないのですけれども、9月半ばまでにできれば悪くないといったようなご発言があったと思うのですけれども、現在の米側との自動車関税の引下げ時期についての調整状況であったり、また訪米されるようなご予定が、可能性があり得るのか、そのあたりをお願いできますでしょうか。
- (答)まず、私の発言について少し背景をご説明しておきたいと思います。確実に言えるのは、ゆっくり急ぐと私が申し上げた中で急ぐと申し上げている理由ですけれども、繰り返しこれは申し上げていますが、自動車メーカーは1時間に1億円ずつ損を出している、あるいは1日で20億円、あるいは1日で10億円、それぞれメーカーが本当に苦労しているわけです。なので、米国の追加関税については遺憾であるということは全く認識として変わっていません。だからこそ、その関税を少しでも早く、少しでも低くしたいという思いでこれまで交渉してきています。
ただ、9月半ばぐらいまでに自動車関税、合意したものが実施されれば悪い感じではないと私が発言した中身、これは米英間の場合、自動車の関税割当等を含む貿易合意が発表されてから発効するまで54日間かかっていることを踏まえたものです。少し説明させてもらうと、我が国と英国を比べた場合、米国は我が国との関係で687億ドル、約10兆円という巨大な貿易赤字を抱えています。大統領の問題意識は非常に大きいわけです。
一方で、英国に対しては、米国は114億ドル、約1兆7,000億円の貿易黒字を有しています。これは、額は小さいですけれどもイギリスとの関係では貿易黒字国である米国が、これは非常に大きな話で、また日本は台数制限のない自動車関税の引下げの合意を世界で初めて勝ち取った国ということになりますが、英国の場合は年間10万台を上限に関税率を10%とする台数制限のある関税割当です。そういうことを念頭に置くと、英国は米国と交渉するに当たって、明らかに我が国より有利な立場にあります。
私の先日の発言は、我が国より圧倒的に有利な立場にある英国でも合意した自動車関税の内容を実現するのに合意から54日間かかっているという趣旨を念頭に、我が国が54日程度で実現できれば悪い感じではないのではないかということを発言したものであります。引き続き米側に対し、当然ながら1日も早く一刻も早く、可及的速やかに自動車、自動車部品の関税を引き下げる大統領令を発出するようあらゆる形で強く申し入れていくという立場に変更はございません。 - (問)半導体製造装置に関して、大臣は合意の中身に含まれているとご認識を示されたと思うのですけれども、改めて、米国側との認識の共有というのはその後なされていて、確実に入っているというふうに確認ができているのか、それとも今後フォローアップしなければいけない状況にあるのかお聞かせください。
- (答)今般の日米間の合意においては、経済安全保障上重要な半導体について、仮に将来分野別関税が課される際も我が国がEU等の第三国に劣後する扱いとはならないと、最恵国待遇ということは、我々は確保しているということを再三米側との間で確認をしております。
先般の訪米においても、この点を含め、今般の日米間の合意の内容を米側の閣僚との間で改めて確認をしたところですので、私としては、半導体製造装置も半導体、セミコンダクターの中に含まれると理解をしております。ただ、この点、明示的に米側と議論はしておりませんので、いずれにせよ米側と緊密に意思疎通を続けていく中で、日米間の共通認識を確認しながら、合意の着実な実施に向けてしかるべく対応していきたいというふうに考えております。 - (問)先ほどのGDPの質問に重なる部分もあるのですけれども、今回の4-6月の速報値にアメリカの関税政策の影響が現れているのかどうか、大臣のご見解を伺いたいと思います。
また、自動車をはじめとして関税政策に対する懸念は大きいものがあるのですが、今後の輸出や企業の設備投資にどのように影響が出る可能性があるのかお考えをお聞かせください。 - (答)先ほど関税措置についてご質問があったときに丁寧にお答えしたつもりですが、もう少しお答え兼ねて詳しくお話ししたいと思います。
米国の関税措置が日本経済に与える影響については、今般の日米間の合意を前提として機械的に試算をすれば、実質GDPを平年度で0.3%から0.4%程度押し下げる可能性があるということです。これは、一応仮定を置いた試算ということになりますけれども、転嫁がどれぐらいされるのか、価格転嫁が起きたときにそれで需要がどれぐらい下がるのか、価格弾性値みたいなものとか、そういうものについて仮定を置いて機械的に試算をして、我々は0.3%から0.4%程度の押下げ効果があると。
これは、仮に相互関税が25%、自動車、自動車部品に対する追加関税25%がそのままでいった場合と比べると、今般の日米間の合意によって0.2ポイント程度改善した数字というふうに理解をしております。いろいろな、例えば三菱総研、野村総研、それぞれいろいろな数字を出しておられて、仮定の置き方で当然違ってくるということだと思います。繰り返しになりますが、この試算は企業が関税コストを販売価格に100%価格転嫁する等の機械的な仮定を置いています。先ほど申し上げたように、価格弾性値も一定の数値を置いています。ということで、米国における価格変化を通じて与える影響を計算したものであります。
ちなみに、含まれていないものを4つほど申し上げておくと、今般の合意により我が国に対する米国の通商政策に関する不確実性が大きく低下をし、我が国経済を下押しするリスクが低下する効果、よく言われるのは、企業は見通しが大事なので一部には高くていいから関税を早く決めてくれというような声も時々上がったりすることがあります。それぐらい見通しが大事ということなので、不確実性が低下したことで下押しリスクが減るというような効果もあり得ると思います。これは含まれていません。
また、他国に課される関税よりも我が国の関税が低い水準となれば、当然貿易の条件で有利になるわけです。我が国にとっては有利になるわけですが、それは含まれていません。なので、例えば相互関税でノースタッキング、アメリカ側と確認し、米側が修正をすると、遡及効もやると言っている相互関税のノースタッキング、最近話題になったものでありますが、これとかはEUと日本は取れているけれども、現時点において韓国は取れていないとかいうようなことはあります。そういうようなことも含めて、他国との競争条件の違いで何か出てくる効果、これも含まれていません。
あるいは、今般の日米間の合意に基づいて5,500億ドルを上限とする出資、融資、融資保証をやりますが、対米投資の増加がもたらし得る効果も含まれていません。それから、世界経済全体の成長鈍化による影響等も含まれていません。というようなことを全部申し上げると、本当にどれも仮定を置いたもので、一概にそうなると思い込んでいいものではないということはご理解いただけると思います。
いずれにせよ、実際の影響については米国市場における価格設定の動向ですね、どれぐらい価格転嫁されるのだろうというようなこと、あるいは価格の変化に対する実際の需要の変化を見る必要があることから、こうした試算結果については幅をもって見る必要はあると考えておりまして、引き続き先般の総理指示に従って、我が国への影響を十分に分析し、結果が出たらそれに基づいて万全の経済財政運営をやってまいりたいと考えています。 - (問)8月15日に当たり、靖国神社への参拝、あるいは玉串料の奉納などについてなされるお考え等がありますでしょうか。
- (答)終戦の日に合わせて靖国神社に参拝するか、あるいは玉串料奉納するか、個人として適切に判断をさせていただきたいと考えております。
(以上)