赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年7月29日
(令和7年7月29日(火) 17:15~17:52 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
本日の閣議において、「令和7年度年次経済財政報告」について報告いたしました。現在、日本経済は緩やかな景気回復が続く中、本年の春季労使交渉における賃上げ率が33年ぶりの高水準となった昨年を更に上回るなど、明るい動きが各所に見られています。一方、食料品等の物価上昇が続く中で、個人消費の回復は賃金・所得の伸びに比べて力強さを欠いており、米国による追加関税措置は日本経済を直接的・間接的に下押しするリスクとなっています。
本報告では、実体経済や賃金・物価の動向について、米国の関税措置による影響や今後のリスクを詳細に点検しています。また、個人消費の回復が力強さを欠く要因を多面的に分析するとともに、その鍵となる持続的な賃金上昇に向けた課題等も議論しております。
本報告での客観的な分析が、日本経済の課題解決に向けた政策立案の基盤として活用されることを期待しております。
続きまして、月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を報告申し上げます。
今月は「景気は、米国の通商政策等による影響が一部にみられるものの、緩やかに回復している」と先月から表現を変更しております。米国の通商政策が我が国の景気に与えていた不透明感については、7月23日の米国との合意を踏まえ、かなり解消されているとは考えております。
しかしながら、15%の自動車関税など、なお残る関税の経済に与える影響には十分に留意していく必要がございます。また、既に発動された関税措置を受けまして、4月から6月の自動車の対米輸出価格は大きく下落しておりまして、企業収益の下押し要因となるなど、一部に影響が見られています。これらを踏まえて判断文の表現を変更したところでございます。
その上で、マクロ経済の現状としては、輸出数量や製造業の生産、雇用などには現時点で特段の変調は見られておらず、企業における2025年度の設備投資計画は、6月時点で前年度比プラス8.7%と顕著さが維持されているところでございます。
また、家計部門も消費者マインドには改善の遅れが見られるものの、雇用・所得環境の改善の動きが続く中で、個人消費に持ち直しの動きが見えるところでございます。景気の緩やかな回復が続いていると判断しております。
先行きについては、33年ぶりの伸びとなった昨年を更に上回る春季労使交渉の賃上げなどの雇用・所得環境の改善や、令和6年度補正予算及び令和7年度予算の執行による効果が景気の緩やかな回復を支えることが期待されますが、先ほども申し上げたように、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクには留意が必要であるというふうに考えております。
また、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響等も我が国の景気を下押しするリスクになっております。
加えて、会議で私から説明した米国の関税措置や輸出企業収益の動向について併せて申し上げたいと思います。
まず、7月23日に米国との交渉の結果、対米輸出の4割弱を占め、我が国の基幹産業である自動車及び自動車部品については、本年4月以降課されておりました25%の追加関税率を半減し、既存の税率を含め15%とすること、それから、対米輸出の4割強の品目に課される相互関税について25%まで引き上げることとされていた税率を、対米貿易黒字を抱える国の中でこれまでで最も低い上限15%にとどめることについて合意に至ったほか、半導体や医薬品といった経済安全保障上重要な物資について仮に将来関税が課される際も、我が国が劣後する扱いとはならないとの確約、いわゆる最恵国待遇というものを得たところでございます。
次に、これまでの関税措置による輸出数量への影響を見ますと、米国向け自動車・同部品を含めて、現時点において特段の変調は見られておりません。
一方、米国向け輸出金額については、自動車を中心に前年比マイナス11%程度の減少となっており、その背景には米国向けの自動車輸出価格が、追加関税が発動された4月以降大きく下落したことが影響しているというふうに考えられます。こうしたことから、本年6月時点での自動車産業の利益計画は、昨年に比べ弱めに下方修正されているところでございます。
引き続き、米国の関税措置が直接的・間接的に我が国経済に及ぼす影響については、緊張感を持って注視する必要がございます。また、今般の日米間の合意を踏まえ、米国関税措置を受けた緊急対応パッケージに基づき、影響を受ける事業者に対する資金繰り支援などに万全を期してまいります。
このほか会議の詳細については、後ほど事務方から説明させます。
2.質疑応答
- (問)今回の月例報告の総括判断では、「景気は、米国の通商政策等による影響が一部にみられるものの、緩やかに回復している」との表現に変わっております。前回の判断時にあった「不透明感が見られる」という表現も、米国との完全交渉の進展もあってなくなりました。冒頭、ご発言がありましたが、関税交渉を担った大臣として、今回の判断をどう受け止めていらっしゃるか、考えをお聞かせください。
- (答)冒頭申し上げたように、今月は「景気は、米国の通商政策等による影響が一部にみられるものの、緩やかに回復している」と先月から表現を変更しております。
具体的には、米国の通商政策が我が国に与えていた不透明感が、日本時間7月23日の米国との合意によってかなり解消されていることを踏まえ、「不透明感が見られる」という文言を削除したところでございます。
しかしながら、15%の自動車関税など、なお残る関税の経済に与える影響には十分注意していく必要がございます。また、既に発動された関税措置を受けて、4月以降の自動車の対米輸出価格が大きく下落し、企業収益の下押し要因となっていることなどを踏まえ、「一部に影響がみられる」としたところでございます。
このように、米国の通商政策に関する不透明感はかなり解消されたというふうに捉えてはおりますが、今後については我が国製品に対してなお残る関税措置による対米輸出を通じた直接的な影響に加え、世界貿易の縮小や世界経済の下押しを通じた間接的な影響による景気の下振れリスクに留意する必要があることに変わりはございません。
引き続き、米国の関税措置が我が国及び世界経済に与える影響について、国内外の統計等を幅広く分析し、緊張感を持って注視してまいりたいというふうに考えております。
また、先般の総理のご指示を踏まえ、特別相談窓口、全国で1,000か所を超えるものだと思いますが、というか約1,000か所ですかね。丁寧な対応や中小企業・小規模事業者の方々の資金繰り等への支援により、我が国産業や雇用に与える影響の緩和に万全を期してまいります。 - (問)嵐の海から視界が見えてきたという感じだと思うのですが、その大臣として伺いたいのは、いわゆる様々な話題を呼んでいる需給ギャップです。これを政府はマイナスと言っているけれども、やはりプラスになっているのではないかと。もうデフレ脱却宣言ができるような状況になっているのではないかと。むしろ問題なのは、数日前の国交省がやっているような供給制約というのでしょうか、まさにビルも再開発もできないと。だから、その辺を含めまして、大臣としてはこの需給ギャップの問題はもうプラスになっているのではないかと見ておられるのか、やはりこれまでの統計の指標の取り方では、やはりその辺を見誤るのではないかという意見について率直に伺いたいんですけれども。
- (答)GDPギャップについては、ご案内のとおり、前提となるデータや推計方法によって結果が大きく異なるために、数値については幅を持って見る必要があるというふうに考えております。
その上で、内閣府や日本銀行、国際機関による直近年の推計値について申し上げれば、これもきっとご案内だと思いますが、マイナス1%からゼロ近傍の範囲ということになっております。
デフレ脱却の判断に当たっては、再びデフレに後戻りしないという状況を把握するため、物価の基調や背景を総合的に考慮して慎重に判断する必要がございます。
具体的には、これも繰り返し申し上げていることですけれども、物価の基調を表す消費者物価やGDPデフレーター、そして、物価の背景のうち、マクロ的な物価変動要因を表すGDPギャップやユニット・レーバー・コスト(単位労働コスト)に限らず、賃金上昇とか企業の価格転嫁の動向、それから物価上昇の広がり、予想物価上昇率など、様々な指標を総合的に勘案して慎重に判断することとしております。
経済対策については、これまでその時々の日本経済の状況や取り巻く環境に応じて効果的な施策を積み上げてきたものでありまして、規模ありきではない議論をしっかりしてきたつもりです。
いずれにしても、これまでも物価高や米国の関税措置に対してあらゆる政策を総動員してきたところでございまして、引き続き、経済・物価動向に応じた機動的な政策対応を行ってまいりたいというふうに考えてございます。 - (問)所管外かもしれませんが、供給制約、これがやはり一つのマクロ政策の中で大きなウエートを占めるようになると思うんですけれども、この問題について大臣としましては、再開発などほとんど大体入札が困難な状況が3年ぐらいたたないとできないとか、その供給制約の問題を含めてそこはどうお考えになるのか、やはり伺いたいのですけれども。
- (答)供給制約については全くご指摘のとおりで、これからの20年間で日本の生産年齢人口は2割以上、約1,500万人減ると。だから、今、人手不足が大変深刻だと言っていますけれども、全く序の口で、ひどくなるのはこれからです。多分その人手不足が供給制約の一番大きなものになってくると思いますし、そこをクリアするために、いつも申し上げていることだと思いますが、高齢者の方、女性、あるいは障害者の方に就業率を上げて働いていただくとか、あるいは特定技能制度をつくり外国人の方に働いていただくとか、全力でやっていますが、端的に言って数字的には焼け石に水だと思うのです。1,500万人といったら、東京都の人口をはるかに上回る人たちが、これから我々の職場から消えるということなので、やはりそこの答えは、総理もいつもおっしゃっていますけれども、デジタルとか省力化投資を徹底的にやって、何とかピンチをチャンスに変えていく。
その中で、今と同じ仕事をより少ない人数でできれば、残った方にはばんと賃金・給料を上げることができますし、加えて、これだけ人手不足だと、その会社を去った方も同じ業種で同じ仕事をしながら前より給料がいいような職場を見つけやすいということで、とにかく失業率が上がることを心配せずに、全力で生産性向上に努めると。世界の中でただ日本だけがこれだけの人手不足・人口減少ですから、思いきりできるということなので、そこを頑張ってやることで物価上昇に負けない賃上げ、あるいは所得の向上というものをできるだけ早く実現していきたいという基本的な考え方を持っております。 - (問)防災庁について伺いたいです。参院選の結果を受けて、防災庁設置に向けた議論や検討に何らかの影響があるとお考えでしょうか。来年度を目指しているということで、防災庁設置に向けてどう取り組むのか、担当大臣としての思いを改めてお聞きしたいです。
- (答)参議院選挙についていえば、言うまでもなく、政府与党について大変厳しい国民の審判が下ったということになります。我々からすれば選挙の結果というのは、どんな結果であれ必ず真摯に受け止めて、少しでも我々の政治活動をブラッシュアップしていく糧にしなければいけないということで、重く受け止めてはおりますが、ただ、この防災庁の設置についていえば、ご案内のとおり、30年以内に8割で来るといわれる南海トラフの地震、犠牲者の数が29万8,000人といった、東日本大震災の15倍というようなものが控えている我が国において、今までの内閣府防災の73億円、110人という定員で本当に対応できるのかと。今までは数百人犠牲者が出る規模の災害でパンクしかけて、事前防災が中断になっているわけですから、それでこれから東日本大震災の15倍の規模の犠牲者が出る災害が来るというのに太刀打ちできると思うほうがおかしいわけで、その辺はやはり知事会に10年以上連続して専任の大臣を置く防災省をつくってくれと言われたのに、ある意味、政府与党はそれにお応えせずにきているわけです。
ようやくそれにお応えするというのが石破政権の目玉政策の一つですので、これについては選挙の結果がどうあれ、国家国民の命を守り、人命・人権最優先の防災立国を成し遂げるためにどうしても必要な政策でありますので、選挙の結果に関わりなく、しっかり進める必要がどうしてもあるということを思うところでございます。
防災庁については、先月開催した防災立国推進閣僚会議において示した基本的な方向性に沿って、令和8年度中の設置を目指し、引き続き全力傾注で準備を進めてまいりたいというふうに思っております。 - (問)関連して地方拠点について、石破総理は選挙期間中の演説で、仙台市への設置の考えですとか、あるいは、能登のほうで演説されたときには日本海側のほうに置く検討をする旨の発言をされています。現時点で地方拠点の設置についてどういう検討状況なのか、仙台とか日本海側に置くということになっているのかというそのあたりも含め、事実関係と検討状況について教えてください。
- (答)基本的にこの辺はあまり申し上げないことにしていますが、選挙とはいえ総理がおっしゃったということを踏まえて若干申し上げれば、選挙だからこうということではなくて、総理は当然ながらも考え抜いた上で、私と完全に同じ頭でものをおっしゃっています。
その一つは、地震学者の方たちに聞くと、これから来る巨大自然災害、よくいわれるのは首都直下地震と南海トラフの地震だが、地震学者の皆様からすると、恐らく日本海溝・千島海溝周辺型地震のほうが先に来るのではないかと。これが冬に来れば流氷が津波に乗って我が同胞の国民を襲うという、大変恐ろしい被害を想定できるような地震でありまして、そういうものも例えば念頭に置いたときに、仙台かどうかはともかく、東北に何か要るのではないかということは、いつも総理とお話ししているところになります。
また一方、能登で日本海側ということをおっしゃったことについてですけれども、これも我々がいつも想定している最大級のものが南海トラフです。これはご案内のとおり、太平洋ベルト地帯といわれる、関東から日向灘のほうまで軒並み太平洋側が大変な打撃を受けるというものでありますので、日本海側に拠点が要るよねというのも、私と総理の間でいつもしている話であります。
というようなことを踏まえて選挙の際におっしゃっているわけで、これについてはそういうことです。我々はいろいろなことを考えながら議論し、しかも10年以上、知事会のご要望に沿うことができなかった防災庁の設置をこの際やろうとする中で、いろいろな思いが各自治体からあふれ出てきていますので、全部しっかり受け止めて、ベストの防災をやるために必要な体制を考え抜いてしっかりつくっていきたいと思っております。 - (問)自民党の党内情勢について伺います。昨日行われた両院議員懇談会では、石破総理の辞任や総裁選の前倒しなどを求める意見が出ましたが、今の党内の情勢をどう見ているかお願いします。
また、石破総理は、日米合意の着実な実施などに向けて続投する考えを示していますが、こうした点、こうした考え方について、大臣はどのようにご認識されているかもお願いします。 - (答)まず、昨日の両院議員懇談会は、私は党所属議員として出席したものでありまして、閣僚の立場としてのコメントは差し控えます。
その上で、石破総理は、もう報道されていることと思いますけれども、両院議員懇談会の特に冒頭で、先般の参議院選挙の結果を踏まえ、国民の皆様の多様なご意見に謙虚に真摯に耳を傾けたいということ、あるいは、日米の関税合意は、日米のみならず世界の貿易の在り方を律するものであり、その着実な実行に万全を期したいとの趣旨を述べられたものと承知しております。
石破内閣の一員として、国民からの声を真摯に受け止めながら、引き続き、与えられた職務に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
また、お尋ねの石破総理の出処進退についてですが、私は、政治家の出処進退は、総理に限らず本人が判断すべきものであって、そういうことを尋ねるのはお門違いだということをいつも言わせていただいておりますが、その上で、先ほどのとおりです。総理は両院議員懇談会でそういうことをおっしゃったので、私としてはその総理のご発言も頂きながら、しっかりそれを私の中に取り込んで、石破内閣の一員として、国民からの声を真摯に受けとめながら、引き続き、与えられた職責を全力で果たしてまいりたいと考えております。 - (問)日米関税合意の内容についてお伺いできればと思います。対米投資5,500億ドルの内訳についてですけれども、週末のNHKの番組で大臣は、出資は2%程度になるとの見通しをお話しされていました。この認識は米側と共有されているのかお伺いしたいです。
併せて、米側が投資の利益配分が9対1になると主張していることについて、それに伴って失ったのが数百億円というふうにも言及されていました。この数字はどのように算出されたものなのかお伺いできればと思います。 - (答)まず、私どもは5月の半ばですかね、総理からとにかく「関税より投資」と。この一本道を走り切れという強力なご指示でしたので、それを受けて、big and bold、大きくて大胆な試みというのをアメリカに提案したのは、当初GIP(Golden Industrial Partnership)と呼んでいました。それが最終的には大分形を変えたり、規模が大きくなったりしながら、「Japan invest America initiative」という大変分かりやすい名前になった。米側の資料にそれが書いてありました。
それについて全体のどの程度が出資案件になるかということについて私が申し上げたことは、直近2023年度末のJBIC(国際協力銀行)の出資残高は出融資残高の1.9%となっておりまして、私の発言はこれまでのその実績、端的に言えば相場観を念頭に置いたものであります。
ただ、これについては米側も非常に一緒にやる気になってくれておられて、貢献とかもすごく前向きにされるでしょうし、あと一番大事なところは、大統領がリーダーシップを取られますけれども、最終的にこれは民間がやる事業ですので、今後組成される案件次第であり、予断を持って申し上げることは困難であると。要するに、確定的にこうなるということは申し上げられるものではないと。あくまで申し上げたのは相場観であります。
そして、おっしゃったのは、それとあと利益配分ですか。 - (問)利益配分について。
- (答)分かりました。それで、今申し上げたとおりなで、「Japan invest America initiative」で利益配分の変更、パネルには5対5と書いてあったのが、最終的にディールをしているうちに1対9になったという話でありますが、あくまでJBICとNEXI(日本貿易保険)の事業実績に照らし、相場観から80兆円の約3分の1がJBICの出融資になるのではないかと。そのうち2%が出資ではないかとすれば、その出資に対する収益は数百億円程度と想定され得るので、そういう相場観からいって、その利益配分を5対5から1対9に変更した場合には、収益の差分は数百億円程度になるということが想定されるということを申し上げたものであります。以上でお答えになっていますか。
だから、繰り返しになりますけれども、民間の決めることなので、最終的には大統領がこのプロジェクトをやろう、それに乗られた民間の方たちがこういう話し合いでいきたいと。いろいろな話があり得ると思うのです。そういうことも含めて決まっていくということであります。 - (問)米国の関税協議を巡って、米国とEUとが合意しました。EU側の説明として、航空機や半導体製造装置について関税をゼロ、半導体や医薬品の税率は15%という説明がなされていますが、日米合意の分野別関税が課されても日本は他国に劣後しないとしていた件に関して、こうした物品は当てはまるという認識でしょうか。大臣のご見解をお願いいたします。
- (答)もう一回言ってくれますか。EUのほうは何と書いてあると。
- (問)EU側の説明では、航空機や半導体製造装置の関税がゼロ、半導体や医薬品の税率が15%というような説明をEU側はしております。この点について、日米の合意では劣後をしないようにと約束されたということですが、この物品が当てはまるというふうに認識されているかどうか。
- (答)私自身が、EUが半導体と医薬品について米国と合意したという情報を得ていませんので、仮定のお話はしづらいと思います。
ただ、あえてその上で申し上げれば、半導体と医薬品について、第三国が米国と何らか合意に至った場合は、その中の最も有利なものが我々に適用されると。だから、逆にいえば、あくまで仮定ですけれども、その15に対してEU以外の国は100だ200だと言われれば、その15が我々に適用されると理解しますし、一方で、15より有利な条件を勝ち取る国が出てくれば、我が国はそちらに行くということだと思います。 - (問)関税のタスクフォースについて伺います。今日の閣議では、アメリカの関税措置を受けたタスクフォースについて、合意の進捗管理を行うことが決まりました。今後、この体制の増強も含めてどのように機能強化を進めていくか、お考えをお願いします。
- (答)まず、基本的なところをお話ししておくと、私自身は関税を取った取らないとかいろいろなことを、皆さんの関心はそれで日米のどちらが勝ったのだとか、分かります。ただ、そういう方に集中していますけれども、私が見ているのはちょっと別の景色でして、それは何かというと、日米が協力して、半導体、医薬品、あるいは造船とかもそうですし、重要鉱物とか、AI・量子とか、ありとあらゆる経済安全保障上重要な分野で、日米が極めて緊密な連携をして、そういうお互いの両国の国家の意思で、きちんと日米でサプライチェーンをつくり上げると。それができなくても、最低でも日米プラス同志国でつくり上げると。それがものすごく大きな意味を持っていて、それを本当にやり切れば、我が国経済についても大きなプラスの効果があるというのを期待し、そうなるといいなと思っているというのが私の見ている景色なので、それを前提として皆様にお話ししておきますが、その上で、だからこそ、お互い進捗管理をして、米側の期待も裏切らないということは非常に重要でして、特別なパートナーとして日米両国があるということをきちんと維持しなければいけないのです。信頼関係もありますし、それからいろいろな意味で、各レベルでしっかり維持していく必要があるので、それをちゃんとやると。
その先に、石破総理がおっしゃっている2040年GDP1,000兆円という経済に向かう日本経済の成長のスピードが大幅に加速されて、コストカット経済から30年ぶりに転換し、失われた成長機会を完全に取り戻して余りあるぐらい経済成長するというのが、私と少なくとも協議した信頼関係のある米側の閣僚が見ている景色なので、それに向かって力を合わせて進むということです。
そういう意味で、おっしゃったとおりでタスクフォースの機能強化をしますけれども、私は今みたいな景色を見ている中で思いをすごく込めていますので、何かしら相手が約束を破りそうだからちゃんと言うことを聞かせよう的なノリで私は見ていないのです。そこは申し上げておきたいと思います。
その上で申し上げれば、今般の日米間の合意を受けて7月25日に開催した第6回米国の関税措置に関する総合対策本部において、石破総理から、今後は合意の内容を日米双方が着実に履行し、相互利益の促進につながる成果を早期に上げていくことが極めて重要ということなので、米国の関税措置に関する総合対策タスクフォースの機能を強化して、日米合意の履行状況の進捗を管理するようご指示があったところです。だから、これは当然、日本も取るべきものは取れよという総理のご指示であるんでしょうけれども、一方で、米国が期待しているものを極力裏切らずに、しっかり信頼関係が日を追えば追うほど構築できるように、こちらも約束したことはしっかりやれよという意味を含んでおります。
また、これを受けて、タスクフォースがこれまで担ってきた米国の関税措置に関する総合的な対応に関する方針の検討に、日米協議の合意の履行状況の的確な進捗管理というものを本日の閣議で追加しました。共同議長である官房長官と私の指揮の下、米国側の関税率の引下げを求めることを含めて、日米合意の履行状況の進捗を管理していくものであります。
なお、タスクフォースは所要の手続を経た上で、早期に開催する予定としております。 - (問)関税を巡る日米の交渉で、両政府による合意文書がないことについて先般、大臣はこうした文書をつくる考えはないとの認識を示されていましたけれども、改めてお考えをお聞かせください。
それと、共同文書がないと、5,500億ドルの枠組みをつくるといった米国側の発信を見て、不安に思う国民もいるのではないかなと思うんですが、どのように対応されていきますでしょうか。 - (答)まず、「Japan invest America initiative」です。これは全体のどの程度が出資案件になるかとか、今後組成される案件次第なので、なかなか予断を持って申し上げられませんけれども、一応一定の相場観を持っているということは先ほどご説明したとおりです。
合意文書については、まず、本年4月以降の米側との協議は、長年にわたる日米通商関係の歴史的経緯もある中で行われておりまして、結論に至ることは決して容易なものではない、私も再三、一筋縄ではいかないとか五里霧中とか言ってきたところです。
本年2月や6月の首脳会談や、一連の電話首脳会談における石破総理とトランプ大統領との間のやり取り、閣僚間の議論の積み重ねの上に、最終的には7月22日の私とトランプ大統領とのやり取りも踏まえ、両国の国益に資する合意ができたもので、ぎりぎりまで折衝を行って、大統領が合意を発表する本当に1時間ぐらい前までディールを続けていたということでありまして、共同文書は合意発表するときにできているというような事態にはなっておりません。
その上で、共同文書を作成するか否かは相手のあることでもあり、かつ、米国は我が国との合意以後も、多くの国と正に関税交渉を行っているといった諸事情を勘案する必要があります。ざくっと言ってしまえば、そういう外交交渉、あるいは通商、貿易、関税の交渉について、少なくとも今までのやり方と米国が大きく変えてきているということです。一度に例えば200か国を相手にして、一部は手紙、一部は協議なんていうことは私も聞いたことがありませんし、そういうやり方を変えてきている中で、その激流にきっちり乗っていくと。その中で我が国の国益を守るという臨機応変な判断が必要でありますので、そういうことで私自身は、少なくとも合意文書をつくるよりは大統領令を早く出してもらって、我が国の全く遊びのない、ピン留めする必要もないぐらい明確な15%という関税率を早く実現してほしいと。その引下げを最優先でやってほしいということを思っております。
いずれにせよ、今後重要なのは、日米双方が合意の着実な履行に努めることでありまして、特に米側の関税引下げに必要な大統領令の発出など、米側の国内措置になります。したがって、まずは米側に対し、こうした措置が速やかに取られるよう求めていくことが重要であり、既に米側への働きかけを行っております。今後とも我が国として米側としっかり意思疎通を続け、米側に必要な措置を取るように求めていきたいと思います。
その上で、関税がきちんと下げられた後に、なお合意文書が必要かというのは、その時点で改めて考えてみてもいいわけですけれども、私自身は本当にそれが必要なのかなというのは、今の時点で何か確定的に判断しているものではありません。少なくとも大統領令が発出されて、関税の引下げが実現するまでは、それが最優先で最も急ぐべき事項であると思っておりますので、そちらに集中してやりたいというのが私の考えていることでございます。
あえて申し上げれば、一般論ですけれども、国家間で政治的合意を行う際に、必ずしも共同文書が求められるわけではありません。外交なのに共同文書がない、そんなのあるのかとかいうことおっしゃっている方もおられるようですが、そういうのはやはり事例をよく把握した上でおっしゃったほうがいいなと思うわけであります。
実際、米国の関税措置に関する他国の合意の例を見ても、ベトナムやフィリピン、また、今般発表されたEUと米国との間では、これまで共同文書は発表されていないと承知しています。繰り返しになりますが、覇権国、米国がそういう外交交渉や国際ルール、交渉の進め方を大きく変えようとしているときに、その激流に乗り遅れずしっかり国益を追求することが大事なのであって、そういうときのあるメルクマールは、過去のルールが今と違ったときに「こうしていたから」ではなくて、他の国と比べて我が国が劣後していないかというあたりのほうがよっぽど大事かなというのが率直な私の考えでございます。 - (問)NHKの番組での発言についてもう一点だけお伺いしたいのですけれども、関税を引き下げたことによって回避した損失が10兆円とお話しされていましたが、トランプ政権がこの先3年半でという計算なのかなと思うのですけれども、算出方法についてお伺いできればうれしいです。
- (答)日米で合意に至る前に日本側に示されていた相互関税及び自動車・自動車部品関税の税率が、今回の合意を受けて10%引き下げられたということになります。昨年の貿易実績などを基に、向こう3年半程度、だから、トランプ大統領の在任期間中について、一定の仮定の下で試算を行った結果、回避できた関税による損失は丸めて10兆円くらいかなということを申し上げたものでございます。
(以上)