赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年7月8日
(令和7年7月8日(火) 14:48~15:34 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
大変お待たせしましたが、ラトニック商務長官と電話で協議したり、その結果を総理や官房長官にご報告を申し上げていたので、お待たせすることになりました。その点についてまず申し訳なかったと思っております。その上で、米国政府より、我が国からの分野別関税の対象品目以外の全ての製品に対して25%の関税を課し、同時にその関税は、現地時間8月1日から課す旨の書簡を受領したことを踏まえ、石破総理を本部長とし、官房長官と私を副本部長とする米国の関税措置に関する総合対策本部の第5回会合を開催いたしました。
本日の本部では、私から米国の関税措置に関する日米協議の状況について、また、岩屋外務大臣から米国の関税措置に関する主要国の動向について、そして、武藤経済産業大臣から米国関税の影響について、それぞれご報告いたしました。
米国との間では、可能な限り早期の合意の実現を目指しつつ、同時に我が国の国益を守るとの一貫した方針の下、6月の日米首脳会談をはじめとする石破総理とトランプ大統領の間の直接のやり取り、それから私の7回にわたる訪米及び閣僚級協議等を通じ、真摯かつ誠実な協議を精力的に続けてまいりました。
しかしながら、現時点で日米双方が折り合えない点が残っており、残念ながら、これまでパッケージとしての合意に至っていないということについてはご案内のとおりです。これは日本政府として安易な妥協を避け、求めるべきは求め、守るべきは守るべく厳しい協議を続けてきたからということでございます。
同時に、米側との度重なる協議を経て、私自身としては日米間には信頼関係が構築されていると考えており、議論には進展も見られるところです。
その結果、このたびの書簡による税率は、トランプ大統領が最近発信された30%や35%ではなく、事実上、据え置きといっていいものであり、かつ、協議の期限を延長するものです。米側からも、日本側の対応次第では書簡の内容を見直し得るとして、新たな8月1日の期限に向けて日本側との協議を速やかに進めていきたい旨の提案を受けております。
先ほども申し上げましたが、早速、本日12時45分から約40分間、ラトニック商務長官と再び電話協議を行い、日米間の協議を精力的に継続していくことで一致しましたし、また、議論については一定の進展を見たところであります。
念のためというか、改めて申し上げるまでもなく、12時45分から約40分間ということは、電話が終わった時点で現地時間では日付が変わって0時半という状態ですから、ラトニック商務長官にはそれだけ誠実に日本と協議していただいているということで、感謝の気持ちを私自身は持っております。
今般、米国政府が既に課している追加関税に加え、税率の引上げを発表したことは誠に遺憾であります。同時に、これまでの協議により期限が延長されたところ、引き続き日米間の協議を継続し、国益を守りつつ、日米双方の利益となるような合意の可能性を精力的に探ってまいります。
なお、本日の本部の詳細については、後ほど事務方から説明させますので、その際にお尋ねください。
2.質疑応答
- (問)米国との関税交渉について、本日、トランプ大統領が日本からの輸入品に8月1日から25%との書簡を公表されましたけれども、改めてこちらに対してのお受け止めと、あと、期限が当初予定されていた7月9日から8月1日までに延びた形となりましたけれども、改めて今後どういった方針で交渉に臨まれるかお伺いできればと思います。
- (答)冒頭述べたとおり、米国時間7日、米国政府より我が国からの分野別関税の対象品目以外の全ての製品に対して25%の関税を課し、同時に、その関税は8月1日から課す旨の書簡を受領いたしました。
今般、米国政府が既に課している追加関税に加え税率の引上げを発表したことは、誠に遺憾であるということは申し上げざるを得ません。
同時に、これまでの協議により期限が延長されたところ、引き続き日米間の協議を継続し、国益を守りつつ、日米双方の利益となるような合意の可能性を精力的に探ってまいりたいというふうに考えております。 - (問)米国の関税についてですけれども、先ほど大臣から言及いただいたとおり、大臣はこれまで7回の訪米を重ねてこられて、ラトニック商務長官らと信頼関係も築かれてきました。また、首脳間で電話会談も対面の会談も行って、「関税より投資」ということを訴えてこられたと思うのですが、今回公表された関税率が韓国と同じ25%ということだったと思うのですね。この点は8月1日までまだ交渉の余地が残っているわけですけれども、韓国との同じ水準の方向感が示されたことの要因をどう見ておられるのか、また、そこの日米間の隔たりを埋めるために、足りないアメリカ側へのアプローチだとか何かピースみたいなものをどのようにお考えか、お伺いできますでしょうか。
- (答)ご質問になったのは韓国ですね。まず、前にも申し上げたことがあると思うんですけれども、バイの交渉でありますので、米国との関係、これは各国まちまちで、そもそもその結果、米国側の判断が異なっているのが自然と私は思っております。
韓国と同じになったのは何でというご質問ですけれども、私からすればたまたまであると。本来、事情が全く異なっていますので、それはそういうものだと。端的に申し上げて、米国と第三国の関係について、私はコメントする立場にはありません。 - (問)冒頭ご発言がありましたラトニック商務長官との電話会談について伺います。本日の電話会談では、まず、7日にトランプ大統領が発表されました25%への引上げについて、ラトニック商務長官から説明があったかと、あとは赤澤大臣からは、引き続き関税の撤廃の申入れなど、どういった内容を伝えられたか教えてください。
- (答)本日7月8日12時45分から40分間、ハワード・ラトニック米国商務長官と電話協議を行いました。米国の関税措置に関する書簡が我が国に届けられたことも踏まえ、改めて率直かつ突っ込んだ議論を行うとともに、日米間の協議を精力的に継続していくということで一致しました。引き続き、米側との間で日米双方の利益となるような合意の可能性を探っていきたいと思っております。
これについて1つ追加をしておけば、我々としては既に実施済みの一連の関税措置も含め、今回1%とはいえ税率が上がったり、いずれについても遺憾であるという旨はラトニック商務長官にもお伝えしているところであります。 - (問)電話協議は、今回のトランプ大統領の書簡を受けて、日本政府側から呼びかけられたのでしょうか。
- (答)電話協議については、お互いいろいろ確認したいことがあって、具体的な日にちは申し上げませんけれども、双方が必要と思うときに今から電話するぞと言ってやっておりまして、本日のものについていえば、トランプ大統領が書簡を出されたからということでやっているものではありません。これは引き続き議論が続いているわけで、合意の可能性を探りながら、真摯かつ誠実な協議を精力的に続けているということになります。
繰り返しになりますけれども、ありとあらゆるといいますか、大変広い分野、貿易の拡大とか、非関税措置とか、更に申し上げれば、経済安全保障上の重要分野での協力など、非常に広範にわたる合意を成立させようとしていますので、パッケージとしてどこについても異論がないというところまで合意とは言えないわけです。そういうものを全力で積み上げ続けているわけで、前に五里霧中ということを申し上げましたけれども、その際にも申し上げましたが、朝になってみたら霧がばっと晴れることもあれば、なお一部濃くなっていることもあり得ますし、その辺は全体が、全ての点について合意できそうだ、首脳に上げようということにならない限り、なかなか結論は見えてきませんし、それまでの間はご報告できるような状況にならないということでございます。 - (問)一部アメリカの報道で、自動車の数量規制的なものを日本側に要求しているとの報道があったのですけれども、事実関係をお話しできる範囲でお願いできますでしょうか。具体的には、5月の読売新聞のインタビューで、グラス駐日大使が低関税割当で、数量規制と関税の引下げのようなものもあり得るというようなお話をされていましたけれども、それに類する要求が来ているのかどうか、お話しできる範囲でお願いします。
- (答)ご指摘の報道については承知しておりますが、逐一コメントすることは差し控えたいと思います。米国の関税措置に関する日米協議の議論の内容については、つまびらかにすることは差し控えるということでありますし、いずれにせよ、我が国としては引き続き日米双方の利益となる合意の実現に向けて、真摯かつ誠実な協議を精力的に続けていくということでございます。
- (問)ベッセント財務長官がいくつかのテレビ番組で、日本の参院選を見なければいけないというような発言をされています。今回、8月1日まで協議が事実上延長となったということで、米側から参院選後に改めて協議したい旨など、こうした懸念は伝えられているのかどうかということと、あと8月1日を念頭に置いた協議を進めることを、今日のラトニック商務長官との会談で何か議論があったのかお伺いします。
- (答)それは1日以降ということですか。ごめんなさい、最後の質問がちょっとよく。
- (問)8月1日を期限とするかどうかということです。
- (答)まず一つ申し上げておきたいのは、これは国益をかけた交渉ですので、参院選が終わったらとかその前だからとか、そういう話は私も考えたことがありませんし、そういうものではないと思っています。譲れない国益については譲ることはないということで、そのポジションはずっと一貫しているということはご理解いただきたいと思います。
また、これも繰り返し申し上げていますけれども、期限を切って交渉するというのは、期限が近づいたらその期限を切っているほうが降りざるを得なくなるので、交渉人同士としてはそういう交渉はまずしません。いつが期限ということはお互いに絶対に言いませんし、納得できなければしないだけだと。これは米国も同じポジションですよね。要するに、例えば応じる気がないなら放っておけばその関税が続くだけだよということを言うわけです。お互いに節目ということはあるかもしれませんけれども、8月1日が期限だというような交渉の仕方はすることにならないということはご理解いただきたいと思います。 - (問)2点お伺いさせてください。まず1点目、念のための確認ですけれども、一部で自動車関税に50%の関税がかけられるのではないかという見方も出ていますが、これはそうではなくて、4月2日の時点で24%だった相互関税が、8月1日から25%になるという理解でよろしいでしょうか。
併せて、本日のラトニック商務長官との電話協議の前に、3日、5日とも電話協議をされていたと思います。その間に、今朝トランプ大統領から発表された書簡についてのやり取りがあったかどうか、その際に日本に対して新たな関税率をかけないよう赤澤大臣のほうから求められていたか、その場合、相手からの反応はどのようなものだったのかお伺いできればと思います。 - (答)最初の点については、本日発表された関税については、自動車・自動車部品を含め、分野別関税の対象品目には適用されないものと理解しています。これは理解だけでなくて、端的に申し上げれば、確認するまでもなかったですけれども、ラトニック商務長官に、日本では、一言でいうと、某野党の代表が自動車関税50%とか言っているんだよと言ったら、そんなことあるわけないよねということです。それは改めて確認するまでもなかったことですけれども、それははっきりと申し上げておきます。
逆にいえば、公党の代表が、本当に株式市場とかにも甚大な影響がありそうな発言をされることが、私どもも気をつけていますし、その辺よく考えていただきたいというのは、正直言って申し上げたいことというか、申し上げなくても分かっていてもらわなければ困りますけれども、そういうことだなというふうに思います。
もう一回繰り返しですけれども、本日発表された関税については、自動車・自動車部品を含め、分野別関税の対象品目には適用されないものです。自動車については今25%ですが、今回発表されたのは、その分野別関税とは異なる相互関税といわれるものですので、要するに、分野別、sectoral tariffsを除いた全ての部分にかかるものをreciprocal tariffsと呼んで全く別物ですので、そこはしっかりご理解いただいた上で、重複してかかるようなことはないというのは当然の前提の議論ですので、その点を混同して発信されることは、誰であってもフェイク情報になりますので、気をつけていただきたいというふうに思います。この点について改めて申し上げますが、米国政府関係者にも確認済みであるということは申し上げておきたいと思います。
それから、3日と5日にラトニック商務長官と電話協議を行ったということであります。その際に話した内容については交渉の中身ですので、内容については差し控えさせていただきたいと思います。いずれにしても、我が国としては引き続き、日米双方の利益となる合意の実現に向けて、真摯かつ誠実な協議を精力的に続けていきたいというふうに考えております。 - (問)トランプ大統領から新たな関税率を課す、その発表をするというのは前々から公表されていたことでして、それをかけないように求められていたかどうかということはお伺いできないでしょうか。
- (答)これは中身に関わるので差し控えたいのですが、一言で言って、日米間では私が東京にいようと訪米していようと、東京にいるか米国にいるかにかかわらず、様々なチャネルを通じて、電話とかそういうチャネルも通じて、真摯かつ誠実な協議を精力的に続けてきており、必要な協議は行っているということだけ申し上げておきたいと思います。
- (問)今回発表されたのは相互関税についてということですけれども、今後も8月1日に向けて、自動車などの分野別関税と相互関税をこれからも同じパッケージとして交渉を続けるのか、交渉パッケージの見直しをされるお考えはあるのかどうかについてお願いします。
- (答)我が国にとって自動車産業は基幹産業であって、自動車・自動車部品に25%の関税を課せられて、日々、我が国の企業が甚大な損失を被っているという状態は、端的にいって看過できるものではありません。そのような状態をできるだけ早く回避したいという思いで、ただ、守るべき国益もあるので、「ゆっくり急ぐ」という交渉を続けているところでありまして、そこについていえば、ご質問の何か新たなパッケージ、新たなものをテーブルに載せるかといえば、基本的に私は必要なものはもうテーブルに載っているというふうに理解しております。
当然ながら、自動車・自動車部品についても我々は協議しているという認識でありますし、それ以外についても申し上げたとおり、貿易の拡大でありますとか、非関税措置、更には経済安全保障上重要な分野における協力など、そういうものについて合意の可能性を全力で探るべく協議を続けるということだと理解しております。 - (問)確認ですけれども、そうすると相互関税と分野別関税の交渉を切り分けてやるというような考えは今のところないと。
- (答)はい。そこは大事なポイントの一つで、自動車産業は基幹産業でありますので、そこについての日米間の合意というものがなければ、パッケージとして全体に合意できるということはないというふうに私は理解しております。
- (問)ありがとうございます。もう一点、8月1日までの間に、赤澤大臣ご自身が再び訪米されて協議されるかどうかについて、日程の調整状況・考えなどをお願いします。
- (答)端的に申し上げれば、私も4週連続7回足を運んだりしていますので、少なくとも私自身としては、米国のカウンターパートとは信頼関係が構築できていると思っておりまして、必要に応じて、これは会って話したほうがいいと思えば訪米することもあり得ますし、お互いにこれは電話でいいよねと思えば電話協議をすればいいわけで、大事なところは、合意の可能性を探る上で何が有効かということをお互いに相談しながら、いろいろなチャネルでできる限りの交渉・協議というのを、真摯かつ誠実な協議を精力的に続けていくということだと思っています。
- (問)冒頭の赤澤大臣の発言で、もともと30から35%かけるかもしれないというふうにトランプ大統領が発言されていました。それが今回、従来の24%から1%増の25%とされた上で、一つの節目とされていた7月9日の期限が延長されたということで、一旦安心というふうに受け止めをされているのでしょうか。それとも、同時に発表された他国14か国ありますが、ほとんどが引き下げられている中で、精力的に協議を続けてきたにもかかわらず、日本が1%引き上げられたということに対しての遺憾の思いが強いか、率直な受け止めをお伺いできればうれしいです。
- (答)まず、他国への関税措置についてコメントすることは差し控えたいと思います。繰り返しますけれども、バイの関係なので、米国と各国の関係は本当にまちまちです。ということなので、米国の側で課そうと思う関税が、全部本当にきめ細かに差が出てきても何らおかしいことではないと思っていますので、むしろ何かどこの国と似通っているとか、この違いは何なんだという発想は全くないので、そこについてはコメントすることは差し控えたいというふうに思います。
その上で我々としては、いずれにしても、今後、米国政府が既に課している追加関税に加えて税率の引上げを発表されたことは、1%とはいえ、我が国としては当然ながら誠に遺憾であるということは申し上げておかなければなりません。引き続き、日米間の協議を継続し、国益を守りつつ、日米双方の利益となるような合意の可能性を精力的に探りたいと思います。
その上で、前後しましたけれども、ご質問についていうと、安心した面があるかといえば、それは全くありません。これはやはり両国の国益をかけたぎりぎりの交渉であって、そもそも一筋縄でいくわけはないということは認識しております。皆さんご案内のとおり、我々の交渉相手というのは、国家元首はトランプ大統領ですので、大変なタフな大統領であり、一筋縄でいくわけはないということです。
その上で、やはり真摯かつ誠実に協議を繰り返すことで、少しずつでも信頼関係をつくり、合意の可能性を探り、一致点を少しずつ増やしながら、フルのパッケージとして、これでいけそうだというものをできるだけ早くつくるのが交渉人としての私の任務・責務だと思っていますので、今全力でそれに取り組んでいるということに尽きると思います。 - (問)今朝の対策本部で、総理から、米国政府の動向や各国の対応を見極めるという指示があったかと思います。特に、各国の対応についてどういったものを念頭に置かれているのか、どういったことを注視していこうというお考えなのかお伺いします。例えば、トランプ大統領はBRICSに同調する国に追加で10%の関税を課すという発言もされていまして、こういったものも念頭にあるのかお伺いします。
- (答)基本的には、私自身、今申し上げたとおりで、バイの交渉というのは、米国とそれぞれの国の関係は本当にまちまちですので、何かしら他国を見ながら、日本国の交渉内容を考えるとかそういうものではないというふうには思っております。
ただ一方で、いろいろな国との交渉を見れば、具体的なことは申し上げませんけれども、米国のものの考え方とか、あるいはこういう合意の手段があるんだとか、そういうようなことは参考になることがあるかもしれないという意味で、参考にできるものはしっかり参考にしていきなさいという総理のご指示だろうというふうに理解しております。 - (問)米国の書簡は、交渉で日本側に更なる譲歩を求めるものだと受け止めておられるでしょうか。先ほど必要なものはテーブルに載っているとおっしゃられていましたけれども、農業分野を含め、新たな交渉材料の用意を検討されるのでしょうか。
- (答)これについては交渉事ですので、例えば我々が考えていないことも、相手側からこれはできないのと新たなものが出てくることはあり得ます。ただ、交渉の最初の頃、第1回、第2回の頃に皆さんと共有させていただいた交渉のお作法というものがありますので、今までテーブルに載っていないものを8回目の協議で出してくるかと。それはちょっとルール違反ではないの、まとめる気はあるのみたいな議論に当然なり得るので、その辺は注意しながら、こちらも何か出すときは気をつけますし、相手も交渉人として一定のルール・作法に基づいてやってくれているとは思います。
その上で申し上げれば、繰り返しになりますが、農は国の基と。私も農林族の端くれでありますし、農業生産者の皆さんが安心して再生産に臨める、そういう環境をつくることは政治の極めて重要な役割、政府与党の本当に重要な基本的責務だと思っていますので、繰り返し申し上げておきたいと思いますが、農業を犠牲にするような交渉をする気は毛頭ないということは申し上げておきたいと思います。 - (問)関連で、トランプ大統領は手紙の中で、「私たちの関係は相互主義には程遠いものだ」とおっしゃっていましたが、今までのいろいろなやり取りの中に、日本側が今まで提示した提案は、アメリカ側は達していないと言ったことがあるのかどうか。
- (答)何をしていない?
- (問)アメリカ側がそれは達していないというか。
- (答)達していない、どういう意味?
- (問)すいません。これからほかの物も提供すべきだと。
- (答)要するに、十分な量に達していないと。もうちょっと追加で提案しろという意味ですね。分かりました。
- (問)もう一点、日本側のスタンスとしては、今まで一連の関税の見直し、すなわち撤廃という文言を最近あまり言及されていないようですが、それについて変わるかどうか、確認させていただきたいと思います。
- (答)3つぐらい申し上げますが、1つは相互主義ではないでしたっけ、reciprocalではない、ですか、そういう文言があったと思いますが、それについて私がトランプ大統領のお考えはかなり明確だと思うのは、貿易赤字ですよね。要するに、米国から見て貿易赤字がある国というのは不公平なのだというのがトランプ大統領の基本的なものの考え方ですので、そのことを指しているのだろうなというふうにはまず理解いたします。
そして、その上で、これはまだ合意に達してはいませんので、我が国が提案しているもの、あるいは向こうが提案しているものに対する我が国の反応で、もうちょっとこうしてほしいというようなご要望は、米側から当然出てき得るものだとは思っています。
ただ、それが何かは具体的にご提案とかをいただかない限り分からないところがありますし、そういうものも含めて、引き続き、真摯かつ誠実な協議を精力的に続けて、合意の可能性を探るということです。
それから最後に、撤廃ということを言わなくなったということについては、いつも繰り返し同じお答えをしていますが、我々は引き続き合意の可能性を精力的に探っているということしか申し上げられません。 - (問)さっきおっしゃいましたトランプ大統領が求めているのは、つまり、貿易赤字の削減です。つまり、ゼロまで引き下げるということ。大臣としては、これが現実であるものかどうか、今の受け止めをお伺いできますでしょうか。
- (答)まず、そこは誤解のないようにしたいのは、大統領からの書簡の中に、reciprocalではない、という文言があったとおっしゃったので、それを受けて、そこについて大統領はこういうことを考えておられるのだと言ったので、それに尽きるものでは当然ないです。大統領がいろいろおっしゃっているのは、米国の産業が空洞化して、雇用がなくなって忘れ去られた人々がいる。そういう人々に対する思いであるとか、あるいは、例えば経済安全保障上重要な、あるいは安全保障上重要な分野の産業が空洞化していることについて、これは問題ではないかとか、いろいろな思いがあってやっておられることなので、貿易赤字の解消だけが目的ということではないと。私はそういう意味で言ったのではないということは理解いただきたいと思います。
その上で、ご質問は貿易赤字の解消ですか。これについては我々として、米国側の問題意識は理解しておりますし、当然ながら、我々が米国製品の輸入を増やせば、向こう側に貿易黒字が立って貿易赤字が減っていくという、ある意味、単純な関係にありますので、当然のことながら我々としては、いつも申し上げている貿易の拡大、非関税措置、経済安全保障上の重要分野での協力等と言っている貿易の拡大の中に、今後、米国から例えばこういう物は買い増せそうですみたいな話というのは当然含まれてくるということだと思いますということを申し上げておきたいと思います。 - (問)経済財政ですけれども、昨日発表された景気動向指数で、機械的な判断で、かつ微妙な数値ではありましたが、一応「悪化」ということで、景気後退の可能性が高いということを示しているという判断になりました。
先行き、トランプ関税の問題の影響もある中で、足元でこういう数値が出ていることについてどのように評価されているのか、あるいは、なにがしか対応が必要なのか、景気後退の可能性ということについて大臣はどうお考えなのかということをご説明ください。 - (答)5月の景気動向指数、CI一致指数についてのお尋ねと思いますが、前月からマイナス0.1ポイントの下降となりました。2か月ぶりの下降です。この点はご指摘のとおりでございます。
景気動向指数の基調判断については、政府としての景気判断を示すものではないと。あらかじめ決められた形式的・定量的な基準に機械的に当てはめてお示しするものであって、ただその結果が悪化となっていることはご指摘のとおりであります。
その上で、5月の景気動向指数・CI一致指数は、5月の情報に基づき推計が行われておりますが、6月の情報としては、7月1日公表の日銀短観では、全規模の全産業において景況感は改善を示しているということが例えばあります。また、消費動向調査における消費者マインドは、持ち直しに向けた動きが見られていますということもあるので、いずれにせよ、政府としての景気判断は、景気動向指数だけではなくて、各種経済統計やビッグデータを含む様々な指標の動向、更にはその背景にある経済環境や企業の景況感などを総合的に勘案して、月例経済報告においてお示ししているところです。
政府としての景気判断は、この景気動向指数・CI一致指数ということではなくて、月例経済報告でお示しするということになります。7月の月例経済報告に向けて、景気動向の分析をしっかり進めてまいりたいと考えております。 - (問)今の景気動向指数の関連で、まだ米国の関税措置の景気への影響というのはつかみ切れていないところかと思いますが、今後の国内景気の先行きについて、大臣はどのように見通していらっしゃるかというのと、あと、「政府として緊急パッケージも既に用意し」とありますが、更に一段と踏み込んだ対策が必要と考えていらっしゃるか、お願いします。
あともう一点、トランプ大統領から25%の相互関税の発表がありましたけれども、赤澤大臣はこの新しい税率をいつの時点でご存知になったのか、普段から緊密に連携されているかと思うので、事前にお話みたいなものはあったのかというのも教えてください。 - (答)景気の先行きに関しては、6月11日公表だったと思いますが、6月の月例経済報告でもお示ししたとおり、33年ぶりの伸びとなった昨年を更に上回る春闘の賃上げによる雇用所得環境の改善や、令和6年度補正予算や令和7年度予算執行による効果が景気の緩やかな回復を支えることが期待される一方で、米国の関税措置が直接的・間接的に我が国の景気を下振れさせるリスクが高まっておりまして、その影響には十分留意する必要があると考えております。
米国の関税措置による足元の経済の影響については、現時点では財の輸出量や製造業の生産、雇用といった多くのマクロ経済統計において、特段の変調が見られているわけではありません。米国向けの自動車の輸出価格が大きく低下しており、自動車製造業における企業収益の下押し要因となっている点には十分留意が必要だと思っております。
引き続き、米国の関税措置が我が国経済及び世界経済に与える影響について、国内外の統計等を幅広く分析し、緊張感を持って注視していく必要があると思いますし、既にご指摘のあった総合的なパッケージをお示ししています。資金繰りなどの支援も含めて、しっかりパッケージの中身を実施していく。それとあわせて、経済状況については不断にしっかりと注視していくということで対応してまいりたいと思っております。
また、25%の話ですね。これについて日米間では様々なチャネルを通じて、真摯かつ誠実な協議を精力的に続けてきておりますが、詳細については申し上げることを差し控えたいということでお許しいただきたいと思います。 - (問)7回訪米されて、ずっとやられていた先生だから伺うのですけれども、結局、下積みというか、下から積み上げた、要するにボトムアップではなかなかまとまらないと。今回も1%上になってしまうような平行線以上の結果になったわけですけれども、やはりこれは向こうもミスタープライムミニスターで来ているわけですから、当然石破さんが局面の打開に動いていただく。もうそういう局面になっているのではないかと。ここで今更また現場に下ろして下から積み上げろというふうには、普通のビジネスの常識でも局面を開くのは石破さんだと私は思うし、国民もそう思うのですが、7回向こうの担当をされたあれで、そこはどうお考えになっているのかですよね。これは石破さんに対する書簡なんですよ。そこはどういうふうにやっていくのか、僕は国民が知りたいと思うので、どのようなお話になっているのか伺いたい。
- (答)私は、おっしゃる点も国民の皆様のお気持ちとしては理解できる面はありつつも、やはりトランプ大統領がどういう大統領かを考えていただきたいのです。名うてのビジネスマンであり、数字に強くて、これをやったら米国の貿易赤字はどれだけ減るんだと。これをやったらどれだけ貿易黒字が増えるんだと。米国の貿易赤字はゼロになるのかと。こういう発想でものを見ておられる大統領なので、首脳が足を運んで、えいやで短時間協議したことで何か局面が打開するかといえば、私は必ずしもそういう安易なものではないというふうに思っています。
こちら側がいろいろな分野で積み上げるありとあらゆる提案とか、向こう側の提案をこちらがどう受けるかも含めて、貿易赤字が685億ドルという具体的な数字があるわけで、一体これをやることでどれぐらい減るのだ、みたいなことに当然なっていくわけで、そういう議論をする中で、そこのところについて我々が両首脳の合意を求められると思うぐらい、先ほど申し上げた貿易の拡大もありますし、非関税措置もありますし、それから、経済安全保障上、重要な分野における協力などがあるわけですけれども、そのありとあらゆる分野についてしっかり事務的に詰めて、その結果、両首脳が納得するような合意、フルのパッケージができるかということを見ていかなければいけないので、さあ、首脳が訪米したらそこで決着がつくというような安易なものではないというふうに私は思っていますし、逆にいえば、それだからこそ、名うてのビジネスマンであり、経済的に大成功を収めておられる数字に強い大統領を相手にするという交渉の難しい面がそこにはあるのではないかというふうに考えております。 - (問)あと、貿易交渉の中で、SNSで出すような形でこういうものをやられてしまうこと自体、これは野党側の見方からいったら、こびへつらったらひっぱたかれてしまったみたいな。正直言って。これは先生がという意味ではないですよ、日本国がです。そういう気持ちで私はこれを読みました。それぐらい屈辱的なものも感じるんですけれども、やはりこういうやり方というのはおかしいのではないかと。現場に7回も行かれて、その辺を何かすごく感じるものがあるんですけれども、どう感じになるか伺いたい。
- (答)せっかくのご質問ですが、私自身は両首脳に上げられるような、日米双方の利益になる、そして、お互い国益を守りながら合意できる、そういうフルのパッケージをつくることに全力を挙げておりまして、何か書簡をもらったことでこういう気持ちにならないかとか、全くそういうことを考える立場にありませんし、お答えできるものではありません。私はそういうものとは全く切り離して、ベストな合意ができるように全力を尽くしているということが申し上げられることでございます。
- (問)今後の関税の交渉方針について伺います。赤澤大臣はこれまで、7月9日相互関税の一時停止の期限について、交渉の期限ではないけれども、それを節目として交渉に当たると述べられてきました。今回の延長を踏まえまして、今後この8月1日についてどう位置づけて交渉に臨まれるかお願いします。
- (答)まず、7月9日が節目であるということはそのとおりなのですが、その点で申し上げておきたいことはいくつかありますけれども、我が国が国益を決して譲ることがない交渉をしているということで、厳しい交渉の中で、現時点に至るまで合意に至っていないということです。
ただ、そういった中で、私自身は日米間に一定の信頼関係は構築されている、真摯かつ誠実な協議をしているとお互いに認め合っているということで、繰り返し申し上げているように、30%、35%という最近の大統領の発信はありながら、事実上据え置きといっていい税率で期限が延長されたということも大きなポイントだと思っております。
したがって、約3週間だと思いますが、その期限を交渉人としてフルに使って、両首脳に上げられるようなフルのパッケージをつくり上げるということに全精力を傾けていきたいというふうに思っている次第であります。 - (問)2点伺います。1点目ですが、今回の新しい関税率の発表に先立って、先日からトランプ大統領がコメや自動車貿易に関する不満を、SNSであったり取材対応であったりでたびたび表明しています。こういった不満は、発言の内容は異なるものの、4月の閣僚級交渉が本格化する前にも、その前後も同様の発言というのは、同様の不満の表明というのはあったかと思うんですが、4月から今3か月間交渉をされてきて、日本がずっと米国経済であったりとか、貿易拡大の新たな提案とかというのをしてきた中だと思うのですけれども、こういった日本が説明してきたことに対するトランプ大統領の理解が進んでいない懸念というのはありますでしょうか。
それから、2点目、これは単に事実確認ですけれども、昨日のSNSへの日本への書簡の公開と、それから日本に書簡が着いたタイミングというのは、前後関係というのはどういう順番だったのでしょうか。 - (答)まず、申し訳ないですが、先ほどのこういうやり方についてどう思うかとかおっしゃったことも全部含めて、私自身は米側の政府関係者がされる発信についてコメントすることは差し控えるという立場であります。
その上で、今般の書簡についてどういう時間関係だったかというと、私の理解するところは、まず、トランプ大統領のTruth Socialでの発信があって、その後、現地時間の7月7日、時間は申し上げませんが、在米国日本大使館を通じて書簡自体を受領したという時間関係だというふうに思っております。Truth Socialでトランプ大統領が書簡を写されてから、その後、大使館に届いたということになります。
(以上)