赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年6月11日
(令和7年6月11日(水) 17:43~18:06 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
「月例経済報告等に関する関係閣僚会議」の概要を報告します。今月は「景気は、緩やかに回復しているが、米国の通商政策等による不透明感がみられる」と先月の判断を維持しています。米国の関税措置による影響については、マクロ的な経済統計では現時点で特段の変調は見られておりません。企業部門は、例えば設備投資は4四半期連続で増加しているなど、堅調さが維持されており、家計部門も消費者マインドは弱含んでいるものの、雇用・所得環境の改善の動きが続く中で、個人消費に持ち直しの動きがみられるなど、景気の緩やかな回復が続いているところです。
先行きについては、33年ぶりの伸びとなった昨年を更に上回る春季労使交渉の賃上げなど、雇用・所得環境の改善や、令和6年度補正予算及び令和7年度予算の執行による効果が景気の緩やかな回復を支えることが期待されますが、米国の通商政策による景気の下振れリスクが高まっており、十分留意する必要があります。また、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響等も、我が国の景気を下押しするリスクとなっています。
加えて、会議で私から説明した賃金を巡る状況と課題について申し上げます。
今年の春闘の賃上げ率は、6月5日に公表された第6回集計でも5.26%と33年ぶりの高い伸びとなった昨年を上回る勢いを維持しています。
都道府県別に見ますと、現在判明している41都道府県のうち、約3分の2に当たる27都府県で5%以上の賃上げ率となっています。名目賃金はおおむね2%以上の伸びが1年にわたり継続しています。フルタイム労働者の所定内給与は、2025年4月は前年比プラス2.7%と、1994年以降で過去最高水準の伸びとなっています。
一方、事業所規模別に見ると、中小事業所ではやや緩やかな伸びにとどまっています。年1%程度の実質賃金上昇をノルムとして定着させ、賃上げを起点とした成長型経済の実現を目指すためには、こうした中小企業の賃上げが不可欠だと考えています。引き続き、価格転嫁・取引適正化、生産性向上、事業承継・M&Aによる経営基盤強化、地域の人材育成と処遇改善にも取り組んでまいりたいと考えています。
また、看護師や介護士の賃金は、男女ともに正社員の平均賃金程度ないしは平均賃金を下回る水準となっています。賃金と物価の好循環の進展のためには、報酬改定等の処遇改善を通じた公的部門の雇用者の賃上げも極めて重要だと考えております。また、こうした方々の処遇改善は、若者や女性にも選ばれる地方をつくり出すという観点からも重要でございます。
このほか、会議の詳細については、後ほど事務方から説明させます。
2.質疑応答
- (問)日米の関税協議についてお伺いいたします。調整中とおっしゃられていた次回の日程やG7での首脳会談に向けて、どのラインまで内容を詰めておきたいなど、具体的な目標はありますでしょうか。G7へ同行されますかも含めてお伺いしたいです。
また、トヨタ自動車の中嶋副社長が自社のサイトにて、5月に豊田会長と石破総理の会談で、トヨタ自動車が自社の国内販売網を使って米国車を売るとの協力案を提示していたということを明らかにしているのですけれども、大臣の受け止めなどお伺いできればと思います。 - (答)米国時間6月5日から6日にかけて実施した第5回目の閣僚級協議において、米側との間ではG7サミットに際する日米首脳間の接点も見据えつつ、日米双方にとって利益となる合意を実現できるよう、日米間で精力的に調整を続けることを確認しております。
その上で、昨日も申し上げたとおり、状況は変わっていないので、次回の閣僚級協議の日程等の詳細については、現在調整中ということでございます。
また、私がG7サミットに同行するのかというご質問でありますが、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。
それから、ご指摘のトヨタ自動車の件ですけれども、報道は承知しております。ただ、米側と協議を行っている最中でもあり、個社の提案についてコメントすることは差し控えたいと思います。
その上で一般論として申し上げれば、我が国の自動車メーカーは、米国において約330万台の自動車を生産した上で、そのうち約30万台を米国外に輸出しております。言い換えれば、米国の貿易黒字を積み上げることに大変大きな貢献をしているということです。大体30万台輸出すれば、1.4兆円の貿易黒字が米側に積み上がるということになると思います。
また、我が国の自動車産業は、米国でこれまで累積600億ドル以上の投資を行い、足元では230万人の雇用を生んでいるなど、様々な面で米国経済に大きな貢献をしているというふうに考えております。この点については米側にこれまでも繰り返し説明しているところであり、今後とも最大限理解を得ていきたいと考えております。
引き続き、何が我が国の国益に最も資するのか、あらゆる選択肢の中で何が最も効果的なのかをよく考えながら、最優先かつ全力で取り組んでまいりたいと考えております。 - (問)月例経済報告に関して、冒頭でもありましたが、現状では米国の関税政策による国内経済への影響というのは、特段まだ出ていないというような判断かと思います。大臣は米国との関税交渉も担当されていて、交渉後などに日本企業への影響が出ている旨も発言されていますが、この違いというのでしょうか、受け止めの差異についてどのように考えればよいか、その受け止めをお願いいたします。
- (答)米国の関税措置による影響については、本日の月例経済報告の資料でもお示ししたように、財の輸出や製造業の生産、雇用といったマクロ的な経済統計においては、現時点では特段の変調は見られていないものの、企業収益の判断については「改善しているが、通商問題が及ぼす影響等に留意する必要がある」と表現変更を行ったところです。これは、直近で利用可能な1-3月期までの統計では収益の改善が続いているけれども、上場企業の決算資料などを見ると、米国の関税措置による影響や先行きの不透明感の高さから、2025年度の業績見通しを減益あるいは非開示とする企業も見られることを踏まえた表現変更です。まさに私が以前、4月30日ですか、「一日一日と我が国の企業が損を出している状況」ということが積み上がった結果の業績見通しについていえば、もうそういう影響が出てきていると。減益又は非開示ということになっております。
引き続き、企業収益への影響も含め、米国の関税措置が我が国経済及び世界経済に与える影響について国内外の統計等を幅広く分析し、緊張感を持って注視していきたいと考えております。
また、引き続き米国による一連の関税措置の見直しを強く求めるとともに、可能な限り早期に日米双方にとって利益になるような合意を実現できるよう取り組んでまいりたいと考えております。 - (問)今年の骨太方針について、今、与党との調整のプロセスが進んでいるかと思いますが、まだ確定していないことも多いと思いますけれども、そのプロセスを含めて、先般の原案以降の何か進展などありましたらご教示いただきたいのと、それに関連して、今回の骨太の議論で、当初は賃金セッションの3回目をやるとたしか大臣はおっしゃっていたと思いますが、結果的にそれは開かれず、5月の諮問会議は1回しか開かれなかったと。関税協議等でお忙しいこともあるかもしれませんが、先般の会見でも大臣がご参加されないことについての質問がありましたけれども、大臣の参加ということだけでなく、そういった日程等の要因、あるいは少数与党という状況の中で、諮問会議の議論がやや低調だったのではないかというふうにも見えるのですが、その点についてどうお考えかというのをお尋ねしたいと思います。
- (答)先日6日の経済財政諮問会議、これは私も残念ながら欠席いたしましたが、骨太方針の原案についての議論が行われたと承知しております。今年の骨太方針が、賃上げを起点とした成長型経済の実現に向けた取組の方向性や、財政健全化の取組を含め、持続可能で活力ある経済社会を構築する道筋を明確に示すものとなるよう与党とも調整を進め、閣議決定を目指してまいりたいと考えております。
そして、ご指摘のあった経済財政諮問会議が今年は低調ではないかとか、開催回数等、あるいは賃金向上に関する特別セッションといったことですけれども、年初から骨太方針の原案提出までに7回を開催しており、ほぼ例年どおり。正確に言うと、令和4年が7回で、令和5年と6年は8回だったようです。ということで、過去2年と比べると1回少ないのですが、3年前と比べれば同じ回数といったことで、ほぼ例年どおりというふうに考えていただいていいと思っています。
また、新たな試みとして、これまでマクロ経済セッションというものはやっていたのですが、それを振り替えるというか、私が現行憲法初の賃金向上担当大臣を拝命しておりますので、マクロ経済セッションとして開いていたようなセッションを、賃金向上に関する特別セッションに振り替えさせていただいて、外部有識者を招いて開催させていただいたところです。内容的には十分充実したものになったと思いますし、ご議論いただいて、その上に5年間で実質賃金が毎年1%ずつ増えることを日本社会の通念、ノルムとして定着させようとか、いろいろな方向性を打ち出せたところでありますし、それなりに自信を持って、やはり2020年代に最低賃金1,500円という高い目標は努力を続けようという結論を出せたところでありますので、この賃金向上に関する特別セッションも大いに意義があったというふうに考えているところでございます。 - (問)先ほどの月例の件で、マクロ的に変調ないと、将来見通し等では収益のお話があったと思いますけれども、現時点で雇用・所得環境の改善等が先行きについても見られるというようなことが書かれている中で、昨日、与党の自民党・公明党の幹事長らで、給付金について合意を見たというふうな報道がありますけれども、これはこういった政府の景気認識の下で、今後こういった給付金の必要性みたいなことは、政府としてはどのように検討していかれるのかということについて、現時点でおっしゃれることがあれば教えてください。
- (答)もちろん議院内閣制の下でありますので、政府与党一体としていろいろな政策を打ち出していく、そして実施していくということは基本にあるわけです。その上で、与党の側で、与党公明党と我が党で幹事長レベルでお話しして、いろいろな打ち出しがあったというのは報道で少なくとも承知しております。
ただ、その上で、政府としてはまた改めてそれについて与党からのお考えを伺った上で検討していくということで、現時点について何か決まったものがあるということではないというふうに理解しております。 - (問)骨太の方針の原案についてお伺いしたいのですけれども、国債の安定発行に関する文言がその中にあったかと思います。これについて大臣のご見解を伺います。ここ数週間で、超長期債の需要低下に伴って金利の急上昇が見られる場面もありました。大臣もこの市場動向を懸念されているのか、そして、その懸念が今回の骨太の方針の原案の文言に反映されているのかというのをまずお聞かせください。
そして、その中で、国内での保有の一層の促進というような文言もあったかと思うのですが、これについて何らかのターゲットですとか、実行手段というものが念頭にあるようであれば、そちらも併せてお聞かせいただければと思います。 - (答)国債についてのお尋ねであり、私も気をつけてお答えしないといけないのは、何か私が発言したことで金利等に影響が出ることも望みませんので、そういうものとして聞いていただきたいのですが、骨太方針2025については、閣議決定に向けて引き続き調整中でもあり、各論について現段階で詳細なコメントをすることは差し控えます。
その上で、国債金利については様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向等について政府として逐一コメントすることは差し控えますし、総論として申し上げれば、その動向に一つ一つ反応するような、そういう政策運営ということを考えていることはございません。
一般論として申し上げれば、仮に金利が急激に大きく上昇した場合、これは総理も国会で話されたことがあると思いますが、債務残高対GDP比が高い水準にある我が国において、利払い比が増加すれば政策的経費を圧迫するおそれがあるほか、住宅ローンや企業の運転資金借入れ等に係る利子負担が急激に増加するなど、経済財政等に悪影響を及ぼす可能性があるということは、一般論として申し上げられることだと思います。
ご指摘の記載、骨太についてはこうした観点も踏まえて、急激な金利上昇は経済財政等への影響を含めて望ましくないこと、まずは国債保有者の大半を占める国内での保有をこれまで以上に促進していくという、我々政府の姿勢をお示ししたものというふうに考えております。国内での国債保有を一層促進するための方策について、詳細は財務省にお尋ねいただければと思いますが、私が承知しているところでは、国債発行当局において、市場環境あるいは投資家ニーズに即した年限構成に基づく国債発行でありますとか、あるいは新商品の開発といった取組を進めているものというふうに承知しております。 - (問)関税交渉についてお尋ねします。米中による貿易協議が終了して、両国が先月の合意内容を実行に移すための枠組みで一致したということを明らかにしました。この米中協議の進展のお受け止めと、そして日米交渉への影響をお尋ねします。
- (答)ご指摘の米中間の協議が実施されたことは、もちろん報道等で承知しております。その上で、米国と第三国との協議及びその影響についてコメントすることは差し控えたいと思います。
その上で申し上げれば、世界第1位、第2位の経済大国である米中間の協議や合意の内容は、世界経済に大きな影響を及ぼすことが想定されます。我が国としては、米中間の関連の動向を引き続き高い関心を持って注視していくとともに、その影響を十分に精査しつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。 - (問)先ほどの質問に関連して、米中間の今日の合意は、この数週間にも米中の貿易交渉は関税のやり取りから離れて、互いにとって重要な鉱物とか製品などの輸出規制に焦点が移ってきた一方で、日米の関税交渉では、第2回の閣僚級協議以降、経済安全保障の議論が毎回必ず取り上げられていると承知していますけれども、こうした議論は中国への対応を念頭に置いて進められてきたのか、まず確認したいのが1点目でございます。
また、経済安全保障ですけれども、少なくともバイデン政権から日米両国の間、ひいては多国間のいろいろな場面で議題として取り上げてきましたが、日本はそもそもレアアースなどの産出国ではないため、米国の足元での供給面の制約とか、直接に解消するのは難しい面もあるかと思いますが、そうした中に経済安全保障やサプライチェーンの強靭化という観点から、米国とどのような形で具体的なそういった協力が可能とお考えか、協議の内容でお答えできないと思いますが、一般論でも結構ですので、見解をお願いします。 - (答)まず、米中の協議が我が国に最も影響があるのは、たまたま担当する米国の閣僚が同じ3人ですので、米中協議をやっている間は私が協議できないというのが一番大きいと思います。なかなか日程調整に苦労する事態となっておりまして、本当に米側の3閣僚はお忙しいのだなと、同業者として大変敬意も払うし、大変だなと思っていますし、そういう意味では早めにまた我が方の日程調整に応じてくれるとありがたいなということは思う次第であります。
その上で、1点目は中国を念頭に置いているかというお話でしたかね。これは日米の協議において、特定国を念頭に置いた議論というのは一切いたしておりません。我々はやはり日米で同盟国でありますし、しっかり経済安全保障の観点でも強靭なサプライチェーンとかそういうことを築き上げたいという思いはもともと一般論として持っているわけでありますので、そういったことも踏まえて。しかも、経済安全保障の議論だけをしているわけではなくて、毎回申し上げているように、貿易の拡大、それから非関税措置、そして経済安全保障分野における協力などについて幅広く、徐々に深さも増してきていますが、日米両国にとってお互いの利益になるような、どういう合意を成り立たせればいいのか、そういうことについて議論を進めているところであって、第4回の協議の後に議論が進展したと申し上げましたけれども、第5回の協議の後には議論が更に進展したということを申し上げているわけでございます。
それから、安全保障についてどのような議論をしているかというお話でしたかね。議論自体が、これは交渉の中身にかなり触れることになってしまいますので、差し控えたいと思いますが、いずれもサプライチェーンの問題は当然抱えておりますので、いろいろなものについて、いろいろな産業分野において、経済安全保障上、よりいい形を我が国が、そして米国がそれぞれ実現しようとする上で、お互いに協力できることがあれば、それは積極的に協力していこうという考え方で協議を進めさせていただいているところでございます。 - (問)日本はそもそも重要鉱物とか、そういった資源を産出していないので、具体的にどういった分野で協力できるのか、一般論として何かコメントを。
- (答)重要鉱物について我が国がほとんど産出していないというのはおっしゃるとおりだと思いますし、米国も鉱物の種類によっては同じような状況です。お互いに協力して、サプライチェーンの強靭化が図れるようなところでは協力するし、その手だてがもしないということであれば協力できないということになると思いますが、あくまで一般論としてそういうことは申し上げられると思います。
(以上)