赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年5月22日
(令和7年5月22日(木) 19:50~20:07 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
冒頭、3つご報告することがございます。まず、「月例経済報告等に関する関係閣僚会議」の概要を報告いたします。
今月は「景気は緩やかに回復しているが、米国の通商政策等による不透明感がみられる」と先月の判断を維持しております。これは、企業部門はこれまでのところ収益の改善が続くなど、堅調さは維持されており、家計部門も消費者マインドは弱含んでいるものの、雇用・所得環境の改善の動きが続く中で、個人消費に持ち直しの動きがみられるなど、景気の緩やかな回復が続いている一方、米国の関税措置等により、引き続き我が国経済を巡る不透明感がみられていることを踏まえたものです。
先行きについては、33年ぶりの伸びとなった昨年を更に上回る春季労使交渉の賃上げなど、雇用・所得環境の改善や、令和6年度補正予算及び令和7年度予算の執行による効果が景気の緩やかな回復を支えることが期待されますが、米国の通商政策による景気の下振れリスクが高まっており、十分留意する必要があります。また、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響等も、我が国の景気を下押しするリスクになっております。
加えて、会議で私から説明しました2025年1-3月期GDP1次速報の概要について申し上げます。2024年度のGDPは、名目・実質ともに4年連続のプラス成長となりました。2024年度の名目GDPの金額は617兆円ということで、年度として初めて600兆円を超えたところでございます。
2025年1-3月期の実質成長率は、内需が増加に寄与した一方で、外需が主に輸入の増加によって大幅なマイナス寄与となり、前期比マイナス0.2%と4四半期ぶりのマイナス成長となりました。
民需については個人消費がわずかながら増加したほか、設備投資・住宅投資も増加し、国内民間最終需要は4四半期連続のプラスが続いています。
このように、GDP等の統計データを見る限り、現時点では、実体経済としては輸入が増加するとともに、内需が着実に成長に寄与しており、米国の関税措置の影響が特段みられるわけではないという判断ができます。ただし、先行きについては十分注意が必要と考えております。
関税措置の我が国経済への影響については、引き続き今後明らかになっていく国内及び海外の統計等を幅広く分析しつつ、緊張感を持ってしっかりと注視していくことが極めて重要だと考えております。
このほか会議の詳細については、後ほど事務方から説明させます。
2番目に、本日は「2025年春季労使交渉」「『中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画』の施策パッケージ案」「最低賃金の引上げ方針」について、労使の皆様と意見交換を行ったところでございます。いわゆる政労使の意見交換ですね。
「賃上げこそが成長戦略の要」。2029年度までの5年間で、実質賃金が1%程度の上昇を賃上げの新たなノルムとして我が国に定着させ、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現するため、「賃金向上推進5か年計画」に基づき、中小企業・小規模事業者の経営変革の後押しと賃上げ環境の整備に政策資源を総動員してまいります。
最低賃金については、適切な価格転嫁と生産性向上支援により、最低賃金の引上げを後押しし、2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向けたゆまぬ努力を継続することとし、官民で最大限の取組を5年間で集中的に実施します。
政府として、価格転嫁・取引適正化の徹底、生産性向上、事業承継・M&A、人材の育成と処遇改善等の施策パッケージを実行いたします。
また、EU指令においては、賃金の中央値の60%や平均値の50%が最低賃金設定に当たっての参照指標として加盟国に示されています。最低賃金の引上げについては、欧州と制度に異なる点があることにも留意しつつ、これらに比べて我が国の最低賃金が低い水準となっていることも踏まえ、中央最低賃金審議会においてご議論を賜りたいとえております。
その上で、各都道府県において中央最低賃金審議会の目安を超える最低賃金の引上げが行われる場合への特別な対応として、政府の補助金における重点的な支援や、交付金等を活用した都道府県による地域の実情に応じた賃上げ支援の十分な後押しにより生産性向上に取り組み、最低賃金の引上げに対応する中小企業・小規模事業者を大胆に後押ししてまいります。地方最低賃金審議会において、これらの政府全体の取組や各都道府県の賃上げ環境も踏まえてご議論いただきます。さらに、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正も図ります。
また、賃上げと投資の好循環の実現のため、2030年度135兆円・2040年度200兆円の官民国内投資目標の実現に向けて、世界経済を巡る見通しが不確実化していく中であっても、積極的な国内投資を促進するための施策を具体化いたします。
本日、労使からいただいたご意見については、6月に取りまとめる実行計画改訂版や骨太方針の中で、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」の実現に向けた具体策として盛り込んでまいります。
本日の会議の具体的な様子は、後ほど事務方からご説明申し上げます。
3番目でございますが、諸般の事情が許せば、米国の関税措置に関する日米協議を実施するべく、5月23日から25日にかけて、米国ワシントンD.C.を訪問する予定でございます。引き続き米国による一連の関税措置の見直しを強く求めるとともに、可能な限り早期に日米双方にとって利益となるような合意を実現できるよう、率直かつ建設的な姿勢で協議に臨んでまいりたいと考えております。
2.質疑応答
- (問)日米の関税協議についてお伺いいたします。今、大臣は諸般の事情が許せば明日以降訪米予定だとおっしゃっておられましたけれども、3回目の協議には、ベッセント財務長官は欠席されるという報道もございますけれども、次回協議の参加者や時間などの調整の状況はいかがでしょうか。
また、実際にベッセント財務長官が欠席された場合、再度、財務長官も含めた協議を調整ですとか訪米されることなどはございますでしょうか。 - (答)ご指摘の報道については承知しておりますが、米側の出席閣僚等を含め、次回の閣僚級協議の詳細については現在調整中でございます。
また、次回4回目の閣僚級協議の予定を含め、今後の進め方について予断を持ってお答えすることは差し控えますが、第2回の協議において、今後、閣僚間の協議を5月中旬以降、集中的に実施するということで一致しております。 - (問)日米関税交渉に関連して、本日までにベッセント財務長官と電話協議をされたという一部報道がございます。事実関係と、実施された場合は何日だったのか、どのような内容をお話しされたのか、お伺いできれば幸いです。
- (答)ご指摘の報道については承知しております。日米間では、平素から様々なチャネルでやり取りをさせていただいております。それ以上の詳細についてはお答えを差し控えます。
- (問)今週19日から始まった事務方協議についてお伺いいたします。経済産業省と外務省の出席というのはこれまでに確認が取れていたと思うのですけれども、それ以外の参加省庁があるのか、また出席メンバーの役職など、お答えできる範囲でお願いします。
- (答)事務レベルの協議については、米国時間19日月曜日からワシントンD.C.において対面での協議を行っています。協議の具体的な内容については外交上のやり取りであり、お答えすることは差し控えますが、次回の閣僚級協議に向けて、精力的に協議を進めているとの報告を受けております。
また、事務レベルの協議には、外務省を中心に関係省庁が連携して対応しておりますが、それ以上の詳細についてはお答えを差し控えます。 - (問)明日から訪米する3回目の協議の狙いについて、大臣は以前2回目の訪米をされるときには土俵を決めたいといったようなことをおっしゃっていたと思うんですが、今回3回目の狙いはどういったところにあるのかお伺いします。
- (答)日米間では、双方が率直かつ建設的な姿勢で協議に臨み、可能な限り早期に合意し首脳間で発表できるよう目指すことで、第1回の協議で一致しております。その上で、これまでの協議では、例えば両国間の貿易の拡大とか非関税措置、経済安全保障面での協力などについて、具体的な議論を深めてきております。
次回の協議の内容については、相手があることでもあり、予断を持ってお答えすることは差し控えますが、これまでの協議も踏まえながら、関係省庁とよく連携しながら準備を進めているところでございます。
引き続き、念のため申し上げれば、米国による一連の関税措置の見直しを強く求めるというポジションは変わっておりませんで、可能な限り早期に日米双方にとって利益となるような合意を実現できるよう、率直かつ建設的な姿勢で協議に臨み、実りある協議にしたいと考えております。 - (問)昨日の党首討論ですけれども、石破総理が車の逆輸入について、手法の一つとしてあり得るという認識を示されました。赤澤大臣も、米国の対日貿易赤字を削減するための手法として、この車の逆輸入というのは一つの選択肢になってくるとお考えでしょうか。
- (答)ご指摘の党首討論における石破総理のご発言については承知しております。日米協議における今後の対応について、具体的な検討状況をつまびらかにすることは差し控えますが、何が日本の国益に資するのか、あらゆる選択肢の中で何が最も効果的なのかを考えながら取り組んでまいりたいと思っております。
理論的には、日本メーカーであれ米国メーカーであれ、米国で生産された自動車が日本に輸出されれば、それは米国の対日貿易赤字の削減につながることになります。また、米国が財政赤字と並んで貿易赤字を縮小していくということを大変問題意識として強く持っていることも間違いのない事実でございます。
一方で、日本メーカーが海外において事業を展開することにより生じ得るその他の影響にも留意する必要があるというふうに考えております。 - (問)関連して関税について伺います。非関税障壁についてですけれども、アメリカ政府はこれまで外国貿易障壁報告書などで、日本の自動車の安全基準などを非関税措置だと主張していますが、こうしたアメリカ側の主張について、改めて政府の見解を伺います。
また、3回目の閣僚協議では、非関税障壁だとされている項目や内容について、どういった交渉を行う考えかお願いします。 - (答)ご指摘の報告書における記載は承知しております。その報告書において、非関税障壁と指摘されている我が国の自動車の基準・認証は、国連で策定された基準や認証手続を採用しているものです。
今後、様々なレベルで米国と意思疎通していく中で、米側の問題意識を把握し、こちらの考え方も説明するなど、よく意思疎通していく必要があると考えております。
協議の具体的な内容は、現時点で予断を持って申し上げることは差し控えますが、引き続き何が我が国の国益に資するのか、あらゆる選択肢の中で何が最も効果的なのかを考えて取り組んでいきたいと考えております。 - (問)昨日の党首討論での総理の回答について解説していただきたいのですけれども、国民民主党の玉木雄一郎代表が総理に、アメリカから日本への車の逆輸入をしましょうみたいな提案をされて、そのときの石破総理の解説がちょっと分かりにくかったんですが、あれは日本企業のディーラーもアメ車のために活用してあげましょうということと、あとアメリカで造った日本メーカーの車を日本に入れたいというご趣旨だったのか、解説していただけますでしょうか。
- (答)今、党首討論の議事録の抜粋を見てみましたけれども、どういう目的で玉木代表がこういう提案をされたのかもはっきりおっしゃっていない上に、総理の方もどういう目的で、手法の一つとしてあり得ることだとお答えになったのかおっしゃっていないので、私に今ここで解説しろとおっしゃっても、ちょっと難しいところがございます。お許しください。
(以上)