赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年5月16日
(令和7年5月16日(金) 10:25~10:48 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
本日公表の2025年1ー3月期GDP1次速報値では、名目成長率は前期比プラス0.8%と、6四半期連続のプラスとなった一方で、実質成長率は前期比マイナス0.2%と4四半期ぶりのマイナスとなりました。これを受けた私の談話はお手元に配布したとおりで、実質成長率の内訳を見ると、内需は増加に寄与しており、個人消費は食料品等が減少した一方、外食等が増加し、前期比プラス0.0%と僅かにプラスになっております。また、住宅投資は改正建築物省エネ法及び改正建築基準法施行前の駆け込みもあり増加しております。さらに、設備投資はソフトウェア投資等の増加により前期比プラス1.4%と4四半期連続のプラスとなりました。
一方で、外需は輸入が増加したことなどにより減少に寄与しております。
また、2024年度、年度で見ると、名目GDPは前年度比3.7%増の617兆円ということで、年度として初めて600兆円を超え、実質GDPも4年連続の増加となりました。
先行きについては、33年ぶりの伸びとなった昨年を更に上回る春季労使交渉の賃上げなどの雇用・所得環境の改善や、令和6年度補正予算及び令和7年度当初予算の執行による効果が景気の緩やかな回復を支えることが期待されますが、米国の通商政策による景気の下振れリスクに十分留意する必要があるというふうに考えております。また、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響等も我が国の景気を下押しするリスクとなっています。
政府としては、米国の一連の関税措置について引き続き見直しを強く求めるとともに、「米国関税措置を受けた緊急対応パッケージ」に基づき、中小企業をはじめとする影響を受ける企業への資金繰りをはじめとした支援の強化など必要な施策に万全を期すこととしております。
あわせて「賃上げこそが成長戦略の要」との認識の下、賃上げを起点とする国民所得の向上と経済全体の生産性向上を目指した政策を推進し、成長型経済への移行を確実なものとしてまいります。
2.質疑応答
- (問)2つテーマ、それぞれ2問ずつお伺いさせてください。
1点目、まずGDPの速報値に関連して、実質のベースで前期比マイナス成長となって4四半期ぶりのマイナス成長ということになりましたが、こちらについての受け止めと、正に大臣先ほどおっしゃったように、次の四半期以降アメリカの関税措置の発動が効いてくると思われ、下落ち圧力が強まってくることも想定されますが、改めて日本経済へ与える影響と、ここへの必要な政策対応についてお聞かせいただきたいです。
もう一点、関税交渉のほうについても2点お伺いしたいのですが、今朝も、来週にも3回目の交渉との報道が出ておりまして、このスケジュール感とあわせて次回の交渉の論点について、一部報道でトランプ政権が日米貿易協定の見直しも視野に入れているとの報道が昨夜流れていたのですが、これも含めた論点についての大臣のご所感。あと、もう一点が、昨日タスクフォースが開かれておりますが、久々の開催となりましたが、このタイミングでなぜ開かれたのか、そこの狙いについてご教授いただけますでしょうか。 - (答)まず、先ほど申し上げたとおり2025年1-3月期のGDP1次速報値では、名目成長率は前期プラス0.8%と6四半期連続のプラスとなった一方で、実質成長率は前期比マイナス0.2%と4四半期ぶりのマイナスとなっています。投資や消費といった内需は増加したものの、輸入の増加により外需が減少に寄与したということでございます。米国の関税措置については、本日公表した1-3月期のGDPでは特段の影響は見られておりませんが、今後明らかになっていく国内外の統計等を幅広く分析しつつ、最大限の緊張感を持ってしっかりと注視してまいりたいと思います。
経済の先行きについて申し上げれば、33年ぶりの伸びとなった昨年を更に上回る春闘賃上げなど、雇用・所得環境の改善、これはもう見られているということだと思います。また、令和6年度補正予算及び令和7年度の予算の執行による効果が景気の緩やかな回復を支えることが期待されると考えております。一方で、ご指摘の米国の関税措置等による景気の下振れリスクに十分留意をしていく必要があるというふうに思っております。
関税の話もご質問にありましたけれども、米国の一連の関税措置について引き続き見直しを強く求めるという姿勢に変わりはありません。加えて、「米国関税措置を受けた緊急対応パッケージ」に基づき、影響を受ける企業への資金繰りをはじめとした支援の強化など、必要な施策に万全を期すところでございます。あわせて、「賃上げこそが成長戦略の要」との認識の下で、賃上げを起点とする国民所得の向上と経済全体の生産性向上を目指した政策を推進し、成長型経済への移行を確実なものにしていきたいというふうに思っております。
それから、関税交渉について、幾つか報道についてご指摘がありました。ご指摘の報道については承知しております。米国時間の5月1日に行った先般の2回目の閣僚級協議で、米側との間で今後事務レベルで集中的に協議を行った上で、次回の閣僚間の協議を5月中旬以降に集中的に実施すべく日程調整していくことで一致し、その上で翌日2日には事務レベルの協議を早速実施したところであります。その後、事務レベルのやり取りも継続しつつ、次回の閣僚級協議に向けて調整をしているところでございます。
次回の閣僚級協議の議論の内容については、予断を持ってお答えすることは差し控えますが、引き続き、先ほど申し上げた立場に変わりはありません。米国による一連の関税措置の見直しを強く求めるとともに、可能な限り早期に日米双方にとって利益となるような合意を実現できるよう、率直かつ建設的な姿勢で今後の協議に臨んでまいりたいと思っております。
それから、タスクフォースについてお尋ねがありました。昨日開催した「米国の関税措置に関する総合対策タスクフォース」の第2回会合では、米国との協議状況等を踏まえつつ、今後の進め方について議論をいたしました。詳細についてはお答えを差し控えますが、例えば米国と第三国の間の動きでありますとか、私が米国との第3回閣僚級協議に臨むに当たって、あるいは国内対策に当たって検討しておくべき事項について議論を行いました。
本タスクフォースは、様々な情勢を踏まえながら適切なタイミングで開催することとしておりまして、前回4月11日のタスクフォース以降、閣僚級協議を2回実施いたしましたし、これまでの協議状況等踏まえつつ、調整中の第3回閣僚級協議も見据えて今後の進め方について議論するべく昨日開催させていただいた次第でございます。 - (問)1年ぶりマイナス成長ということになりましたし、今後トランプ関税の影響がどの程度あるのかという不透明な時期だと思います。一方で与野党の中には経済対策を求める声というのは引き続きありますし、消費税を巡る議論等もされておりますが、今後の経済対策の必要性なり在り方について改めて考えを教えてください。
- (答)ご指摘のいろいろな報道については承知しております。その上で、政府としては令和6年度補正予算に加え、令和7年度予算も執行し始めたばかりということですので、新たな経済対策を考えているわけではございませんが、先般、4月25日、与党のご提言を踏まえて取りまとめた「米国関税措置を受けた緊急対応パッケージ」などの施策を着実に執行することで、必要な支援に万全を期すとともに、引き続き与党と適切に連携をしてまいりたいというふうに考えております。
もうご案内のことだと思いますけれども、物価高については、物価上昇を上回る賃上げを実現していくという基本方針でありまして、物価動向やその上昇が家計や事業活動に与える影響に細心の注意を払いながら物価高対応に取り組んでいくことが重要であると思っております。また、米国の一連の関税措置については引き続き強く見直しを求めるとともに、今後も新しいものが出てきたりというようなことが想定される状況なので、国内産業、経済への影響を把握・分析しつつ、資金繰り支援など必要な支援に万全を期していくことが重要と考えています。
具体的には、もう繰り返しませんが、物価高については6年度補正予算や7年度予算に盛り込んだもろもろの政策がございます。そういったものに加えて、コメについて夏まで毎月備蓄米の売り渡しとか、リットル当たり10円引下げなどのガソリン価格の定額引下げ、暑い夏の7-9月期の電気・ガス料金支援を執行することとしておりまして、こうしたあらゆる政策を総動員し、家計や事業活動に与える影響に細心の注意を払いつつ、物価高対策に取り組んでまいりたいと思っております。 - (問)今のご発言、説明の中で、関税絡みで新しいものが出てくるとご説明されましたが、新しいものというのは影響という意味ですか。
- (答)新しいものという意味は、米国の措置です。いろいろな予告がされています。特定の分野について更に関税の措置を講じるとか、まだ大統領令でいろいろ調査継続中のものもありますし、今後も米国側から新しい関税に関する措置が出てくることも想定される状況ではあるという意味であります。
- (問)車の関税に絡めてなのですけれども、日本メーカーに甚大な影響のある第三国、メキシコやカナダ、そちらの国も大変今苦慮されているわけですが、そういう国と連携して来週以降の交渉に臨むという可能性はあるのでしょうか。済州島のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の会合が、今貿易関係のAPECで皆さん日本のそばにいらっしゃるらしいので、来週東京にメキシコの方が来るという情報もありますし、お話しできる範囲でお願いします。
- (答)今後の対応について具体的な検討状況をつまびらかにすることは差し控えますが、自動車関税を含め、米国の一連の関税措置は極めて遺憾であり、その見直しを強く申し入れるという我が国の立場には変わりはとにかくございません。その上で申し上げれば、米国の関税措置は、世界第1位の経済大国ですので、世界経済に与える影響等非常に大きいものがあります。全ての国が関係していると思いますが、各国との意思疎通を行うことは有益なことだと考えております。
例えば、カナダとの間では石破総理が5月2日にカーニー首相と電話会談を行われて、米国の関税措置が世界経済や多角的貿易体制に与える影響を踏まえつつ、経済分野について幅広く議論が行われたところであります。一方で、日米間では、バイの交渉をやりながら双方が率直かつ建設的な姿勢で協議に臨み、可能な限り早期に合意し、首脳間で発表できるよう目指すことで一致しておりますので、交渉担当者としての私としては、重要なのはとにかく日米双方となって利益となる合意を実現することであり、そういう意味で何が我が国の国益に資するのか、あらゆる選択肢の中で何が最も効果的なのかを考え抜きながら最優先かつ全力で取り組んでいきたいというふうに考えております。 - (問)GDPとアメリカの関税措置について伺います。今回の発表でも、個人消費が伸び悩んでいますが、アメリカの関税措置による先行きへの不安などは個人消費にどのような影響を与えるとお考えでしょうか。また、アメリカとの交渉担当者として、日本の個人消費に関してはどのように意識されているでしょうか。
- (答)2025年1-3月期のGDP1次速報値では、先ほど申し上げましたけれども、個人消費や食料品等が減少した一方、外食等が増加し、前期比プラス0.0%と僅かにプラスという状況になっております。食料品などの身近なものの価格上昇率が高い状態が続き、消費者の皆様のマインドが弱含んでいると、そういう中で個人消費の伸びは緩やかなものにとどまっているというふうに認識をしております。
その上で、お尋ねの米国の関税措置については、1-3月期の個人消費に対しては特段の影響を及ぼしているようには見えないと現時点では解釈をしております。ただ、先行きについては、例えば今週5月12日に公表された4月の景気ウォッチャー調査では、米国の関税措置に伴う不透明感が先行きの消費マインド等に与える影響を懸念する声もあるというふうに承知しております。米国の関税措置の我が国経済に対する直接的、間接的な影響について、今後明らかになっていく国内外の統計などを幅広く分析しつつ、緊張感を持ってしっかりと注視してまいりたいと思っています。 - (問)アメリカの関税措置の関連で2点伺います。
1点目は、先ほどの新しいものの想定というところのくだりなのですが、そのあとアメリカが調査中のものということでしたけれども、例えば、これは調査中の半導体であったり医薬品についても念頭にあるのかというところです。
あともう一点が、先ほど大臣は石破総理と面会されましたが、3回目の訪米やそれに伴う今後の国内対策についてどういった議論をされたか教えてください。 - (答)まず、新しいものと言ったので何か新しいことが出たかという感じで受け止められたかもしれませんが、基本的に私が承知しているのは、報道ベースなり大統領令ベースで米国が公にしているものでありますので、皆様の理解とあまり変わるものではございません。大統領令に基づいて今調査が進められているようなものについては、これはご指摘のあったようなものも含めて調査が終わり次第必要な措置というのが打ち出される可能性があるということでありますので、そういうものがあるということについてご指摘を申し上げたということでございます。
それから、総理と会ったときの話でありますけれども、これについては、最近の米国の関税措置に関する動向や、次回閣僚級協議に向けた調整状況等についてご報告したことももちろんでありますが、加えて、私が担当している担務が6月に山場を迎えるものがかなり多いということでありますので、本当はもっと時間が欲しいと、総理と情報・意見交換をして、今後の方向性などについて丁寧に相談をしていきたいというふうに思っております。それ以上の具体的な内容についてお答えすることは差し控えたいと思います。 - (問)冒頭の質問の中で、トランプ政権の関税の関連で、米国側が日米貿易協定の見直しを視野に入れているという一部報道について質問がありました。直接の言及がなかったので改めて伺いますが、日本側としては、協定の修正は想定していないというのが基本的な姿勢という理解でよろしいのでしょうか。
- (答)日米貿易協定については、これまで私どもが申し上げていることは、今回の米国の一連の関税措置は日米貿易協定との整合性について重大な懸念があるということは申し上げておりますし、米国側にも伝えているところです。日米貿易協定の見直しを求めるということについては、報道があったことは承知しておりますが、私自身は特にそれについてコメントをする立場にはございません。当然ながら二国間で結んだ協定でありますので、先方がそれについて関心があれば、先方の関心事項を承った上でこちらとしてはお答えをしたりということになると思いますけれども、現時点で何か申し上げられることがあるわけではありません。報道があったことは承知しているというだけでございます。
- (問)昨日、JA全中の山野会長から緊急要請を受けたかと思いますが、こちらに対する受け止めというのをお聞かせください。
- (答)前にも申し上げたことがあるかと思いますけれども、私自身も農林族でございます。政務に入っているとき以外は党の農林役員会から外れたことが20年間ございませんということでありまして、農業の重要性はよく理解をしている者の1人だと思っています。農は国の基であって、生産者の皆様が安心して再生産を続けられる環境をつくっていくことが、政府与党に課せられた本当に大きな、非常に重大な仕事であるという認識をしております。
そういうことで、いただいた要請の内容や自民党からの米国との協議に関する決議、あるいは過去の国会決議なども含めてしっかりと受け止めて対応していきたいと考えております。総理も繰り返し言っているように、農業を犠牲にするような交渉はしないのだということであります。私も全く同じ思いでありまして、守るべきものは守り、我が国にとって最大限のメリットを獲得するために引き続き政府一丸となって最優先かつ全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。 - (問)少し話題を変えて恐縮ですが、感染症危機管理担当大臣としてお尋ねします。アメリカ政府が先般質問しましたけれども、新型コロナが中国の研究所から流出したとの公式見解を発表しましたが、それに続いて、先般また大統領令で危険なウイルス機能の獲得研究への資金提供を中止しました。日本政府は、このような類似の機能獲得研究のようなものを国内で行われているのかどうかということは把握を今されていますでしょうか。また、このような研究というのを政府としては容認する立場なのかどうかということの方針について確認をさせてください。
- (答)米国においてウイルス機能獲得研究に関する大統領令が署名されたことは承知しております。その上で、政府としてはご指摘のウイルス機能獲得研究について網羅的に把握する仕組みはありません。また、これに特化した法規制を設けてもいません。
一方、どのような状況かと言われると、そのような研究を実施する際には、平成24年に日本学術会議において報告されました、科学者・技術者が実践すべき倫理規範や指針等を踏まえて、倫理審査委員会の意見を聞いた上で所属機関の長の許可を得て研究が行われることとなっております。機能獲得研究含め、その悪用・誤用等によって社会の安全を損なうおそれもある研究に対しては、一方で学問の自由を担保しつつもう一方で社会的安全を確保する観点から、どのようなガバナンス体制が望ましいか検討する必要があると考えておりまして、厚生労働省などの関係省庁と連携していきたいと考えております。
(以上)