赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年5月14日

(令和7年5月14日(水) 19:42~20:04  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 本日は「『中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画』の施策パッケージ案」と、それから「地方経済の高度化、資産運用立国の推進、2040年の産業構造・就業構造の推進」について議論を行いました。
 「賃上げこそが成長戦略の要」との認識の下、2029年度までの5年間、日本経済全体で実質賃金で1%程度の上昇、すなわち持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇1%程度を上回る賃金上昇を、賃上げのノルム、いわば社会通念として我が国に定着させる。そのため、特に我が国の雇用の7割を占める中小企業・小規模事業者の経営変革の後押しと賃上げ環境の整備に政策資源を総動員するということであります。
 第1に、中小企業・小規模事業者の生産性向上ということで、中小企業の生産性向上投資に向けて、今後5年間で60兆円の投資を官民の新たな目標として定め、十分な事業規模で複数年にわたる支援を行うこととしております。その際、中小企業団体、地域金融機関を中心とした全国的な支援体制を構築いたします。特に最低賃金引上げの影響を大きく受ける人手不足が深刻な12業種については、「省力化投資促進プラン」に基づき、業種ごとの生産性向上目標を掲げ、各業種の特徴を踏まえた省力化投資を官民で推進いたします。
 第2に、官公需も含めた価格転嫁・取引適正化。自治体に対し、重点支援地方交付金の徹底的な活用を促すとともに、自治体の低入札価格調査制度、それから最低制限価格制度の導入状況を、国が一覧性を持って可視化することとしております。下請法を「中小受託取引適正化法」へと名称を改め、業所管省庁を含む執行体制の強化・違反企業への対応厳格化などを進めてまいります。
 第3に、事業承継・M&A等の経営基盤の強化、事業承継・引継ぎ支援センターの体制強化や、地域金融機関における経営者へのコンサルティングを促進いたします。また、M&Aアドバイザーに関する新たな資格制度や、M&A後に同意事項に反した場合に買戻し等を可能とする措置を検討いたします。
 第4に、地域で活躍する人材の育成と処遇改善です。現場人材のデジタル技術等のリスキリングや処遇改善を通じてアドバンスト・エッセンシャルワーカーを育成してまいります。医療、介護、保育、福祉等の現場での公定価格の引上げについて、これまでの対応では現場で働く職員の十分な賃上げにつながっていないという声がございます。次期報酬改定をはじめとした必要な対応策について、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、的確な対応を行ってまいります。
 最低賃金については、政労使の意見交換を今月下旬に開催することとし、その場で本日いただいたご意見も踏まえ、本日お示しした施策パッケージと最低賃金の引上げ方針を議論してまいります。
 また、観光、農林水産業などの地方経済の高度化、資産運用立国の推進、2040年の産業構造・就業構造について各担当大臣は、これまでの取組を通じた成果がまだ十分でない点について、その原因を徹底的に特定した上で、それらの課題をブレイクスルーする方策を具体化するよう、総理からご指示がございました。
 自動運転については事業化の加速に向けた具体策を速やかに検討し具体的な結論を得るよう、資産運用立国については全世代の国民が一人一人のライフプランに沿った形で資産形成を行うことや、アセットオーナーの機能強化を進めることなどの政策を充実するよう、総理からご指示がございました。
 最後に、私を中心に6月の実行計画の取りまとめに向けて施策の具体化を進めるよう、総理からご指示を賜りました。
 本日の会議の具体的な様子は、後ほど事務方からご説明申し上げます。

2.質疑応答

(問)今回5か年計画のほうで、実質賃金の目標を定められました。政府としては初めてのことだと伺っております。実質賃金を巡っては、エコノミストの間では目標とするにはなじまないのではないかという声もあるのですけれども、今回あえて実質賃金の目標を掲げた思いと、そこで1%にした意義を教えていただけますでしょうか。
(答)石破政権では、「賃上げこそが成長戦略の要」であるということを宣言しております。「賃上げこそが成長戦略の要」であると宣言していながら、賃上げの目標は定めていないということでは不十分という強い思いであります。この認識の下、これまでも物価上昇に負けない賃上げを早急に実現・定着させることを目指してきたわけでありますので、数値目標を掲げたということであります。
 改めて申し上げるまでもなく、現在の状況が正に名目賃金は何十年ぶりという水準で上がっているけれども、物価に負けて国民の生活が苦しくなっているということなので、目標を掲げようと思えば、この際、実質賃金しかないなということでありますので、そのようにさせていただきました。
 今回の5か年計画の施策パッケージをお示しするに当たり、こうした石破政権の方針を具体化し、「2029年度までの5年間で、日本経済全体で実質賃金で1%程度の上昇、すなわち、持続的・安定的な物価上昇の下で物価上昇を1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルムとして、我が国に定着させること」を新たに目標に掲げました。
 いろいろなご質問・ご議論あると思いますが、この1%というのは過去の推移というか、30年のデフレトレンドで見た場合とか、あるいは我々がいろいろな想定をシミュレーションでやっておりますけれども、そういうものを全部総合した中で、実現が容易ではないけれども、努力すれば必ず実現できると。そういう意味で、非現実的でもない目標であり、かつ低過ぎる目標でもなく、これまでのトレンドから成長型の経済への移行をきちんと成し遂げたときにふさわしい目標であるというふうに理解しております。
 本施策パッケージでは、特に我が国の雇用の7割を占める中小企業・小規模事業者の経営変革の後押しと賃上げ環境の整備を通じて、全国津々浦々で物価上昇に負けない賃上げを早急に実現・定着させるため、2029年度までの5年間で集中的に取り組む政策対応を示してございますので、こういったものを政策資源総動員で実行してまいりたいと考えております。
(問)同じ実質賃金の目標のところに関してですけれども、今までもこういう目標を設定するタイミングというのはほかにもあったかなと思うのですが、なぜ今のタイミングになったのかというのと、昨年11月に経済対策を取りまとめたときに、デフレ脱却宣言に向けて集中期間を3年間にしていますよということをおっしゃっていたと思うんですけれども、それと比べると今回5年間での目標というようなイメージを受けたので、延びたのかなというような印象もあったのですけれども、以上の点についてはいかがでしょうか。
(答)まず、なぜ今のタイミングかというのは、私自身の問題意識として、「賃上げこそが成長戦略の要」と言いながら目標がないのはおかしいよねという問題意識でありますので、目標がなかったので現時点において定めることにしたというのが現時点で定めた原因でありまして。そういう意味で、私が賃金向上担当大臣という現行憲法下で初の担当を持たされた大臣になったのが昨年の10月で、それ以後、最も早いタイミングで骨太方針をつくる機会に目標に掲げさせていただいたということに、骨太方針というか成長戦略、新しい資本主義実現会議の成果物としても盛り込んでいくということにしたいということであります。
 それから、賃上げについていうと、最低賃金を2020年代ということで、5年で1,500円ということを掲げているので、5年間でというのはその期間と平仄を合わせているということが一番大きいと思います。賃上げ関係の目標で、この5年をかけて実質賃金が1%ずつ上がっていく国なのだと。要は、賃金も上がらず物価も上がらず成長もしないと。「3つの低」と言われていたかもしれませんが、そういう国なのだという、国民のある意味でデフレマインドと言っていいと思いますけれども、それをこの5年間で払拭するということだと思います。特に何かデフレ脱却の目標から延びたということとは思っていません。
(問)5か年計画について伺います。計画の中で、官公需の価格転嫁策の強化を掲げられています。国や自治体が発注する事業は主に税金が原資なので、なるべく安く落札してもらったほうがよいと考える人は多いと思うのですが、今回、計画の中で官公需においても価格転嫁が重要だと打ち出した狙いについて、改めて大臣のお考えを教えていただきたいのと、価格転嫁を進めると、国や自治体の歳出が増えることになると思うのですけれども、財源の確保についてのお考えも教えてください。
(答)官公需についていうと、やはり今は時代の変わり目というか、我が国にとってはデフレマインドというか、低物価・低賃金・低成長というノルムから抜け出そうとしている、そういう変化のときであります。
 そんな中で、要は民間にすごく頑張っていただいて、33年ぶりの賃上げみたいなことが続いているわけです。その勢いに、官公需も頑張って上げているんだけれども、追いついていないと。それに物価高が加わって、実質といったような意味では、本当に他の分野と比べても官公需が特落ちしているような状態になって。政府として責められる部分があるのは、民間の方々から見ても、「何だ、賃上げ、賃上げと号令をかけておきながら、自分たちの一番お膝元で、公定価格の部分で全然できてないではないか。まず、隗より始めよという言葉を知っていますか」みたいな感じに多分なりかねないと思うのですね。それに対してしっかりお答えを出していくと。官公庁が中心となって賃上げの流れの足を引っ張るようなことは絶対によろしくないと。
 その上で、確かにしっかり物価を織り込んで公定価格を定めていかないといけないというのはそのとおりで、それをきちんとやれば、やらない場合に比べれば歳出が増えるではないか、望ましいことなのかというご指摘でありますけれども、これは言うまでもなく、きちんと提供していただいている労働に対して、適正な対価を支払うという観点からいえば、ノルムが変わり、賃上げのモードに国全体が入っているときに、他の分野と比べて何か官公需が特落ちしているような状態というのは、歳出が増えるかどうかにかかわらず、それは全く許されることでないと私は思っていますので、そこはきちんとやっていきたいと思っております。
 その上で、官公需にきちんと労働に見合った対価を差し上げるということを組んだ上で、しっかり財源を確保して、持続可能性のある形でそれをやっていくというのが正に経済財政政策の今、必要な目玉の部分だと思いますので、それをしっかりやっていきたいと思っています。
 財源については概算要求段階を含む予算編成過程において、的確な対応を行うとともに、自治体においても地財計画にしっかり計上して、地方財政措置を適切に実施していきたいと思っています。
 とにかく現在の賃上げの勢いが地方の中小企業・小規模企業の賃上げにつながるように、そういう意味でも官公需における価格転嫁を含め、全力で取り組んでまいりたいと思っています。
 冒頭申し上げるべきだったかもしれませんけれども、地方ほど官公需が都道府県GDPに占める割合が高いので、ますます地方で「隗より始めよ」をやってくれないとゴールインできないということだと思います。地方経済において官公需は重要な役割を果たしているということであります。
(問)日米交渉について伺います。大臣、前回の協議で、今月中旬以降に閣僚級で集中的に協議を行うことで一致したとされていましたが、5月も中旬になりまして、現状の事務レベル協議の進捗状況であったり、3回目となる協議の見通しについてお聞かせください。
(答)先般の閣僚級協議、米国時間の5月1日ですけれども、そのときに米側との間で、今後、事務レベルで集中的に協議を行った上で、次回の閣僚間の協議を5月中旬以降、集中的に実施すべく日程調整していくことで一致したところです。現地時間の5月2日は事務レベルの協議が実施され、その後も事務レベルでのやり取りを継続しつつ、次回の閣僚級協議に向けて調整しているところであります。
 3回目の協議について、まだ日程は確定しておりませんで、ご報告できることが今あるわけではありません。
(問)関連して、3回目の日米交渉について伺います。これまでの1回目と2回目の交渉では、日本が投資や雇用で貢献していることであったり、農産品や自動車の輸入について日本側から提案を行っていますが、3回目の交渉ではどういった点を重視して提案や主張を行われるか、どのような戦略で3回目に臨むか、お考えをお願いします。
(答)「日本はこう主張していますが」というお話でしたが、協議の中身についてお話しした記憶が私はありませんので、引き続き議論の内容について予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。引き続き米国による一連の関税措置の見直しを強く求めるとともに、可能な限り早期に日米双方にとってWin-Winと、利益となるような合意を実現できるよう、率直かつ建設的な姿勢で今後の協議に臨みたいと考えております。
(問)トランプ大統領の昨日、今日の記者会見で、鉄鋼・アルミの25%の関税については動かす意向がないような発言をされて、アメリカで車を売りたければアメリカで造れと発言しているようですけれども、これに対する受け止め、それと素人的に見ると非常に交渉が難しそうで、相当時間をかけて当然、時間がかかるのも仕方がないのではないかというふうにも見えるのですが、受け止めを含めて。
(答)ご指摘のトランプ大統領の発言については承知しておりますが、協議の担当閣僚である私が相手国の国家元首がした発言について、この場で逐一コメントすることは差し控えたいというふうに思います。
 その上で申し上げれば、繰り返していますけれども、日米間では自動車、自動車部品、鉄鋼・アルミニウムを含め、相互関税も含め、全ての米国の関税措置について協議を行っております。
 これも繰り返しですけれども、米国の関税措置は極めて遺憾でありますので、引き続き一連の関税措置の見直しを強く求めてまいりたいと思います。その上で、可能な限り双方が合意できるものになるように、最優先かつ全力で取り組んでいきたいというふうに思っております。
(問)関連して、アメリカと中国の貿易協議について伺います。米中両国はさきの合意を受けまして、今日、追加関税を115%引き下げました。経済大国間で関税の引下げが実現したことについて、改めて受け止めをお願いします。また、大臣はこれまで合意の内容やタイミングが異なるのは自然なことだと述べられていますが、米中の合意やそれに基づく対応で、日米交渉の参考になる点はあったかどうか、あった際はどういった点だったか教えてください。
(答)12日の米中間の合意に基づいて、日本時間で本日13時1分ですか、関税の引下げが実施されたと承知しております。ご案内のとおり、米中は世界第1位と第2位の経済ですので、事実上、禁輸と言っていいような関税の打ち合いをやっていたというのは世界に影響がないわけがないので、それが少なくとも緩和される方向で合意が成立し、その合意が実施されたことについては、世界経済にとって前向きに評価できることだと思っています。
 今後の米中間の協議はまだ続きますので、90日間のうちにどのような成果が出てくるのか、関連の動向を引き続き高い関心を持って注視していきたいというふうに思っております。その影響について、その時点時点で十分に精査しつつ、適切な対応を取るという考えでございます。
 また、米中合意の参考点ですけれども、各国の置かれた状況が、本当に立場も状況も様々でありますし、今日、国会の答弁の中でも申し上げたのですが、例えば日本は既に日米貿易協定を結んでいると。その一点を取っても中国は、米中貿易協定というものは結ばれていないと私は理解しております。いろいろな意味で違いがあって、その結果、目指すお互いの目標であるとか、あるいは具体的に出てくる合意とか、出てくるタイミングとか、そういうものは本当にまちまちになるのが私は自然であると思っていますということは申し上げた上で、米国と第三国との協議について、逐一コメントすることは差し控えたいと思います。
 いずれにしても、日米間の協議で何が日本の国益に資するのか、あらゆる選択肢の中で何が最も効果的なのかを考えて対応していきたいと思っております。

(以上)