赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年4月18日
(令和7年4月18日(金) 20:20~20:45 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
本日、米国との協議を終えて帰国しました。現地時間16日にホワイトハウスにてトランプ大統領を表敬し、続けてベッセント財務長官、ラトニック商務長官及びグリア通商代表との間で、米国の関税措置に関する日米協議を実施いたしました。トランプ大統領への表敬では、日米双方の経済が強くなるような包括的な合意を可能な限り早期に実現したいとの石破総理のメッセージを伝達し、トランプ大統領からは、日本との協議が最優先であるとの反応をいただきました。
その後、ベッセント長官、ラトニック長官、グリア通商代表との協議では率直な議論を行い、可能な限り早期に合意し、首脳間で発表できるよう目指すこと、また、次回協議を今月中に実施すべく調整することなどで一致しました。もちろん、米国の関税措置は極めて遺憾であること、一連の措置の見直しを強く申し入れることなど、日本側の考えもしっかりと伝えたところであります。
今回のような交渉事については、最終的に全てがまとまってはじめて合意となるものです。パッケージとして合意するということです。したがって、現時点でこれ以上の言及は差し控えますが、引き続き最優先かつ全力で取り組んでまいりたいと考えています。
それから、月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を報告いたします。
今月は「景気は、緩やかに回復しているが、米国の通商政策等による不透明感がみられる」と、先月から表現を変更しています。まず、実体経済については、これまでのところ、企業部門の堅調さは維持されており、家計部門も消費者マインドは弱含んでいるものの、雇用・所得環境の改善の動きが続く中で、個人消費に持ち直しの動きがみられるなど、景気の緩やかな回復が続いています。
一方、先月3月19日の月例経済報告以降、通商問題が広がりをみせる中で、我が国経済を巡る不透明感が生じている状況にあります。こうした状況を踏まえ、景気の基調判断の表現を変更したということであります。
先行きについては、雇用・所得環境の改善や、各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されます。しかしながら、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクが高まっていると言えます。加えて、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響等も、我が国の景気を下押しするリスクとなっております。また、金融資本市場の変動等の影響に一層注意する必要があります。
加えて、会議で私から説明した米国の関税措置が日本経済に与える影響に関して、可能性として考えられる主な経路について申し上げます。影響を考えるに当たって3つのポイントがあると考えています。
第1に、米国の関税措置が日本に与え得る影響は、我が国製品に対する関税の引上げによる対米輸出を通じた直接的な影響と、米中間など世界貿易の縮小や世界経済の下押しを通じた間接的な影響が考えられます。このうち、直接的な影響については、我が国企業等の米国における価格設定や、価格変化に対する米国の消費者等の反応により、その大きさが変わってきます。
第2に、影響の時間軸を考えることが重要です。経済への影響は、短期的に全て発現するわけではなく、波及経路によっては数年をかけて表れうると考えられます。
第3に、関税の影響を直接受ける産業は主に製造業で、製造業がGDP(国内総生産)に占める割合は約2割です。引き続き米国との協議の中で、措置の見直しを強く求めていくとともに、国内産業への影響を勘案し、資金繰り支援など必要な対策を講じてまいります。また、GDPの8割の非製造業を中心に、賃金と物価の好循環を回し続けることが重要となってまいります。
こうした我が国経済に対する直接的、間接的影響について、今後明らかになっていく国の内外の統計等を幅広く分析しつつ、緊張感を持ってしっかりと注視してまいります。このほか、会議の詳細については後ほど事務方から説明させます。
2.質疑応答
- (問)日本経済の基調判断について伺います。米国の通商政策などによって現状については不透明感がみられるとなっているほか、先行きでも景気の下振れリスクが高まっているという表現になっています。まだ実際の関税措置の明確な影響は見えていない状況かと思いますが、いつ頃になるとこういった影響が明らかになってくるとお考えでしょうか。
- (答)今申し上げたとおりで、影響については短期的に出るものもあれば波及経路によって数年かけて現れるようなものがありますので、相当注意して見ていかなければならないと思っています。
ご指摘のように、米国の関税措置に伴う通商問題の広がりの影響は、金融資本市場の変動の高まりという形で既に表れている一方、現時点では企業や家計のマインド指標には部分的に表れているほか、輸出や生産をはじめとする実体経済の動向を示す指標にはまだ表れていないといった認識を持っているところであります。
米国の関税措置が我が国経済に対して与えうる直接的・間接的影響については、例えば、4月以降の貿易統計、財の輸出、あるいは鉱工業指数、製造業の生産をはじめ今後明らかになっていく国の内外の統計等を幅広く分析をしながら、まずは緊張感を持ってしっかりと注視してまいりたいと考えております。 - (問)月例で、今おっしゃったように、米国の通商政策等による不透明感という表現が入りましたけれども、今回の交渉を踏まえて、不透明感というのは高まったのか低まったのか、大臣のご認識はいかがでしょうか。
- (答)そういう意味では、交渉はまだ始まったばかりということでありますので、今回の月例経済報告における景気の基調判断においては、まず、先ほどお話ししたとおり、企業部門の堅調さや個人消費の持ち直しの動きが続いているといったようなことを踏まえて、景気は緩やかに回復しているとの判断を維持した上で、前回の報告以降、米国の関税措置に伴う通商問題が広がりを見せていますので、我が国経済を巡る不透明感が生じる状況となっていることを踏まえ、米国の通商政策等による不透明感が見られるという表現を加えたところであります。
米国の関税措置については、先ほどご説明したとおり、我が国経済に対して直接的な影響や間接的な影響があるといった幅広い影響を与えうると認識しておりまして、こういったものについて、国内外の統計等を幅広く分析しながら緊張感を持って注視していくということは必要だと思います。
日米間で今回の協議の結果、双方が率直かつ建設的な姿勢で協議に臨み、可能な限り早期に合意し首脳間で発表できるよう目指すこと、それから、次回の協議を今月中に実施すべく日程調整すること、閣僚レベルに加え、事務レベルでの協議も継続することとなっています。今回の協議も踏まえつつ、引き続き政府一丸となって最優先かつ全力で取り組んでまいりますが、報告にあるとおり、米国の通商政策等による不透明感が見られるということが申し上げられる最大のところかなというふうに思います。 - (問)今後の交渉スケジュールについて伺います。トランプ大統領は、17日に日本を含む各国との関税協議について、今後3週間から4週間で結論を得られる可能性があるという見方を示しました。トランプ氏は、そもそも各国との交渉期間について90日というのを挙げていて、今回の発言は前倒しとも取れますが、トランプ氏の発言を赤澤大臣はどのように捉えておられるのか、今後の交渉妥結までのスケジュールをどのように考えるのか伺います。
- (答)冒頭述べたとおり、トランプ大統領からは国際経済において米国が現在置かれている状況について率直な認識が示されたところであります。また、米国の関税措置について率直に述べつつ、日本との協議を最優先であるというご発言もありました。その上で、両政府間で協議を続けていくことにしております。
私からは、米国の関税措置は極めて遺憾である、それから我が国の産業や日米両国における投資・雇用の拡大に与える影響等について我が国の考え方を説明した上で、米国での一連の関税措置の見直しを強く申し入れたところであります。
総理からは、もうご発言あったと思いますが、日米双方の主張には、まだ一定の隔たりがあるのだということは申し上げていたと思います。そういう状況でありますので、この隔たりについてどれぐらいの時間をかけたら埋まっていくものなのか、これは相手があることなので現時点で申し上げることはなかなか難しいと思います。
国会の質疑の中でもあったとおりで、これは私が申し上げているとおり、日一日一日と既に課されている関税で我が国の企業の利益が削られていっているという状況でありますので、一刻も早く合意に至りたいという思いは一方でありながら、しかしながら拙速はしないというか、早ければいいというものではないということも同時に総理はおっしゃっています。時間の利益というものもあるかもしれません。
そういうことを念頭に置きながら、臨機応変に何が国益にとってベストなのか、何が最も効果的なのかということを考えながら、現時点においては交渉を続けていくということ以上に申し上げられるところはないと思います。
今回、私がトランプ大統領が顔を見せられるということを聞いたのは、飛行機の中でした。向かう飛行機の中です。ということで、我々、当初ベッセント長官とグリア通商代表と私が協議するつもりで離陸したわけです。その後、トランプ大統領が出席されると。やはりそこに込められたメッセージというのはあると思うのは、1つは、ご本人が口でおっしゃった「日本との協議は最優先である」というのが1点です。
日本の重要性というものを体現されたということが1点と、やはり私自身が感じるのは、わざわざ大統領が出てこられたのは更に2点ぐらい言いたいことがあって、この交渉は急ぎたいという思いが現れていると思います。
あと3番目は、自分がコミットすると、大統領も深く関わると。そういう、少なくとも今回突然顔を出されるということは、それぐらいのものの考え方が込められていると思うんです。
まさに、おっしゃったように、2番目を彼なりの言葉で言えばそういうことになるのでしょうけれども。ただ、やはり交渉事なので、彼自身も我々と話していて、まだ十分な成果物になっていないと思えば交渉を続けることがあるかもしれませんし、それは日米共にWin-Winの関係でお互いが満足できるものが、トランプ大統領が口にされたような期間でできれば何も言うことはないんですけれども、なかなかそうなるかどうかは保証の限りではありません。
交渉事について言えば、大統領がわざわざ足を運ばれて顔を見せられたことにも分かるように、本当に早くやりたいんだなということは我々に伝わっていますけれども、まだ、だからどうなるということを言える段階ではないだろうというふうに思っています。 - (問)赤澤大臣、出国前の会見では一連の関税について完全な撤廃を目指していると発言されていました。交渉の最中ではあると思いますが、改めて現時点での政府の姿勢を伺わせてください。
あともう一点、アメリカでのぶら下がりで、赤澤大臣ご自身のことを「格下」と表現されたかと思いますが、野党からは批判が出ているかと思います。この表現の真意について伺えるものがあれば教えてください。 - (答)まず、今般の協議における議論の詳細については、外交上のやり取りであるので控えたいと思っています。その上で申し上げれば、総理が述べられたとおり、もちろん日米間では依然として立場に隔たりがあると。例えば、トランプ大統領から国際経済において米国が現在置かれている状況について率直な認識が示されたところであります。
私からは、先ほども申し上げましたが、日米協議の場で米国の関税措置は極めて遺憾である。それから、我が国の産業や日米両国における投資・雇用の拡大に与える影響等について我が国の考えを説明した上で、米国による一連の関税措置の見直し、具体的に言えば自動車、それから鉄鋼、アルミ、10%の相互関税、これを全て見直してください、端的に言えば撤廃してくださいということを繰り返し申し入れています。更に申し上げれば、既にある協定との整合性にも強い懸念というか、いつも申し上げている言い方でお伝えをしています。ただ、そこについてはお互いいろいろ考えがあるわけで、今回の協議の結果も踏まえつつ、引き続き政府一丸となって最優先かつ全力で取り組んでいくということであります。
それから、格下発言について言えば、それは事実でありますので、この中にトランプ大統領と私が同格であると思っている人が誰かいるのかというといないと思います。格下であるということは、まず事実であるということが一点であります。
その一方で、トランプ大統領と比べて格下の私でありますが、協議の場においては相手が格上の大統領であっても言うべきことは当然言うということをきちっと実践してきているわけです。その上で、何か問題がございますでしょうかというふうに思います。 - (問)交渉の間に為替は議題にならなかったということをおっしゃっていたかと思うのですが、今後別の場で持ち上がってくるのではないかというふうに言われています。その一つが、来週調整されている加藤財務大臣とベッセント財務長官の会談だと思うのですけれども、最初の第一歩目の交渉を経験された赤澤大臣は、加藤大臣にどのような役割を期待されるのか。
また、今後追加で為替に関する要求事項が出てきたときに、交渉パッケージの一部として赤澤大臣も検討に携わられることはあるのかというのをお伺いしたいです。 - (答)まず、為替について今回米側からは何も発言はありませんでした。これについては、恐らく前から我々そうお伝えしているので、為替については、首脳会談の後の会見で総理から加藤財務大臣とベッセント財務長官の間で協議を続けるということを言われ、なおかつ、その後石破総理のところにベッセント財務長官が表敬に来られたときにも両国の財務省の間でやるんだと、財務大臣の間でやるんだということになったということは、よく理解を得ているので、私との交渉でそれぞれ大統領の表敬が50分、3閣僚との協議は75分でしたけれども、時間も限られている中で向こう側からその辺を理解されていて触れられなかったのだろうということだと思います。
その上で、加藤財務大臣が、もちろん為替については協議されるなら、米側の要望があればされるわけで、私自身が日程について何か詳細、承知しているわけではありませんけれども、協議の場があるのであればそこでお話しになることだろうと思います。
私自身は、総理から米国の関税についての協議全体を担当して、日米交渉、それと国内対策の調整をやれと言われていますので、とにかくパッケージなんです。全体として日本側がこういうものを用意したらアメリカ側はこういうものを全体として用意する、その両方でつり合ったというか、我々がWin-Winだと思って、その全体についてこれでよしとならないと合意にならないので、加藤財務大臣とベッセント財務長官の間で話をされる為替の問題があるのであれば、そこについての収まりを見ながら最終的にパッケージ全体を整えるということになります。そういう意味での関わりは加藤財務大臣とはずっと私は持つということだと思います。 - (問)全く毛色の違う質問になって大変恐縮です。21日から靖国神社で春季例大祭があるということで、大臣は参拝ですとか真榊を奉納されるか含めて、そのあたりのご意向があればお伺いできればと思います。
- (答)個人として適切に判断をしたいと思っています。
- (問)今回の訪米は土俵決めが目的だとおっしゃっていましたけれども、今回土俵は整ったというふうに考えてもよろしいでしょうか。
- (答)今回、少なくとも大統領と50分、それから3閣僚と75分お話しをしました。それで、私自身は、交渉なので最終的に固まるまで何か新しいものが出ることももちろんありますし、いろいろな事情で、これはもうテーブルから下ろしてくれというようなことも起こり得るんです。
要は英語で、“Nothing is agreed until everything is agreed.”という言い方があって、「全部がセットされない限り一部だけ何かセットできたということには決してならない」というのは、もうお互いの確認事項で、交渉事の基本です。そういう意味から言うと、確定的なことは言えないのですが、ただ相当程度、大統領が何を重視しておられるのか、それから3閣僚の方たちが何を重視しておられるのか、逆に言えば、今回お話が全く出なかったものは何なのか、そういうものを我々当然徹底的に精査し、分析をして次の交渉に臨みます。
そういう意味で、土俵がかちっと決まったかというと、それはそういうことではないかもしれませんが、お互いにここについて相手が受け入れられるようなものをつくらなければいけないというおおよそのテーマというか、そういうものはかなりつかめたような感じはいたします。 - (問)先ほど総理官邸で総理に帰国のご報告をされたかと思います。1時間以上協議もされていたかと思うのですが、総理からどういった言葉をかけられたか、また今後の指示についてどのようなことを受けられたか教えていただければと思います。
- (答)総理に対しては、先ほど3時ぐらいに羽田に着いたばかりでありますが、とにかく最終責任者であり、総理の指示で私も動いていますので、まず協議結果について改めて詳細に報告をしたところであります。
協議の具体的内容については、今後の交渉にも関わることなので。これは特にプレスの皆さんにもご理解しておいていただきたいのは、先ほど申し上げたとおり、すごく多くの項目を含むパッケージが全体として日本側がこれ、アメリカ側がこれといってセットできないと、どこがひっくり返るか分からないというのが交渉なので、何かしら今日は何を話したのですか、そのテーマでどういう合意なのですかと言われても、本当最後の最後まで言えないので、そういうのは今後とも交渉が終わるまでご理解をいただきたいと思います。
その上で、今後の交渉にも関わるので、協議の具体的内容をつまびらかにできず、その点は是非ご理解いただきたいと思いますし、ただ総理は私が一応報告したことをもって幅広い論点について率直かつ建設的な協議が行われたと理解をしており、次につながる成果になったと改めて感じることができたというふうにおっしゃっていますので、そういうことであります。
今回の協議で一致したとおり、次回の閣僚協議を今月中にも実施すべく日程調整していくということになります。次回協議では、先ほど申し上げたようないろいろなテーマについて具体的な前進を得られるように、それなりにお互いどのテーマについて持っていくということではないですけれども、双方が宿題を持って帰っていますので、具体的な前進が得られるよう、次回、対処ぶりに係る政府部内の検討・調整を加速するように総理からの指示をいただいたところであります。
また、国内対策についても、その調整を私がやれと言われていますので、資金繰り対策など、必要な対策に万全を期していくということも総理に改めて申し上げたところです。
(以上)