赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年3月21日

(令和7年3月21日(金) 10:51~11:13  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 (冒頭発言なし)

2.質疑応答

(問)新年度予算の年度内成立に向けて参議院で審議が続いている最中で恐縮ですが、新年度に入りますと物価高対策をはじめ、いわゆるトランプ関税など、米国の政策動向を踏まえた経済対策を求める声が今後高まっていくのではないかと思われます。現時点での経済対策について、赤澤大臣のお考えをお聞かせください。
(答)まず足元では、食料品など身近な物の価格が上昇しておりまして、国民や事業者の方々が厳しい状況に置かれているものと認識をしております。また、通商政策など米国の政策動向による影響等が我が国の景気を下押しするリスクに十分注意する必要があると考えております。こうした状況を踏まえ、政府としては、物価高の負担を軽減しつつ、「賃上げこそが成長戦略の要」との認識のもと、物価上昇に負けない賃上げの実現に向けて、日本全体で賃金が上がっていく環境をつくっていくことが基本中の基本であると考えております。
 具体的には2月4日の閣僚懇談会で石破総理からご指示をいただいたとおり、低所得者世帯の方々への給付金や、地域の実情に応じた物価高対策を後押しする重点支援地方交付金など、経済対策で決定した施策を迅速に執行していくとともに、価格上昇が著しいコメについては、消費者の皆様に安定的に供給をしていくため、一定期間後に買い戻すことを条件として政府備蓄米を活用することとしております。あわせて、適切な価格転嫁や生産性向上、人材・経営基盤を強化する事業承継やM&Aなどを後押しするとともに、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」へ移行するための令和7年度予算及び関連法案の早期成立を図っていくこととしております。
 引き続き、物価動向やその上昇が家計や事業活動に与える影響や、通商政策など米国の政策動向による影響等に細心の注意を払いつつ、こうした施策を最大限活かすことによって、物価高から国民生活・事業活動を守り抜き、成長型経済への移行を確実なものとしてまいりたいと考えております。
(問)現時点では新たな経済対策についてのお考えなどはいかがでしょうか。
(答)物価を注視していくということに尽きると思います。経済状況を注視していろいろなことを総合的に判断していきたいと思います。
(問)防災庁について伺います。来週3月25日に予定されている第3回の防災庁設置準備アドバイザー会議では、次回はどういったテーマでどのような議論を行いたい考えでしょうか。また、今月には名古屋市で避難所環境改善に関するシンポジウムに赤澤大臣がご出席されましたが、そのご経験も踏まえまして、避難所の環境や運営について現時点での課題意識と防災庁に期待する役割や取組についてお考えをお願いします。
(答)今月8日に参加した日本災害医学会のシンポジウムは、立ち見が出るほど多くの方が来場しました。人命・人権最優先の防災立国を実現するに当たり、医学会にも防災に関心の高い人、いわば私から見れば同士がたくさんいることを肌で感じて、大変心強く思った次第であります。
 週明け3月25日に開催予定の防災庁設置準備アドバイザー会議の第3回会合においては、「大規模災害時における被災者支援体制」をテーマとした意見交換を予定しております。シンポジウムに参加して、避難所環境については簡易ベッドの備蓄などの「物」と、支援の担い手となる「人」、また、医療、福祉等の「サービス」とのコネクションといいますか、つなぎが非常に大事である、それが確保されなければならないということで、被災前の日常生活を続けることができ、安心・安全が確保された良好な環境を目指す必要があるということを本当に改めて認識をしたところです。
 特に、南海トラフ巨大地震等の大規模災害を念頭に置いた場合、最大で避難者500万人という規模の災害でありますので、国や被災地以外の自治体の応援など、外部応援に任せるのみでは良好な避難生活環境がおよそ確保できないおそれが大でありまして、アドバイザー会議ではこういった差し迫った状況下で防災庁がどのような役割を担うべきかについてご議論をいただくことを期待しております。私も時間が許す限りアドバイザー会議に参加したいと思っております。
(問)最低賃金についてお伺いします。春闘で大企業の好調な賃上げの実績が出てきていますけれども、政府と大臣も力を入れていらっしゃる最低賃金の引上げに向けて、この勢いをどのように活かしていこうとお考えでしょうか。
(答)幸先のよいスタートが切れたと感じております。今年の春季労使交渉では日本労働組合総連合会の第1回回答集計において、前年を上回る5.46%の賃上げ、中小組合については33年ぶりとなる5%以上の賃上げとなったと承知しております。33年ぶりの高水準となった昨年の勢いが継続しているということで、大変心強く感じているところでございます。
 また、昨年11月26日の政労使の意見交換で、石破総理から大幅な賃上げへのご協力をお願いして以来、年末の経済対策や補正予算の成立、今年1月の国内投資拡大のための官民連携フォーラムなどを通じて、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」の実現に向けた機運が高まり、官民の連携が一層進んできたことが実を結んできているものと考えております。この勢いを雇用の7割を占める中小企業や小規模企業、地方で働く皆様の賃上げにもつなげていくことが重要であり、賃金・所得の増加を全国津々浦々に波及させ、今日よりも明日はよくなると一人一人の国民の皆様に実感をしていただきたいと考えております。
 最低賃金については、「2020年代に全国平均1,500円」という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けることにしており、賃金が据え置きで動かないという縮み志向、デフレマインドを過去のものとしなければならないと思っています。30年続いた低物価・低賃金・低成長というものからどうしても抜け出したい、そのような意識も払拭したいということであります。3月12日の政労使の意見交換において、石破総理から私を中心に最低賃金引上げのための効果的な施策を具体化し、5月を目途に取りまとめるよう指示があったところでございます。
 その会議の場でも出たことでありますけれども、「2020年代に1,500円」という政府の目標について、中小企業の皆様からは「実現が不可能」とか、「困難」といった多くの声が上がっていることも十分認識をしておりますので、私自身もかなりしっかりした施策を作り上げないといけないということは強く思っております。
 中小・小規模企業の皆様方に賃上げの原資となる稼ぐ力を継続的に高めていただき、安心して賃上げできるよう、適切な価格転嫁の推進や生産性向上に向けた省力化投資、デジタル化投資の促進、人材・経営基盤を強化する事業承継やM&Aなどの後押し策などについて、更に検討を深めてまいりたいと思っております。
(問)防災関連でお伺いします。防災力の底上げについてですけれども、個人の防災意識の向上や行動変革が必要と言われて久しい状況にあるかと思います。改めてになりますが、そうした個々の防災意識の向上に向けてどういったことが必要、あるいは有効とお考えでしょうか。また、そうしたことを防災庁ではどのように取り組むか教えてください。
(答)南海トラフ巨大地震をはじめとする大規模自然災害に備えるためには、正常性バイアスと戦い、「自らの命は自らが守る」、あるいは「率先避難者たれ」、こういったことを国民一人一人が肝に銘じ、行動する、このような社会をつくっていくことが災害大国である我が国にとって大事なことであり、防災立国への道であると思っております。
 私が3回目の防災担当の内閣副大臣だった2021年には「防災・減災、国土強靱化ワーキングチーム」で取りまとめた五つの提言を出しておりまして、その中で、防災意識の醸成に向けた防災教育などについて提言を行っているところです。防災教育は、国民の防災意識醸成のためのベースとなるものであり、防災庁において重点的に取り組むべき事項の一つと考えています。
 大人になるほど正常性バイアス等により防災意識が低下すると言われています。これは人生いろいろな困難を乗り越えて自信をつければつけるほど正常性バイアスは強くなるところがあって、皆さんご案内と思いますが、一言で言えば、自分は大丈夫、まだ大丈夫と思ってしまう人間の心の傾向のことです。この正常性バイアスがあるから人間はいろいろな困難を乗り越えられるという大変よい面もあるのですが、災害の場合はこれが非常にマイナスに働きまして、自分は大丈夫、まだ大丈夫と、災害は起きたら起きた時のことだと、こういったものが全て我々の心に備わっている正常性バイアスの産物ということになります。
 大人になればなるほど正常性バイアス等により防災意識が低下すると言われているのは申し上げたとおりで、防災教育には、子どもたちとともに地域の大人たちが避難訓練などに取り組むことで、むしろ大人たちが心を動かされ、防災意識を涵養するという効果があります。また、防災教育を進めることで、10年後には地域を支える大人が育ち、20年後には地域の防災文化が生まれるというような効果も期待ができます。デジタル防災教育の進展にも大いに期待するとともに、保護者の関心も高く波及効果が大きい未就学児に対する防災教育にも特に力を入れたいと考えております。
 現在開催している防災庁設置準備アドバイザリー会議においても、災害の多い日本で暮らす国民の覚悟と対応力を高める必要があること、生涯学習としての防災教育を展開する必要があるなどのご意見を賜っており、専門家のご意見を踏まえながら、防災教育の推進などによる、正常性バイアスに負けない国民の防災意識醸成に向けた体制の在り方について検討を進めてまいりたいと考えております。
(問)長期的には防災教育が必要というのは非常によく分かるのですけれども、短期的に、例えば南海トラフ等に見られるように、すぐあるかもしれない災害について、津波から逃げる行動の呼びかけとか、そういったところで何か効果的な取組は想定されていらっしゃいますでしょうか。
(答)少し手前からお話をすると、まだ全然不十分と言っていい状況にあり、その原因もかなりはっきりしているのは、私が「本気の事前防災」ということを言いますが、それでは今まで本気ではなかったのかということをよく問われます。決してそのようなことはないのですけれども、そのように申し上げている理由は、今、内閣府防災が、予算73億円、110名という定員で、よく比べられる米国のFEMA(アメリカ連邦緊急事態管理庁)とは二桁ほど予算も定員も違う状態で取り組んでいます。
 防災教育等も行っていないわけではないのですけれども、そのような体制でやっていると、西日本豪雨や能登半島地震、あるいは熊本地震など、数百名の犠牲者が出る規模の災害で、大体、事態対処はパンク寸前になり、事前防災は全て中断いたします。そのようなことを繰り返して、なおかつ、そのような災害が何年かごとに起きる、それよりも規模の小さい集中豪雨等なれば毎年起きるという、激甚災害が毎年4、5個出ている、そのような「天災は忘れる間もなくやってくる」状態になってます。正直、内閣府防災の今の体制で、それがなぜできていないのかと言われても、現実問題としてできるだけの体制整備ができていないということだと私は理解をしています。
 それをきちっとやっていく上で、今、おっしゃったことは本当に正鵠を射ていて、大事なことなのです。ただ、そのような教訓は、釜石の奇跡などでも、「津波てんでんこ」、とにかく親子ともにお互いの居場所を探さずに、相手は逃げていると信じて必ず逃げろとか、そのような類いのことは確かに教訓としてもありますし、全ての国民に教育していくべきことであり、我々もやれる努力はしてきていて、学校安全教育の中にも防災教育というものを採り入れてもらって、文部科学省は我々が提言を出す前よりは熱心に取り組んでくれています。ただ、国民全てがあの授業を必ず全員受けたよねと、津波てんでんこを国民が全員習って知っているよねといったレベルになっているかというと、決してそうではないということが一つあります。
 もう一つは、今、学校教育にそれを入れ込んでいる上で困難を感じたのは、一言で言うと、就学後になるとカリキュラムが始まります。しかも親御さんたちもお受験が気になり始めて、あまり受験に関係のないことはやってくれるなという雰囲気になりやすいのだと思います。そのような中ですので、我々が工夫をしようとしているのは就学前です。就学前のお子さんになると、ご両親はこどもの安心・安全にものすごく敏感です。今預けている子どもが大丈夫かということは保育園や幼稚園では感じるわけで、その場で津波てんでんこまでなかなかいかないでしょうけれども、このような机の下に隠れて、机の足を握って、サルのポーズとかいって、地震の時にはそのようにして備えるのだよ、周りに隠れる机がなければ、頭を抱えてうずくまってカメのポーズをするのだよとか、そのようなことをお遊戯などで教える。そこに消防団の方たちが出掛けていって講師になるようなことをしておくと、将来、あの格好いいお兄さんのように消防団に入るという子どもたちも育ちますし、意識も早いうちから育つ。学校に上がってからは、文部科学省にお願いをしている学校安全教育で正常性バイアスの話とか、じわじわ学んでいくと。
 遅々として進んでいないではないかとのご認識かもしれませんが、そのような努力を2021年に五つの提言を出してからは、かなりスピードを上げて取り組んでいるところです。防災庁が出来上がれば更に、数百人規模の方たちが犠牲になるような災害が起きても、中断せずに、事前防災の取組が一気通貫でずっと続けられるように体制を整えますので、速度を上げて何とか南海トラフの地震、首都直下地震、あるいは日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、富士山噴火、そのような災害に間に合うようにしていきたいというのが我々の願いでもありますし、必ずそれをやっていきたいと思っています。
(問)2月のコアCPI(消費者物価指数)が前年比3%の上昇と、電気・ガス代補助金の復活で伸びが鈍化しました。一方、エネルギーを除いたコアコアのCPIは2.6%の上昇と伸びが拡大しました。足元の物価動向に対する受け止めと、4月以降の電気・ガス代補助金に対するお考えをお願いします。
(答)まず、本日公表された全国の2月の消費者物価指数は「総合」で前年同月比プラス3.7%、そして、「生鮮食品を除く総合」で前年同月比プラス3.0%と、それぞれ1月から上昇幅が縮小したところであります。主な要因としては、生鮮食品を除く食料については上昇幅が拡大した一方、エネルギーについては、電気・ガス料金の負担軽減支援事業により、上昇幅が縮小したことなどがあると承知しております。
 政府としては、「賃上げこそが成長戦略の要」との認識のもと、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現に向け、省力化投資の促進や価格転嫁の徹底、経営基盤の強化に資する事業承継、M&Aの支援等を進め、賃上げ環境の整備などに取り組むとともに、そうした経済を実現するまでの間、物価高対応として、先ほど既に触れましたけれども、低所得者の方々への給付金や、地域の実情に応じた重点支援地方交付金の活用などを進めておりますし、所得税の基礎控除の上乗せ、更にはコメについては流通の目詰まりを解消し、消費者の皆様に安定供給を図るための政府備蓄米の活用、ガソリンについては激変緩和事業により、ガソリンの小売価格が全国平均でリッター当たり185円程度になるような支援を継続しているところであります。こういった施策を迅速かつ効果的に実施してまいりたいと思っています。
 電気・ガスについてご質問ありましたが、1月から3月は寒い時期であるということで、取りあえず手当てをしております。また、予報としては、酷暑といったような予測が出ているようでもありますし、我々としては、実際、経済の状況など、そのようなものをしっかり注視しながら、臨機応変に、総合的に判断をしていきたいと思っています。当面は経済状況を注視していくということであります。
(問)先日、日銀の金融政策決定会合がありました。利上げの見送りでしたが、受け止めと物価や消費への影響についてどのようにご覧になるかお願いします。また、今の質問への回答について確認です。電気・ガスの補助金は3月で終了で決まりかと思っていたのですが、そうではないかもしれないという趣旨だったのですか。
(答)そちらからお話をすると、3月までということになっています。酷暑ということを申し上げましたけれども、そういったものも視野に入れなければいけないのは少し先ということになります。
 為替相場については、私の立場からコメントすることは市場に不測の影響を及ぼすおそれがあることから差し控えますが、一般論として申し上げれば、円安は物価や消費を含め、実体経済に対しては様々な影響があり、物価について言えば、円安を通じた輸入物価上昇の影響のほか、足元では天候不順による野菜の生育不良、コメ価格の高止まりなどもあって、食料品など身近な物の価格が上昇しており、国民や事業者の方々が厳しい状況に置かれているという認識は持っております。その結果、家計の予想物価上昇率の上昇を通じて消費者マインドが慎重化をしており、賃金・所得の伸びに比べて個人消費の伸びが抑制されています。
 個人消費は我が国GDPの過半を占めており、個人消費の動向が我が国経済に与える影響は大変大きいということであります。2%程度の安定的な物価上昇と、これを持続的に上回る賃金上昇を実現し、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実なものにしていくということが重要であるという認識に変わりはございません。

(以上)