赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年3月7日
(令和7年3月7日(金) 10:10~10:33 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
(冒頭発言なし)2.質疑応答
- (問)米国のトランプ大統領が関税を発動しました。カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を、中国には2月に発動した10%の関税に更に10%の関税を上乗せしました。4月にも相互関税が予定されています。いわゆるトランプ関税が日本経済に与える影響について、赤澤大臣のお考えと、今後の日本政府の対応についてお聞かせください。
- (答)米国時間の3月3日、トランプ大統領は中国からの輸入品に更に10%の追加関税を課す大統領令に署名し、対中追加関税は計20%になったと承知をしております。それから、カナダ・メキシコに対しては米国時間の3月4日に25%の追加関税が発動されたが、米国時間の3月6日にトランプ大統領がUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の適用を受ける財については25%の追加関税の適用除外とする大統領令に署名したと承知しております。また、米国時間の3月4日、トランプ大統領は議会演説で、4月2日に相互関税を発動すると発言したと承知しております。
米国政府には、日本が対象になるべきではないと考えている旨の申入れつつ、意思疎通を行っているところであると承知しております。我が国としては、今後明らかになる措置の具体的な内容及び我が国への影響を十分に精査しつつ、適切な対応を取ってまいりたいと考えております。 - (問)予算案の修正についてお伺いします。3月4日に2025年度予算が衆議院を通過しました。与野党の協議を経て修正されたのですけれども、既に公表していらっしゃる中長期の経済財政に関する試算やプライマリーバランス(PB)などへの影響はどの程度あって、また、赤澤大臣はその点についてどのように評価されているか、お聞かせください。
- (答)今般の衆議院において可決された修正案には、高校授業料無償化の所得制限の撤廃や、基礎控除の特例の創設などが盛り込まれたものと承知をしております。こうした措置の2025年度の経済への影響についてですが、高校授業料無償化は家計の負担が軽減されますが、同額を政府が負担するのでGDPへの影響は相殺されるという理解です。また、基礎控除の特例の創設については、民間消費の追加的な押し上げ効果があると考えられるものの、政府経済見通しでお示しした民間消費の伸び率1.3%の数値には変更が生じないものと考えております。こうしたことから、本年1月の政府経済見通しでお示しをしたGDPの成長率、名目2.7%、実質1.2%については、名目・実質共に変更は生じないものと考えております。
また、予算修正に伴う2025年度のPBへの影響ですけれども、高校授業料無償化や基礎控除の特例の創設がPB赤字の拡大に寄与する一方、税外収入の増加や予備費の減額はPB赤字の縮小に寄与するということです。全体として見れば、本年1月の中長期試算でお示しをした、「2001年度以降最もPB赤字幅が縮小する」との見通しが大きく変わるものではないと考えております。こうしたことも踏まえて、政府経済見通しや中長期試算を改定することは考えていないということであります。 - (問)昨日、3月6日に日本労働組合総連合会は今年の春闘の要求が32年ぶりに6%を超えて、中小組合でも30年ぶりの6%超えになったと発表しました。昨年に続き高い要求が行われたことへの評価をお伺いします。加えて、日本商工会議所の調査によると、地方の小規模企業の4社に1社が1,500円の最低賃金目標に「対応不可能」と答えるなど、中小企業の賃上げ意欲が低下しているという実態もあります。価格転嫁や生産性向上、M&Aなどの施策がどの程度浸透しているか、赤澤大臣のお考えをお伺いします。
- (答)昨日、3月6日(木)に日本労働組合総連合会(連合)が公表した「2025春季生活闘争要求集計結果」によれば、ご指摘のとおり、要求された引上げ率は昨年を上回り、全体で6.09%、中小組合で6.57%になったものと承知しております。政府としては、労使に対して、本年の春季労使交渉において、ベースアップを念頭に33年ぶりの高水準となった昨年の勢いで、大幅な賃上げへのご協力をお願いしており、政労使一体となってこれを実現したいと考えております。
また、日本商工会議所が最低賃金の引上げの中小企業への影響について調査を行われ、2020年代に全国加重平均1,500円の目標に対して、地方の小規模企業の25.1%が「対応は不可能」と回答、また、現在の最低賃金の負担感について「大いに負担」、または「多少は負担」と回答した中小企業の合計が70%を超えるなどの調査結果を取りまとめて、3月5日に公表したものと承知しております。
一方で、最低賃金については、今日よりも明日はよくなると一人一人の国民の皆さんに実感していただけるよう、2020年代に全国平均1,500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けることが非常に重要であると思っていまして、これは何のためかといえば、賃金は据え置きで動かないという縮み志向、デフレマインドを過去のものとするためです。そのために政府が中長期にわたるコミットメントをしていくということでありまして、最低賃金を引き上げていくための対応策は、石破総理から指示を受けておりますので、5月までに取りまとめたいと思っています。
また、価格転嫁については、令和5年11月に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を策定し、各産業等を所管する省庁から幅広くこの労務費転嫁指針の周知徹底とフォローアップを行ってきましたが、昨年実施された指針の遵守状況についての実態調査、これをつぶさに見た結果、指針の遵守が不十分であり、価格転嫁が十分にできていない事例が一定程度存在するという状況が明らかになっております。このため、引き続き指針の遵守徹底に取り組みつつ、サプライチェーンのより深い層にも指針の内容が浸透するように、所管省庁と連携して取り組んでいきたいと思っています。
また、価格転嫁に加えて、生産性向上に向けた省力化・デジタル化投資の促進であるとか、あるいは、人材・経営基盤を強化するための事業承継やM&Aの後押し策などについても更に具体化に努めてまいりたいと思っております。 - (問)二つあります。GDPギャップがプラス転換して、最近の賃上げの動きなどと相まって金融政策の正常化への動きへの影響をどう見るか、赤澤大臣として、また、政権としての期待も含めてご意見などがあればお願いいたします。
昨日、3月6日にイギリスのレイノルズ・ビジネス貿易大臣との会合で、あちらの大臣の地元に日産のサンダーランド工場があるというお話をされていましたけれども、日産絡みのお話があったかどうか聞かせてください。 - (答)まずご指摘のとおり、我が国経済はGDPギャップが6四半期ぶりにプラスとなりました。これもお気付きと思いますけれども、デフレ脱却を判断するに当たっての最も主だと言っている四つの指標が全てプラスになったということです。CPI(消費者物価指数)、GDPデフレーターが物価の基調ということで、その背景として、我々はGDPギャップ、ユニット・レーバー・コストをいつも挙げているところです。その4指標が四つともプラスになるという事態に久しぶりになったということであります。
来年度の春季労使交渉における高い賃上げの継続に向けた動きが見られることも含めて、明るい兆しであると考えておりまして、このチャンスをつかみ、成長型経済への移行を確実なものとしていくことが重要であると考えています。
ただ、金融政策の具体的な手法については、かねてより日本銀行に委ねられるべきと申し上げておりますとおりで、政府としてコメントすることは差し控えたいと思っております。日本銀行には引き続き政府と緊密に連携し、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を行っていただきたいということを期待しているところであります。
それから、サンダーランドです。実は、昨日、3月6日にレイノルズ・ビジネス貿易大臣のご出身がサンダーランドであり、自分の出身のサンダーランドには日産の工場があり、そこで雇用が生まれ、多くの人が働き、外国から投資を受け入れるということはこのように素晴らしいことがあるのだと、自分はそれが国内で鳴り響くように、「レゾネイト」という言葉を使っておられたと思いますが、ずっと言い続けてきているものであるということを力説されていました。それはお互いの自己紹介の中でということです。むしろ、更にそこから力が入ったのは、サンダーランドのサッカーチームについて、そのユニホームを持ってこられて、私の地元のガイナーレ鳥取のユニホームと交換させていただいたということがありました。
日産についてはそのようなことなので、私が対日直接投資を促進する担当閣僚でありますので、お互いに投資が増えるように両国の経済が発展するようにしっかり取り組んでいきましょうということで、エールの交換という感じであったということであります。 - (問)数分前に高額療養費制度の負担上限額の関係で、政府が今年8月の引上げを見送る方針を固めたとの報道がありまして、赤澤大臣は社会保障改革の担当大臣でもございますので、このお話について、今、どのような検討をされていらっしゃるか教えていただければと思います。
- (答)私は全世代型社会保障構築の担当閣僚でありますので、令和5年12月に閣議決定した改革工程に沿って改革を進めていくということを、もちろん石破総理のご指導のもと、厚生労働大臣と取り組んでいるところで、高額療養費制度の見直しもその中に出てくるものです。2028年までには行うということでありますが、その内容については、国会でもいろいろな議論が行われ、そちらを踏まえて石破総理も見直しを既に2回されているということだったと思います。
今おっしゃった報道について、私はまだ承知しておりませんので、詳細を確認してから、もしコメントがあればさせていただきたいと思いますが、大事なことはしっかりと国民のセーフティーネットとして機能するような社会保障制度を維持するとともに、同時に、石破総理がいつも強調されているように、その制度の持続可能性、次の世代もその次の世代も、この制度によってしっかりと命が守られるということが大事であるため、いろいろな点を総合的に判断しながら適切な対応を取ってまいりたいと考えております。 - (問)話題が変わりまして、防災教育について伺います。地震や津波などで多くの犠牲者が出た東日本大震災から来週3月11日で14年となりますが、まず受け止めをお願いします。また、この震災の教訓という観点から、現在の防災教育についての課題や重要性をどのようにお考えになっているか。加えて、防災庁設置に向けて有識者会議などで、この防災教育についてどのような議論を行いたいか、お願いします。
- (答)東日本大震災の発生から来週3月11日で14年を迎えるということです。改めて亡くなられた方々に、本当に哀悼の誠をささげるとともに、全ての被災者の方々に心からお見舞いを申し上げたいと思います。私自身は、皆様にも何回かお話ししたことがあると思いますが、日本航空の御巣鷹山の事故や阪神・淡路大震災が職業人としての私にとって何よりも大きな影響を与えているということもあり、防災が本当にライフワークの政治家であります。
東日本大震災についても、津波で亡くなられたご家族を前に本当に悲しんでおられる、そういう方たちの姿を今でも映像で思い出しますので、本当に大きな出来事でありました。我が国の観測史上最大の地震です。そして、従来の想定を大きく上回る大津波。これは堤防を越えないだろうと思って、10メートルの堤防の上に津波を見にいって飲まれた方たちもおられます。本当に想定をはるかに上回る大津波だった。広域かつ甚大な被害が発生した災害です。
ハード・ソフト両面の対策を抜本的に見直す凶禍になりました。当時あった議論は、直後は、防災は無理なのだと、減災しかできないと、考え方としては、とにかく逃げてくださいと、車や家など、そのようなものはある意味どうでもよいから逃げてくださいということで組み立てるというような、本当に大きな見直しがあったことです。大規模災害を見据えた防災対策を強力に推進していく契機となったと認識をしています。
防災意識や防災教育について申し上げると、「釜石の奇跡」と呼ばれるものがありました。これは本当に立派で、中学生が小学生の手を引き、あるいは小学生たちが「おじいちゃん・おばあちゃん急いで逃げよう。」と呼びかけ、更には、こどもたちだけの判断で、「ここでは危ない。もっと高い所に逃げよう。」と言って、ここに逃げろと大人たちから教えられた所から更に高い所に逃げているのです。「釜石の奇跡」と呼ばれるものもありました。それから、一方で、これは名前は挙げませんけれども、本当に多くの児童、そして教職員が亡くなられた事例もあります。
それがどこで分かれたのかということを考えると、日頃からの教育で、小学校のこどもたちが自らの判断で避難して、全員が大津波から生き抜けるように、あるいは避難しようとしない祖父母や父母を説得するとか、周囲の人の命も救えるように、平時から自らの命は自らで守る、地域住民で助け合うという意識と、発災時の適切な行動が本当に重要であると、教育の重要性はどれだけ言葉を費やしても足りないと思います。
「津波てんでんこ」という言葉は皆さんも聞かれたことがあると思いますけれども、いわゆる正常性バイアスと戦って、自らの命は自らが守る、率先避難者たれということ。逃げろと言いながらも、自分が逃げることができる人がいるかいないかで本当に助かる人の割合が変わってきます。このことを国民一人一人が肝に銘じて行動する。このような社会をつくることが災害大国である我が国にとって、人命・人権最優先の防災立国を実現する上で本当に重要だと思います。
防災の話になると力が入ってしまい恐縮ですが、防災教育は、私が内閣府の3度目の防災担当の副大臣であった2021年に「防災・減災、国土強靱化ワーキング・チーム」で取りまとめた五つの提言のうちの一つです。これは繰り返し申し上げていますが、私のXのトップに常に固定して、2021年から全く動かしていませんので、ご関心があれば見ていただきたいと思います。
現在実施している防災庁設置準備アドバイザー会議でも、防災教育に本当に精通された方々に参画していただいています。先ほど申し上げた「釜石の奇跡」の立役者といわれている東京大学の片田敏孝(かただとしたか)先生、そのような方にも参加いただいています。防災は人命最優先で命を守り、地域、ふるさとを守る、大事にすることでもあり、教育にとってかっこうの材料であります。防災教育を進めることで、10年後には地域を支える大人が育ち、20年後には地域の防災文化に昇華していくということです。デジタル防災教育の進展も大いに期待しておりますし、保護者の関心も高く、波及効果が大きい未就学児に対する防災教育にも力を入れていきたいと思っております。
令和8年度中の設置予定の防災庁においても、国民の防災意識の向上や防災教育は重点的に取り組むべき施策の一つと考えておりまして、そのための体制づくりを全力で進めていきたい、更に加速していきたいと考えております。 - (問)連合の春闘要求のまとめのことで、確認で伺えればと思ったのですけれども、先ほど、石破総理からの要請、昨年の勢いでの大幅な賃上げへのご協力という動きがありました。
- (答)これは、政労使の会議で石破総理本人が申し上げた内容です。昨年の勢いでの大幅な賃上げへのご協力をお願いしたいということを政労使の会議で石破総理本人が総理の言葉でおっしゃったということです。
- (問)私も記憶はしていますが、この6%超という労働組合の平均の要求水準を賃金向上担当大臣としてどのように評価されているか。石破総理が要請した「昨年の勢い」という範囲内で評価できるものなのか。それとも、現状の物価の上がり方から比べるともう少し高い賃上げを要求すべきなのか。ないしは、逆にインフレ加速などの懸念から、少し加熱しているということなのか。賃金向上担当大臣としての評価をできれば教えていただければと思います。
- (答)賃金について言えば、本当に最も重要な経営判断の一つですので、政府にいる者として、個々の数字については何か確定的なことや評価を申し上げるものではないのです。ただ、私自身は、連合が5%、ベアも含めて、中小企業は6%ですかね、それの水準から見ても、連合が公表されたものについて言えば、しっかり取り組んでおられるというか、頼もしい数字なのではないかなと思っております。ただ、その数字自体を私自身がいいとか悪いとかはなかなか評価ができるものではなくて、こちらからお願いをして、全力で取り組んでいただくということで、引き続き政労使一体となって昨年の勢いの大幅な賃上げの実現に努力をしていきたいと考えております。
(以上)