赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年2月18日

(令和7年2月18日(火) 9:36~9:52  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 (冒頭発言なし)

2.質疑応答

(問)2点伺います。1点目、昨日17日に発表されたGDPについて、結果についての受け止めと、また、この結果を受けて、今後どのような政策が重要になってくるか、大臣の見解をお願いします。
 2点目は最低賃金について伺います。1月に日本労働組合総連合会の清水秀行事務局長が記者団に対して、「最低賃金1,500円は通過点だが、早急に何年と年数を区切るのは慎重であるべき」と発言されました。2020年代の最低賃金1,500円の目標を掲げていらっしゃいますが、連合をはじめ、労働組合の見解をどのように言えるか、お考えを教えてください。お願いいたします。
(答)まず、昨日2月17日に公表した2024年の10-12月期のGDP1次速報値では、名目成長率は前期比プラス1.3%、実質成長率は前期比プラス0.7%とそれぞれ3四半期連続のプラスとなりました。実質成長率の内訳を見ると、内需については個人消費は7-9月期における防災関連の備蓄需要の剥落により、飲料等は減少したものの、家電や宿泊等が増加して、前期比プラス0.1%ということで、3四半期連続のプラスであります。また、設備投資は機械投資やソフトウエア投資の増加等により、前期比プラス0.5%と、2四半期ぶりのプラスとなっています。外需については、サービスを中心に輸出が増加した他、輸入が減少したことにより、寄与度は5四半期ぶりのプラスとなっております。
 雇用・所得環境を見ると、33年ぶりの高水準となった春季労使交渉における賃上げの効果や堅調な冬のボーナスを受けて、実質雇用者報酬が前年同期比でプラス3.3%と、3四半期連続の増加となりました。2024年の暦年値については、これはいろいろ報道をいただいていますが、名目GDP前年比プラス2.9%の609.3兆円となり、1992年に500兆円を超えてから32年の長きを経て初めて600兆円を超えるということになりました。実質GDPは令和6年能登半島地震や、一部自動車メーカーの生産・出荷停止事案等による影響があったものの、設備投資を中心とする内需の増加により、前年比プラス0.1%と4年連続の増加となっております。
 先行きについては、来年度の春季労使交渉における高い賃上げの継続に向けた動きが見られるなど、引き続き雇用・所得環境が改善するもとで、景気の緩やかな回復が続くことを期待しております。ただ、中国など、海外経済の下振れリスクや、通商政策など、米国の政策動向による影響のほか、食料品など身近な品目の物価上昇の継続が消費者マインドの下押しを通じて個人消費に与える影響に十分に注意をする必要があると考えています。
 政府としては、今月の閣僚懇談会における総理指示に沿って、まず足元の物価高に対する万全の対応を行うとともに、賃上げこそが成長戦略の要と、石破総理が繰り返しご発言されていますけれども、その認識のもとで、賃上げを起点とする国民所得の向上と経済全体の生産性向上を図る、別な言い方をすれば、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を確実なものとしていくということを全力で取り組んでいるところでございます。
 それから、二つ目の最低賃金についてのご質問ですが、最低賃金1,500円、年限を区切ってやることについては慎重であるべきだというご発言があったやに伺いますが、そこは我々とは明確に立場は違っているので、そのあたりも含めてご説明をしたいと思います。
 今年も春季労使交渉がスタートいたしました。政府としては適切な価格転嫁の推進や生産性向上支援に向けたDX等の省力化投資の促進、それから、人材・経営基盤を強化する事業承継やM&A等の支援策を講じるとともに、労使にはベースアップを念頭に33年ぶりの高水準の賃上げとなった昨年の勢いで大幅な賃上げのご協力をお願いしております。3月12日には集中回答日もございます。政労使一体となって大幅な賃上げを実現したいと思っております。
 最低賃金については、先の総選挙でも、私のまさに地元でですけれども、最低賃金の近傍で働き、年収が200万円に満たないと見られる方々から、私の手を握って、「暮らしていけるようにしてください」という差し迫った要望を幾つもいただいたところです。働けば暮らしていける、明日の心配なく暮らしていける国づくり、あるいは働けない人もしっかり支える国づくりということを私は政治信条にしてやってきていますので、そのこと自体は政治の重大な使命だと思っております。引き続きそれをしっかりとやっていきたい。
 そのために、石破政権においては、最低賃金について、生活が豊かになったことを一人一人の国民の皆さんに実感していただけるよう、岸田政権の取組を加速し、2030年代半ばに1,500円という目標を半分程度の期間である2020年代に実現するという高い目標を掲げました。これについてはいろいろご意見があるというのが今日のご質問ですけれども、これは、現行憲法下初の賃金向上担当大臣に任命をされた私を中心として、国民の皆様の間に非常に深く広く浸透してしまっているデフレマインドを何としても払拭したいという決意と覚悟を示したものです。私の言葉で言えば、政府のコミットメントです。
 過去30年間にわたって、物価も賃金も上がらず、成長もしないという、低賃金・低物価・低成長をどうやって払拭するか。デフレからの脱却ということですけれども、今、本当に分岐点のいいところまで来ているのだけれども、このデフレマインドがものすごく国民の間に広く深く浸透してしまっていることは大変大きな影響があるわけです。そこを何とか払拭するには、2020年代に最低賃金1,500円ということを言うことは、要するに何年にもわたって、少なくとも、長期とは言わないですけれども、短期ではない中期にわたって政府がこれをやるのだという固い決意と覚悟を示すことで、国民の間に広く深く浸透しているデフレマインドが溶け始める。その究極の目的は、それを払拭する。そのことに力があると信じて、これは断固たる決意と覚悟でやっていることなので、疑問を呈されても、慎重であるべきと言われても、それは我々と考えが違いますということを申し上げたいと思います。
 さらに言い方を変えれば、運動論というか、お立場からしてそのようなことをおっしゃることについて、特に私が何か批判する気はないのですけれども、考えは少し違うと。視点や考えていること、負っているミッション、達成しようとしている目標などが少し違うのかなという感じを率直に思っているということを申し上げたいと思います。
 それから、最低賃金の引き上げに当たっては、政労使三者で認識や方向性を共有して、現実の動きにつなげていくことが必要で、本年春までに最低賃金を引き上げていくための対応策を取りまとめることになっておりますが、今後も政労使の意見交換を開催し、官民を挙げて問題の深掘りや環境の整備を図り、認識の共有を深めてまいりたいと思っております。
(問)先生はもちろん賃上げ担当の大臣であるけれども、エンゲル係数が先進国の中で日本だけ28%を超えているわけですけれども、豊かさという意味では、政策目標としてエンゲル係数を下げるというか、そこを考えませんと、600兆円を超えても貧しくなっているという感じがしてならないのです。そのあたりは率直にこのエンゲル係数の問題をどのような政策目標で考えておられるのか伺いたいです。
(答)エンゲル係数自体を政策目標にするかどうかは議論があると思います。ただ、国民の所得や賃金が上がっていけば、端的に、定性的に言ってしまえば生活水準が上がれば上がるほどエンゲル係数が下がるという有意な関係があることは理解をしておりますので、私どもがやっている賃上げこそまさに成長戦略の要、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行、これが実現すれば、今ご質問のあったエンゲル係数も少なくとも結果として自然に下がっていくようになるだろうと思います。
(問)先ほどのGDPに関連して、個人消費の弱さについて大臣のお考えをお伺いしたいと思います。GDPは今回プラスではありましたけれども、個人消費が0.1%でとても弱く、2024年度暦年では個人消費がマイナスでした。もちろん足元の物価高はあると思うのですけれども、内閣府の調査でも貯蓄率が上がっているというような調査もありまして、根本的に日本の個人消費が強くなるためには抜本的に変えなければいけない部分もあると思うのですけれども、どうすれば日本の個人消費が強くなっていくのか、大臣のお考えをお聞きできればと思います。
(答)事実関係としてGDPに占める個人消費、これは5割を超えていたかと思いますので、そこをしっかり増やしていくようなことを取り組まないと、なかなか成長につながらないということはおっしゃるとおりだと思います。
 また、個人消費について言えば、3四半期連続のプラスといいながら、前期比プラス0.1%。ただ、まずこれについて一つ指摘をしておくと、1-3月期に自動車の関係で問題があって、消費がぐっと落ちたというか、そこの影響が大きいため、0.1%という数字がその1-3月期の問題がなければもう少し高かっただろうということは言えると思います。
 加えて、どうやってそれを伸ばしていくのかという話ですけれども、それは実は先ほど私が申し上げたことに関係するのは、デフレマインドです。これは国会でも何回か申し上げていますけれども、私もそれが合っているのではないかと思うのは、例えば米国だと、物価が上がり始めると、さらに上がる前に買っておこうということで、それを買いだめと呼べばいいのかどうかは分かりませんが、消費は増える傾向にあります。一方で、我が国で物価上昇が始まると、観察されるのは節約節約と。今、皆さんの報道にも出てきますけれども、物価が上がれば節約しなければとスーパーを探し回って、身近な物の値段が上がっているので、少しでも安い所でということですね。だから、デフレマインドが深く広く浸透している。物価上昇という同じ事象が起きても国民の行動パターンが違うというようなことになっているわけです。
 これは改めて説明するまでもないですけれども、そのように物価が上がり始めたらさらに上がる前に買おうという国民のもとでは何が起きるかといえば、消費が増えるので、企業収益が良くなって、さらに賃上げをしようとなって、また消費が増えてとなるものが、改めてこちらのほうは解説しませんけれども、デフレマインドが強い我が国においては逆の循環が起きてしまうということです。デフレマインドの払拭は極めて大きな意味があるので、賃金向上担当閣僚を命じられている私からすれば、そこを本気で政府が変えようとしていると分かってもらうために、政府のコミットメントとして、2020年代に最低賃金1,500円を言っているということは改めて強調させていただきたいと思います。
 それをした上で、もう一つさらに広く定性的に言っておけば、消費をしないというのは将来に対する不安なのだろうと思います。賃金を上げていく、最低賃金を上げていくことで、明日の暮らしについて心配せずに、しっかりと消費ができる。当然だと思うのは、今月、家賃を払えるかなと思っておられるような方がいたとしたら、その方はなかなか消費をされませんよね。何とか家賃だけは払おうと思って頑張られるということだってあるわけです。そのようなことを考えると、将来に対する不安、それの大きな不安は、要するに、今の稼ぎで暮らしていけないのではないかということだと思うので、それをしっかりと払拭すれば、確実に消費は戻ってくるというか、力強く増えると思います。将来不安についてなくしていくことが一番大事なことかなと思います。その中には、もちろん、日々の稼ぎもありますし、年金制度に対する信頼など、そのようなこともあります。いろいろな意味で不安をなくしていく。デフレマインドを払拭していく。それが大きなお答えの柱になるのではないかなと思います。

(以上)