赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年2月7日

(令和7年2月7日(金) 9:34~9:56  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 (冒頭発言なし)

2.質疑応答

(問)2点伺います。1点目は、2月5日の予算委員会で赤澤大臣から、「足元はインフレの状態、日銀の認識と齟齬はない」という発言がありました。前日には、石破首相が、「今、インフレとして決めつけることはしない」と発言していましたが、改めて政府の見解を伺います。
 2点目、昨日2月6日に、日銀の田村直樹審議委員は金融経済懇談会で、「2025年度後半には少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げていくことが物価安定の目標を持続的・安定的に達成する上で必要だ」と発言しました。足元の経済状況を鑑みた時に、こうした発言に対する大臣のお考え、また、総合的に考えた時に金利が上がることを大臣自身はどう受け止めるかを伺います。
(答)まず、2月5日の予算委員会での私の発言についてご質問がありました。植田日銀総裁が現状において消費者物価が上昇している点を踏まえ、「インフレの状態という認識に変わりはない」とおっしゃったかと思います。私自身も2月5日に申し上げたとおりで、「経済学的に申し上げれば、足元の消費者物価が上昇しているという点で、インフレの状態というのはそのとおりで、日銀の認識と齟齬はない」ということを申し上げたと思います。
 一方で、あわせて必ず議論になるのは、それではなぜデフレ脱却ではないのだという話で、そこのところについて言うと、物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないというのが定義なので、足元、消費者物価が上昇しているからインフレの状態ではあるけれども、再びそうした状況に戻る見込みはないとはまだ言えないので、デフレ脱却はしていないということは我々の中で全く矛盾なく整合しているということです。我が国経済が再びデフレに戻る見込みがないとまで言える状況にはなく、デフレ脱却には至っていないということです。
 政府としては、全体を申し上げれば、安定的な物価上昇のもとで、それを上回る賃金上昇が安定的に実現をする、そのような経済を目指しています。賃金が上がり、家計の購買力が上がることで消費が増え、その結果、物価が適度に上昇する。それがまた企業の売上や業績につながり、新たな投資を呼び込み、企業は次の成長段階に入り、また賃金が上がるという好循環を目指しているということになります。
 それから、利上げについての日銀の田村審議委員のご発言を受けてのご質問があったと思います。金融政策の具体的な手法については、これまで申し上げたとおり、日本銀行に委ねられるべきと考えておりまして、政府としてコメントすることは差し控えます。日本銀行には引き続き、政府と緊密に連携をし、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を行うことを期待しております。政府としては、経済あっての財政の考え方のもと、成長型経済を実現しつつ、財政状況の改善を進めるために、潜在成長率の引き上げに重点を置いた政策運営を行っていくことに加えて、歳出・歳入両面の改革を継続していくところでございます。
(問)先ほどのデフレ脱却の関連で伺います。インフレ状態という認識に齟齬はないというお話でしたけれども、これから各指標、毎年度出るものも見つつ、いつこの脱却宣言をするかというのが検討されると思うのですけれども、現時点の経済状況を踏まえまして、脱却宣言ができる見通しは現時点でどのようにお考えでしょうか。
(答)我々は物価の基調というのは、通常二つの指標で見ています。消費者物価と、それから、GDPデフレーターです。それ以外に物価の背景と言われるものが六つありますけれども、そのうちの二つを特に重視して、最初に申し上げた二つとあわせて4指標と言っています。それは、GDPギャップ、ユニット・レーバー・コストです。
 今申し上げた物価の基調と、それから、背景のそれぞれ2指標をあわせて四つを眺めた時に、少なくとも事実関係として、全部がプラスになったことはあるのですけれども、過去、長くて3四半期しか続いていないと。だから、デフレ脱却を考える時に、それだけで決めるわけではなく、総合判断なのですが、基本的な四つの指標と思っているものがプラスであることが1年続いたことがないのです。そのような状態で判断できるかと。
 今、足元はGDPギャップがマイナスです。そのようなことなので、結局、判断はまだできる状況にはない。過去3期連続で、今の4指標がプラスだった時ほどにも判断できる状況にないということになります。
 デフレから抜けられたという判断は大変難しいものです。本当にこれは難しいものなので、失敗は許されないという思いで、しっかりと考えていきたい。成長型経済に移行できるか否かの本当に分岐点なので、判断を誤ってデフレに戻るようなことがあれば、これは政策当局として大変なことになるので、そのあたりをきちっと考えていきたい。
 ご参考までに、それ以外にも賃金上昇や企業の価格転嫁の動向、それから、物価上昇の広がり、更には予想物価上昇率、期待インフレ率と経済学の本では書いてあるけれども、その四つも含めて八つの指標で総合的に判断するというのが従来からのポジションです。そこは何も変わっていませんので、それを総合的に見ながらということになります。
 「インフレの状態ならなぜデフレ脱却しないのだ」という、言葉ですぐにそのような質問につながってくるのですけれども、それほど簡単なことではないと。我々はきちっと指標を継続的に追い掛けながら、過去の経験も踏まえて、失敗のない判断をしたいと思い、デフレ脱却と宣言できる状況にはないというのが、最大限丁寧にご質問の趣旨に答える意味で説明をすればそのようなことです。今後とも、そのポジションを我々は崩していませんので、過去、それはずっと一貫しているので、そのあたりのぶれが何かあるかといえばないということであります。
(問)実質賃金について2月5日に発表された去年1年間の実質賃金は0.2%減と、3年連続でマイナスとなりますが、こちらの大臣の受け止めをお願いします。そして、一方で、11月、12月の単月で見ると2か月連続でプラスとなっています。この足元の基調と、去年全体の傾向と、大臣の分析であったり、お受け止めがありましたら教えてください。
(答)いずれも低物価・低賃金・低成長と言われた、それが30年続いて、国民の皆様のデフレマインドが極めて強くこびり付いてしまっている状態から抜ける、本当に一歩手前と期待してもいいような状況にはなりつつあるのだという認識を私自身は持っております。2月5日公表の毎月勤労統計調査における2024年12月の速報値では、名目賃金は前年同月比プラス4.8%、2024年5月から8か月連続で2%以上の伸びが続き、これは1992年以来ということになっております。それから、実質賃金については名目賃金の伸びが物価上昇率を上回ったことから、前年同月比プラス0.6%と2か月連続のプラスとなったのは、今おっしゃったとおりであります。また、2024年の暦年値だと、名目賃金は前年比プラス2.9%、1991年以来の伸び率となり、一方、実質賃金は物価上昇率が名目賃金の伸びを上回って、前年比マイナス0.2%となりましたけれども、2023年はマイナス2.5%ということだったので、2024年度の0.2%はマイナス幅はゼロ近傍に縮小しているということだと思います。
 就業形態別に見るのも大事だと思っていまして、実質賃金の暦年値を見ると、フルタイム労働者はボーナスを含む現金給与総額で3年ぶりのプラス。パートタイム労働者の時給も3年ぶりのプラスということになります。統計上、全部を合わせると、パートタイムの方たちの割合が増えて、全体の平均が下がるようなことも起きますけれども、それぞれしっかりと分けて分析をすると、今申し上げたようなことになっています。
 また、本日公表された2024年12月分の家計調査では、2人以上世帯の消費支出が名目で前年同月比プラス7.0%で、11か月連続の増加となっております。実質では前年同月比プラス2.7%と、5か月ぶりの増加となっています。これに伴い、2024年暦年値の消費支出も、名目では前年比プラス2.1%と4年連続の増加で、実質では前年比マイナス1.1%と2年連続の減少となっていますけれども、これもマイナス幅は縮小しております。2023年はマイナス2.6%だったものが、2024年はマイナス1.1%です。一部自動車メーカーの生産・出荷停止など、イレギュラーなものがあってこのようなことになっていると思っていますので、良い方向に推移しているのではないかと理解しています。
 個人消費は我が国のGDPの過半を占めており、これは石破総理がよくおっしゃることですが、個人消費の動向が我が国経済へ与える影響は極めて大きいので、賃上げこそが成長戦略の要との認識のもとで、賃金の伸びが物価上昇を安定的に上回る経済を実現してまいりたい、個人消費の力強い回復につなげてまいりたいと考えております。
(問)2月5日の省庁別審査で、立憲民主党の馬淵澄夫議員から、給付金の事務経費について質問があり、そこで「事務経費を削減するべきだ」という質問に対して、赤澤大臣は「大変な重要なご指摘」というふうに答弁されていたかと思います。給付金の事務的経費削減に向けて、今後どのように検討していかれて、どのような対応を検討されているのか教えてください。
(答)大変重要なご指摘と思った背景を言うと、デジタルの威力はすごくて、私が時々例えで言うのは、馬車の時代に自動車が発明されたようなもので、今は本当に時代の転換点なのですと。馬車の時代に自動車が発明されたのに、「自動車はスピードが出るため、事故が起きたら多くの人が亡くなるからあれは危険だ」などと言っていては仕方がありません。馬車の時代に自動車が生まれたら、自動車を早く作れる国になり、自動車を国中に普及させ、それが国の将来のためになると思うのです。同じようなことが本当にデジタルで起きていると思っています。
 一つだけ例を挙げさせていただくと、私自身がライフワークで取り組んでいる防災の世界だと、マイナンバーカード、あるいはマイナ保険証で避難所の受付をすると10分の1の時間で済みます。それは、500万人が避難すると言われる南海トラフ地震の時にものすごく威力を発揮するはずです。電力が落ちている等、いろいろなことはあり得ますけれども、とにかくものすごく威力を発揮するはずなのです。
 本当に私の琴線に響いてしまったのですが、馬淵委員が指摘されていたことは、デジタル庁が始めた給付支援サービスはこれを使うと申請から振込までのプロセスがフルデジタル化されるわけです。先ほど私が申し上げた、10分の1の時間で、マイナンバーカードでやれば避難所の受付が済むという話と同じ流れで言うと、申請から振込まで数日で行えるわけです。そのようなものが作られている時に、それを使わない手は本当にないのであって、全市町村がこれを使ったら業務負担は劇的に減るし、利用者の皆様が我慢しなければいけない日数も減るわけです。そのような思いで、私の中でものすごく響くところのあるご質問だったわけです。
 ご指摘のとおり、デジタルを活用した給付金事務の効率化や労務費の低廉化は重要であると認識しています。低所得者世帯向けの給付金をはじめ、経済対策に盛り込んだ物価高に対応する様々な施策について、一日も早く国民の皆様にお届けし、それらの効果を実感していただけるよう、迅速かつ効果的な執行に努める必要があります。その際、DXを前提とした簡素かつ迅速な給付の仕組みを構築することは有効であると考えています。私としては、給付事務の効率化や事務費の低廉化についても、施策の進捗管理を継続し、後押ししていくように、石破総理から私への指示がそのものですが、私も同じことを事務方の皆様に対して改めて指示をしたところであり、引き続き関係府省と連携してしっかりと取組を推進していきたいと考えています。
 その上で、誤解のないように申し上げておくと、馬淵さんがおっしゃっていたことそのものを実現するということまで申し上げたわけではありません。皆様もご案内のとおり、自治体は2025年が標準準拠システムへの移行の期限であるわけです。その移行の期限をしっかりとやり遂げた後は、今ありました給付支援サービスを使うことは前よりもかなりやりやすくなっているはずなので、私が善意で解釈すると、そのタイミングでこれを使おうと思っている自治体もかなりいるのではないかと考えています。いくつもの改革がデジタルで続く中で、言われたものを全てこなしながらいくやり方もあるけれども、それはなかなか大変な中で、私は多くの自治体が標準準拠システムへの移行とあわせてこのシステムを使ってくれるようになれば、自治体の負担も相当減り、利用者の皆様にとっても便利になり、Win-Winの状態になるのではないかと期待していることを申し上げた次第です。
(問)日本時間の明日2月8日未明から日米首脳会談が始まります。主に経済の分野でどのような議論や成果を期待されているかお願いいたします。
(答)石破総理が2月6日から8日まで米国を訪問し、トランプ大統領と初なる対面での日米首脳会談を実施する予定と承知しています。報道によれば既に米国へ着いたようです。今回の日米首脳会談は、石破総理とトランプ大統領との率直な意見交換を通じて、個人的な信頼関係をまず構築するとともに、ご指摘の経済面、あるいは安全保障等の諸課題について認識の共有を図り、一層の協力を確認し、日米同盟を更なる高みに引き上げていくという機会であると位置付けられているものと私は承知しております。
 経済という面で言えば、世界全体のGDPの4分の1以上、我が国の輸出先としても2割を占めている米国でありますので、経済面の話も大変重要でありまして、具体的な内容や成果については現時点で予断をもって述べることは差し控えますが、対米直接投資残高は5年連続日本が1位ですけれども、更に拡大する余地が大いにあると思っています。
 例えばAIでは日米が協力してしっかりと世界中の国に使ってもらえるようなものを開発し、普及していくことは非常に大事だと思います。まさに先端技術分野における我が国の技術力を活かした協力です。幅広い分野での日米経済協力を更に拡大・進化させていきたいと考えています。防衛装備品という意味で言えば、安全保障の分野ですけれども、逆にそれ自身が経済に密接に関わるということになりますので、全体として日米同盟が更なる高みに引き上げられ、日米間の経済活動も活発化し、両国国民のためになるような、そのようなことにつながる日米トップの初会談になればいいなと思っています。
(問)追加で、関税の貿易戦争が今後激しくなるようであれば、日本経済も影響を受けると思うのですけれども、そういった貿易戦争が激しくならないように、今回の日米首脳会談をきっかけに日本が何かできることはあるのでしょうか。
(答)そこは、まず率直に考えていることをぶつけ合うということだと思います。トランプ大統領はアメリカファーストですけれども、改めて申し上げるまでもなく、石破総理はジャパンファーストで考えているわけです。その両方の接点をうまく見つけて、両国の発展につなげていくと。
 そのような意味で、我が国は非常にいいポジションにいると思うのは、先ほど申し上げたとおり、5年連続対米投資残高は1位ですので、トランプ大統領の重大な関心事であるアメリカ国民の雇用、具体的な何人の雇用、そのようなものを石破総理はしっかりと説明できる立場にあります。世界で一番アメリカ国民の雇用創出に協力している国は5年連続日本でありますということは当然ながら言えるわけです。それこそ丁寧にやろうと思えば、米国の何州のどこにこのような工場を日本のこの企業が建てて、何人の雇用を生んでといったことを、トランプ大統領にご関心があれば本当にどこまでも丁寧に説明をできるわけです。その投資が1位という状態が続けば、どこの国よりもそれをしっかりとやることができるということはあると思います。
 また、防衛装備品の話も、私の所掌を離れますけれども、過去で言えば、多少滞っていると言われるFMS(対外有償軍事援助)等、あのようなものも含めて考えられるところでありますし、いろいろな意味で協力できるところは多々あるだろうと思います。そのあたりをしっかりと説明します。
 あとは、いろいろな意味で、あまり細かくは申し上げませんけれども、今の世界の安全保障環境は、戦後最も複雑かつ厳しい安全保障環境に我が国が置かれているということです。その状況の中で、アメリカにとっても日本がベストフレンドであると。日本にとっても米国が間違いなくベストフレンドだということをきちっと確認をすることにも非常に意味があるのかなと思っています。

(以上)