赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年1月24日

(令和7年1月24日(金) 9:53~10:10  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 (冒頭発言なし)

2.質疑応答

(問)2点伺います。1点目、今朝発表された12月の消費者物価指数、生鮮食品を除く総合が前年同月比3.0%上昇と、1年4か月ぶりの高い水準でした。毎月勤労統計の11月の実質賃金はマイナスだった速報値から一転して改定値はプラスになりました。事実上、春闘も始まりましたが、足元の経済状況の受け止めと今後の春闘、賃上げへの影響をどのように見ていらっしゃるか教えてください。
 2点目、成長分野への労働移動に関して、先日1月15日のテレビ出演で、「必ずしも成長分野でなくても、同じ分野でもいい」という趣旨の発言があったかと思います。大臣のお考えとして、成長分野への労働移動が必要とお考えか、また、必要であれば政府としてどのような後押しが必要か教えてください。
(答)まず、本日公表された全国の12月の消費者物価指数でありますが、総合で前年同月比プラス3.6%ということです。生鮮食品を除く総合で前年同月比プラス3.0%。それぞれ11月から上昇幅が拡大したということになります。主な要因としては、生鮮食品については昨年夏以降の高温や12月の気温低下による生育不良などにより、野菜の価格が上昇していることがあります。また、エネルギーについては電気・ガス料金の酷暑乗り切り緊急支援が10月末で終了したことにより、上昇幅が拡大したことなどがあると思っております。
 同じく本日公表された毎月勤労統計11月調査の確報値では、ボーナス(特別給与)が確報値で大きく上方改定されたことによりまして、名目賃金はプラス3.9%、実質賃金プラス0.5%となったと承知をしております。実質賃金がプラスとなったのは2024年7月以来4か月ぶりということでございます。
 政府としては、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現に向けて価格転嫁の徹底とか、省力化投資の促進、また、経営基盤の強化に資する事業承継、M&Aの支援などを進め、賃上げ環境の整備などに引き続き取り組んでいきます。そして、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回るという経済、あるいは賃上げと投資が牽引する成長型経済といったことを申し上げていますが、そういった我々が目指す経済を実現するまでの間、賃上げの恩恵を受けにくい方々をきめ細かく支援するため、引き続き当面の対応として物価高の影響を特に受ける低所得世帯向けの給付金や、地域の実情に応じた物価高対策を後押しする重点支援地方交付金など、総合的な対策を講じることとしております。そういったものが盛り込まれた予算を含め、各施策の迅速かつ適切な執行に努めてまいりたいと思っております。
 そして、春闘が始まるというご指摘がございました。その関連で言うと、流れをざっと見てみますと、春季労使交渉に向けて、昨年11月26日だったと思いますが、政労使の意見交換で石破総理から3点強調してあります。一つは「ベースアップを念頭に」ということ。一つは「高水準の賃上げとなった今年の勢いで大幅な賃上げについてお願いする」ということ。今となっては去年の勢いということです。あと、「中小企業や地方に賃上げの流れが波及することが重要である」ということ。繰り返しになりますが、ベースアップを念頭に、昨年の勢いで、それから中小企業に波及という3点が重点ですよということを石破総理から申し上げています。
 1月21日に経団連が公表した経済労働政策特別委員会報告、いわゆる経労委報告においては、これらの3点についてしっかりと受け止めていただいて、今年を賃上げの流れが定着する年にしたいということを労使の合意のもとに共通認識として打ち出していただいておりますので、大変心強いことだと思っております。
 そのような意味で、中小企業の賃上げについて、今みたいな動きがあったこと。労使共に賃上げの力強い流れを定着させ、中小企業へ波及させることが重要であると、この方向が共有されたということであります。そのような認識がそろっておりますので、しっかり賃上げにつなげていきたいと考えています。
 それから、成長分野への労働移動ということですけれども、ご指摘の点は私も強調したいところで、今、政府はジョブ型の人事を導入すること、それから、リ・スキリングを進めること、そして、労働移動の円滑化をやっていくという三位一体改革によって賃金が上がっていくような方向を目指しているわけであります。その中で、労働移動の円滑化と言った時には、必ず決まり文句として、成長分野への労働移動の円滑化ということが出てくるのですが、私はこの点は注意点があると思っています。成長分野への労働移動の円滑化、これは全く私は肯定的です。それはそのとおりなのだけれども、少し注意点があると思うのは、成長分野への労働移動の円滑化というと、例えばデジタルスキル等が全くない人がそれを身につけて、プログラマーとして生きていくとか、そのようなイメージになりやすいので、それだけではないということは強調しておきたいのです。
 例えばどのような分野でも、必ずしもいわゆるIT企業でなくても、各企業分野でちょっとしたデジタルスキルを身につけること。例えば身近なところで言えば、Excelを使えるようになるとか、いろいろなことをやると急にその人の分析能力が高まり、今まではコピーをしたり、そのような仕事しかできなかった方が、何か分析をするような仕事に同じ分野の中で動いたりすることが考えられます。そうすると、当然給料も上がっておかしくないですし、そのようなことも含めて必ずしも成長分野への移動ということの意味が、何か業種が全く違う所に移る労働移動だけを勧めているわけではなくて、業種が同じ中でもちょっとしたリ・スキリングで何かパソコン能力が増えるとか、AIが少し使えるようになりましたとか、デジタル関連が多いと思いますが、そのようなものも含めスキルを身につけて、自分について生産性を上げていく努力をされた方がしっかり賃金等でも報いられて処遇されていくとなると、これはGDPも増えますし、税収も上がっていきますし、ご本人の幸福度もとても高い、会社もその方の生産性が上がったことで恩恵を受ける、それが目指すべき方向です。
 私が申し上げたかったことは、成長分野への労働移動について何か問題を感じているわけでは全くなく、それはすごい大事なのだけれども、必ずしも業種を飛び越えて、皆がIT産業を目指してくださいという意味では全くないということを強調したくて申し上げた次第でございます。
(問)国会召集について伺います。本日召集される通常国会では、来年度予算案に加えまして、防災対策強化として災害対策基本法や地域経済活性化推進法の改正案なども提出されます。石破総理は国会審議について与野党での熟議を掲げていますが、少数与党としてどのように政権運営や国会運営に臨むべきか、大臣のお考えをお願いします。
(答)今おっしゃったように、予算をはじめ、いろいろな課題を解決に向けて取り組む国会になってまいります。これは私も大変肝に銘じなければいけないと思っているので繰り返し申し上げていることでありますが、先般の衆議院選挙では、国民の皆様方から厳しい審判をいただいたわけです。我々はこれまでも、当然ですけれども、国民の皆様のために誠心誠意ベストなものをつくり、その政策を実行してきたつもりだけれども、選挙の結果を見る限り、それに対して国民の皆様から、自民党は少し独りよがりではないのかというご認識のもとにお灸を据えられたということだと思っています。
 したがって、我々のやるべきことは、今まで以上に他党にも丁寧にご意見を賜り、可能な限り幅広い合意形成が図られるように、良いものがあれば謙虚に、そして真摯に採り入れていくと。国民の皆様方の安心・安全と豊かさを守るという最終目標に向けて、少しでもいい政策を実現していくつもりでございます。また、もちろん政治とカネの問題が我々の信頼を失う一番大きな要因だったので、そういった面でもしっかり与野党に熟議をしていただいて、いい結果が出ればいいなということを考えております。
 石破総理も1月6日の年頭会見で述べていたとおり、少数与党であり、通常国会においても野党の賛成がなければ法案も予算も通すことができませんので、誠心誠意ご説明を尽くして、多くの国民の皆様方、野党の支持者の皆様、更には無党派の皆様にご納得いただけるような環境をつくらなければ、野党の賛成は得られないということであります。石破内閣の一員として多くの方々にご理解いただけるように、誠心誠意最大限の努力を図り、納得と共感が得られるような形で国会審議を進めていきたいということを強く思っております。
(問)消費者物価指数のところで1点認識の確認をさせてください。足元で3%台に伸び率が拡大したというのは、政府と日本銀行が目標としている2%からの乖離が広がったということにもなりますけれども、一方で、長期で見れば、一時4%台まで上がっていたところに比べると落ち着いていると言えます。大臣はこれまで日本銀行の金融政策への信頼感、2%の目標に向けて連携がうまく取れていて、完成形に近づいているとおっしゃってきましたが、その認識に変わりはないかというのを教えてください。
(答)その点については、先ほどのご質問にお答えした時にも申し上げたとおり、今回、11月から上昇幅が拡大したことは事実なのですが、一つには、生鮮食品の影響が非常に大きかったということがあります。これについては、今後ずっとこれがこのまま続くのかどうか見ていかなければいけない部分があります。エネルギーについても、これは上昇幅が拡大したわけですけれども、今後の推移を見ていく必要があると思っております。
 全体としては、今ご指摘のあったように、コストプッシュ型の物価上昇が一番激しかった時と比べれば、まだそこまではいっておりませんし、年単位で見ていけばしっかり物価安定目標の持続的・安定的な達成に向けてという大きな流れは、現時点において変わっていると認識しているものではありません。
(問)防災庁関連で2点お伺いします。1点目、先週のテレビ出演で防災庁が持つ権限についてお話しされていたと承知しております。防災庁設置に向けては専任の大臣を置くとの考えも表明されていますが、防災大臣が持つ権限、他省庁に対して果たす役割についてお考えを改めてお聞かせください。
 また、2点目、1月に有識者会議を立ち上げる旨を表明されていましたが、1回目の開催スケジュールの検討状況を教えてください。
(答)まず、防災庁の権限についてであります。大事なのは、防災というとありとあらゆることが関係してきます。だから、関係省庁が非常に多いということになります。温かい食事とか、そのようなものを届けようと思えば、物流関係で言えば、例えば国土交通省かもしれませんし、あるいは医療の関係とか、介護のサービスとかが不可欠となれば、厚生労働省かもしれません。いろいろなコンビニのお力を借りたり、そのようなことになれば経済産業省ということもあるかもしれません。例えばごみの処理、がれきの処理ということになると、環境省も関わってくると。なりわいといったことで言えば、当然ながら農林水産省も関わってきます。
 とにかく防災庁がしっかりと事態対処をできるようにする。そこは当然ながら人命・人権最優先でいくのですけれども、その後の復旧・復興とか、そのようなことも全て視野に入れた時は、本当にありとあらゆる役所にかかわってご協力をいただかなければいけないので、その点についてしっかりと、私どもの言葉で言う勧告権限ということになりますけれども、総合調整をする官庁として、各省に対する勧告権限を持ってもらうということは絶対に必要だと思っています。その上で、勧告権限についてもいろいろなパターンがあって、勧告権限はあるけれども、それを受けた側の省庁が特に尊重義務というようなことが法令上書かれていない例もありますし、中にはその勧告を受けた省庁は、基本的にそれを尊重する義務を負うというような立て付けの、そのような総合調整官庁もあります。
 なので、そのような中で、私どもの心積もりとしては、国民の皆様の生命・身体・財産に係る災害対応なので、極力強い、しっかりした勧告権限を持って総合調整が行える、その結果、国民の皆様の生命・身体・財産をしっかり守り抜ける、国民の皆様に安心・安全を感じていただけるような形にしていきたいということを思っております。
 それから、有識者会議についての日程でお尋ねがございましたが、申し上げられるのは、近々開催することとしており、日時など詳細が決まった段階でお知らせさせていただきたいということになります。その場でも、今、私なりの考えを申し上げましたけれども、防災業務の企画立案に係る総合調整を担い、個別の施策を実施する各省庁と一体となった災害対応を一層効果的・効率的に行うため、それを実現するための権限としてどのような形がふさわしいか、有識者の方々から様々なご意見も伺いながら、勧告権の在り方を含め具体的な形をよく検討していきたいと思っております。
(問)ありがとうございます。今、1点目のほうの質問で追加になるのですけれども、念頭に置かれているのは、例えば復興庁だと、尊重義務まで設置法で入っているかと思うのですが、そういったところに似たようなというか、尊重義務もセットで設置法などで明記するべきだというのが赤澤大臣のお考えでしょうか。
(答)私としてはそれが望ましいのではないかという思いはあります。ただ、当然ながら有識者の皆様のお考えも入れますし、最終的に法律として成立させるには国会でご了解いただく必要があるので、現時点では私としてはそのような方向がいいのではないかと思っておりますけれども、しっかりとそこを含めて、有識者の皆様のご議論をいただいた上で法案の形にまとめて、国会でご審議をいただく。その全てのプロセスを令和8年度の防災庁設置にしっかりと間に合うような形でやっていきたいということになります。

(以上)