赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年1月7日

(令和7年1月7日(火) 11:43~12:04  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 (冒頭発言なし)

2.質疑応答

(問)昨年は賃上げ、デフレ脱却、地方創生など、様々なキーワードがあったかと思いますが、この1年をどのような1年にしていきたいか、大臣の今年の抱負を伺えますでしょうか。
(答)昨日1月6日に石破総理の随行で伊勢神宮を参拝してまいりました。石破総理が会見で、「本年が全ての皆様にとって平和で安全で実り多い1年となりますようにお祈りをいたしてまいりました。本年、令和7年は戦後80年の節目の年に当たります。改めて平和について、そして平和国家日本の在り方について、国民の皆様と共に考える年にしていきたい。そのような思いを強くいたしたところであります。戦後80年に当たり、民主主義についても改めて考える年としていきたいと思っております。」とおっしゃいました。私も全く同感であります。
 そのことを申し上げた上で、今、経済財政政策担当大臣としてこの場に立っておりますので、自分の担務について申し上げれば、今まさにおっしゃったように、ポイントはあまり昨年と変わるものではありませんが、本年はコストカット型経済から脱却をし、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかどうかの正念場が続いている年だと思っております。経済対策、そして、令和6年度補正予算を迅速かつ着実に実行し、国民の皆様に対し速やかに支援をお届けしていきたいと考えております。
 その上で、補正予算と一体的に、かつ、足元の物価高、賃金や調達価格の上昇に対応しつつ、メリハリの効いた編成を行った令和7年度予算の早期成立を目指してまいりたいと思っております。これにより、国民の皆様に生活が豊かになったことを実感していただけるよう、そのような経済をつくってまいりたいと思っています。
 それから、賃金向上については、昨年11月26日に石破政権で最初となる政労使の意見交換を開催させていただきました。その場で2025年春季労使交渉、最低賃金の今後の中期的引き上げ方針について労使の皆さんと意見交換をしたところでございます。最低賃金については石破政権として2020年代に全国加重平均1,500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けることとしております。賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、豊かさを実感できる成長型経済への移行を確実なものにしていきたいと思っております。
 また、防災庁の組織づくりに向けては、昨年11月1日に防災庁設置準備室を立ち上げました。本気の事前防災の実現に向けて、避難生活支援、官民連携、デジタルなど、防災関係各分野において、高度かつ幅広い知見を有する方々からなる有識者会議を開催することとしておりまして、専門家の方々のご意見を伺いながら、令和8年度中の防災庁設置に向けた具体的な議論について、スピード感を持ってより一層進めてまいりたいと思っております。
 石破総理も年頭の会見でおっしゃいましたけれども、今年は巳年ということでありまして、「ヘビは脱皮を繰り返して大きくなっていくということで、再生や進化の年である」と言われております。これまで先人の皆様方がつくり上げてくださった功績の上に、本年を第三の日本、すなわち平和と安全・安心を大前提とした楽しい日本、活力ある日本、そのようなことを念じ、私も石破内閣の一員として努力をしてまいりたいと思っております。
 これも会見で石破総理が触れられましたけれども、引き続き与党のみならず野党の皆様のご意見も丁寧に伺いながら、可能な限り幅広い合意形成が図られるように、謙虚に、そして真摯に、国民の皆様方が安心・安全と楽しさを感じられる未来をつくることを目指し、与えられた職務に全力で取り組んでまいりたいと考えています。
(問)年頭ですので、政権の方向性についてお伺いしたいと思います。石破総理が昨日年頭の記者会見で「楽しい日本を目指すべきだ」ということをおっしゃっていまして、大臣ご自身も「危機管理を善とし、楽しさを美徳とする、新しい日本をつくる」と折に触れておっしゃっています。この「楽しい」というのが抽象的でなかなか具体的にイメージできないので、大臣ご自身としては楽しい日本、新しい日本をつくっていくというのはどのようなことをイメージされているのか教えてください。
(答)私は今いろいろな所で、石破政権が続く限り日本の隅々に今申し上げるような哲学が浸透してまいりますとお伝えしています、それは何かといえば、「危機管理を善とし、楽しさを美徳とする、新しい日本をつくる」ということです。これは石破総理もおっしゃっていることですけれども、今のが私の言葉で、私も読んで感銘を受けた堺屋太一先生の遺作であります「三度目の日本」で言われていることは、まず我が国は明治維新、中央集権国家体制において富国強兵のスローガンで強さを目指した、ここから先はある意味、私の解説ですけれども、それは国中心のことですよね。強い日本とは、個人がラジオ体操をして体を鍛える等、そのような話ではありません。明らかに、強い日本と言った時には皆が国のことを考えています。
 それに加えて、今度、敗戦後、「物量に負けた。豊かさに負けたのだ」という総括のもとに豊かさを目指して、復興や高度経済成長期のもとで豊かな日本を目指した。これは明らかに国中心から、今度、考え方は企業中心に移っています。要は、経済産業省等が産業政策をリードする中で多くの企業を世界の中で隆盛させようということでやってきて、それも間違いなくジャパン・アズ・ナンバーワン、大成功を収めたわけです。
 それではこれからはどうなのだろうといった時に、人口がどんどん減る中で、国民お一人お一人がものすごく今まで以上に大事になってくるわけです。人材は貴重なものである、そのような前提で、これからお一人お一人の国民の皆様が楽しいと感じられないと駄目なのではないかと。国中心、企業中心でものを考えてきた我が国が、それは押しも押されもせぬ先進国、一等国の日本で、それでは最後に何を目指すのだといえば、それは国民のお一人お一人が楽しい、日本に生まれてよかった、あるいは地方で言えば「楽しいからおまえも戻ってこい」と子や孫に言えるような地方をつくりたい。これは石破総理のお言葉で言う「若者や女性にも選ばれる地方」ということです。総論としてはそのようなことであります。
 その上で、「楽しい日本」と言った時には、当然のことながら、働けばしっかりと明日の不安なく暮らしていけることが基本であります。だからこそ、一番最初に我々が引っ掛かってくるのは、ワーキング・プア水準すら満たしておらず、働いても暮らしていけない、明日に不安を感じずにはいられないような最低賃金の状態はよいのですかということが出てきます。言うまでもなく、楽しいと思ってもらうには、少なくとも、明日の心配なく、働けば暮らしていける、もう一方で、働けない人たちもしっかり支える、そのような稼いでもらうこととセーフティネットが両方しっかりとできている国にまずしなければ駄目です。そこは今までなかなか実現できてきていません。
 難しい面があり、人口がどんどん増える時は、最低賃金を上げていくと付いていけない企業が出た場合に、そこで働いている方たちが失業してしまう可能性があったわけです。そのような意味で最低賃金を上げるのは厳しい側面があり、最低賃金で働いている人は暮らしていけないから救おうと思って最低賃金を上げたら、その人は失業してしまった、それが起きる状態ではなかなか取り組めないです。我々として、政治としてはそこまでいろいろ考えます。ただ、今はどのような状況かといえば、これだけ人手不足で、ある分野で付いていけない企業が出た時に、そこで働いていた方たちは同じ業種の同じ分野の、それこそもう一つの企業に、前と同じ仕事をしながらより良い賃金で雇われるようなことがまさに起きる情勢です。今こそ最低賃金引き上げに果敢にチャレンジする時だと。これをしっかりやりきることができれば、それこそ楽しい日本の基盤である、明日の心配なく暮らしていける、そのような日本がつくれるだろうというのが我々の思いです。
 そのような意味で、強さや豊かさといった先人の皆さんがつくり上げた偉大な功績の上に、世界平和のもと、全ての人々が安心・安全を感じ、信じて、多様な価値観を持つ一人一人の国民が今日より明日は良くなると、そのように実感をし、自分の夢に挑戦して自己実現を図っていける、互いが大切にし合う、そのような活力ある国家をつくりたいということを考えております。そうした日本を国民の皆様と共につくり上げていけるよう、石破内閣の一員として頑張っていきたい。
 本当に人口減少は大きなことでありまして、先ほども申し上げたように最低賃金を頑張って上げていく、これは当然のことながら、企業に賃上げ原資を稼いでいただくために、価格転嫁や生産性向上、事業承継、M&A等を全力で支援します。石破総理の思いとしては、今までとは次元の違うご支援を申し上げたい、その上で最低賃金引き上げに果敢に挑戦させていただきたいということをやっていきます。
 それと同じように並行するのはスタートアップです。5か年計画のもとにすごく一生懸命取り組んでいますけれども、いい芽が数多く出てきています。きら星のようなスタートアップ、このようなことを考えてくださったのだと思うようないいアイデア、将来性をすごく感じるようなスタートアップが国内で数多く出てきています。そのようなものに関わってくださっているのは、高齢の方もおられるけれども、まさに若者であり、女性であり、そのような取組もまさに国民一人一人が輝くというか、一人一人が楽しいと思ってもらう方向に首尾よく行っています。
 国を強くしよう、さもなければ外国に占領されてしまうぞ、清の国のようにならないようにしようという、国を前面に出して強さを目指した時代から、今度は、物量で負けた、豊かさで負けた、企業中心にとにかく国を豊かにしようという時代から、もう一歩ここに来ると、本当にスタートアップ等、そのようなことが光り輝いていく。そこが首尾よくいけばものすごく良い国になると私は思っています。
(問)防災の関連でお伺いします。阪神・淡路大震災から1月17日で30年となります。阪神・淡路大震災の教訓やその後の防災への取組の現在地、今後の進め方について大臣のお考えをお聞かせください。
(答)阪神・淡路大震災の発生から今月1月17日で30年を迎えることになります。大きな節目になります。改めて亡くなられた方々に哀悼の誠を捧げるとともに、全ての被災者の方々に心からお見舞いを申し上げたいと思います。阪神・淡路大震災はいろいろな意味で本当に忘れられない災害というか、社会経済機能が高度に集積する都市を直撃した戦後初めての直下型地震です。これを契機に耐震基準の見直しや緊急参集チームの設立、ボランティアによる防災活動への本格的な参画、あるいは被災者生活再建支援法といったものが制定されるなど、防災対策全般にわたって抜本的な強化が図られる契機になった、そのような災害です。我が国の災害対応のまさに転換点となった災害であると認識しております。
 また、これも皆様にお話ししたことがあると思いますが、私が成長戦略なども大事だけれども、とにかく危機管理というタイプの政治家になった原点は、旧運輸省に入省した翌年に日本航空の御巣鷹の事故を航空局で経験したことが一つと、その10年後に、まさに阪神・淡路大震災を経験していることがとても大きいです。この一つの大きな事故と大きな災害が政治家赤澤亮正の原点になっていると思われます。
 今後、大規模な被害が予想される南海トラフの巨大地震や首都直下地震、あるいは日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、更には富士山の噴火といったような、我が国が覚悟しなければならない非常に大きな災害、国難と言っていいかもしれない大規模災害に備えて、本気の事前防災に取り組むのが防災庁です。阪神・淡路大震災をはじめ、今回の能登半島地震も本当に多くの貴重な教訓を残しています。過去の災害の教訓や災害対応の知見や経験をしっかりと活かしながら、防災庁の目指すべき方向性や必要な体制の在り方について検討を進めてまいりたいと思っております。
(問)石破総理は昨日の会見で、地方創生の観点から防災庁を含む政府機関の地方移転、国内最適立地を推進すると表明しました。防災庁に関しては検討のスケジュール感をどのようにお考えでしょうか。また、防災という観点から地方に拠点があることの意義についてはどのようにお考えでしょうか。
(答)まず、防災庁の設置については、長らく知事会をはじめ、地方自治体の皆様からご要望をいただいておりました。専任の大臣を擁する防災省をつくってくれという言い方だったと思いますが、本当に10年以上に渡ってだと思います。知事会からも要望が出続けているのにずっと我々はお応えしてこなかったわけです。ようやくお応えできるようになったということで、各自治体からは当然ながら、待っている間に「まだかまだか」と、真剣に地域の住民を守ろうと防災に取り組んでこられた熱い思いと積み上げたノウハウがありますので、それを踏まえて、本当に様々な熱烈なご要望が寄せられることは当然だと思っています。それをしっかりと受け止めていきたいと思っております。本当に、遅ればせながらの対応ですみませんという思いを私自身は持っております。
 防災庁の機能の一部について、その拠点をどこに置くべきか、防災庁自体が被災した場合の補完機能をどうするかなど、これから様々なご意見・ご提案を賜りながら、災害対策を一層効果的・効率的に実施できる体制はどのようなものかという観点から、適切に検討を進めてまいりたいと思います。
 今のご質問は本当に的確なもので、防災庁をどこに置くとしても、そこが巨大自然災害に見舞われるということは、我が国の場合、当然ながら想定しなければいけません。例えば南海トラフ巨大地震の場合に、どこにある拠点から助けに行くのが一番いいのか等、そのようなことも含め、想定される災害ごとにいろいろなことを考えて、資源は限られていますので、ただ、かなり抜本的に予算・定員を拡充しながらそのようなことを考えていきたいと思っています。
 防災庁の組織づくりに当たっては、災害専門ボランティア等の育成・強化、これも新型コロナウイルス感染症の時の貴重な教訓で、感染症がまん延するとボランティアは地域外から入ってきていただくことができなくなってしまいます。どれほど優れたボランティアであっても、ウイルスを持ってくるから入らないでとなれば、ボランティアが地域ごとにいないと全く追い付かないということがあり得ます。そのようなことも考えると、ボランティアを地域ごとに育成・強化して、データベース化しておくことは巨大自然災害において絶対に必要です。あるいは防災教育の充実などに取り組むこととしていますが、こうした取り組みも地域防災力の向上に加えて、地方創生に資するものというようにも考えております。地方創生の視点も踏まえながら、令和8年度中の防災庁の設置に向けた検討を進めてまいりたいと思います。
(問)大臣の所管外になってしまうかもしれないのですけれども、日本製鉄によるUSスチールの買収の問題で、米国のバイデン大統領が買収を中止する命令を出して、それに対して日本製鉄が提訴するという異例の展開になっています。この問題が他の日本企業の投資マインドや、日本と米国の間の経済関係に対してマイナスの影響を与えるというような見方も出ていると思うのですけれども、大臣はどのようにご覧になっていますか。また、この問題の解消に向けて何らかの対応を検討されているのであれば、可能な範囲で構いませんので教えていただければと思います。
(答)おっしゃったように所管外かとは思うのですが、私自身はバイデン大統領の命令に対する感想を申し上げれば、びっくりしました。それを申し上げた上で、先般1月3日に日本製鉄によるUSスチールの買収計画に対し、国家安全保障上の懸念を理由に米国政府が中止命令を出したことについては、産業界から今後の日米間の投資に関する懸念の声が上がっていることは事実であります。このことは我々としても重く受け止めざるを得ないと考えています。
 石破総理も昨日の会見でまさにおっしゃったように、米国政府に対しては、我が国、産業界の懸念払拭に向けた対応を強く求めるとともに、ここから私は大事なところだと思いますが、なぜ安全保障の懸念があるのかをしっかりご説明いただくことが本当に重要であると認識しています。そのような意味では、私自身は安全保障上の懸念があるのかということは、本当にこれは丁寧に米国政府に説明をしてもらわないといけないものだなということは強く思っております。
(問)今週、多少、為替が円安方向に動いていますけれども、ご所見をいただけますでしょうか。
(答)為替相場の動向については、ご案内のとおり、私の立場からコメントすることは市場に不測の影響を及ぼす恐れがありますので差し控えたいと思います。いずれにせよ、為替・株式市場の動向をはじめ、金融・資本市場の動きは引き続き十分に注視をしてまいりたいと思っております。

(以上)