赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年11月22日

(令和6年11月22日(金) 18:38~19:27  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 先ほど、臨時閣議において、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策~全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす~」を閣議決定いたしました。私から今回の経済対策の全体像や狙いについてご説明したいと思います。
 まずパネルの中段をご覧ください。これは過去、現在、将来ということで、目指すべき将来の姿を左側から順に記載をしています。まず左側の過去の部分です。我が国経済は長きにわたりデフレや物価・賃金が上がらないコストカット型経済が続いてまいりました。
 次に真ん中の現在であります。足元では600兆円超の名目GDP、100兆円超の設備投資、それから、33年ぶりの高水準の賃上げといったことで、成長と分配の好循環が動き始めているということであります。その一方で、ここに書いてありますように物価高が継続をする中で、消費は力強い回復には至っておらず、現在は、右側の賃上げと投資が牽引する成長型経済、そして、そこに移行できるか、あるいは、このデフレやコストカット型の経済に後戻りしてしまうかという分岐点にあるという認識を持っております。ここに分岐点と書いてあって、こちらに戻ってしまうのか、しっかりとこちらに進むことができるのかという分岐点であるということであります。
 こうした中、今回の経済対策は、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、そして、国民一人一人が豊かさを実感できる成長型経済への移行を確実なものとするということであります。
 経済対策は三つの柱で構成をしております。柱ごとにその狙いと主な内容をご説明します。右上に記載する青の枠の第1の柱であります。全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やすための日本経済・地方経済の成長ということであります。
 1、2、3の順でご説明します。まず1番目が賃上げ環境の整備。一言、言葉を加えれば、これは足元の賃上げに向けた賃上げ環境の整備、それから、中堅・中小企業の生産性向上ということであります。次に2番目が面的な広がりです。全国津々浦々の賃金所得の増加に向けてということで、これがまさに目玉政策の一つである地方創生2.0に当たります。そして、3番目が、将来の賃金・所得の増加に向けて、これは成長力の強化に取り組んでいくということになります。これらの取組によって、人口減少下においても日本経済・地方経済ともに成長させ、青の矢印で示したように、賃上げと投資が牽引する成長型経済は、しっかりとこの移行を確実なものにしていこうという考え方が第1の柱であります。
 今度、左下に記載する第2の柱であります。物価高の克服ということで、物価高の影響を受ける低所得者世帯への支援を行うとともに、地域の実情に応じた物価高対策などに取り組む。点線の矢印で示しているように、足元でデフレやコストカット型の経済に戻ってしまうとことが懸念される中で、賃上げが広く普及・定着していくまでの間、例えば、繰り返しになりますが、低所得世帯の方々、あるいは、様々な事情で働くことができない方々を対象として、きめ細かい支援をしていくことになります。そうした当面の措置を講ずることによって、黄色の矢印、これが働いて、戻りかけるところをぐうっとこちらへ持っていきたいという考え方であります。
 そして、黄色の矢印が示しているように、誰一人取り残されない形で成長型経済へ移行する道筋をつける。豊かな人だけがこちらへ行けばいいというものではないため、しっかりとここできめ細かく。このカーブにかなり意味があって、事務方はかなりこれを一生懸命作ってくれたということであります。ここにかなり思いを込めていると。ポイントはここです。
 そして、右下に記載する緑の枠。こちらが第3の柱ということですけれども、成長型経済へと移行する礎を築くための国民の安心・安全の確保ということであります。まず1番目は東日本大震災、能登半島地震をはじめとする自然災害から復旧・復興、防災・減災、国土強靱化といったことで、避難所環境の整備など、石破総理が本当に思いを込めてやろうとしているものがこちらに含まれております。
 また、2番目、防衛力の抜本的強化など、外交・安全保障環境の変化への対応といったことも進めてまいります。そして今、非常に犯罪、都市部の防犯対策、闇バイト等が問題になっていますので、その対策を講じる。それから、こども・子育て支援、女性・高齢者の活躍・参画推進など、先ほど繰り返しました、ここは絶対にこのカーブに乗るのだ、戻ったりしないのだということで、誰一人取り残されない社会の実現につなげていこうということであります。
 これらの取組によって、この緑の矢印で、下支えの感じを出しておりますように、まさに足元の経済でありますし、それから、将来の成長型経済、これの基盤をしっかりと提供していこうということであります。
 このパネルが思いを込めて作ったものでありまして、経済対策の全体の構成になります。それぞれの柱に盛り込んだ施策については、予算だけでなくて税制ももちろん一部書かれていますし、制度・規制改革といったものは46項目あります。予算、税制、制度・規制改革といった政策手段を総動員しております。ちなみに経済構造の変革につながる制度・規制改革は46項目。2013年以降に取りまとめた経済対策では、この46項目は最多ということになります。
 結びになりますが、今回の経済対策は石破内閣が目指す国民の皆様の安心・安全と持続的成長の実現に向けた取組のキックオフとしてふさわしい、日本の未来を創り、守り抜いていくものとしたところです。ここにタイトルです。もちろん名前を付けられたのは石破総理であります。「国民の安心・安全」と「守る」ということを合言葉にやっております石破政権の特徴が表れております。「国民の安心・安全と、持続的な成長に向けた総合経済対策~全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす~」ということであります。
 今後は、この経済対策の裏付けとなる補正予算を速やかに編成し、その早期成立を図ってまいります。補正予算の成立後は、政府が一丸となって各施策を一刻も早く国民の皆様にお届けしたいと思います。皆様のご理解とご協力をお願いして、私からの説明とさせていただきます。

2.質疑応答

(問)今回、石破政権として初めての経済対策を取りまとめたことになると思います。冒頭、説明もありましたけれども、国民民主党の要望も対策に盛り込まれる異例の形となったのですけれども、改めて今回の対策についての大臣としての評価や、特に力点を置いた部分などがあれば紹介をお願いします。
 もう一つ、今回、経済対策の裏付けとなる補正予算は13兆9000億円とかなりの巨額となります。4-6月期の需給ギャップはマイナス0.6%で、1年間で見た場合の需要の不足額は4兆円程度です。年収の壁の見直しなどの税収減などでPB黒字化が遠のく懸念もありますが、あくまで来年度のプライマリーバランス(PB)黒字化は目指していく考えか、これは予算規模として適切か、見解をお願いします。
(答)最後のところ、GDPギャップが4兆円のマイナスということですが、私の今の印象は、サプライサイドというか、人手不足も含めて、供給の側が本当に追い付いていないという中で、そこをぐうっと上げていかないと今後の潜在成長率も上がらないし、日本経済の発展はないと思っているので、人手も足りているし、供給能力も望むものは全てあって、その状態で需要が足りないという話はありませんので、そこは考え方として、今、経済対策を打つ時に、何かGDPギャップを念頭に置いて、それを埋めるという発想は、私は少し違うと思います。
 今般の経済対策で重要なことは、全ての世代の現在及び将来にわたる賃金・所得を増やすことであります。このため、物価上昇を上回って賃金が上昇し、設備投資や人への投資が積極的に行われ、成長と分配の好循環が力強く回っていく経済を実現していくことが重要であります。こうした考え方に沿って、規模ありきではありません。効果的な施策を積み上げるために、関係省庁の協力も得つつ検討を重ね、また、与党においても精力的にご検討をいただくとともに、党派を超えてご議論をいただき、本日こうして取りまとめに至ったことは、大変大きな成果であるというふうに私どもは自負をしております。
 具体的には、例えば、全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やすための日本経済・地方経済の成長として、地域資源のアナログの価値をデジタル化することによって付加価値を高め、新たな需要創出や生産性向上につなげる地方創生2.0を展開する。ぴんとこられた方も多いと思いますが、ブロックチェーン技術とか、Web3.0とか、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)というものを活用して、地方のアナログの価値を最大限高めて、世界にしっかり売っていくという言い方が適切かはわからないけれども、そのようなことを考えています。地方創生2.0は1.0の時にまだなかったWeb3.0、ブロックチェーン、NFT、そういった技術が使えるのが本当に大きな違いですから、そこで頑張って、本当に1.0の時よりも大きな成果を挙げたい。
 誰一人取り残されない形で、成長型経済への移行に道筋をつけるための物価高の克服、それから、成長型経済への移行の礎を築くための国民の安心・安全の確保として、自然災害からの復旧・復興や、避難所環境の整備など、防災・減災及び国土強靱化、防犯対策の強化、女性・高齢者の活躍・参画などの推進など、効果的な施策を盛り込むことができたと考えております。
 物価高対策については、賃金上昇が物価上昇を安定して上回るまでの間、足元で物価高に苦しむ方々への支援が必要との考え方のもと、当面の対応として、物価高の影響を特に受ける低所得世帯向けの給付金や、地域の実情に応じたきめ細かい対応のための重点支援地方交付金をはじめ、総合的な対応を図っていくこととしております。
 各施策が国民の皆様にしっかりと届き、生活が豊かになったことを実感していただけるよう、万全の対応を行ってまいりたいと考えております。
 それから、財源のことにも触れられました。今回の経済対策では、裏付けとなる補正予算における一般会計の歳出追加額をお示したしたところですが、補正予算全体の歳出・歳入については、補正予算の編成過程の中で精査されるものと承知をしております。その上で、今回の経済対策については、経済あっての財政の考え方のもと、物価上昇を上回る賃上げ、設備投資や人への投資の強化などのための施策を盛り込み、危機に強靱な経済・財政をつくっていくものであります。
 今後、経済対策の裏付けとなる補正予算の早期成立に取り組み、国民の皆様への支援を一刻も早くお届けすべく、できる限り早期の執行を目指してまいります。
 国内投資の拡大に向けては、官民連携で取り組むべく、中長期にわたって計画的に投資を促す施策を盛り込んでおります。特にAI、半導体分野においては、2030年度までの財政フレームを構築し、必要な財源の確保も行っております。2025年度のPBの見通しについては、こうした経済対策の内容に加え、税収の動向や来年度の予算編成も影響することから、現時点で確たることを申し上げられる段階にはありませんが、いずれにせよ引き続き来年度予算編成に向けて、賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現を図る中で、歳出改革努力を継続し、めりはりの効いた予算編成に取り組んでまいりたいと考えております。
(問)今回の経済対策ですけれども、低所得者向けの給付であったり、あとは電気・ガスの支援の再開に加えまして、これまで石破総理が石破政権の目玉として訴えてきた地方創生であったり、防災対策の備蓄の強化なども盛り込まれました。大臣は先ほど「キックオフ」というお言葉を使われていましたけれども、こうした石破総理が訴えている石破政権らしい経済対策をまとめられたことの成果であったり、意義というのを大臣はどうお考えでしょうか。
(答)まず、石破総理がいろいろな機会に本当にいろいろな思いを述べてこられております。当然ながら我々は石破総理の外遊中も含めて、優れた施策を採り入れ、そして、意義のある、そのような経済対策をつくろうということで全力を挙げてきたわけです。
 今回の経済対策では、今ご指摘のあったとおり、第3の柱に、国民の安心・安全の確保を掲げ、今後想定される災害への備えに万全を期すために、防災庁の設置に向けた検討と並行して、まずは内閣府防災担当の機能を予算・人員の両面で抜本的に強化するとともに、避難所環境の整備など、防災・減災及び国土強靱化の取組を進めることとしております。
 石破総理が皆様の前でも何度も発信されているように、住んでいる市町村の違いで救われる命と救われない命があったり、あるいは災害の時に受けられるサービスに違いがあったりすることは、我々は全くよしとしておりませんので、そのような思いを込めて編成させていただこうと思っております。
 特に避難所環境の抜本的改善については、新地方創生交付金、これを活用して、地方公共団体におけるキッチンカー、あるいはパーティションなどの資機材、この備蓄の推進を図ることとしております他、NPO、ボランティア団体などの活動経費を支援するなど、我々の合言葉ですけれども、「本気の事前防災」、これを進めるため、これまでになかった新たな対策を盛り込んでおります。
 また、新総合防災情報システムを活用して、防災デジタルプラットフォームを構築し、人命救助や復旧作業などの災害対応を強化するなど、防災DX、これは大臣になる前に私が心血を注いでやってきて、今年から新総防が動いていますが、これを推進するための対策も盛り込んでおります。人命最優先の防災立国、これを実現するために、令和8年度中の防災庁の設置に向けた議論を並行して、あらゆる施策を総動員して防災対策を進めてまいりたい。そのような意味で、防災庁の設置、そしてその先に防災省の創設を念頭に置いている石破政権の、ある意味では一番特徴のある部分の一つかなと思います。
(問)2点あります。1点目が、先ほどの質問にあったPBについて、まだ2025年度の影響について確たることは申し上げられないということだと思うのですけれども、今の時点では2025年度のPBの黒字化は達成を目指しているということでよろしいのでしょうか。
 もう一点が、今回の物価高対策でいろいろなメニューがあり、非課税世帯への給付金などがありますけれども、非課税世帯でなくても収入が高くなくて困っている方への支援みたいなものを求められていると思います。そのようなメニューが今回あまり見受けられないような気もするのですけれども、その辺りの世帯への支援で力を入れた部分などがあれば何かお願いします。
(答)まず経済対策と2025年度のPBの関係を整理すると、今回の経済対策によって、2025年度の歳出がどの程度増加するかが一番重要なポイントだろうと思います。その観点からすると、早期執行に取り組んで、2024年度中に執行を終えるものは、2025年度のPBには影響しないということが一つはあります。
 また、基金を活用した投資促進の施策は、中長期にわたって計画的に支出されるので、これも2025年度のPBに影響はないとは言いませんけれども、大きく影響するものではありません。更に、いろいろな施策を打っていますが、多年度での財政中立が確保されているGXとか、これはPBの計算からは当然除かれることとなります。あわせて、こうしたGXと同様の多年度の財政フレームが、今回、AI、半導体分野で構築されたことも考慮する必要があって、国で10兆円、官民合わせて50兆円といっていても、それは財源を考えてやっていますので、そのようなものを除いてしまうことになります。
 以上に加えて、2025年度のPBの見通しについては税収の動向や来年度の予算編成も影響してまいります。PBを含む経済・財政の中長期的な展望については、毎年の年初に公表する中長期試算でお示ししておりますが、様々な要因が影響してくることから、十分に精査をしてまいりたいと思っております。
 それから、給付金でしたか。あまり新味がないとか、そういうご質問ですか。
(問)非課税世帯の方への給付はあると思うのですけれども、非課税世帯ではないものの、生活に困っている方はたくさんいらっしゃるかと思います。そういった方々に対する支援についてどうお考えでしょうか。
(答)そこは、ずばっと言ってしまうと、本当に困っている方に、しかも迅速にお届けすることが大事だという観点からすれば、今おっしゃったようなことをきめ細かくやるには、時間ばかりかかって、お届けするのが遅れることになるなというので、ある程度の割り切りは要るのだと思っています。そのような意味で、今般の経済対策で重要なことは、全ての世代の現在及び将来にわたる賃金・所得を増やすことで、物価上昇を上回って賃金が上昇し、設備投資や人への投資が積極的に行われて、成長と分配の好循環が力強く回っていく経済が実現していくことであると思っています。他方、賃金上昇が物価上昇を安定して上回るまでの間は、足元で物価高に苦しむ方々への支援が必要ということです。
 当面の対応として、物価高の影響を特に受ける低所得世帯向けの給付金や、地域の実情に応じたきめ細かい対応のための重点支援地方交付金をはじめ、総合的な対応を図っていくということです。しかも、セールスポイントなのでくどいようですが、ご説明すれば、低所得世帯向け給付金については、低所得世帯の消費に対する物価高の影響のうち、賃上げや年金物価スライドなどでまかないきれない部分をおおむねカバーできる水準として、住民税非課税世帯1世帯当たり3万円を目安ということで、それなりの根拠をもって給付金の支援を行うこととしています。
 そういった住民税非課税世帯のうち、子育て世帯については世帯人数が多いことを考慮して、こども1人当たり2万円を加算することとしております。我々はこれによって、迅速に、本当に困っている方にお届けすることで、誰一人取り残されない成長型経済への移行に道筋をつけてまいりたい。先ほどの資料での点線がカーブしているという形に持っていきたいと思っております。
(問)経済対策案の決定プロセスについて伺います。今回の経済対策案の決定は、国民民主党との協議など、これまでの与党の政策決定プロセスとはまた違う形になったと思います。政策の立案過程で野党に譲らざるを得ないという、少数与党である石破政権の弱さであったり、運営の難しさも改めて露呈したかと思います。このことを大臣はどのように受け止めていらっしゃるか、今後、どのように政策の実現に取り組んでいくか、教えてください。
(答)難しさというか、本来の姿というか。私は選挙についての考えも、言うまでもなく、選挙というのは国民の皆様の意思で、神の声というか、天の声というか。前にお話ししたことがあると思いますけれども、私は今回の選挙結果は、我が自民党、そして、政府与党に対して、少し独り善がりが過ぎると、もう少し目を見開いて、他の党の政策であっても良いものをきちっと採り入れて、独り善がりの政策で自分たちが一番と思うのはやめなさいというご趣旨も当然あると思っています。加えて、政治とカネで本当に我々は泣き叫ぶような痛いお灸を据えられているということもあると思います。
 そのような意味で、政策について言えば、我々、元々、野党の政策もいいものがあれば採り入れようという気はあり、見ていたつもりですけれども、改めて丁寧にお話を聞くと、これはやはりなるほどと、いろいろな考え方、背景にあるものを聞いて、103万円の壁を一つ取っても、問題は例えば学生なのだとか、あるいは学生さんの親が本当にそのような意味では、自分たちの税が増えてしまったり、そのようなこともあって、学生さん本人が判断をする場合もあれば、親御さんから、そろそろ働くのをやめておいてくれと言われてとか。そのような背景を丁寧にお伺いすると、本当に政党ごとによく政策を錬磨されて、私どもが必ずしも党内でよく議論をしていなかった部分等が見えてまいります。
 我々にとっては本当に痛いお灸でありましたけれども、お灸を据えられて、今、一生懸命努力する中で学ぶところは本当にたくさんあるなと。これからもそのやり方が本来ではないかという気もいたしますので、しっかり今後とも今まで以上に目を見開いて、国民の皆様のご意志というか、それを念頭に置きながら、優れた政策はどの党から出ても一生懸命に拾うつもりで対応し、意義のある対策を打ち続けるということで、我々も大変痛い教訓になりましたけれども、教訓を受け止めて理解をし、前に進もうとしていることは国民の皆様にご理解いただけると大変ありがたいことかなと思っております。
(問)今までに出た話の関連にはなるのですけれども、2点ありまして、まず1点目は財政のことです。今回の一般会計の歳出が13.9兆円ということは、去年よりは上回っていますが、同じ13兆円台と見ることもできます。今年の骨太の方針などで、「コロナ禍で膨らんだ歳出構造を平時に戻す」ということが明記されていると思いますが、確かに13兆円台というのはコロナ禍の一時よりかは低い水準ですが、コロナ禍の前よりかは上回っている水準だと思います。この13兆円台というのが平時という認識なのかどうかというのを教えてください。
 それから、もう一点。それとも絡むのですが、今回の経済対策は、確かに石破政権らしさもあるのですけれども、全体のコンセプトは成長型経済への移行や物価高対策、賃上げなど、去年、岸田政権が打ち出した政策と非常に似通っていると思います。国民や納税者から見ると、去年やったのになぜまた同じことをやるのかというふうな意見、しかも同じぐらいの額でということで。
(答)それは物価高のところですか。
(問)経済対策全体のことです。今、石破政権として、去年の岸田政権の経済対策が必ずしもうまくいっていないという認識で改めて同じことをやらないといけないという認識なのか。改めてその点も教えてください。
(答)まず、後のほうからご説明をすると、主に、先ほどの図で言う右側の矢印に乗っていくところの政策と、戻りかけるのを戻すというところとありますよね。戻りかけているところを戻すものについては、繰り返しになりますけれども、物価上昇を上回る賃金上昇、これが実現できるまでの間は言うまでもなく実質賃金は下がり続けて、国民の皆様の生活が苦しくなり、肌感覚も苦しい苦しいとなっていくので、そこについては我々が政策目的を遂げて、そして、物価上昇を上回る賃金上昇が実現できるまではお支え続けるのが当然であると。
 そこについて「新味がない」と言われても、一番苦しい方たちを支えるということは当然であり、しかも期間については我々は申し上げたように、物価上昇を上回る賃金上昇が実現するまでやりますと言っているわけで、支えきるということですから、そこは、逆に言えばそういうタイミングが来れば、我々はそれはもう必要ないという判断をするわけで、そのタイミングが来るまで、「新味がない」と言われようと、我々が支えきるということであります。
 あと、こちら側の矢印に向かうほうは、これは本当に国の威信を懸けた産業政策、成長戦略といったものでありまして、ここについてはいろいろ聞かれていると思いますが、AIもあれば、最近で言えば量子コンピューターと量子暗号通信であるとか、核融合、フュージョンであるとか、宇宙政策もあれば、DX・GXだっただけのものが、ありとあらゆるものが入ってきて、なおかつ勝ち筋が何かということをなかなか読めない中で、必ず国際競争に勝ち抜いていくという意味で、これはいろいろなところに目配りしながら勝ち筋を探っていくという大変難しい作業であります。
 そのようなことを考えながらあれですので、「新味がない」とか、「岸田政策が」とか言うけれども、岸田政権で核融合とか、あるいは量子コンピューターとか、そういうようなことについてそのような目配りをされているわけでもありませんし、我々からすれば、経済情勢に応じて、岸田政権と同じ思いで人への投資というか、本当にそこのところを力を入れる新しい資本主義の考えを、魂の部分はしっかり受け継ぎながら、その時々の経済情勢に合わせて変えていくことでやっていかなければいけないと思っています。そこについては我々の説明がうまくないのかもしれませんが、ご理解賜れればと思います。
 それから、経済対策を打つ必要をもう一回ご説明しておくと、個人消費も前期比プラス0.9%となっていますけれども、これは台風・地震の影響で宿泊サービスが減ったり、飲食料品の増加が見られたことの裏返しだったり、あるいは自動車等が生産再開して増加したとか、そういうこととの関係で前期比とのプラスが大きくなっているわけです。繰り返しになりますけれども、我が国経済は現在、コストカット型経済から脱却をし、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかの分岐点なので、本当に大事な勝負時だと思っています。
 GDPの過半を占める個人消費の持続的かつ力強い回復を実現するために、賃金の伸びが物価上昇を安定的・持続的に上回ることが重要で、これに加えて、成長分野への官民挙げての思い切った投資を行って、こちら側の矢印は力を入れて、こちら側には必ず反転させて、成長と分配の好循環が力強く回っていく経済を実現していきたいということです。
 ご案内の3本柱で、関係省庁の協力を得て、予算、税制、制度・規制改革といったあらゆる政策手段を総動員して、必要かつ十分な施策を取りまとめたつもりでありまして、対策の裏付けとなる補正予算の早期成立を図り、成立後、できるだけ速やかに施策・支援を国民の皆様にお届けしたいと思っています。
(問)1点目で聞いた、つまり、今回の補正予算の13兆円台という規模は、歳出構造として平時に戻った規模と言うべきなのか。つまり、コロナ禍でぐうっと膨らんでしまったので、骨太の方針で「平時に戻す」と言っていて、確かに減っているのだけれども、コロナ禍前よりかは多い水準でありますけれども、この13兆円台というのは平時なのかどうかという認識を教えていただければと思います。
(答)そのような意味で言うと、まず、平時がいつかという問題を考えなければいけないのですが、少なくとも私どもは、日本経済のあるべき姿として、賃金上昇が物価上昇を上回らないといけないのです。そのような状態が実現するまで、先ほどのこちら向きの矢印をこう戻そうとするものとか、こういうものは我々としては国民生活を守る、お支えするという意味で、必ずやっていかなければいけないのですけれども、それが平時かと言われれば、我々からすれば一番ありがたいのは、高度経済成長期がそうだったように、賃金上昇が物価上昇を上回り、なおかつ、人手不足とかいう問題も何か省力化投資とか、いろいろなもので解決をし、そして、需要と供給がうまくやりながら、GDPギャップがやたら大きくなるようなことなしに、経済成長が力強く続いていくと。これを実現しようとしていまして、逆にそこが平時だと、是非それが日本経済のあるべき姿だと思うと、まだそこまで行っておりませんので、そうなった時と比べればまだまだ。
 一番ありがたいのは、公的な財政支出がミニマムで、だけれども、経済が非常にうまく回っていて、民間の力だけで十分回って成長が続く。消費も隆々たるものがあって、何か我々出番がないなというぐらいの感じになればそれが一番ありがたいので、そこを平時とすれば、今おっしゃっているように、そこが多いではないかと言われれば多いかもしれないということがお答えになると思います。
(問)先ほどご説明があったとおり、現在というのが好循環に向けた分岐点であるということで、そのために、取り残さないための物価高対策であったり、全ての世代に賃上げ、全ての世代に対する賃上げの促進であったり、取りまとめられたところだと思うのですが、この矢印の長さというか、将来の目指す像にたどり着くためには、あと一歩のところなのか、それともまだしばらく力強い経済対策を続けていかなければいけないのか。現状の経済に対する大臣のご認識をお聞かせください。
(答)これもなかなか難しい問題ではありますが、大事なのは、物価がまず安定をすることです。要するに、物価が、例えばコストプッシュ型のインフレとか、いろいろなことがあって、物価が落ち着かず、物価上昇が軽く毎年3%を超えるとか、そういうようなことになってしまうとなかなか大変です。それを超える賃上げを実現するという経済をつくるのは大変ですけれども、今、幸いなことに、日銀との連携のもとで、物価は安定に向かって、少なくとも、日銀総裁のお話を聞けば、2%の物価目標を安定的・持続的に実現できる方向に向かって、一応想定した範囲内でものが動いているというようなお考えをお持ちのようですし、我々も確かにそれを聞いていると、物価は安定する方向にまず行っているのかなというのが一つです。
 金融政策の具体的手法は日銀にお任せしていますけれども、そこの連携が成果を挙げつつあるというか、今何か非常にまずい状態でということではないので、一つ、まず物価の安定ということがあります。加えて、それを今度上回った賃上げが実現していかなければいけないので、こちらも先ほどの図にもありましたけれども、賃上げについても経営者のご理解をいただきながら進めるため、政労使の会議なども予定しています。2%の物価安定の下で、それを上回る賃上げが実現できるようになればいいわけで、言い方は難しいです。デフレもまだ脱却したと宣言できる持続的・安定的な状態とはまだ言い切れないので、脱却宣言をしていません。そのような意味で油断はならない。
 先ほども言うように分岐点でありますけれども、少なくとも悪い方向に何かが一方的に向かっていって打つ手がないと、そのようなことでは全くありません。我々としては、できるだけ早期にデフレ脱却宣言もしたいとは思いますし、今申し上げたような物価が安定し、それは持続的・安定的に上回る賃上げ、これを実現できる時期が少しでも早く来ればいいなという思いで取り組んでおります。
(問)先ほどの「岸田政権時の経済政策が十分だったかどうか」といったような質問とも少し関連するかと思うのですけれども、今般決定された経済対策の費用対効果の検証については、どういったタイミングでどのようなプロセスを想定しているのかというのをお伺いできますでしょうか。例えば今年も年収の壁に関する議論などがこの後に行われると思うのですけれども、昨年の定額減税がどの程度消費喚起につながったかとか、そういった検証は非常に今後も役に立ってくるのではないかと思うのですが、このような件については何か想定されているものはありますでしょうか。
(答)今日の経済対策では、従前の経済対策の場合と同様、GDPの押し上げという観点からは実質GDP換算で21兆円程度ということもご説明しました。事務方から更に詳しく説明があると思いますが、年成長率の換算で1.2%程度の経済押し上げ効果があるとの試算をお示ししています。これを少し詳しく言えば、実質GDP換算額21兆円程度が今後3年程度で発現すると仮定した場合の年平均ということになります。
 経済対策の進捗・実績などについては、各省庁と協力しながら、経済財政諮問会議などの場を活用して、各施策の進捗状況や執行状況を随時フォローアップしてまいります。なお、GDPはその構成要素である消費とか設備投資、輸出入などは、経済対策以外の要因で生じる内外の経済の動向でありますとか、金融市場の動きなど、様々な要因によって影響を受けますので、もっぱら経済対策の効果のみを抽出して、定量的に評価することは非常に難しいのかなと思っています。
 経済対策の効果も織り込んだGDPの実績の評価を定量的に行い、それを踏まえた経済見通しを適時にお示ししていきたいと思っております。
(問)細かくて恐縮なのですけれども、地方創生2.0の中で、産官学金労言を強く打ち出しておりますけれども。
(答)石破総理が大変好きな言葉です。
(問)この中で特に地域金融機関の役割であったり、大臣が考える地域金融機関の強みについてお考えをお聞かせください。
 2点目に、地方創生以外にも、価格転嫁であったり、GXとか、省力化投資、災害復興等、その辺りも金融機関の役割は重要ですけれども、今回の経済対策全体を通して金融機関に求める期待みたいなところを教えていただいてもよろしいでしょうか。
(答)改めて申し上げるまでもなく、地方の金融機関、地銀でありますとか、信金・信組、そういった方たちのことを念頭に置いてご質問されていると思います。非常に重要です。これはなかなかコロナの時はゼロゼロ融資とかをやりましたけれども、それはメガの銀行のみで手が回るものでは全くありませんし、しかも、有事もそうですけれども、平時も地に足が着いて、その地域のことを本当によく分かっている地銀や信金・信組が普段から顔の見える関係で地元の企業と関係をつくっていただいている。日頃から企業の経営状況とか、いろいろな取組とか、そういうものをよく見ておられ、経営者の人となりを知っているみたいなことは大変な財産で、それを活かして、どうやって今後、地方創生をしていっていただくのか。そういったことがあると思います。
 例えば、少し先取れば、北國銀行と北國新聞が共同で出資して会社をつくったり、そのような取組も私の耳には入っています。金融機関というのは地方においては人材の宝庫でもあるし、そして、その地域の企業のことを誰より知り尽くしているという部分があるので、いろいろな意味で地方の金融機関の果たす役割はとても大きい。彼らを通じて、その地域地域に合った地方創生のやり方を、全国一律に金太郎あめでうまくいくはずもありませんので、やっていただきたい。
 あともう一つ申し上げれば、本当にきめ細かく中小企業の伴走型の支援とかをやろうと思うと、実は地銀や信金・信組だけでも足りなくて、地域の税理士さんの力を借りたい。税理士さんは数的にかなり企業をきめ細かく伴走型の支援ができることもありますので、そのような各地域におられる、地域の企業を知り尽くした、地に足の着いた関係の方たちの総力を挙げて、私ども、当初ベースで倍にしようとしている地方創生の予算とかを活用しながら、いい例を採り入れて、是非全国に、百花繚乱ではないですけれども、いい取組が展開するように頑張っていただきたいなと思っています。
(問)何問か前の質問に戻るのですけれども、3党協議の関連で伺います。今回の経済対策では、自民党、公明党、国民民主党の3党の協議によって、この103万円の壁については議論をして引き上げると。ガソリン減税については見直しに向けて検討するとの内容が盛り込まれました。この二つの施策について、今後の議論・検討において大臣が重視する点も含めまして、今後の政府対応についてお考えをお願いします。
(答)今般の経済対策において、政党間の協議を踏まえて、いわゆる103万円の壁について、令和7年度税制改正の中で議論し、引き上げるということを明記させていただいております。今後、これは当然、税に関わりますので、各党の税制調査会長間で更なる議論が行われるものと考えておりまして、私としては、政党間の協議もなかなかそう簡単に物申せるあれではありませんし、ましてや税調となると、それは本当に敬意を持って、どのような議論をされるのかについて注視していきたいと思っております。
 それから、おっしゃったのはトリガーでしたか。税関係ですね。
 本日、閣議決定された経済対策では、燃料油価格の激変緩和事業については、12月から出口に向けて段階的に対応することとしております。その上で、エネルギーコストを含めた物価高対策については、燃料油激変緩和対策による一律の支援のみならず、低所得者向けの給付金とか、重点支援地方交付金もあわせて総合的な対応を取ることとしておりまして、これにより、物価高の克服に万全を期していきたいと思っています。
 なお、ご指摘のトリガー条項については、これも自動車関係諸税全体の見直しに向けた検討の中で議論されていくものと承知しておりまして、当然、税調間の議論になりますので、今後の議論を注意深く見守りながら、政府としても適切に対応してまいりたいと思っています。
(問)経済対策から質問の話題を変えさせていただいて、今年も恒例の内閣の皆さんの閣僚資産公開が公表されまして、当然、赤澤大臣も公表されたわけですが。改めてになるのですが、ご自身の資産の状況、資産の多寡など含めて、ご自身の資産に対する現状の評価と、もう一点、そもそも資産公開制度が今どういう役割で、今後の必要性なども含めて、今思われているようなことがあれば伺いたく存じます。
(答)私の資産の評価はなかなか難しくて、それを皆様に評価してもらうために公開しているようなところがありますので、自分の資産について何かコメントをすることについては、むしろしっかり研究をしていただいて、アドバイスがあればいただきたいなと思います。
 国務大臣の資産公開は大臣等規範に基づいて、公職にある者として、清廉さ、公平さを保持して、政治と行政への国民の信頼を確保しようとする趣旨で、国務大臣等が自らの資産を国民に公表するものです。改めて申し上げるまでもなく、我が自由民主党は、政治とカネの問題で、今、国民の皆様から信頼をなかなかしていただけない、信用が地に落ちている状態にあると思いますので、ことさらに、所属の議員が閣僚になっている場合、しっかりこの趣旨を活かして、公開していかなければいけないということだと思います。今回、この趣旨にのっとってご報告させていただいたものでありまして、今後も大臣等規範に基づいて適切に対応してまいりたいと思っております。

(以上)