坂井内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年10月21日
(令和7年10月21日(火) 10:45~11:09 於:中央合同庁舎2号館16階第1会議室)
1.発言要旨
先ほどの閣議におきまして、内閣総辞職について決定されました。
昨年10月1日より石破内閣の一員として、国家公安委員会委員長、防災担当、国土強靱化担当、海洋政策担当及び領土問題担当大臣の任に当たり、国と国民を守るという思いで全力で取り組んでまいりました。約1年余りの間でございますが、皆様にも大変お世話になりまして、ありがとうございました。
また、全てを申し上げることはもちろんできませんが、この場をお借りいたしまして、退任に当たって、所感を申し述べさせていただきたいと思います。
国家公安委員長についてでございますが、私は就任以来、「世界一安全な日本」を実現するため、全力で取り組んでまいりました。
まず、匿名・流動型犯罪グループ、トクリュウ対策でございますが、昨年8月以降、凶悪な手口による、いわゆる「闇バイト」強盗事件等が相次いで発生し、国民の皆様に大きな不安を与えていました。検挙と抑止の両面から諸対策を推進した結果、現在は一連の強盗等事件の発生が止まっている状況にあるなど、対策に一定の成果が認められたと実感しています。
他方、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の被害の増加は顕著であり、依然として、国民の体感治安の悪化の要因となっています。引き続き関係省庁や事業者等と連携し、一層踏み込んだ諸対策を推進していく必要があります。
また、先の通常国会におきましては、悪質ホストクラブに対する規制の強化等を内容とする風営適正化法改正案、一定の金属くずの買受けを行う営業に対する措置の新設等を内容とする金属盗対策法案、能動的サイバー防御を可能とする法案、オンラインカジノ対策としてのギャンブル等依存症対策基本法改正案等の成立を見て、喫緊の課題について一つの結果を出すことはできたと感じております。
このほか、国会で議論された外免切替制度の見直しについては、免許申請者等の住所確認に関する内閣府令を改正するとともに、外免切替手続における知識・技能確認について、厳格化を図ることができました。
今後は、成立した法律や制度を的確に運用できるよう、関係する方々と丁寧に意見交換を行い、改正内容を広く国民に周知をするなどして、治安上の課題に対しこれまで以上の成果を上げ、結果として国民の期待に応えていかなければならないと思います。
また、半年の間、開催されてきた大阪・関西万博が先日閉幕いたしましたが、国民の皆様の御理解と御協力を得ながら警戒の強化を図ったことにより、来場者等の安全と万博の円滑な運営を確保するという、開催国としての責務を果たすことができました。今後も警察には、今回の警備を通じて得られた様々な教訓を踏まえ、警備諸対策に万全を期していただきたいと思います。
加えて、昨今の治安上の課題はこれらにとどまりません。サイバー空間における脅威、ローン・オフェンダー等への対策等、社会情勢の変化に応じて複雑化する治安課題に対し、着実に対処していくことが警察には求められています。
治安の維持は国家社会の最も基本的な要請であり、国民が警察に寄せる期待には大きなものがあります。後任の大臣及び全国の警察職員の皆様には、一層の奮闘努力をお願いいたします。
防災につきましては、自然災害から国民の生命や財産を守る極めて重要な任務であると認識し、政府一丸となって災害対策に全力を尽くしてまいりました。
昨年10月1日に着任して以来、今年の1月から2月にかけての雪害、2月から3月にかけての岩手県大船渡市等での大規模林野火災、7月のトカラ列島近海での最大震度6弱の地震、8月以降の全国的な大雨による被害が発生するなど、列島各地で災害が頻発しているところです。これらの災害により亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災されたすべての方々にお見舞いを申し上げます。
令和6年に発生した能登半島地震からの復旧・復興に向けては、大臣就任直後に、当時、石破総理とともに被災地に伺うことなどを通じて、被災された方々をはじめ現場の声を受け止めてまいりました。先月21日で奥能登の豪雨災害から1年が経過しましたが、被災前の町並みと人々の笑顔を取り戻すため、被災地の一日も早い復旧・復興へ向けて全力で取り組んでいく必要があり、私も一人の議員として、引き続き被災された方々とともに歩み、懸命に復旧・復興に努めていく所存でございます。
この能登半島地震での教訓等を踏まえ、避難所環境の抜本的改善に向けた「新地方創生交付金」の創設や、被災者に対する福祉的支援の充実等について盛り込んだ「災害対策基本法」の改正などにより、災害対応力の強化を進めてまいりました。
法改正後も、新たに創設した被災者援護協力団体の登録制度に関して、昨日付で第一弾として6団体を登録したところであり、平時からの研修などの取組を促進し、官民が連携した被災者支援体制の充実を図ることが重要です。
今後も人命・人権最優先の「防災立国」の実現に向けて、更なる防災政策の強化を図っていくことが必要であり、令和8年度の防災庁の設置に向けて具体の検討を進めていかねばならないと考えており、後任に引き継いでまいります。政府としても、引き続き緊張感を持って、万全の危機管理体制の確保に努めていただきたいと思います。
国土強靭化については、「5か年加速化対策」をはじめとした国土強靭化の取組を、関係府省庁との連携により着実に推進してまいりました。これにより、被害を抑制する効果が確実に積み上がっており、全国の自治体等から、感謝の声を多くいただいたところです。
しかしながら、本年も各地で災害が発生しており、気象災害が激甚化・頻発化し、大規模地震が切迫する中、災害に屈しない国づくりを強力に進める必要があると強く感じています。
そのような中、「5か年加速化対策」に続く計画として、「第1次国土強靭化実施中期計画」を6月に閣議決定したことは、非常に印象深いことでありました。引き続きこの「実施中期計画」に基づく国土強靭化の取組が進められることを期待いたしております。
海洋政策につきましては、令和5年4月に海洋政策本部において決定された「第4期海洋基本計画」に基づいて、各省と連携し、「総合的な海洋の安全保障」、「持続可能な海洋の構築」など、着実に推進してまいりました。
加えて、海洋政策に関する新たな取組として、海洋の開発・利用に関する施策のうち、国益の観点から特に重要であり、各府省の取組に横串を刺して府省横断で取り組むべき重要ミッションが「海洋開発等重点戦略」として、昨年4月に本部決定されたところです。
この新たな戦略に基づく最初の取組として、自律型無人探査機(AUV)の社会実装、南鳥島周辺海域でのレアアースの開発などに取り組んでまいりました。
また、洋上風力発電の排他的経済水域展開に向けた制度整備の推進については、先の通常国会において「再エネ海域利用法改正法」を成立させることができました。この法改正は、2050年カーボンニュートラルという政府目標の実現に不可欠な制度改正であり、海洋再生可能エネルギーの導入拡大への大きな一歩になったものと考えております。
海洋は地球に残されたフロンティアです。引き続き関係省庁が密接に連携して、海洋政策を更に強力に推進していただきたいと思います。
有人国境離島政策については、議員立法により制定された有人国境離島法が令和9年3月末までの時限立法になっていることから、その改正・延長に向け、本年3月より立法府で既に議論を開始いただいています。
私自身も特定有人国境離島地域である鹿児島県三島村、硫黄島を視察し、島民の生活維持に関する現状について耳を傾け、関連施策の重要性を再認識いたしました。担当大臣という任からは離れますが、引き続き、国境離島の皆さんが安心して住み続けていただけるよう、一議員として取り組んでまいります。
領土・主権対策につきましては、領土・主権をめぐる情勢が一段と厳しさを増していく中、国内外において我が国の立場について正確な理解が浸透するよう、内外への発信強化に努めてまいりました。
情報発信の拠点である領土・主権展示館において、今まで領土や主権に関してあまり関心を持っていただけなかった方々に、楽しみ、実感しながら学べるよう、4月のリニューアルにおいては、イマーシブ・シアターやヒストリー・ウォール等を導入し、昨年に比べ多くの方々に展示館を訪れていただいています。また、来月11月14日には、拡張スペースを新たに領土・主権展示館ゲートウェイホールとしてオープン予定であり、来館者の更なる増加を期待しております。
カジノ管理委員会については、令和2年1月の発足以来、IR整備法に基づくカジノ事業等の規制に向けた取組を行ってきたところであり、今後申請が予定されているカジノ免許の審査に向けて、引き続き厳格なカジノ規制を実施するための着実な取組を期待しております。
日本学術会議については、6月に新法が成立し、来年10月に法人化することとなりました。現在、法律の内容に従って法人化に必要な準備を進めているところであり、日本学術会議が法人化してよかったと多くの人に思ってもらえるような組織となるよう、引き続き日本学術会議とコミュニケーションを取って準備を進めていただくことを期待します。
船舶活用医療については、本年3月に第2回船舶活用医療推進本部を開催し、「災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する計画」の案を本部として決定し、その後の閣議で決定をいたしました。
この本部会合では、本部長である総理より、所要の準備を着実に進め、令和8年1月までに、船舶活用した医療提供の体制を整備するよう指示があり、これに向けて現在関係省庁と連携・協力し、準備を進めているところです。引き続き政府一体となって船舶医療提供体制の整備を集中的に進めていくことを期待いたしております。
最後でございますが、在任中の御厚誼に改めて感謝を申し上げまして、退任の挨拶といたします。
2.質疑応答
- (問)お疲れさまでございました。警察の捜査・対応に関する御質問ですけれども、御在任中も、警視庁公安部による大川原化工機の捜査、それから、神奈川県警のストーカー事案をめぐる対応・捜査について報告書が出され、問題点がいろいろ明らかになったこと、さらには佐賀県警の科捜研におけるDNA型鑑定をめぐる不正の問題もありまして、現在特別監察に入っているところです。国家公安委員会でもこうした事案について議論して対応してきたところですけれども、御退任に当たりまして、こうした一連の問題、事案について、国民の警察に対する信頼が揺らぎかねない事態かと思います。改めましてどのように受け止めていらっしゃるか。国民の信頼を得る警察活動、どうあるべきかという観点も含めまして、お考えをお願いします。
- (答)様々な問題がございまして、国家公安委員会におきましても、委員の先生方から、今、御指摘いただいたように、大変深刻な問題である、それから、国民の信頼感を揺るがす問題であるという発言も出ましたし、御指摘もあったところでございます。
その反省というか、事件が起こって、それがなぜ起こったか、そして、起こさないためにも検証が必要ということで、各県警において検証を行い、各県の公安委員会の先生方のチェックも含めて、今、チェックをして、また、発表したものは発表したところでございますので。今後、こういった事案が二度と起きないような取組をしっかり一つ一つの検証した内容、そして、そこで問題となってきた課題が浮き彫りになってきているわけですから、それをちゃんと積み上げて、二度と起きないような体制を取って、そして、国民の信頼をしっかり取り戻していただきたいと真に願っております。 - (問)防災庁について伺います。政府は、内閣府防災の規模を拡大して防災庁を創設する方針です。改めて防災庁設置の意義と、新政権に望むことをお伺いできますでしょうか。
- (答)私が大臣に就任をいたしまして、やはり一つ目に、最初の段階ですごく感じたのは、やはり内閣府防災の人的パワーが少なかったなというのを感じました。
今回、防災庁設置ということで、石破総理のリーダーシップで、予算にしても、それから人員にしても倍増ということで増やしていただきましたし、また、来年に向けて既に概算要求において更なる倍増を、今、申請を提出しているところでございますが。
まずは、こういった人的パワーが増えたことによって、「事前防災」を是非とも徹底していただきたい、また、防災に関しての様々な企画、計画といったものが、なかなか十二分に練られてこられなかったという私自身の思いはありましたので、ここに力を入れて、今もう既に進めていただいていますが、今後、力を入れていただきたいと思っております。特に南海トラフであるとか、首都直下地震であるとか、既に大規模災害の発生が懸念をされているということでございますので、しっかり、ここは作業を進めていただきたい。
そしてもう一つは、やはり司令塔としての機能ということで、今回の防災庁は大臣も他の大臣に対して勧告権を持てるという立場になるということを想定しているようでございますので、今よりも強い立場となり、そして、一方では司令塔となって、しっかり災害対策、防災対策を進めていただきたい。
これからまた新しい政権になるわけでありますが、この防災庁に関しては、私は是非この方向性を進めていただきたいと思っているところであります。 - (問)大臣、大変お疲れさまでございました。
大臣退任後、冒頭の御挨拶の中で、能登半島地震からの復旧・復興、また、国境離島の方々への生活を支えていく、そうしたことに一議員として、一人の議員として取り組んでいきたいというお話がございました。退任後に大臣が取り組みたいライフワークとする政策、様々あろうかと思うんですが、どういったことを取り組んでいくお考えなのか、改めて教えてください。 - (答)今、指摘をいただいた2点に関しましては、能登半島の地震発災後、よもや私が防災担当の大臣になると思ってませんでしたけれども、その当時から能登半島には足を運び、いろいろな方々のお話をお伺いしてきたという経緯がございまして、やはり、そこで様々知り合った方々が実際私が大臣になって以降もいろいろな現地の情報を直接いただける関係がそのまま生きて、大変、私個人としては有意義な関係になったなと思っておりました。
ですから、そういった方々が既におられるので、そういった方々などとも引き続き連携を取って、そして、必要なものを今度は与党の立場で発言してまいりたい。もちろん法改正や、そういったものにも関係するものがあろうかと思います。
特に後半の離島に関しては、私も申し述べましたが、時限立法となっております法律が再来年の3月で、これで一応期限が切れるというタイミングでございますから、スタートが議員立法でありましたので、これも議員立法でということで、今、考えておられるようでありますけれども、そういったところで与党の立場でもお手伝いができればなと思っております。 - (問)もう一点。大臣、「世界一安全な日本を実現するために全力で取り組んできた」ということをおっしゃっておられます。後任の国家公安委員長にやはり期待すること、特に体感治安、この辺りについて、特に取り組んでほしい政策課題などありましたら改めて教えてください。
- (答)私も全力でやってきたつもりでもありますし、当然警察庁のメンバーも懸命に警察行政を進めておられると思っておりますので、基本的には今の延長線上で、言わば必至というか、着実に一歩一歩前へ進めていただければいいのかなと思っております。
しかし、今回サイバーに関しても積極的な対応ができるような法案が成立しましたが、今も、昨日もASKUL(アスクル)で発注ができないというようなことがありましたけれども。このサイバー分野というのが今後大変重要になってくると思うので、来年からサイバー分野に絞った専門家の採用も始めましたけれども、やはり人がそろわないと十二分な対応ができないということも考えるので、人の採用というのを考えてもらいたいと。そして、これは各県警における、今、通常の人事・採用に関しても同じことが言えるかと思いますので、この部分にもしっかり配慮してもらいたいと思います。
1年間、お世話になりました。ありがとうございました。
(以上)