城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年9月19日
(令和7年9月19日(金) 10:01~10:22 於:中央合同庁舎8号館1階S106会見室)
1.発言要旨
2点、御報告申し上げます。
まず、科学技術政策担当大臣としての報告であります。
9月13日から17日にかけまして、オーストリアの首都ウィーンに出張いたしました。第69回国際原子力機関総会(IAEA総会)に、日本政府代表として出席してまいりました。
現地時間15日に実施されました一般討論演説では、国際社会の分断が深まり、現下の安全保障環境が一層厳しさを増す中、核不拡散と原子力の平和利用を任務とするIAEAの役割は重要であり、我が国は、この分断を乗り越え、国際協調を促すことで、IAEAを支えていくことを訴えました。また、アルプス処理水の海洋放出につきましては、これまで計14回にわたり、計画どおり安全に行われており、近隣諸国を含む各国の分析機関や国際専門家も参加するモニタリング、そしてIAEAによるレビュー、これらにより、その安全性が継続的に確認されている旨を強調させていただきました。さらに、燃料デブリの試験的取り出しを含め、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取組において、重要な前進が見られている旨も説明いたしました。
なお、今回の一般討論演説におきまして、ALPS処理水の海洋放出について批判的に言及した国はありませんでした。これまで日本政府は、様々な機会を捉えまして、ALPS処理水の海洋放出に係る日本の取組を丁寧に説明し、積極的に情報発信を行ってきたところでありますが、こうした取組を通じまして、国内外において、科学的知見に基づく冷静な対応が着実に広まっていることの現れであり、極めて重要な成果であったと考えております。
また、一般討論演説の後には、ウィーン日本政府代表部大使である海部大使とともにレセプションを主催し、出席されたIAEA高官及び各国の政府代表、大使等に対しまして、福島復興や、我が国の原子力の平和利用に関する取組等について紹介を行いました。また、我が国の取組を展示しているジャパンブースの開会挨拶も同時に行いました。このレセプションとジャパンブースの両方で、福島県産の日本酒の振る舞いもございました。
加えて、今回の機会を活用しまして、現地時間14日にはライト米国エネルギー長官と、また、翌15日にはグロッシーIAEA事務局長、ビエ・ベルギーエネルギー大臣、エティアンブル・フランス原子力・代替エネルギー庁長官と順次会談を実施いたしました。
まず、グロッシー事務局長との会談におきましては、我が国とIAEAは、NPT(核兵器不拡散条約)体制の維持・強化に資する核不拡散と原子力の平和的利用の促進という目標を共有し、互いに強い信頼関係を構築できる重要なパートナーである旨を確認し、連携を一層深めることで一致いたしました。特に、ALPS処理水の海洋放出について、私から、IAEAの継続的な関与に謝意を述べるとともに、IAEAの枠組みの下、レビューやモニタリングといった取組に協力していく旨を述べました。また、小型モジュール炉(SMR)など、新たな原子力技術の導入を検討している東南アジア等の国に対する専門家の派遣などについて、日本とIAEAの協力を強化していくことでも合意いたしました。
ライト米国エネルギー長官との会談では、日米両国は、エネルギー分野を含む原子力の平和的利用及び核不拡散の分野におけるパートナーであること、日米両国がこの分野で世界をリードするために引き続き連携していくこと、さらには、フュージョンエネルギーの重要性を確認いたしました。
また、エティアンブル・フランス原子力・代替エネルギー庁長官との会談では、原子力エネルギー分野における次世代革新炉の技術協力や、人材育成を含む産業間協力、ITER(国際熱核融合実験炉)などのフュージョンエネルギー分野での協力など、日仏両国の協力関係を一層強化することを確認しました。
ビエ・ベルギーエネルギー大臣との会談では、先方からの要望に基づきまして、我が国の原子力発電の再稼働の経験等について説明したほか、日ベルギー両国の原子力分野での協力について、上坂原子力委員長を交えて、意見交換をいたしました。
総じて、我が国の原子力外交政策や国内の取組について、国際社会に対して効果的に説明することができ、また、多くの理解を得られたものと考えております。今般のウィーン出張は、6月のウィーン出張に続きまして、大変有意義なものになったと考えております。引き続き、科学技術政策担当大臣として、原子力政策及び科学技術外交を着実に推進してまいる所存であります。
2点目ですが、引き続き、科学技術政策担当大臣として報告します。
本年は、「国際量子科学技術年」でもあり、量子分野における有志国との連携を、私自身、精力的に進めてきているところであります。そうした中、今月、この分野におきまして、我が国が国際的な取組を幾つか主催しており、この場を借りて、御紹介させていただきたいと思います。
まず、先週9月10日から12日にかけて、内閣府の主催により、13か国の量子政策担当者級による第7回目の「量子多国間対話(MDQ:Multilateral Dialogue on Quantum)」を、産総研G-QuATにおいて開催いたしました。我が国で開催するのは今回が初めてであります。この会合では、各国の量子戦略などについて活発な議論と成果共有が行われるとともに、次回の半年後の会合まで、これはスイスで行われる予定ですが、我が国が多国間対話の議論を引き続き主導していくことなどを確認いたしました。
また、9月8日には、外務省主催とはなりますが、同じく13か国が参加する、量子開発グループ会合(QDG:Quantum Development Group)も開催されました。
さらに、翌9日には、産業団体Q-STARと産総研G-QuATが共催する共同シンポジウムも開催されまして、量子技術をめぐる幅広い課題について、産官学での国際的な意見交換等が行われました。
今回の一連の日本主催のこのような取組を通じまして、量子分野において、我が国が国際的なハブとなり、国際連携、さらには、グローバルな量子エコシステムの構築をリードしていくという役割を、しっかりアピールできたのではないかと考えております。
今後も、内閣府としては、関係省庁、学術界、産業界、そして有志国政府と連携いたしまして、量子分野における国際協力をしっかりと推進してまいります。
2.質疑応答
- (問)第7期科学技術・イノベーション基本計画の論点が示されましたけれども、これを実現するためには、かなり大胆な財政投資が必要になると考えられています。今後の研究開発投資の在り方について、大臣のお考えを教えてください。
- (答)昨日18日に開催されました基本計画専門調査会におきまして、来年4月から始まる第7期科学技術・イノベーション基本計画についての論点案を、事務局より提示し、御議論いただきました。御指摘の研究開発投資の在り方につきましては、基本計画における重要論点の一つであると認識しております。
近年、御案内のとおり、物価高騰や円安の影響によりまして、研究費が実質的に減少しており、その結果として、研究現場では、この記者会見でも何度も申し上げているとおり、設備の老朽化や人材不足など深刻な状況にあると認識しております。
研究力を強化し、イノベーションを生み出していくためには、何といっても、現場への投資が何よりも重要であり、投資を拡大していくことが必要と考えております。第7期科学技術・イノベーション基本計画の検討過程におきまして、具体的な研究開発投資の規模について、しっかりと議論し、最終的に決定してまいる考えであります。 - (問)今のに関連してですけれども、昨日、基本計画の論点案が示されまして、委員の方からは、これまでの課題や対応方針などが網羅されていると、おおむね評価されていたと思うのですが、ただ、一部の方からは、これを全部進めようとすると、本当に人手も資金も膨大なものになってしまうというような趣旨の指摘もありまして、国民に強いメッセージを発するためには、ある程度、焦点を絞る必要もあるかと思うのですけれども、その辺り、今後どう議論を進めていって、何か重点的な議論、何かポイントなどありましたらお願いいたします。
- (答)昨日の基本計画専門調査会におきましては、第7期基本計画について、多様な観点から御議論いただいたと承知しております。
御指摘のとおり、昨日は、多岐にわたる項目を論点案として網羅的に提示したところでありますが、これまでの様々な議論を踏まえたものであり、いずれの項目についても、政府としてしっかり取り組んでいく必要があると考えております。
他方、御指摘のとおり、やはり国民の皆様に対して分かりやすく発信し、理解を得ていくことが重要であると認識しており、どういった分野についてどのような強いメッセージを発信していくか、打ち出していけるかについては、しっかりとこれから検討してまいる考えであります。 - (問)関連してですけれども、網羅的である一方で、広くて薄いという意見も出ており、第6期と違う特徴や、今後、特に力を入れたい政策があれば教えてください。
- (答)第7期基本計画では、5年前の第6期基本計画で示されました「国民の安全・安心の確保」や、「一人ひとりの多様な幸せの実現」という目指すべき社会像を踏襲しつつも、世界経済の不確実性が一層高まっており、また、科学技術・イノベーション分野をめぐる国際競争が極めて激化していることも踏まえまして、これらに対応していくための取組について、検討を新たに深める必要があると考えております。
私としましては、基礎研究力がイノベーションの土台であるということは、この記者会見の場でも何度も申し上げていますが、我が国の未来の礎となるのが基礎研究でありまして、こうしたことから、基礎研究力を抜本的に強化するための「科学の再興」が、重要論点になるものと考えております。
また、AIや量子といったハイインパクトな科学技術の実装に向けた競争が、国際的に激化しておりますので、国家として、戦略的に重要な技術領域を特定いたしまして、研究開発から産業化まで一気通貫で支援していくことも重要と認識しております。
さらに、我が国の重要技術の確保やサプライチェーンの強化を図る観点から、国家安全保障政策と有機的な連携を図り、その方向性や考え方についても、この基本計画の中に新たに明記していくことも重要と考えています。
加えまして、各種取組の実効性を担保するために、先ほども申しましたように、研究開発投資の在り方についても、これまた極めて重要な論点だと思っています。
いずれにしましても、基本計画は、多様な論点から議論する必要があると考えておりますので、今年度中の計画策定に向けて引き続き、検討が浅いと言われないように深めてまいる考えでございます。 - (問)私も関連して、昨日の専門調査会についてです。委員の方から、国民は、今、生活、目の前のことで手一杯だったりして、今、科学技術に力を入れる理由だったり、科学立国を目指す必要性、理由というのを丁寧に説明することが一つ大事なのではないかというお話がありました。改めてですが、なぜ今、「科学の再興」が必要だと思うのか、メッセージがありましたらお願いします。
- (答)現在、我が国は、高齢化、少子化、人口減少の進展に伴う人手不足、あるいは気候変動によると思われる異常気象や、地震や津波等の災害が深刻化しております。かつてないほど厳しい状況に直面していると考えています。
そうした中で、科学技術・イノベーションは、それらの社会課題を解決したり、我が国の経済的・社会的発展、さらには文化的発展ももたらす源泉として不可欠なものであると考えております。
特に、新たな「知」を生み出すための基礎研究力、すなわち「科学」の力は、技術の開発やイノベーションの創出の土台でありまして、我が国の未来の礎となるものと認識しております。そして、その重要性は、基礎科学と社会実装が近接化している現在の状況において、ますます高まっていると考えております。
しかしながら、昨今、我が国の研究力は他国と比べても相対的に低下しておりまして、様々な研究分野において、我が国の国際的なプレゼンスも低下しておりますことから、基礎研究力を抜本的に強化し、国家として、「科学の再興」を目指す必要があると考えております。
この「科学の再興」は、第7期基本計画の重要論点であると考えておりますので、この点、しっかりと検討を進めてまいる考えであります。 - (問)1点、自民党総裁選について、少しお伺いできればと思っております。昨日、高市候補が立候補を意思表明されまして、これまで5人の候補が意思表明されたということになっております。大臣、閣僚のお立場で恐縮ではありますが、どの候補を支持されるか、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。
- (答)この記者会見は公務の場でありますので、自民党という一政党における政治活動に関する事柄についてのコメントは差し控えさせていただきたいということで、お許しいただければと思います。
- (問)大臣は初代AI担当大臣で、この間、福永統括官からもいろいろと政府の取組を聞きましたけれども、あまり元気が出ないというか、AI新法ができたこと自体、ほとんど誰にも知られていないと。日本政府の中で、AIを象徴するような人がやはり必要なのではないかと。唯一、世界のグローバルリーダーは、日本では多分、孫さんだけなのですけれども。やはりこの分野は、若い人が憧れるような人が政府にいて、ガンガンやってもらうなど、何かそういうのがないと、もう老人はいいんですけれども、若い人に夢を与えるようなところが少し足りないように思うのですが、初代AI担当大臣としてどうお考えになるのか、その辺りを伺いたいです。
- (答)AI新法が施行となりましたけれども、AI法について、今、まだまだ発信力が足りないというような御指摘だと思いますが、必ずしもそうでもなくて、各紙、あるいはメディアでも取り上げられておりますし、私自身は、これからしっかりと広報戦略も含めて中身も発信していくことをすれば、理解増進につながると思っています。若い人を中心にというご指摘もまた参考にさせていただきたいと思いますけれども、いずれにしても、「隗より始めよ」ということで、内閣府のみならず、関係省庁、そしてまた、地方自治体におけるAIの活用等について、しっかりとこれから進めていき、時間がかからないようにできるだけ早いタイミングで、こういった我が国のAI政策の理解増進と関係者とのネットワーク構築を更に進めていく考えであります。
(以上)