城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年9月12日
(令和7年9月12日(金) 11:29~11:51 於:中央合同庁舎8号館1階S106会見室)
1.発言要旨
冒頭3点、御報告申し上げます。
まず、1点目は、人工知能戦略担当大臣としての報告であります。
本日、閣議終了後に、官邸において、AI法に基づき設置された「人工知能戦略本部」の第1回会合が、本部長である総理の御出席の下で開催されました。私も副本部長として出席し、司会を務めさせていただきました。
本会合においては、私から、今後策定するAI基本計画骨子のたたき台をお示しし、多くの本部員である閣僚の皆様から積極的な御意見をいただきました。併せて、「指針」の取りまとめ方針や、先行的に進めていた調査の現段階での結果等について、報告させていただきました。
最後に、総理からは、AI基本計画の策定に関して、4つの基本方針に沿って検討するよう御指示がございました。
具体的には、まず、第1の柱である「AIを使う」については、様々な課題を解決するため、AIの性能が向上し、開発が進むという好循環を生み出す必要があり、このため、政府が率先して、AIを適切に利用する取組を進めるとともに、先回りして規制・制度の改革を進めること。
次に、第2の柱である「AIを創る」については、AIを国内で研究・開発するための能力を強化するため、フィジカルAI等の開発や導入支援を進めるとともに、データセンター等のインフラの確保を進めること。
続いて、第3の柱である「AIの信頼性を高める」については、国民の権利や利益を侵害することがないよう、調査研究やガイドラインの整備を進めるとともに、国際的なガバナンスの形成を主導すること。
最後に、第4の柱である「AIと協働する」については、AIによって人が幸せになるような社会を築いていくため、必要な制度や社会の仕組み、産業や雇用の在り方について検討すること、こういった御指示がございました。
本日の総理の御指示や、各閣僚の御意見等も踏まえ、本日設置された有識者からなる専門調査会において、基本計画や指針等に関する議論を今後加速してまいります。
引き続き、AI戦略担当大臣として、我が国が「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」となるよう取り組んでまいる考えであります。
なお、このAI戦略本部の詳細等については、本日このあと事務方からより詳細なブリーフィングを行いますので、よろしくお願いいたします。
次に、2点目ですが、科学技術政策担当大臣としての報告であります。
ホライズン・ヨーロッパへの準参加につきまして、昨年12月より、我が国政府と欧州委員会との間で、協定のための交渉を進めているところでありますが、令和8年度概算要求において、必要経費を要求したこともあり、この機会を捉え、一昨日10日、パケ駐日欧州連合大使と面会し、準参加に関する意見交換を、短時間ではありますが、行いました。
私からは、日本のホライズン・ヨーロッパへの準参加は、我が国とEU(欧州連合)の双方にとって象徴的な意義を有し、また、実質的な成果となり得るものであり、できる限り実現させたいと考えている旨をお伝えしたところであります。それに対しパケ大使からは、交渉プロセスの加速に向けた日本側の意向を含む、そうした私の考えを、EU側のカウンターパートでありますザハリエヴァ欧州委員にも伝達するとの発言がございました。
今後、引き続き協議を進めていくことになりますが、私自身、積極的に科学技術外交を進めていきたいと考えており、本件へのフォローはもちろん、来週のIAEA(国際原子力機関)総会への出席や、来月の国際科学技術関係大臣会合の京都での開催などを含めて、今後とも、残された任期、しっかり取り組んでまいります。
3点目ですが、引き続き科学技術政策担当大臣としての報告であります。
明日9月13日から17日にかけて、第69回国際原子力機関総会、いわゆるIAEA総会に出席するため、オーストリアのウィーンを訪問します。今次総会では、現地時間15日に、政府代表として一般討論演説を行い、さらに、グロッシーIAEA事務局長、ライト米国エネルギー省長官、エティアンブル・フランス・原子力・代替エネルギー庁長官等とのバイ会談を行う予定であります。
また、ウィーン日本政府代表部大使とともに、レセプションを主催し、IAEA高官及び各国の政府代表、大使等を御招待いたしまして、福島復興や、我が国の原子力の平和利用に関する取組等についての紹介も行う予定となっております。
大変短い滞在期間ではありますが、我が国の原子力に対するスタンスをIAEA加盟国に正確に発信するとともに、IAEAや米国、フランス等との意見交換を通じて、関係を強化してまいる考えであります。
2.質疑応答
- (問)今年の本田賞に、面発光レーザーを開発した伊賀健一博士が選ばれました。大臣としての受け止めと、こうしたイノベーションを連続的に生み出していくためにどのような取組が必要なのか、お考えを教えてください。
- (答)御指摘の本田賞でありますが、本田宗一郎氏などが設立した財団により、エコテクノロジーの分野において顕著な業績を残された方を対象に、毎年1件、授与される賞であると伺っております。
先日、浜松ホトニクスを視察させていただきましたが、本田宗一郎氏が現在の本田技研工業を創業した地が浜松であり、また、お生まれになったのは、今の天竜区、旧天竜市、光明村というところなのですが、これも私の地元でございまして、私の出身の浜松市と科学技術の関わりの深さを改めて実感いたしました。
御質問いただいたとおり、このたび、面発光レーザーの着想と研究開発における先駆的貢献及び実用化を先導したことが評価され、東京科学大学栄誉教授の伊賀健一先生が、本田財団より本田賞を授与されたと承知しており、私からもこの場をお借りしてお祝いを申し上げたいと思います。
まさに、今回の受賞内容のようなイノベーションにつながる新たな「知」を次々と生み出していけるようにすることが重要と考えており、第7期科学技術・イノベーション基本計画の策定に向けた議論の中でも、研究力の抜本的強化、すなわち「科学の再興」が重要な論点となっているところであります。
令和8年度概算要求においては、大学等の基盤的経費の確保や研究設備・機器の整備・共用・高度化、そしてまた、AI時代に対応した研究基盤の構築など、研究力の抜本的強化に向けた取組を積極的に盛り込んでいるところであります。引き続き、関係省庁とも連携して、しっかり対応してまいる考えであります。 - (問)先日、NASA(アメリカ航空宇宙局)が、火星の岩石から生命の痕跡の可能性のある鉱物が見つかったという発表をしました。まだ確定ではないので、今後、詳細なサンプルリターンなどの調査が必要になるかと思うのですけれども、日本でもMMX計画(火星衛星探査計画)で火星の衛星への探査をする予定があるのですけれども、今回の研究成果の受け止めと、こうした日本の火星探査にとっても追い風、弾みとなるか、その辺りの所感をお聞かせください。
- (答)先日、NASAより、NASAの探査機が採取したサンプルから、古代の微生物の痕跡である可能性がある鉱石が発見されたこと、ただし現時点では、微生物の痕跡とは確定しておらず、更なる分析が必要であることが公表されたと聞いております。こうした月や火星などにおける優れた研究成果が、今後も創出されていくことを期待しています。
また、今、御指摘ありました、我が国が進める火星衛星探査計画(MMX)は、世界初の火星圏からのサンプルリターンを目指す計画でございます。したがって、今回の研究成果や、今後、MMXから創出される成果も踏まえ、火星の構造や起源に関する理解が飛躍的に進展することを私も大いに期待しております。 - (問)AI戦略本部でお伺いします。先ほど骨子を公開された基本計画の中では、国家主権と安全保障の観点から、日本の文化・慣習等を踏まえた信頼できる基盤モデルを開発する点であるとか、我が国独自にAIエコシステムを研究・開発できる能力を強化、ということを目指すとうたわれていると思います。政府として、今後、LLM(大規模言語モデル)を含むAIを、いわゆる国産で開発することを目指すということでいいでしょうか。それを例えば政府で開発するのか、あるいは日本企業の開発を支援するのか等、どのような姿を描いているのかを教えてください。
- (答)基本計画骨子のたたき台でも示されているように、AIは、国民生活や経済社会に密接に関係することから、日本の文化・習慣等を踏まえた信頼できるAIを開発することや、我が国独自に信頼できるAIエコシステムを構築することは極めて重要であると私も考えております。
大規模言語モデル、いわゆるLarge Language Model、LLMの開発については、現在、外国企業が先行している状況でありますが、国内でも、小規模なモデルで高性能なAIを開発する取組が進められており、こうした国産AIの開発を行う民間企業、あるいは研究機関による取組を、政府として、積極的に後押ししていきたいと考えております。
いずれにしましても、国産AIに係る詳細な取組方針については、今後、有識者で構成されます専門調査会からの御意見も聴きながら、関係省庁とともに、引き続きしっかりと検討してまいる考えであります。
なお、政府として自ら国産LLMの開発を進めることについては、現時点では考えてはおりませんが、いずれにしても、詳細な取組方針については、今後しっかりと検討してまいりたいと思っております。政府の役割は、民間企業や研究機関による取組をしっかりと後押しすることが、まずは基本ではないかと思います。 - (問)AIの関連で、もう一点お伺いします。これまで大臣、様々な場で、この1~2年が勝負だと、勝ち筋を見つけたいというお話があって、今日、戦略本部があり、年内に基本計画をつくるということですが、改めて、直近になりますが、どのように戦略を進めていきたいかという思いをお願いします。
- (答)この記者会見の場でも何度も申し上げているとおり、昨今、世界でAIの開発・活用の競争が大変激化しており、こうした中、やはり、反転攻勢を仕掛けるべく、今後1~2年の取組が極めて重要であると思っており、決して足踏みがこの分野であってはならないと考えております。
そのため、本日、総理から御指示をいただきました「AIを使う」、「AIを創る」、「AIの信頼性を高める」、「AIと協働する」、こうした4つの基本方針に基づき、有識者で構成される専門調査会もしっかり活用しながら、今後講じるべき施策の具体化を速やかに進めてまいる考えであります。
また、AI技術が急速に進歩し、開発競争が激化する中で、我が国の国際競争力を維持していくためには、やはり、AI基本計画を、当面、少なくとも毎年見直していくことが重要と考えております。基本計画骨子のたたき台にも示してあるように、「アジャイル」、すなわち柔軟かつ迅速、機動的、そうした観点でこの政策を進めていくことが大事であり、さらには、国内政策と国際連携を同時に取り組む「内外一体」の視点も重視していく考えであります。 - (問)続けて失礼します。
話題は変わりますが、自民党総裁選についてお伺いします。経済安全保障担当大臣としてお伺いしますが、今週も出馬を表明する議員がいらっしゃいました。ただ、先日、例えば、中朝露の首脳が一堂に会するなど、安全保障上だけでなくて、経済安全保障上も厳しさが増している中、今後も様々な施策を進めていかなければいけないと思うのですが、大臣から見て、今、どのようなリーダー像が日本に求められているとお考えでしょうか。 - (答)この場は、石破総理をお支えする閣僚としての会見の場でありますので、御質問いただいたような、いわゆる日本のリーダー像について、具体的にお答えすることは差し控えたいと思いますが、私としては、石破内閣の一員として、引き続き、残された期間、経済安全保障分野のみならず、与えられた職務をしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
その上で、厳しい安全保障環境の中、同盟国・同志国等とも連携しつつ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化するとともに、経済安全保障を確保することは、我が国の平和と安全、繁栄を含む国益を守る上で重要だと考えております。経済安全保障担当大臣として、引き続き、我が国の自律性の向上、優位性、不可欠性の確保に向けて、施策を講じてまいる考えであります。
総裁選については、あくまでもこれは自民党の活動でございますので、そうした事柄については、この場でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。 - (問)AIの初会合があったわけですけれども、予算も人員もやはり遅れているのではないかと率直に思うのですけれども、これができて、予算が2,000億ぐらいでしょうか、やはり国策として推進という意味では、AI庁ぐらいつくってもいいような時代なのではないかと言う人もいるぐらいなのですが、スピード感も必要ですけれども、これを第一歩と見ていいのか、ここから本当にアクセルを踏めるのかどうか、大臣、初代なので、その辺りを率直に伺いたいです。
- (答)AI関連予算についてですけれども、昨年の令和7年度予算額については、大型の基金の積み増し額が含まれていることに加えて、令和8年度要求額には、複数の事業で、いわゆる「事項要求」があったことから、実際、昨年度から減額要求になっておりますけれども、令和8年度予算の獲得に向けては、AI政策、AI法を所管する大臣として、関係省庁とやはりしっかり連携して、できるだけ予算を確保し、そしてまた、官民しっかり連携しながら、先ほども申しましたとおり、大変この分野の競争が激化しており、この1~2年が勝負だと思っていますので、決して足踏みすることなく、しっかりと予算を確保しながら、官民連携、そしてもちろんその前提として、関係省庁ともしっかり連携して、AI分野について取り組んでまいる所存でございます。
(以上)