城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年7月1日
(令和7年7月1日(火) 11:29~11:47 於:中央合同庁舎8号館1階S106会見室)
1.発言要旨
冒頭、何点か御報告させていただきます。
まず、1点目ですが、宇宙政策、科学技術政策及び経済安全保障担当大臣としての報告であります。
6月24日より29日にかけて、オーストリア及びドイツに出張し、国際会議への出席、また、各国閣僚とのバイ会談等を行ってまいりました。
まず、25日ですが、オーストリア・ウィーンで開催された、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)の本委員会及びサイドイベントに出席し、宇宙空間の持続的かつ安定的な利用の重要性を訴えるとともに、スペースデブリ対策の技術開発やルールづくりに関する日本の取組を発信いたしました。国連と共催したサイドイベントにも多くの方の参加があり、日本の取組に対する各国の関心の高さを実感した次第であります。宇宙デブリ対策という国際社会共通の課題に対して、国連におけるルールメイキングの議論に主導的に取り組むという我が国の方針を、十分に印象付けることができたのではないかと考えております。
また、本委員会の合間には、ホラマイニ国連宇宙部長、ベイト英国宇宙庁長官、バレンテ イタリア宇宙機関長官との会談を行い、国連宇宙部や同志国との連携を更にこの宇宙の分野で進めていくこと等について確認を行いました。
さらに、経済安全保障担当大臣として、オーストリアのハットマンスドルファー経済・エネルギー・観光大臣と5月の東京での会談に続き2度目の会談を行い、また、マインル=ライジンガー外務大臣と初めての会談を行いました。
私からは、経済安全保障推進法やセキュリティ・クリアランス制度など、我が国の経済安全保障政策を説明いたしました。両大臣からは、日本の先進的な取組に感銘を受けたとの御発言がございました。さらに、重要鉱物を含む重要物資のサプライチェーン強靱化に向けた分析力の強化など、経済安全保障に関する課題について議論を深めました。
そして、その後、ドイツ・ベルリンに移動し、翌26日には、フンボルト財団主催のジーボルト賞授賞式に出席いたしました。シュタインマイヤー大統領からジーボルト賞を授与された平野圭一教授にお祝いを申し上げるとともに、大統領公邸に集まられた日本人研究者の皆様とも意見交換を行うことができました。
このジーボルト賞は、毎年、日本人研究者1名に大統領から直接授与される賞であり、まさに強固な日独学術交流の歴史に感銘を受けるとともに、国際頭脳循環強化に向けた我が国の取組を検討する上でも、大いに刺激となりました。
また、ドイツ研究・技術・宇宙省のベア大臣と、先月18日の東京での会談に続く2度目の会談を現地で行うとともに、ベア大臣との間で、「日独間の科学技術・イノベーションに関する協力趣意書」への署名と、「平和目的のための宇宙協力に関する日独共同宣言」を延長するための署名を行いました。
本年5月の新政権発足を機に誕生した研究・技術・宇宙省のベア大臣と、早速に協力関係を築くことができ、共に高い科学技術力を有する日独間で、量子、フュージョン、AIロボティクス等の分野における科学技術協力及び宇宙開発協力を、一層進展させる基盤を構築することができたと考えております。
さらに、経済安全保障担当大臣として、ライヒェ経済・エネルギー大臣及びヴァーデフール外務大臣と、それぞれ初めてとなる会談を行いました。両大臣とは、日本とドイツが直面する経済安全保障上の課題や相互の取組について、議論を深めることができたと思います。
また、会談では、インド太平洋地域を含めた安全保障環境が厳しさを増す中で、経済安全保障に関する重要課題について、あらゆるレベルで議論を深め、時代に即した取組を進めていくことを確認いたしました。
翌27日は、ミュンヘンに移動し、ドイツ航空宇宙センター(DLR)を訪問し、産総研(国立研究開発法人産業技術総合研究所)との研究協力覚書の対象分野に量子技術を加える改定の署名式に出席するとともに、ピッザーラ理事長の案内の下、宇宙分野の研究開発現場を視察させていただきました。また、急遽、ゼーダー・バイエルン州首相との面会が成立したため、会談を行うとともに、在ミュンヘンの日本人研究者の皆様とも意見交換を行いました。
今回の私の出張が、日・オーストリア関係及び日・ドイツ関係の更なる発展と、我が国における宇宙政策、科学技術政策、そして、経済安全保障分野の取組の深化につながるよう、出張の成果を今後の政策推進にしっかりと活かしてまいりたいと考えております。
2点目ですけれども、これは宇宙政策担当大臣としての報告であります。
一昨日、6月29日、H-ⅡAロケットの最終号機となる50号機により、「温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)が打ち上げられ、無事打上げが成功いたしました。御尽力いただきました関係企業、そして関係機関の皆様に、改めてこの場をお借りしまして御礼申し上げたいと思います。
GOSAT-GWは、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と環境省が共同で開発した衛星であり、温室効果ガス濃度や海面水温等の高度な測定を可能とすることから、気候変動の観測、あるいは水産業における活用など、今後、幅広い分野での貢献が期待されているところであります。
また、このH-ⅡAロケットは、今回の50号機で運用が終了いたしました。平成13年(2001年)の初号機打上げから長きにわたり打上げ成功の実績を積み重ね、日本の宇宙開発利用を大きく進歩させたことは、我が国のまさに誇りであります。ロケットの開発・製造・運用を支えてこられました関係者の皆様の御尽力に、心から敬意を表し、感謝を申し上げたいと思います。
長い年月をかけて培われた技術と志が、H3ロケットや他の国産ロケットにしっかりと受け継がれ、宇宙産業の新たな時代を切り拓くとともに、より豊かな社会活動の実現に貢献することを強く期待しております。
宇宙政策担当大臣として、引き続き、政府の先頭に立って、我が国の宇宙開発利用を進めてまいります。
最後に、3点目ですが、これも宇宙政策担当大臣としての報告であります。
昨日、6月30日ですが、石破総理、あべ文部科学大臣及び司会進行の金井宣茂宇宙飛行士とともに、国際宇宙ステーション(ISS)に、現在、船長として滞在中の、大西卓哉宇宙飛行士とのリアルタイム交信イベントに参加させていただきました。
石破総理からは、今後の地球低軌道活動等を見据えた、日本実験棟「きぼう」で必要となる活動について質問があり、大西飛行士からは、民間企業や大学等による様々な実験・ビジネス実証の場として活用することが重要である旨を伺いました。
また、私からは、大西飛行士の長年にわたる御経験を踏まえ、今後、日本が伸ばしていくべき、また、強化していくべき宇宙分野での具体的な取組についてお尋ねいたしました。それに対して大西飛行士から、日本の強みは、探査機やISSへの物資補給機等の開発、そしてまた、これらを打ち上げるロケットの運用、さらには、デブリ除去や日本実験棟「きぼう」での様々な実験といった、宇宙活動の幅の広さであると伺いました。
加えて、大西飛行士からは、国際宇宙探査時代に向けて、物資補給技術や有人与圧ローバ等、世界で日本にしかない技術を獲得することが重要であり、宇宙戦略基金等を活用し、世界で戦っていけることを期待している旨を伺い、今後の宇宙政策の推進に向けて、大変参考になったと考えております。
大西飛行士におかれては、残りの滞在期間もお元気でミッションを完遂され、この夏、御無事に帰還されることを心からお祈り申し上げたいと思います。
2.質疑応答
- (問)今回の出張、かなりタイトなスケジュールであったかと思うんですけれども、その中で、今後の政策に具体的に落とし込めるようなものはあったでしょうか。
- (答)冒頭申し上げたとおり、今回の出張は非常に多岐にわたる内容であったため、主なものをその中から幾つか述べさせていただきたいと思います。
まず、COPUOSで発信した宇宙デブリへの対応につきましては、技術面と制度面の双方のアプローチについて、具体的な取組を加速してまいりたいと考えています。特に、技術面については、JAXAとアストロスケール社が実施いたします「商業デブリ除去実証」を引き続き推進するとともに、宇宙戦略基金も活用しながら、民間を含めたこの分野における技術力を大きく高め、世界を牽引していきたいと考えております。
また、今のは技術面ですが、制度面については、我が国のガイドライン事例を国際社会に発信する効果を実感したことから、更なる発信に努めてまいる考えです。
加えて、将来、国際的な軌道上サービスを実施する際には、国家間及び企業間の調整が必要となるということを見据え、その際の調整事項の明確化に向けた検討を、この夏以降に実施していく予定としております。もちろん、この検討から得られた成果は、国連等に報告することで、国際的な場の議論の推進に貢献してまいる考えでもあります。
また、今回、ドイツとの間で科学技術・イノベーション及び宇宙分野に係る署名を行いましたが、例えば、量子技術については、産総研とDLRをはじめとした日独間の機関間連携が進んでいるほか、先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)などを通じた日独間の国際共同研究が間もなく開始されるところであります。こうした具体的な連携案件を一つ一つ増やしていく考えであります。
また、フュージョン技術につきましては、今回の署名も踏まえ、今後の連携について、担当レベルでの議論を開始したところであります。今後は、AIロボティクス等の分野においても、連携を模索していく考えです。
さらに、研究セキュリティ・インテグリティに関しては、これまでも担当レベルでの意見交換を行ってまいりましたが、G7等の枠組みを通じて更に対話を深めてまいる考えです。
そして、宇宙分野につきましても、JAXAとDLRとの協力関係を更に進めていけることが望ましいと考えており、この旨をJAXAにも伝えたところであります。
経済安全保障分野におきましては、今回、ドイツ及びオーストリアの各閣僚との会談で確認した方向性に基づき、重要物資のサプライチェーンの強靱化や経済的威圧など共通の課題への対応について、ドイツ・オーストリアとの二国間、さらには、EUを含むG7などの国際場裏における連携強化に向けて、関係省庁と連携し、具体的なアクションの検討に取り組んでまいる考えであります。
今回の出張のやり取りをフォローアップするよう、事務方にも既に指示をしたところであり、今後もあらゆるレベルで、各国との協力関係を強化していくことが重要と考えております。
いずれにしましても、引き続き、国際連携を通じて、宇宙政策、科学技術政策及び経済安全保障政策を、しっかりと前に進めてまいる考えであります。 - (問)私も欧州出張の関係なんですけれども、25日のCOPUOSでは、スペースデブリの除去について、各国に国際的なルールづくりについて協力を呼びかけたかと思うんですけれども、その関係で、国際的なルールづくりを日本が主導していく意義について伺いたいです。あと、アメリカ、ロシア、中国という、衛星を多数運用している国の協力が不可欠になるかと思うんですけれども、その辺りについて、今後、積極的に何か協力を呼びかけていく方針などありますでしょうか。
- (答)近年、宇宙開発利用の社会実装が急速に進展し、安全保障や、あるいは防災・減災など、経済・社会活動のあらゆる場面への応用が進んでおり、経済・社会を支える基盤としての宇宙開発の重要性が増大しているところであります。
一方で、宇宙は、混雑の度合いを急速に高めており、宇宙物体同士の衝突リスク、近接リスクも日々高まり続けております。
このため、宇宙空間の持続的かつ安定的な利用の確保は、極めて重要な課題であり、我が国が技術面・制度面の双方からこれに積極的に取り組み、国際的なプレゼンスを高める意義は非常に大きいと考えております。
こうした考えの下、我が国は、宇宙デブリ問題をG7の議題として扱うなど、この分野の議論で世界をリードしてきており、今回のCOPUOSへの参加を通じて、そうした我が国の立場を国際社会に改めて発信できたと考えております。
今後とも、宇宙空間の持続的かつ安定的な利用の確保に向けた考え方を同じくする同盟国・同志国との間で、まずは連携や意思疎通を図っていくとともに、国連をはじめとするマルチの場も積極的に活用して、世界のルール形成に積極的に貢献してまいる考えであります。
(以上)