城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年6月6日
(令和7年6月6日(金) 12:36~12:54 於:中央合同庁舎8号館1階S106会見室)
1.発言要旨
まず、科学技術政策担当大臣として、4点御報告いたします。
1点目ですけれども、本日の閣議決定案件についてであります。
本日、6月6日、「統合イノベーション戦略2025」及び「令和7年度特定新技術補助金等の支出の目標等に関する方針」が閣議決定されました。
まず、「統合イノベーション戦略2025」は、第6期「科学技術・イノベーション基本計画」の5年目となる年次戦略であります。第6期基本計画の総仕上げとして、「先端科学技術の戦略的な推進」、「知の基盤と人材育成の強化」、「イノベーション・エコシステムの形成」に引き続き取り組むとともに、第7期基本計画も見据えて、「経済安全保障との連携強化」なども推進していくこととしております。今般決定した統合戦略の着実な実行を図るべく、関係省庁としっかり連携して取り組んでまいります。
次に、「令和7年度特定新技術補助金等の支出の目標等に関する方針」につきましては、スタートアップ支援を目的としたSBIR制度において、毎年度、スタートアップへの支出目標額を定めているものであります。本年度も、この目標額を踏まえまして、関係省庁と連携し、スタートアップの研究開発力の強化に努めてまいります。
次に2点目は、先日、6月4日、持ち回りで開催されました、第23回統合イノベーション戦略推進会議についての報告であります。
先ほど申し上げました「統合イノベーション戦略2025」における「先端科学技術の戦略的な推進」という部分に関して、「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」及び「マテリアル革新力強化戦略」の改定を決定いたしました。いずれも我が国にとって極めて重要な技術分野の戦略改定であり、世界的な競争に負けることのないよう、当該戦略に沿った取組を、内閣府が先頭に立ってしっかりと進めてまいります。
3点目は、同じく6月4日に開催いたしました、第78回総合科学技術・イノベーション会議についての報告であります。
会議当日は、本日閣議決定されました「統合イノベーション戦略2025」に関する答申を行うとともに、J-Fusion(一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会)の小西会長から、フュージョンエネルギーの現状と産業界の取組等に関する、非常に分かりやすいプレゼンテーションが行われました。
また、会議の中で発表したとおり、第2期スタートアップ・エコシステム拠点都市として、現在の8都市に、新たに5都市を加えた合計13都市を選定するとともに、「第2期スタートアップ・エコシステム拠点形成加速化プラン」を策定いたしました。今後、本プランの下で、世界トップレベルのスタートアップ・エコシステム拠点都市を形成すべく、政府と拠点都市が一体となって、強力に取組を進めてまいります。
また、この会議の場では、石破総理より、国際頭脳循環の取組強化に向けて、私、城内実を中心に、政府内で早急に対応策を検討するように御指示をいただきました。科学技術政策担当大臣として、スピード感を持って対応策をまとめ、海外の研究者に向けて、日本の魅力とともに発信していきたいと考えております。
最後に、4点目、グローバル・スタートアップ・キャンパス構想(GSC構想)に関するワークショップについてであります。
これも同じく6月4日、第2回目となるワークショップを開催し、米国の企業家、ベンチャー投資家であるリード・ホフマン氏と千葉工業大学の伊藤穰一学長のお二人をパネリストにお迎えし、ディープテック分野のスタートアップ・エコシステムの発展方策などについて、講演と議論が行われました。私自身も、ワークショップに出席し、挨拶を行わせていただきました。GSC構想は、世界最高水準のイノベーションエコシステムのハブを構築する取組であるとともに、国際頭脳循環の加速にも資するものであるため、その実現に向けて、最大限尽力していきたいと考えております。
この数日、科学技術・イノベーション政策において、非常に重要な政策文書等を数多く決定・公表いたしましたが、これらをしっかりと実行していくことが重要であり、政府一丸となって、取組を推進してまいります。
もう1点、宇宙政策担当大臣としての報告です。
本日、日本の宇宙スタートアップ企業であるispace社が、我が国の民間企業として初めてとなる、月面への軟着陸に挑戦いたしました。
残念ながら、月面着陸の確認までには至らず、当初掲げていた全ての目標を達成することはできませんでしたが、我が国の民間企業の果敢な挑戦に、心から敬意を表したいと思います。私自身も、ispace社の皆様とともに、着陸の瞬間を見守りました。その場に満ちた熱気と挑戦への情熱は、鮮明に心に刻まれております。ispace社におかれましては、今後も挑戦を恐れず、持続的な月面活動に貢献していただくことを心より願っております。
度々こういった場でも申し上げておりますとおり、宇宙分野は、自動車産業に次いで我が国の基幹産業となり得る極めて重要な分野であります。我が国として、引き続き、スタートアップを含めました民間企業等の果敢な挑戦をしっかりと後押ししてまいります。
2.質疑応答
- (問)国際頭脳循環の総理からの指示なのですけれども、具体的な取りまとめの時期はいつぐらいになりそうかということと、政策パッケージにどんなことが盛り込まれるのか、何かイメージがあれば教えてください。
- (答)先ほど述べましたけれども、CSTI(総合科学技術・イノベーション会議)本会議において、石破総理から、国際頭脳循環の取組強化に向けて、私を中心に、政府内で早急に対応策を検討するよう御指示をいただきました。現在、この御指示を踏まえて、関係省庁と具体的な検討を進めているところであります。
政府としては、海外で活躍されている日本人も含め、海外から優秀な研究者を招聘することが、我が国の研究力にとって、非常に重要なことであると認識しております。これまでも、我が国において、国際頭脳循環の加速に向けた取組を進めてきたところでありますが、今回の総理の指示も踏まえ、また、国際動向も注視しながら、我が国としての取組の方向性を示したいと考えております。
時期ですけれども、可能な限り速やかに皆様に御提示できるよう、スピード感を持って対応してまいりたいと思います。具体的な時期は、まだ申し上げる段階にありませんが、繰り返しになりますけれども、しっかりスピード感を持って、できるだけ早いタイミングでと考えております。 - (問)関連で、総理の御発言の中に、国際卓越研究大学、ファンドを通じた支援をはじめと、念頭に置かれた発言がありました。つい先ほど、といいながら、卓越大である東北大の冨永総長から記者会見がありまして、まさにファンドのお金を生かして、5年間で300億円を投じて、国内外のトップレベルの研究者を500人採用するという計画が発表されています。総理から卓越大が言及されるのは異例という感じもするのですけれども、改めて、卓越大が果たす役割について、大臣から期待を教えていただけないでしょうか。
- (答)「国際卓越研究大学制度」においては、言うまでもなく、国際的に卓越した能力を持っていらっしゃる研究者の確保など、世界と伍する研究大学となるための体制強化に対して支援を行うということでありますが、既に御案内のとおり、「国際卓越研究大学」として認定された東北大学では、10兆円ファンドからの支援を活用して、海外の研究者の招聘に向けて取組を進めているところと伺っております。
また、この国際卓越研究大学制度については、第2回目の公募の審査を開始するところであり、新たに支援対象となった大学には、その取組の中で、国内外を問わず優秀な研究者を獲得していくことを期待しております。
いずれにしましても、政府としては、国際卓越研究大学を含めた、各大学や研究機関の取組を後押ししてまいる考えであります。
また、東北大学が本日会見を行い、大学ファンドを活用した海外研究者の招聘に関する取組状況を発表したということでありまして、私もその記事を拝見しました。我が国の研究力向上に資することになりますので、しっかりと支援、後押ししていく考えであります。 - (問)宇宙の関係で伺います。今日のispaceの結果は別として、軌道上の範囲を対象にしているロケットや衛星を支援するだけではなくて、より離れた月でのビジネスを考えている民間企業を政府として後押ししていく意義について、政府の考えを教えてください。
- (答)本日、月面着陸にチャレンジしましたispace社のように、月面の輸送や開発に挑む民間企業を政府が支援する意義といたしましては、1つは、月以遠の深宇宙への人類の活動領域の拡大、2つ目は、月面探査等を行う宇宙産業の振興、3つ目は、国際プレゼンスの向上といったものが挙げられると考えており、「宇宙基本計画」においてもこのような意義が明記されております。このため、政府としても積極的に民間企業の取組を後押ししていく必要があると考えております。
具体的には、現在、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)による技術支援や、SBIRフェーズ3基金、宇宙戦略基金を通じて、リスクの高い先端的な月面開発プロジェクトへの支援を行っております。
今後も、宇宙ビジネスを活性化するべく、月面開発・輸送分野も含めた、特にスタートアップをはじめとする民間事業者等への支援を強力に進めてまいる考えであります。 - (問)スタートアップ・エコシステム拠点についてお願いします。第2期の加速化プランが策定されましたが、その中でどういうことに注力して取組を進めていきたいのか、お願いいたします。
- (答)令和2年にスタートアップ・エコシステム拠点として8都市が選定されまして、それ以降、第1期の5年間ではスタートアップ創出数が増加するなど、「裾野」は拡大したと考えております。ただ一方で、グローバルに稼げるスタートアップが十分には創出されておりませんので、今後はその「高さ」を伸ばすことが課題となっております。
これを踏まえ、今般策定いたしました「第2期スタートアップ・エコシステム拠点形成加速化プラン」においては、まずは、グローバル拠点都市として8都市を選定するとともに、NEXTグローバル拠点都市としても新たに5都市を選定いたしました。
加えて、スタートアップ支援の重点化と集中支援、そして、政府と拠点都市間のネットワークの強化といった加速化アクションを、政府と拠点都市が一体となって実行することとしております。
例えば、「支援の重点化と集中支援」を行うに当たっては、拠点都市の有望スタートアップに対し、関係府省が連携し、更には拠点都市とも一体となって、創業からグローバル展開までの、一気通貫の支援を行うこととしております。
また、「政府と拠点都市間のネットワークの強化」に当たっては、お互いが「顔の見える関係」となり、各主体の課題解決や事業間連携を促進できる体制を構築していく考えです。
いずれにしましても、今回新たに策定した加速化プランの下、世界トップレベルのスタートアップ・エコシステム拠点都市を形成すべく、加速化アクションを強力に進めていく考えであります。 - (問)生成AIの活用についてお伺いします。日本新聞協会が4日に声明を発表しまして、生成AIに記事を学習させる場合には報道機関に許可を取るよう求めるような声明で、政府や国会に対しても、制度整備を保護に関して求めています。AI政策を所管する大臣として、この声明に対する所感と、政府の今後の対応方針をお聞かせください。
- (答)御指摘の、日本新聞協会が「生成AIにおける報道コンテンツの保護に関する声明」を発表し、そのような問題について御指摘されていることは承知しております。
こうした問題への対応については、昨年5月に公表した「AI時代の知的財産権検討会 中間取りまとめ」において、法・技術・契約の各手段の組合せにより、関係当事者が、「AI技術の進歩の促進」と「知的財産権の適切な保護」の両立に向けて、主体的に取り組むことが重要であることをお示ししたところであります。
その上で、例えば、今回の声明で指摘されていますように、技術的保護手段を設定し、報道コンテンツを保護する意思を示しているにもかかわらず、それを回避して、学習・利用する事業者に対しては、協会が課題であるとしておられることは十分認識をしております。
このため、今週6月3日に策定した「知的財産推進計画2025」におきましては、例えば、AI法に基づき策定される指針や、総務省及び経済産業省による「AI事業者ガイドライン」なども通じ、AI事業者による適切な開示対応を促すなど、透明性の確保に向けた仕組みを検討する必要があることを明記しております。
引き続き、生成AIと知的財産をめぐる様々な課題につきましては、日本新聞協会を含め、関係者の皆様からの御指摘も真摯に受け止めて、関係省庁と連携し、適切に対応していく考えであります。
(以上)