城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年6月3日

(令和7年6月3日(火) 9:30~9:58  於:中央合同庁舎8号館1階S106会見室)

1.発言要旨

 
 まず、知的財産戦略及びクールジャパン戦略担当大臣としての報告であります。
 本日、知的財産戦略本部会合を開催いたしました。「知的財産推進計画2025」及び「新たな国際標準戦略」を決定いたしました。
 今回の「推進計画」では、5年から10年先の社会を見据え、知的財産の力で国内外の社会課題の解決を図り、国内外でしっかりと稼ぐ、というサイクルの構築を念頭に、今後、政府が重点的に取り組むべき施策を取りまとめました。
 具体的には、まず第一に、AIが著作権など知的財産権の侵害を助長するリスクに対応するため、政府が一丸となって、AI開発の透明性確保に向けた検討を行うことを定めました。また、デジタル時代に対応した知的財産制度の構築に向け、特許法や意匠法などの制度的課題について検討を進め、法改正を含め、必要な措置を講じていくことも定めました。
 さらに、クールジャパン戦略に関しては、地方創生2.0の推進に向けて、今後、アニメやマンガなどの「コンテンツと地方創生の好循環プラン」を新たに策定いたします。具体的には、2033年までに全国200か所の拠点を選定し、成功事例の輩出・共有を進めることを定めました。
 なお、今次「推進計画」では、全体を俯瞰するKPIとして、「2035年までに、WIPO(世界知的所有権機関)のグローバルイノベーション指数の上位4位以内を目指す」などの新たな目標を設定いたしました。この目標の達成に向けて、着実に取り組んでいきたいと考えております。
 また、今回は、2006年以来、19年ぶりとなる「新たな国際標準戦略」も決定いたしました。国際標準化に向けた17の重要領域を設定するとともに、このうち、デジタル・AI、量子、環境・エネルギーなど、8つの領域については、我が国が、グローバル市場でのルール形成を主導することを目指し、資源を優先的に投下することとしております。
 今回決定した「推進計画」や「新たな国際標準戦略」を踏まえ、官民での連携を図りつつ、政府一丸となって取組を推進してまいります。
 詳細につきましては、この後、内閣府の担当者よりブリーフがございますので、そちらでお願いいたします。
 次は、科学技術政策担当大臣として報告であります。先日、5月30日ですが、「量子技術イノベーション会議」の島田座長代理から、有識者提言「量子エコシステム構築に向けた推進方策」を受け取りました。
 量子技術は、経済安全保障の確保や産業競争力の強化に直結する極めて重要な技術であります。今回策定いただいた推進方策は、既存の4つの戦略及び推進方策を更に補完・強化するものであり、特に、「量子エコシステムの構築」に焦点を当てた上で、ユースケースの創出、量子技術イノベーション拠点間の連携強化、産学官の連携による人材育成など、多角的な取組が提案されております。
 先月18日には、石破総理が、産総研「G-QuAT(量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター)」の落成式に出席され、量子戦略を抜本強化する旨を表明され、本提言がこれに当たるものとなります。政府としては、受け取った提言の内容を、近々決定する「統合イノベーション戦略2025」にしっかり反映した上で、関係省庁と連携しながら、我が国の量子技術の産業化に向けた取組を更に加速してまいります。
 同じく30日、「第12回核融合戦略有識者会議」を開催し、私も出席し、挨拶をさせていただきました。この会議では、国家戦略の改定案を審議するとともに、内閣府に新たに設置するタスクフォースの方向性について、御意見をいただきました。
 国家戦略の改定案においては、私自身、4月末にフランスを訪問し、ITER(国際熱核融合実験炉)建設の現場視察や関係者との意見交換の中で感じたこと、具体的には、これまでのITER計画等を通じて培ってきた技術や人材を最大限活用し、その果実を国内に還元していくことの重要性等を強調させていただきました。
 今後、近日中に開催される「統合イノベーション戦略推進会議」で改定案が決定される予定であります。フュージョンエネルギーの早期実現と産業化に向けて、我が国として、強い意志と覚悟を持って、今後の取組を加速していく必要があると考えており、内閣府が司令塔となって、関係省庁とともに、しっかりと取り組んでまいります。
 次は、宇宙政策担当大臣としての報告です。
 昨日2日、辻󠄀副大臣とともに、日本橋にある宇宙ビジネス共創プラットフォーム「X-NIHONBASHI TOWER」を訪問し、日本橋に拠点を構える宇宙スタートアップの皆様や、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)宇宙戦略基金事業部等との意見交換を行うとともに、それぞれのオフィスを視察してまいりました。
 宇宙スタートアップの皆様等との意見交換の場では、主なやり取りとして、例えば、海外展開が重要であり、特に、アフリカなど新興国を含めた、各国の社会課題解決などのニーズを積極的に取り込んでいくことが、今後の我が国の勝ち筋になるのではないか、今後の宇宙産業の拡大に向けては、技術開発への支援に加えて、中長期の政府調達が、アメリカに倣って重要であるというような御指摘が印象に残っているところでございます。
 いずれにしましても、政府としては、こうした現場の御意見もしっかり踏まえつつ、民間企業の皆様の意欲的な取組を更に加速できるよう、宇宙政策をしっかりと前に進めてまいる考えであります。
 最後に、科学技術政策担当大臣としての報告であります。
 昨日2日、官邸において、AI戦略会議を開催し、石破総理にも御出席いただきました。
 この会議では、先般成立したAI法に基づく今後の政策の進め方について、有識者の皆様を中心に、御議論をいただきました。また、最後に総理から、AI法に基づく今後の取組として、AI戦略本部と新たな有識者会議の設置、基本計画の策定、指針の整備、国民の権利・利益を侵害する事案に係る調査などについて、私を中心に、具体的な取組を加速するよう御指示をいただいたところであります。
 内閣府としては、有識者の皆様の御意見も踏まえながら、今回のこの総理指示に従って、AI法に基づく施策の具体化を迅速かつ強力に進めてまいる考えであります。

2.質疑応答

(問)昨日のAI戦略会議について、どういった議論が行われたのか、また、総理指示に対しての大臣の受け止めと意気込みを教えてください。
(答)昨日のAI戦略会議では、今後のAI政策の進め方について、構成員である有識者の皆様から、例えば、人間中心の考え方と民主主義の価値を見失うことなく、AIと共存するビジョンを持った戦略が重要であると。また、罰則がないがゆえに柔軟という法律の強みを活かし、政府も事業者も萎縮せずに切り込んだ運用をしてほしいと。また、人材育成やデータ共有を促すために、実効性のある仕掛けが必要と、こういった発言もございました。さらに、一人一人が「自分ごと」としてAIを活用する必要があると、このような幅広い御意見をいただいたところであります。
 また、石破総理からは、具体的に、まず、本年秋までに、AI戦略本部と新たな有識者会議を設置すること。そしてまた、本年冬までに、基本計画を策定し、その中には、地方の暮らしの変化等を含めたビジョンや、フィジカルAIの競争力強化策を盛り込むこと。さらに、同じく本年冬までに、指針の整備を進めること。そして、AIによって国民の権利・利益が侵害される事案が発生した場合の調査などについて、御指示をいただいたところでございます。
 昨日いただいたような、構成員の皆様の意見やアイデアを活かしながら、石破総理の御指示に従って、AI戦略本部の設置、基本計画の策定、指針の整備などについて、内閣府が司令塔機能を発揮し、関係省庁と緊密に連携しながら、スピード感を持ってしっかりと取り組んでまいる考えであります。
(問)核融合戦略の関係で伺います。先日まとまった戦略改定案の中で、社会実装につながる発電実証を目指すために新しくロードマップを作りますというふうに書かれておりまして、国がつくる予定の原型炉については既にロードマップがあって、今、見直しが進んでいるところではあると思うんですが、その中で新たにロードマップを作ることの意義について教えてください。
(答)御指摘の「原型炉研究開発ロードマップ」は、文部科学省の審議会において、将来の原型炉開発を見据え、主に技術的な観点から、2018年7月に策定されたものであります。
 他方で、今回、新たに策定するロードマップは、世界に先駆けた2030年代の発電実証を目指し、国の原型炉に加えて、国内スタートアップが構想するパイロットプラントも対象に含める予定としております。ですから、非常に関係するステークホルダーが幅広くなったということであります。さらに、技術的な観点のみならず、社会実装の促進に向けた内閣府のタスクフォースの議論を踏まえたロードマップとすることを想定しております。いずれにしましても、今年度中の策定に向けて、迅速に検討を進めてまいる考えであります。
(問)昨日の日本橋での宇宙関連企業の視察について伺いたいんですけれども、スタートアップ企業のispaceでは、月を周回する着陸船を運用している様子を御覧になっていたと思います。ispaceの視察を通してどのような印象をお受けになったか。また、6日に月面着陸船が月に到着する予定ですけれども、その期待も含めて、具体的に教えてください。
 あと2つありまして、JAXAで具体的にどのような議論が行われたのか教えていただきたいのと、もう一つが、今回の視察を踏まえて、今後の日本の宇宙開発において、スタートアップ企業にどのような役割を期待されるか、あと、どのような重要性があると考えていらっしゃるか、お聞かせください。
(答)3点御質問がありましたが、まず、ispace社の視察については、月面着陸に向けたミッションの管制を行っている、いわゆるミションコントロールセンター、そこも拝見させていただきました。24時間体制で交替でコントロールセンターでいろんな状況を把握している様子を見せていただきました。
 その後の袴田CEOとの意見交換においては、今後、月面活動が、科学・探査だけでなく産業にも拡大し、月面輸送サービスの重要性が増していくといった御意見や、政府の取組に対する御要望などを伺うことができました。
 なお、今週6日に予定されておりますispace社にとって2回目となる月面着陸への挑戦は、我が国の月面活動にとって新たな一歩となる大きなチャレンジであり、ミッションの成功を心から祈念しているところであります。
 2点目のJAXAの宇宙戦略基金事業部との意見交換ですが、こちらでは、同事業部から、宇宙戦略基金の推進体制や執行状況等について御説明いただきました。
 JAXAにとって初めてとなる資金配分業務であるにもかかわらず、迅速に体制を構築されている点が印象的であり、執行が順調に進んでいることをしっかりと確認することができました。常勤で八十数名いらっしゃって、それぞれの方々が執行に向けてしっかりと取り組んでいるという、そういう印象を受けました。
 3点目ですが、スタートアップへの期待についてでありますが、今後、宇宙産業が更に大きく成長していくためには、これまで宇宙分野に携わってきた民間企業のみならず、非宇宙関係企業も含めて、スタートアップの皆様の非常に大胆かつ新たな勢いのある発想、こういうものが欠かせないというふうに考えております。
 この場で何度も申し上げているとおり、宇宙産業というのは、自動車産業に次ぐ、我が国の基幹産業に十分なり得る極めて重要な分野だと考えておりますので、そうしたスタートアップを含めた民間企業の皆様による意欲的な取組が更に加速していけるよう、しっかりと政府としてバックアップする考えであります。
(問)5月30日にNASA(アメリカ航空宇宙局)の2026年会計年度の予算要求の詳細が発表されまして、これまでも既に明らかにはなっているんですけど、改めて、アルテミス計画について縮小が盛り込まれています。日本も参加するゲートウェイの中止ですとか、あとは、アルテミスⅣまでで、それ以降は民間に移行するですとか、改めて詳細が書き込まれていまして、こうした状況についての所感と、日本への影響をどのように考えていらっしゃるのか、伺えますでしょうか。
(答)先日、5月30日となりますが、米国において、2025年10月から1年間、来年度の大統領予算教書の詳細が発表され、5月2日に発表されていた予算教書の骨子案と同様、中身としては、NASAの来年度予算については、対前年度比で2割を超える削減案が提案されていること、そして、御指摘のとおり、我が国も参画する有人月探査プログラム「アルテミス計画」の一部変更等の提案が含まれていること等については、そのとおり承知しております。
 ただ、我が国としては、本年2月に発出された日米首脳共同声明の内容も踏まえ、月面探査や地球低軌道利用といった宇宙科学・探査での活動を含めた米国との宇宙協力に、着実に取り組むことが重要と考えております。
 また、先般、この会見でも申し上げましたとおり、現在、文部科学省やJAXAと連携し、NASAとのコミュニケーション、意思疎通を図っているところであり、また、来年度の米国予算については、今後、米国議会での審議も見込まれているということを伺っております。したがいまして、現時点で、我が国のプロジェクトに対する影響について、予断を持ってお答えすることは適切ではないので差し控えたいと思います。
 引き続き、文部科学省やJAXAと連携し、NASAをはじめとする米国側との意思疎通を緊密に図りながら、米国の状況を収集・把握した上で、我が国への影響についてもしっかりと分析して、今後の見極めを行っていくことが重要と考えております。
(問)経済安保で1点質問させてください。今、NSS(国家安全保障局)を司令塔に、経済安全保障に関する総合的なシンクタンクの設立に向けて、政府内で検討を進めていると思うんですが、現時点での進捗状況と、改めて、包括的なシンクタンクをCSTI(総合科学技術・イノベーション会議)とか経済産業省とは別でつくる意義について伺わせてください。
(答)政府として、安全保障の裾野が経済分野に急速に広がりつつある中、いわゆる外交、情報、防衛、経済、技術といった分野を含め、総合的に経済安全保障を推進していく観点が極めて重要であると考えております。
 このため、国家安全保障局を中心に、経済産業省をはじめとする関係省庁が連携して、経済安全保障全般の政策提言を行う「総合的なシンクタンク機能」の構築を目指して、ただいま検討しているところであります。
 ただ、現時点で何ら決まったことはありませんが、その「機能」について言いますと、経済安全保障分野の官民連携を促進し、経済インテリジェンスを強化するため、まず1つは、企業情報やオープンソースデータなどを用いた経済安全保障に関するリスクなどの調査分析を行うとともに、2つ目は、官民協議会の設置などにより、政府、企業、アカデミアなどの経済安全保障分野の関係者の情報共有を活性化させるための場を提供するなども想定し、現在、検討を進めているところでございます。
 いずれにしても、検討状況の詳細については、内閣官房国家安全保障局にお尋ねいただきたいと考えております。
 また、今後のスケジュールについても現時点で未定でありますが、NSSを中心に、関係省庁と連携して進めてまいる考えであります。
(問)追加で、今、官民連携、官民協議会の設置の話をされたと思うんですけれども、セキュリティ・クリアランスを活用しての情報共有を想定されていると思うんですが、民間からは、官民で連携するメリットがどういうところにあるのかというような声もあると思います。サイバー防御のセキュリティ・クリアランスを使った官民の情報共有も同じような指摘があると思うんですが、どういうふうに民間を巻き込んで官民連携していくかというところの大臣の所感をお願いします。
(答)民間企業にとってのメリットを1つ挙げるとすれば、そういったセキュリティ・クリアランスをしっかりやっている企業ということで、国内も含めて、あるいは海外からの企業からも、しっかりした安心・安全な、そしてある意味、お墨付きがついた企業ということで、その点で信頼度というか、そういうものが増していくわけですから、私自身はそういったことをしっかりやっていただくことによって、場合によっては、諸外国との取引が増えるとか、あるいはいろんな情報共有がより進むことによって、企業のいろんな将来の投資にとってプラスになるとか、様々な面で、私はプラスの面があると考えております。そのため、民間企業の皆さんにもしっかり官民連携をしていただくこと、また、情報共有することは、非常に重要なことだというふうに思っています。
 ただ、このセキュリティ・クリアランスについては、全てに網をかけるというわけではないので、一部の機微な情報に限定しながら、一定の限定的な形で行われるわけですから、そういったことを通じて、繰り返しになりますけれども、企業としてのメリットとして、信頼できる、安心・安全というものが備わっている企業だということになるのではないかと思います。
 そういった観点から、民間企業からむしろ逆にそういったシンクタンクに来ていただいて、いろいろと学んでいただくとともに情報共有して、また、一定の年数が経ちましたらその企業に戻って、大いに活躍できるような形で戻っていただくということが考えられるのではないかなというふうに考えております。
(問)知財計画2025の冒頭の御発言の中で、AIの特許の侵害の検討ということがあったと思うんですが、以前、1月に、この特許計画の中で、AIの開発者の特許権を認めるか認めないかの計画というのを、2025の中で盛り込むというお話だったんですけれども、その件について、何か御所感があれば教えていただければと思います。
(答)(AIによる著作権の侵害に関しては、)いわゆる権利者やクリエイターの方々から、生成AIによって、著作物などのコンテンツが許諾なく学習に使われ、オリジナルに似たコンテンツが大量に出力されていると、そういった観点から、知的財産権の侵害ではないかというような懸念の声が寄せられていることは承知しております。
 特許法に関しては、AIを利用した発明が増加する中で、AIの開発者がどのような貢献をすることで、発明者として認められるか、明確な基準が存在していない状況にあります。こうした基準の在り方について結論を得るべきとの論点や、(その他の特許法の論点として)インターネット上のサービスを提供するサーバーが海外にある場合、そのサービスは、特許権の侵害を回避できてしまう可能性があるため、その場合においても、我が国の特許法の適用ができないか結論を得るべきとの論点を挙げたところでございます。
(問)今日、閣議に「かりゆしウェア」ということでしたが、着心地はいかがでしょうか。
(答)今日、少し肌寒いんであれですが、もともとスーツに、よほど暑くない限りネクタイを締める私としては、ちょっとスースー涼しいなと。ただ、首元が非常に楽で、かりゆしもいいもんだなと思った次第でございます。ただ、ちょっと寒いんで、この後、いつもの姿に、ネクタイを締めていくという考えでありますが。よろしいでしょうか、そんな感じで。
(問)この爽やかな感じのグリーンというのはどういう・・。
(答)私自身、グリーンがシンボルカラーとして、緑と自然、環境を愛する者として、ボールペンも緑ですし、こういうものも緑ですし、ネクタイもほぼ毎回緑なので。そういう意味で、妻が、この緑のかりゆしをどこかから探してきて買ってくれて、それを今日着ております。

(以上)