城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年4月1日

(令和7年4月1日(火) 9:30~9:47  於:中央合同庁舎8号館1階S106会見室)

1.発言要旨

 
 それでは、1点、御報告事項を申し上げたいと思います。科学技術政策担当大臣としての報告であります。
 昨日、3月31日、大臣室において「マテリアル戦略有識者会議」の提言を、有識者会議の座長でいらっしゃいます山岸さんからお受け取りしました。
 マテリアルは、我が国の産業競争力の根幹を支える基盤技術であるとともに、AIや量子、半導体等におけるイノベーションを先導する、重要な役割を担う分野であると考えております。
 現行の「マテリアル革新力強化戦略」の策定から既に約4年が経ち、経済安全保障の確保の観点などから、マテリアル分野の重要性はこれまでになく高まっており、また、生成AIをはじめとする関連技術の進展を考慮する必要が生じております。
 そうした観点を踏まえて策定された有識者会議の提言では、産学官が相互に接続した「知のバリューチェーンの構築」を通じて、マテリアル革新力を一層強化していくことが重要とされ、そのための具体的な取組を御提案いただいたところであります。
 内閣府といたしましては、本提言を踏まえ、この春には「マテリアル革新力強化戦略」を改定し、関係各省とも連携しながら、我が国のマテリアル革新力の一層の強化に向けた取組を推進してまいります。

2.質疑応答

(問)Natureの行ったアンケート調査によると、米国の科学者のうちの75%が欧州やカナダなどといった国への出国を検討しているという結果が示されました。大臣としての受け止めと、日本として何らかの対応をするのかどうか、教えてください。
(答)お尋ねがございました、このNatureの調査結果の概要を私も拝見しましたが、この調査では、トランプ政権の政策を踏まえ、若手研究者を中心に、回答した約1,600人の米国の科学者のうち、約75%の科学者が、欧州やカナダへの出国を検討していることが明らかになった旨、報告されております。
 この米国の科学技術・イノベーション政策の動向は、私自身大きく関心を持っているところであり、今回の調査結果も含めて、米国の研究者を取り巻く状況と、それが今後の我が国の政策に与える影響については、引き続き注視し、分析してまいりたいと考えております。
 いずれにしましても、近年、人材の国際的な獲得競争が一層激化している中で、優れた人材の育成及び獲得の取組は不可欠であります。
 政府としては、現在、研究費や研究ポストの確保も含めて、国内外を問わず、優秀な研究者が、我が国で研究したいと思えるような研究環境の整備や、海外の優秀な研究者を惹きつけるような、世界トップレベルの研究拠点の整備などの取組を進めているところであり、こうした取組を引き続きしっかりと進めて、また、対外的にも発信していく考えであります。
 引き続き、米国を含む諸外国の状況も勘案した上で、第7期科学技術・イノベーション基本計画の策定に向けた議論と併せて、我が国の研究力強化に向けた検討を行ってまいりたいと考えております。
(問)大臣、冒頭で御発言がありました、マテリアルの提言の件ですけれども、この中で、産業界というのは重要なプレイヤーとして位置付けられていると思うんですが、御所感をお聞かせください。
(答)産業界の皆様は、今回御提言いただきました「知のバリューチェーン」を構築するに当たり、極めて重要なプレイヤーであると考えております。特に、産学の成果の橋渡しにおきましては、産業界の担う役割は大変大きくて、社会のニーズを捉え、大学の研究者等に対して、具体的な技術課題を明らかにしていただくとともに、大学等が創出する「優れた知」、これを受け止めて、社会実装につなげていただきたいというふうに考えております。
 さらに、産業界から、資金や人材といった資源が大学等に還元され、新たな研究領域の創出や人材育成につながる仕組みを、産学官が協力しながら構築していくことも重要と考えております。
 今後、今回のこの提言を基にした戦略を実行していくに当たり、産学官が一丸となって取り組む必要があり、産業界の一層積極的な取組に期待するとともに、政府としても必要な支援策を検討し、進めてまいる考えであります。
(問)私はAI政策についてお尋ねします。
 昨今、スタジオジブリ風の生成AI画像、これが世界中で広まって、議論になっております。このスタジオジブリ、日本の誇るアニメが世界でこれだけ知られているという面もありますが、一方で、大変複雑な思いで見ている日本人も多いのではないかと思います。このような生成AIの使われ方について、大臣はどう受け止められるか、まずお聞かせください。
(答)御質問の、作風が似ている画像に関しては、一般論としては、AIの使用の有無に関わらず、公表されている作品から着想を得て、同様のテーマで新たな作品を制作することは、創作活動として許容されているものと認識しております。
 他方で、公表されている作品を模倣していると受け止められるような作品が、機械的に大量に生成されることについて、懸念が示されているということは承知しております。
 いずれにいたしましても、今般国会に提出しましたAI法案では、AI政策の司令塔機能を強化するため、内閣総理大臣を本部長とする「AI戦略本部」を新たに設置することや、戦略本部の事務局である内閣府が、AIに関する情報収集や権利・利益を侵害する事案の分析や調査を実施すること等を第16条で規定しているところであります。
 この法案が成立した暁には、関係省庁としっかり連携して、AIの活用動向に関する情報の収集や共有を行い、必要に応じて、対応を検討していくことになるものと考えております。
(問)関連で質問させてください。
 読売新聞が、昨日から、生成AIの重大なリスクについて警鐘を鳴らす記事を出しています。生成AIの進歩は目覚ましいものがありまして、人類を超える超知能が出現し、人類を脅かすのではないか、いろいろな業種の仕事に大きな影響を与え、社会の在り方をも根本的に激変させるのではないか、こういう不安も広がっているかと思います。
 もちろん、安全保障などの観点もありましょうし、技術の進歩は一概に否定しませんが、一般国民の生活にこれだけ大きな影響を与える、変化のスピードが非常に速いということになりますと、悪用や暴走のリスク、副作用というものに、果たして今回のAI法案がきちんと対応できるのかということが懸念されるわけですが、この点について、大臣の御所見をお聞かせください。
(答)私もその読売新聞の記事を、昨日ちょうど読んだところでございますが、昨今の生成AIをめぐる技術革新は、生産性の向上や労働力不足の解消などのメリットをもたらす一方で、偽・誤情報の拡散、犯罪の巧妙化などのリスクも存在していることは言うまでもございません。
 御指摘のとおり、AI技術は変化が非常に速く、様々なタスクを人間と同じレベルで実現できる能力を持つ、いわゆる汎用人工知能、Artificial General Intelligence(AGI)、これにつきましては、現時点で全てのリスクを予測することは難しいと考えております。
 このため、今般、国会に提出させていただいたAI法案が成立した暁には、既存法やガイドライン等で迅速かつ柔軟に各種リスクに対応しつつ、法に基づく情報収集や調査などによって、実態や課題を把握し、必要に応じて、関係府省庁の連携の下、対策をしっかりと検討していくことができると考えております。
 いずれにしましても、イノベーションを促進させるためには、当然、リスクに適切に対応していくことが重要であり、今般のAI法案は、技術進展等の情勢変化に柔軟に対応しつつも、AIの研究開発や実装を加速することができる、バランスの取れた法制度であると考えております。本法案がしっかりとガードレールとなることによって、リスク対応も適切かつしっかり行って、同時に、イノベーションを促進してまいる考えであります。
(問)もう一度だけ、少しだけ、今のお答えに付け加えて伺いたいんですが、イノベーションということが大事だということはもちろん言うまでもありませんが、そちらに重点が置かれているのではないかということが受け取れるわけです。それはEUと比べても、そういった重大なリスクに対して、きちんと開発企業に歯止めをかけるような仕組みというのが、必ずしも備わっていないのではないかというふうに思います。
 城内大臣は、今日初めてで大変恐縮なんですが、政治家として、経済効率優先の市場原理社会はよくない、万民幸福の実現という理論を掲げている政治家であると存じ上げています。ここは大臣の立場というコメントしかできないと思いますが、そういった城内大臣の政治信条からして、イノベーション、市場原理、テクノロジー万歳という、こういうことで本当に万民幸福という概念と抵触しないのかどうか、そこについて、大臣の言葉をお聞かせください。
(答)繰り返しになりますけれども、イノベーションの促進をすることも大事であると同時に、リスクへの対応、これもしっかり行っていく考えであります。そして、著しく悪質な事例につきましては、現行の法令もございますので、それによって対応が可能であると考えております。
 加えて、本法案に基づくガイドライン、指針の整備や、その遵守努力、指導、助言や情報提供などによって、多様なリスクへの対応を臨機応変にしっかりと図っていく考えであります。
 いずれにしましても、先ほど申しましたように、技術変化のスピードが非常に速いものですから、リスクの予測というのが現時点では難しい部分もございますので、繰り返しになりますけれども、イノベーションを阻害せずにリスクに適切に対応するという意味では、バランスの取れた法案であるというふうに考えております。
 この法案がしっかりとガードレールとなることによってリスクに対応すると同時に、イノベーションを促進してまいる考えであります。
(問)アメリカの関税引上げに関してです。経済安全保障というとこれまで特定国への輸入の依存というか、サプライチェーンが問題視されてきましたけれども、それでバリューチェーン全体といいますか、特定の輸出先に依存することのリスクというのが顕在化したわけです。もちろん、国家安全保障上、アメリカが懸念されるということはないにしても、経済安全保障というのをもうちょっと考え直さなければいけないという気がするんですけれども、その辺いかがでしょう。
(答)我が国の「経済安全保障」が目指すところは、大変スピードが速く、広がりのある国際情勢の変化にあっても、右往左往することなく、しっかりと我が国としての基軸を定めて、我が国の国益を、必要な経済的施策を通じてしっかり守る、確保していくことであるというふうに考えております。
 具体的には、他の国や地域に過度に依存しない、我が国の経済構造の「自律性」を確保すること、我が国の技術などの他国に対する「優位性」、ひいては国際社会にとっての「不可欠性」、これを獲得すること、そして、基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持・強化をすることが重要であり、引き続き、これらの経済安全保障の取組を強化していく考えであります。
 その上で、米国による関税措置について申し上げますと、我が国が米国経済に対して多大な貢献をしているにもかかわらず、今般、米国政府が、自動車・自動車部品に対する関税措置を、我が国も対象に含める形で発表したことは遺憾だということであります。
 いずれにしましても、石破総理から、米国による関税措置の内容や我が国への影響を十分に精査しつつ、引き続き、米国に対して、措置の対象からの我が国の除外を強く求めていくこと、そして同時に、国内産業・雇用への影響を引き続き精査し、資金繰り対策など必要な対策に万全を期していくことについて、関係閣僚が協力・連携の上、政府を挙げて対応するよう指示があったところでありますので、私としてもしっかり取り組んでまいる考えであります。
(問)輸出先を特定国に依存するということに関して、経済安全保障の考え方に問題として含めていくという、その辺のお考えはいかがでしょう。
(答)ですから、我が国の経済安全保障の制度というのは、特定の国に依存することなく、リスクを分散するという意味でつくられた制度でありますので、どのような状況となろうとも、リスクをしっかり分散する、そういう仕組みということでありますので、その点については、今回の関税引上げという事態ではありますけれども、この制度に基づいて、しっかりと国益を確保していく考えであります。

(以上)