城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年2月28日

(令和7年2月28日(金) 9:29~9:52  於:中央合同庁舎8号館1階S106会見室)

1.発言要旨

 
 科学技術担当大臣として1点、御報告申し上げます。
 本日の閣議におきまして、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案」、いわゆる「AI法案」が閣議決定され、今回の通常国会に提出することとなりました。
 AI制度の在り方につきましては、昨年8月から、AI戦略会議の下に設置したAI制度研究会におきまして、検討を開始し、AI関係者へのヒアリングや議論、パブリックコメントを重ね、本年2月4日に「中間取りまとめ」を決定したところでございます。この「中間取りまとめ」を踏まえ、「AI法案」の詳細についての検討を進めてまいりました。
 本法案は、AIは、生産性の向上や労働力不足の解消などのメリットをもたらす一方で、偽情報・誤情報の拡散、犯罪の巧妙化などのリスクも存在することから、国民生活の向上や経済社会の発展の実現には、AIによるイノベーション促進とリスク対応を両立させることが重要との考えのもと、AI政策の司令塔機能を強化する、内閣総理大臣を本部長とする「AI戦略本部」の設置、政府が推進すべきAI政策の基本的な方針等を示す「AI基本計画」の策定、AIの適正性確保のための国際規範に即した「指針」の整備、AIの動向に関する情報収集や国民の権利利益を侵害する事案の調査などについて、規定しているものであります。
 今後、本国会おいて御審議いただき、可能な限り速やかに成立させ、我が国が、「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」となることを目指してまいりたいと思います。
 なお、この後、事務方よりブリーフィングを行う予定でございますので、詳細は事務方へお尋ねいただければ幸いでございます。
 もう一点ございます。宇宙政策担当大臣として御報告申し上げます。
 本日午後、JAXA(宇宙航空研究開発機構)より、「宇宙戦略基金」の公募採択結果、具体的には、「衛星サプライチェーン構築のための衛星部品・コンポーネントの開発・実証」に係る採択結果が公表されます。
 今回の採択公表により、令和5年度補正予算分により実施する全22テーマのうち、再公募となっている1件を除く21のテーマの採択結果の公表が完了したことになります。
 この21テーマにつきましては、既にJAXAと事業者との間で契約を締結済み、または契約準備を進めているところであり、順次、支援を開始しているところであります。また、再公募となっている1件につきましても、今後、審査プロセスを経て採択結果を公表し、速やかに支援を開始する予定であります。
 また、今年度(令和6年度)の補正予算分の公募開始に向けては、各府省の有識者会議での議論を開始しており、透明性をしっかり担保した上で、今年度中に、テーマを正式に決定し、その後、速やかにJAXAにおいて公募を開始していく予定であります。
 なお、付言いたしますと、こうした事業の進捗により、これまでに基金措置した予算6,000億円につきましては、既に公募・採択を終えて、今後の支出予定がある予算、または今後新たに公募・採択を行った上で、予算執行を予定している予算となります。
 スタートアップを含む事業者や大学等の研究機関は、政府から公的支援が得られる前提で、中長期にわたる事業計画を立て、リスクの高い宇宙分野の研究開発に臨んでおられることを、改めてこの場で強調したいと思います。
 ちなみに、この会見の場で何度かお話しさせていただきましたが、基金は、こうした中長期の予見可能性の確保や、複数年にわたる機動的・弾力的な支援が成功の鍵となる事業を効果的に実施する上で、不可欠となる仕組みであります。
 宇宙分野は、将来、我が国の基幹産業になり得る分野であることは間違いなく、我が国が、宇宙開発を巡る国際競争に後れを取ることが決してあってはならないと考えております。本基金も活用しながら、意欲ある民間事業者や大学の皆様の挑戦的な取組をしっかり後押ししていけるよう、引き続き、全力で取り組んでまいります。

2.質疑応答

(問)昨日、日本学術会議が「生成AIを受容・活用する社会の実現に向けて」と題する提言を発表しました。大臣としての受け止めをお願いします。
(答)御指摘の御提言は、昨日、日本学術会議により公表されたものと伺っております。
 40ページもあるので、まだ要旨しか読めておりませんが、提言におきましては、生成AIによる技術革新が急速に進展する中、リスク対策についても十分に工夫しながら、研究開発や社会での利活用を積極的に進め、人類とAIの共存社会のデザインで世界をリードすべきとされております。
 具体的には、まず、日本の考え方を国際的なルール形成に反映させるための体制の構築、二つ目は、サイバー攻撃等に対応したAIモデルの適切な運用、三つ目は、責任あるAIの実装に向けた、関係者の協力を促進する制度の設計、四つ目が、AIとの共存を目指した教育プログラムやリテラシー教育の推進、他にもまだありますけれども、これらについて提言がなされております。
 この提言の方向性は、AIによるイノベーション促進とリスク対応を両立させ、「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」となることを目指すという、本日閣議決定されたAI法案の趣旨と合致するものと受け止めております。
 こうした学術界の方々の貴重な御意見もしっかり受け止めながら、引き続き、関係府省一丸となって、AI政策の推進に取り組んでまいる考えであります。
(問)昨日「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」の最新版が公表されました。御所感をお願いいたします。
(答)昨日、CSTI(総合科学技術・イノベーション会議)有識者議員懇談会に報告した「総合振興パッケージ」につきましては、令和7年度政府予算案及び令和6年度補正予算の内容を反映して、対象事業の追加などの更新を行ったものであります。
 この「総合振興パッケージ」は、令和4年2月にCSTI本会議での議論を経て取りまとめ、その後、必要な改定を行ってまいりましたが、令和6年の改定の際に、予算額や参考事例など、毎年の更新が必ず発生する部分については「別紙」扱いとし、この別紙については、事務局よりCSTI有識者議員懇談会へ報告することで、更新可能としております。今回は、その手続きに当たるものであり、「総合振興パッケージ」の本体自体が改定されるものではございません。
 いずれにしましても、大学の研究力強化に向けては、国際卓越研究大学制度と「総合振興パッケージ」を、いわば「車の両輪」として、推進・充実していくことが引き続き重要と考えております。
 内閣府といたしましても、今後、大学への支援をより実効的なものとするための調査研究を行うことを予定しており、関係省庁とも連携して、より良い政策に向けた議論と取組を進めてまいりたいと考えています。
(問)AI法案に関して2点お願いします。まず、推進に対する意気込みを改めて聞かせてください。AIの開発面、今、日本は、残念ながら非常に劣後している状況だと思うのですけれども、そういった推進への意気込みを改めてお願いいたします。
 あと、この法案に見直し規定が盛り込まれていると認識しております。自民党の提言だと、アジャイルに進めるというのが一つキーワードだったかと思うのですけれども、こういった柔軟な姿勢に対する狙いや考えについて、大臣からコメントがあればお願いいたします。
(答)まず、意気込みについて、AIは、今や、国際競争力や社会の豊かさを左右する極めて重要な技術でありますけれども、我が国では、多くの国民がAIに対して不安を感じており、AIの研究開発と活用が諸外国と比べて進んでいない状況であるのは御指摘のとおりであります。こうした状況をしっかりと打破し、AIを我が国における国民生活の向上や経済社会の発展に、確実につなげていくことが重要であると考えております。
 AIは、今この瞬間も、技術の進展や活用の拡大が急速に進んでおり、安全・安心で信頼できる、世界のモデルとなるようなAI制度を一刻も早く構築することが急務であります。
 AI政策を担当する大臣としましては、本法案を速やかに、今国会でお認めいただけるよう、引き続き、全力を尽くしてまいる考えでございます。
 また、見直し規定についての御指摘がございましたけれども、今申しましたように非常にスピードが速い色々な動きがございますので、まずは、既存の法律で対応することが大事であって、新たな問題が生じたら、その時点でしっかり対応していくことが重要であると考えております。
 ですから、まずは既存の法律と、このAI法案で、しっかり対応していくことが重要だと思いますので、できるだけ速やかにこの法案を通したいと考えております。
(問)昨日今日と広島AIプロセス・フレンズグループの会合が都内で開催されています。広島AIプロセスを主導した日本で、今回AI法案で初めての法制度になると思うのですが、海外事業者や海外制度も、事業者がいる中で関わってくると思うのですけれども、どのように国際的に通用するAIの開発、利活用、促進を進めていきたいとお考えですか。
(答)御指摘のとおり、我が国はこれまで広島AIプロセスをリードしてきており、一昨年に広島プロセス国際指針等に合意した後、本プロセスの精神に賛同する国々の自発的な取組であるフレンズグループの拡大を図ってきております。
 昨日、私も、レセプションだけなのですが、このフレンズグループの会合に出席し、約40か国の政府高官等も参加される中で、本日閣議決定されたAI法案の検討状況等について情報を共有してきたところであります。
 AI法案は、イノベーションの促進とリスクへの対応の両立を図るものであり、リスクへの対応につきましては、広島AIプロセスの趣旨を踏まえた内容となっております。
 我が国が、国際的に通用するAIの取組を進めていくためにも、まずは、本法案について、海外事業者を含めた多くの関係者からの理解を得られるよう取り組んでいく必要があり、今回の会合のような機会も通じて、引き続きしっかりとしたコミュニケーションを図ってまいりたいと考えております。
 加えて、国際的に通用するAIの開発利用を促進するためには、国際協力の下、共同研究やインフラ整備を進めていくことも重要であり、そうした観点から、本法案では、国が、研究開発や施設等の整備・共用を推進するために必要な施策を講ずること等を規定しているものであります。
(問)もう一点、今回のAI法案では、罰則規定に関しては特に盛り込みがなかったと思うのですけれども、自民党内では、昨年の提言を含めて、罰則というところに求める声があったと思うのですけれども、今回、あえて盛り込まなかった理由と、どのように実効性あるリスク対応を実現するかをお聞かせください。
(答)AIは、経済成長や国民生活の発展に寄与するものであり、AIのイノベーションを促進し、その社会実装を進めることが重要であります。このため、イノベーションの阻害をする過剰な規制は避けることとした次第であります。
 なお、規制は避けつつも、リスクへの対応が重要であることは言うまでもありませんので、必要な措置として、既存の法令の活用と併せて、本法案に基づき、AIの研究開発・活用の適正性確保のための指針の整備、あるいは国内外のAIの研究開発・活用の動向に関する情報の収集、国民の権利・利益の侵害が生じた事案等の調査、さらには、調査結果を踏まえたAI活用事業者等への指導、助言、情報の提供などを行うことで、リスク対応の実効性を高めることができると考えております。
(問)AI法案で2点お伺いします。一つが今おっしゃられたリスク対応について、日本はこれまでガイドラインベースで、事業者の自主的な取組を基本としてきましたが、この法案で、国が調査や情報収集できることが規定され、政府が一歩踏み込んだ関与ができるようになると思いますが、これによって従来の日本の立ち位置が転換されることになるのか、これが一つです。
 2点目が、この間にもアメリカのトランプ大統領が、バイデン前大統領令を廃止したり、中国のディープシークの台頭といった、少ない計算量でも性能の高いAIモデルが作れるといった事象が起きていたりして、議論当初の前提が変わってくるような動きもありますが、今後の法案の議論において、こうした海外の直近の情勢はどのように影響すると見られておりますでしょうか。
(答)まず、前半部分ですが、AIのリスクに対し、各省庁はそれぞれ所掌の範囲内で情報収集等も含めて対応しているところであり、本法案によって新たな権限が付与されるものではございません。よって、その意味において、我が国の従来の立ち位置が変わるものではございませんが、AI関係者に対する情報収集や調査が明確に内閣府の事務として規定されることによって、その実効性をより高めることができると考えております。
 また、後半の御質問ですけれども、AIを巡りましては、御指摘のとおり、国際的な動きや技術の進展がございまして、様々なケースを想定した検討をしっかり行う必要があると認識しております。このため、本法案では、国内外の動向に関する情報収集等について規定しており、こうした様々な変化に対して、臨機応変に各種の施策を実施することができる内容になっております。
 今後も国際的な動向の変化が見込まれておりますので、本法案に基づきまして、適切な検討や対応を行っていく考えであります。
(問)ただいまのAI法案について、事業者の調査・指導を行う施策も盛り込まれていると思うのですが、直近のAIを巡る問題として、アマゾンの電子書籍サービスで販売されていた偽作品について、専門家が生成AIで作られた可能性があることを指摘していたり、生成AIを悪用して作ったプログラムで、携帯電話会社のシステムにログインしたりするなどして、中高生が逮捕されるという事案も起きています。大臣、先ほどから言われているように、既存の法令で対応されるというものもあると思うのですが、今回のAI法案で、このような事案にどういうふうに対処していくのか教えてください。
(答)まずもって、不適切な方法によるAIの活用等による事案につきましては、現時点では、既存の法令で対応可能であると考えており、御指摘の2つの事案についても、それぞれの法令で対応されるものと認識しております。
 一般論で言いますと、例えば、詐欺罪、または不正アクセス禁止法、不正競争防止法など、そういった既存の法令がございますので、個別のケースによると思いますけれども、そういった既存の法令で対応するということだと思います。
 他方で、今後、現時点で予測できないリスクも当然発生し得ると考えておりますので、既存法令では対応ができない、かつ、不正な目的、または不適切な方法でAIの研究開発や活用が行われ、国民の権利または利益が侵害される事案が生じた場合には、当然これを放置するわけにはまいりませんので、国は当該事案の調査をしっかりと行い、その結果に基づいて、被害の拡大防止等のために調査結果を公表するなど、必要な対応を適時・適切に行ってまいりたいと考えております。
(問)AI法案に関連して、今回の法案には、安全保障の観点からも重要な技術であるというふうに規定されています。AIの研究を安全保障の分野でも推進するということだと思いますけれども、武器や兵器の製造など、AIを活用した安全保障は、具体的にどういうことを今のところ想定しているのかをお伺いします。
(答)本法案では、我が国として、AIの研究開発力の保持や国際競争力を向上させることが重要である旨を規定しており、その理由の一つとして、AIが安全保障の観点からも重要な技術であることを、いわば一般論として掲げているものであります。
 従って、御指摘のAIを活用した武器や兵器の製造などの、個別具体的な内容を想定して設けた規定ではないということでありますので、その点、申し上げさせていただきたいと思います。

(以上)