城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年1月10日

(令和7年1月10日(金) 12:09~12:26  於:中央合同庁舎8号館1階S106会見室)

1.発言要旨

 
 それでは、冒頭、私から2点御報告を申し上げたいと思います。
 まず、科学技術政策担当大臣としての報告でありますが、昨日、デンマークのクリスティーナ・エールン高等教育・科学大臣が来訪され、意見交換を行うとともに、「日デンマーク間の量子科学技術分野における協力覚書」に署名をいたしまして、交換したところであります。今回の協力覚書を踏まえまして、日本とデンマーク両国の研究機関の間での共同研究の加速や、人材交流の促進が図られることを期待するものであります。
 なお、量子力学は、約100年前にデンマークのニールス・ボーア博士が中心となって生み出され、我が国におきましては、ボーア博士の下で学んだ理化学研究所の当時の仁科芳雄(にしなよしお)先生を発端として、世界レベルの基礎研究が行われてきたといった経緯がございます。
 そして近年では、量子技術は、将来の産業や社会を大きく変革する技術として改めて注目され、世界中で量子コンピュータ、量子暗号通信、量子センシングなどの実用化に向けた投資が活発化しております。
 我が国といたしましても、これまでに、量子技術に関する3つの国家戦略を策定したことに加えまして、昨年4月には新たに「量子産業の創出・発展に向けた推進方策」を公表し、量子技術の研究開発や産業化を強力に推進しているところであります。
 この推進方策におきましては、新たな視点として、有志国との戦略的な連携を掲げております。今回は、歴史的なつながりを持つデンマークとの協力覚書、いわゆるMOCを締結しましたが、量子分野においては、これを皮切りに、今後様々な国との連携を一層進めていきたいと考えております。
 なお昨日、通訳の方もいましたが、一応、元外務省なので、さびついた英語を一生懸命使って、何とか通訳なしでやりとりができて良かったと思います。
 引き続き、こういった科学技術外交のようなものにおいて、元外務省出身者、元外務大臣政務官、元外務副大臣、元衆議院外務委員会委員長、自民党の外交部会長もやっているので、そういった経験も活かしていきたいと思った次第でございます。
 2点目ですが、これも科学技術政策担当大臣としての御報告であります。
 産学官の組織の垣根を越えたオープンイノベーションの優れた取組を表彰する「第7回日本オープンイノベーション大賞」につきまして、本日、受賞候補となる15の取組を選定いたしました。
 今後ですが、2月5日に開催予定の表彰セレモニーにおきまして、内閣総理大臣賞や科学技術政策担当大臣賞といった、各賞の詳細を発表する予定です。
 当日は、状況が許せば、私も参加させていただきまして、表彰状などを授与する予定であります。各取組のプレゼンなどもございますので、プレスの皆様も、是非御参加いただければ幸いでございます。よろしくお願いします。
 今回選定いたしましたような、産学官の各機関が連携した取組が模範となりまして、今後の我が国のオープンイノベーションが一層促進されることを期待しております。

2.質疑応答

(問)昨日のデンマークのクリスティーナ大臣との覚書のことなのですけれども、今後、デンマークとの間で何らかのプロジェクトを立ち上げるといったことはあるのでしょうか。また、ベースになっている一昨年の首脳共同声明では、AIやライフサイエンスなど他の分野についても言及されていますけれども、そういった分野への今後の取組について教えてください。
(答)まず、今回の協力覚書をきっかけといたしまして、量子コンピュータ、量子通信、量子センシングといった分野における、日本とデンマークの大学・国立研究機関などの間での共同研究が加速することを期待しております。また、共同研究の加速等を通じまして、両国間の人材交流が促進されることも期待しております。
 現時点で、具体的なプロジェクトの実施が決まっているわけではありませんが、量子分野における両国の連携・対話が今後進んでいくことは間違いありませんので、これを踏まえつつ、具体的なプロジェクトの検討なども行ってまいりたいと考えております。
 2点目でありますが、2023年10月に締結されました「戦略的パートナーシップの深化に関する日・デンマーク首脳共同声明」におきまして、御指摘のとおり、AI、量子技術、ライフサイエンス等の分野における更なる連携の重要性が強調され、これを踏まえまして、文部科学省とデンマークの高等教育・科学省との間で、科学技術・イノベーションに関する協力覚書が更新されたわけでございます。
 この覚書を踏まえまして、JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)の「先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)」を通じまして、AI・情報、エネルギー、マテリアル等の分野において、日本とデンマーク両国の研究機関・研究者のネットワーク構築や若手研究者の交流強化が現在進められているところであります。
 今後とも、関係府省で連携して、量子技術を含めた重要分野における、我が国とデンマークとの科学技術協力を強化してまいりたいと考えております。
(問)日本とデンマークの署名式の関連なのですけれども、クリスティーナ・エールン大臣と流ちょうな英語で会話されたと伺っておりますが、大臣とどのような会話をされたのかを教えていただけるとありがたいです。また、先ほど御紹介がありましたけれども、物理学者のニールス・ボーア博士の生まれ故郷であるデンマークという量子の歴史が深い国との連携について、どのように期待されているのかという点も、もう少し詳しくお聞かせいただければと思います。
(答)流ちょうな英語かどうかは分かりませんが、選挙と同じようにコツコツやるのが私の持ち前の性格ですので、これからもさびついた英語をしっかり学んでいきたいと思います。
 エールン大臣との会話ですが、短い時間、30分弱しかなかったのですけれども、先ほど申しましたように、日本とデンマークにおける、量子分野をはじめとする科学技術協力について、有意義な議論ができたと思います。
 具体的には、量子分野におきましては、両国が、先ほど冒頭申しましたように、歴史的に非常に深いつながりを有しておりまして、現在でも理化学研究所やデンマークのニールス・ボーア研究所をはじめとする様々な大学・研究機関などの間で、こういった伝統に根差した協力が進められております。
 今回の協力覚書と会談を契機に、両国の協力関係を更に、いわば次の100年に向けてという感じで発展させていくことについて、認識を共有したところであります。
 また、地政学的情勢が不安定化し、研究セキュリティの問題が深刻化する中で、自由・民主主義・基本的人権・法の支配といった共通の価値観を有する日本とデンマーク同士が協力を進めることが重要であることを、昨日、エールン大臣にも申し上げました。
 いずれにしましても、我が国と、デンマークを含めました同志国との連携を更に深めていくことが重要だということを強調し、両者がその認識を共有したということが言えるかと思います。
 今回の協力覚書や会談を踏まえまして、両国の研究機関間での共同研究の加速や、人材交流の促進が図られることを強く期待しております。
(問)サイバー攻撃に関して伺います。警察庁は8日、中国系ハッカー集団ミラーフェイスによる組織的なサイバー攻撃活動を公表しました。半導体や情報通信、学術、航空、宇宙といった重要物資・基幹インフラ・先端技術に関する分野を標的とした情報窃取が行われていたとの分析も公表しています。経済安全保障の観点からの対応を伺います。
(答)この案件についてもう一回まとめますと、1月8日に警察庁及び内閣サイバーセキュリティセンターにおきまして、ミラーフェイスと呼称されるサイバー攻撃グループが、2019年頃から我が国の組織、事業者及び個人に対しまして、情報窃取を目的としたサイバー攻撃を行っており、さらに、これらサイバー攻撃が、中国の関与が疑われる組織的なサイバー攻撃活動であると評価し、連名で注意喚起を実施したものということを承知しております。
 昨今、サイバー攻撃の巧妙化によりまして、サイバー空間における脅威が高まっておりまして、我が国全体のサイバーセキュリティ対策を一層強化していく必要があると強く認識しております。
 政府といたしましては、「サイバーセキュリティ戦略」を策定いたしまして、情報の漏えいの防止、情報システムや情報通信ネットワークの安全性の確保などのため、様々な対策を講じてきていたと承知しております。
 いずれにしましても、経済安全保障の確保の観点から、内閣サイバーセキュリティセンターをはじめとした関係省庁ともしっかりと連携しつつ、経済安全保障施策の具体的な取組については、不断に検討、場合によっては、しっかり見直しをするということを行ってまいりたいと考えております。
(問)関連で、同じ視点について、宇宙政策担当大臣としての御所感を伺いたいと思います。一部報道で、火星の衛星探査計画MMXに関する機密性の高いファイルも流出していた疑いが指摘されています。我々も取材のほうで、そのファイルの流出についてはつかんでいたのですけれども、具体的に、宇宙計画は非常に先進性の高いもの、しかも国際競争上の高いものが流出していたということなのですけれども、計画遂行上の問題がないのか、影響の有無ですとか、今後何らかの対策が必要になるかについても教えていただければと思います。
(答)一昨年10月に判明いたしましたこのインシデントにおきまして、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)が管理する情報の一部が漏洩したことは、私も承知しております。攻撃元や、標的となった情報の詳細につきましては、サイバーセキュリティという事案の性質上、この場ではお答えを差し控えさせていただきますが、これまで公表された以上の新たな情報はないと私は聞いております。
 なお、当該インシデントにつきましては、JAXAとしては、関係者に個別の情報提供を行いまして、その結果として、関係者の事業活動に著しい支障が生じているという報告はないと。そしてまた、国内外の関係機関との協力を含め、事業遂行が困難になるようなことも現時点では生じていないと聞いております。
 しかしながら、御指摘のように本件は、関係機関との信頼関係を損ないかねない重要な事案であることは間違いありません。ですから、JAXAにおきましては、既に再発防止に向けた対策を強化しているということでありますけれども、改めて、我が国の宇宙開発の中核的機関でありますから、こうした事案への危機意識をJAXAにもしっかり持っていただいた上で、継続的に対応していただかなければならないと強く認識しております。
(問)本日、一部の報道で、AI法案につきまして、事業者名の公表を検討という報道がございましたが、こういった部分について、あと罰則の規定などにつきましての検討状況ですかね、大臣としてお話しいただける範囲でお聞かせいただきたいと思います。
(答)まず、AI法案につきましては、通常国会に提出できるよう諸般の調整を進めているところでありまして、御指摘の事項について、現時点で具体的な内容が決定しているわけではございません。
 なお、現在パブリックコメントにかけております、中間取りまとめ案におきまして、どういう内容になっているかと申しますと、国民の権利・利益を侵害するなどの重大な問題が生じた場合、あるいは生じる可能性が高いことが検知された場合、事実究明を行い、得られた情報の国民に対する周知を図るべき、このようにされているところであります。
 この中間取りまとめ案やパブリックコメントに寄せられました様々な御意見を踏まえて、しっかりと検討を進めてまいりたいと思っております。罰則規定も含めて、そういった状況であるということで御理解いただきたいと思います。

(以上)