赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年10月30日

(令和6年10月30日(水) 19:00~19:24  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 本日は岸田政権の取組を引き継ぎ、石破政権として初回となる新しい資本主義実現会議を開催いたしました。石破政権では、経済全般・財政の運営、予算編成の基本方針を経済財政諮問会議、地方創生を新しい地方経済・生活環境創生本部、持続可能な社会保障制度を全世代型社会保障構築会議、そして、コストカット型の経済から高付加価値創出型の経済への転換を実現するため、持続的な賃上げ、生産性向上、投資促進など、幅広い重要政策をこの新しい資本主義実現会議において議論いただくこととしております。
 本日の会議では総合経済対策を見据え、これまで本会議で取り組んできた事項の中で、特に加速して取り組むべき施策を重点施策として取りまとめたということであります。その上で委員の皆様から、「高付加価値創出型の経済」への転換のために取り組むべき事項について、有意義なご意見をいただいたところでございます。
 第1に賃上げ環境の整備ということであります。賃上げの流れを持続的なものとしていくためには、労働生産性の向上が不可欠ということであります。労務費の価格転嫁を徹底するため、各業界において実態調査とその結果に基づく改善を年末までに完了させるとともに、不適切な事案については独占禁止法と下請代金法に基づき厳正に対処いたします。コストが上昇する中での価格の据え置きなどにも対応いたします。それから、部品を作るとかいうことだけではなくて、物流の関係も対応するということで、下請代金法の改正についても早期の実現を目指してまいります。
 それから、深刻化する人手不足に対応しつつ生産性の向上を進めるために、DX(デジタル・トランスフォーメーション)をはじめとする省力化投資を加速的に促進できるよう、強力に支援してまいります。また、経営力を高め、生産性を向上させるため、M&Aを通じたグループ化や事業承継をしっかりと支援してまいります。最低賃金については今後の中期的引き上げ方針について政労使の意見交換を開催し、議論を開始いたします。
 第2に、成長力に資する国内投資促進による投資大国の実現ということであります。人への投資あるいは研究開発投資、設備投資の拡大に官民挙げて取り組むことで、科学技術・イノベーションを促進するとともに、半導体やAIのみならず、GX(グリーン・トランスフォーメーション)や、潜在力のある産業分野において、付加価値の高い新しい製品やサービスを生み出す高付加価値創出型の経済に転換をしてまいります。総理からは私を中心に関係大臣が協力をして、本日取りまとめた重点施策を総合経済対策に反映するとともに、施策の具体化を進めるようご指示をいただきました。
 本日の会議の具体的な様子は後ほど事務方から説明をさせたいと思います。

2.質疑応答

(問)本日の重点施策の内容なのですが、経済対策の重点施策をまとめたということですけれども、内容が6月にまとめた新しい資本主義実行計画の改訂の内容からのピックアップといいますか、それを踏襲したものに基本的になっております。これについて今回、経済対策を控える中で、新規性があまり見られないというようなことも感じておるのですけれども、この辺についてどう考えていらっしゃいますでしょうか。また、赤澤大臣が今回の一番目玉だと思う部分を教えてください。
(答)石破政権では岸田政権の新しい資本主義の取組を引き継ぎ、コストカット型経済から高付加価値創出型経済への転換を図るということであります。そういう意味で、前の3年間の積み上げというものを引き継いで、発展・加速させていくということです。
 ご指摘の重点施策は、総合経済対策に反映するため、早期に実施することで、新しい資本主義を加速・発展させるべく施策を取りまとめたということで、新味がないというご指摘については、私は必ずしも意味がよく分からないところもありますが、例えば価格転嫁とか、省力化投資とか一つ取っても、逆に伺いたいのは、価格転嫁は現時点において3年、岸田政権がやったから十分ですか。あるいは省力化投資でもいいですけれども、十分ですかというと、全く足りていないというのが多分、現状だと思うのです。やらなければいけないことが分かっている時に、3年間続けました、それが成果が十分に上がっていないから、今後、更に力を入れて進めますということを申し上げた時に、新味がないではないかと言われても、我々としては特に問題は全く感じないところであります。
 それから、いずれの施策も大きな意味では、この6月に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」に位置付けられていますが、内容を具体化し、スケジュールを前倒すなどの加速・発展をさせています。そういう意味では先ほどのご質問に、新味ということではないかもしれないけれども、なかなか進まない部分については、更に国民からお預かりしている税金を多めにかけていくとか、重点化するとか、いろいろなことがあり得ると思うのです。そういう意味で我々は加速・発展させていると理解をしており、それが現時点において極めて重要かつ必要なことだと思っているということであります。
 ちょっと禅問答みたいなところはありますが、重点施策として取り上げている以上、全てが重要というつもりなのですけれども、その上であえて申し上げるとすれば、1番目の柱として位置付けている賃上げ環境の整備ですね。賃上げの流れを持続的なものとしていくためには労働生産性の向上が不可欠でありますし、企業に頑張って賃上げ原資を稼いでもらわなければいけないという流れもあります。労務費の価格転嫁を徹底するため、各業界における実態調査とその結果に基づく改善を年末までに完了させるとともに、不適切な事案については独占禁止法と下請代金法に基づき厳正に対処するというのも先ほど申し上げたとおりですし、例えば下請代金法の改正については、重点施策の中で、コスト上昇局面における価格の据え置きなどの事案や荷主・物流事業者間の取引にも適用できるようにするとともに、事業所管省庁と連携した執行を強化するため、早期に国会に法案を提出するという、まず具体化をしているということであります。
 賃上げはもちろんすごく大事ということですが、加えて深刻化する人手不足に対応しつつ労働生産性を向上させるには、デジタル化が切り札となります。DXをはじめとする省力化投資を加速していかなければなりません。そのため、中小企業生産性革命推進事業を更に充実をしていきます。新味がないともおっしゃいましたけれども、省力化投資について各事業所管省庁における具体的プランというのは今、できておりませんので、それをしっかり作るというようなことで、また検討を加速していきたいというふうに思っています。
 また、最低賃金についても、今後の中期的引き上げ方針について早急に政労使の意見交換を開催し、議論を開始することとしています。ご案内のとおり、2020年代に1,500円をという非常に高い目標を目指して、不断の努力を続けるということを打ち出しています。そういう意味では、2030年代半ばまでに1,500円、それを前倒しするとなっていた前政権の骨太方針よりもちょっと踏み込んだ部分があるので、それに見合って議論を始めるということもございます。
 一番の目玉とのご質問についてもう一回考えていくと、地方が元気になるために欠かせない農林水産業とか観光業の高付加価値化も柱の一つとして取り上げておりまして。そういったところで、前にお話ししましたが、地方創生の中で1.0の時になかった技術ですね。ブロックチェーン技術とか、いわゆるWeb3ですね。ブロックチェーン技術あるいはNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)といったものを使って、地方のアナログの価値をデジタルで最大化していくというようなことは目新しいことだろうと思います。
 それから、何のために会議をやったかといえば、まさに今おっしゃったようなことについて、更に示唆を得るためにやっています。高付加価値創出型の経済への転換に必要な新たな施策について、本日の会議で各委員の皆様からいただいたご意見も踏まえて、今後、更に議論を深めて、来年の骨太の方針などにつなげていきたいというふうに思っております。
(問)最低賃金の引き上げについてなのですけれども、政労使での意見交換を早急に開始したいということですが、いつ頃始めて、いつ頃までに方向性を出すのかのスケジュール感を教えてください。
(答)最低賃金については前政権と比べて2020年代に全国平均1,500円という高い目標を掲げて、たゆまぬ努力を続ける旨、石破総理の所信表明演説でも述べたところであります。これを踏まえて、今後も最低賃金を着実に引き上げていく、たゆまぬ努力の第一歩として政労使の意見交換を開催し、議論を開始することが今般の経済対策の重点施策に盛り込まれたものです。政労使の意見交換のスケジュールについては相手のある話でもありますし、その他の詳細について今後、調整してまいりたいというふうに思っております。
(問)最低賃金、その時期とか金額、重点施策には書いていないですけれども、2020年代に1,500円を目指すということを念頭に置いているということでよいでしょうか。
(答)書いておりません。それは総理の所信で申し上げておりますので、それをもちろん前提にしているということになります。
(問)今の関連で伺いたいのですが、2020年代に最低賃金1,500円という目標を、岸田政権の時には30年代半ばまでにやるということを骨太方針にしっかり書き込むなど、明確にこういう文書で打ち出していたのですが、今回、あえて数字は書いていなくて、今後の中期的引き上げ方針についてという書き方になっていますが、これはやはり一部で反発があることを考慮して、まだ2020年代に1,500円という水準は十分に理解を得られていないという認識の下、あえて書いていないということなのでしょうか。なぜ書かなかったのかというのをもう少し詳しく教えてください。
(答)それはもう、私の考えでは自明だからということです。総理が所信表明で2020年代に1,500円という高い目標に向け、目指してたゆまぬ努力と言っていますので、それを当然、中期的と言った時には前提にしているという話であります。前政権は明確に書いていたと言いますけれども、前政権は2030年代半ばということを目標に1,500円と言っていましたが、それを前倒しするとしか言っておりませんので。2020年代に達成するということを、高い目標だけれども、たゆまぬ努力で目指していくということを打ち出した我々のほうが、1歩か2歩か分かりませんけれども、更にそれを加速するということを打ち出しているという意図でございます。
(問)先ほど、首相官邸で防災庁準備室の設置について表明されましたけれども、こちらを設置して、どういうことを具体的に今後、検討を指示されていくのか。また、令和8年度までに設置ということなのですけれども、今後、その検討をどういうスケジュールで進めていこうというふうにお考えなのか。現時点でお考えがあればお聞かせください。
(答)防災庁の設置については、総理からのご指示は、まずは内閣府防災の司令塔機能の強化。組織、人員、予算などの大幅な体制強化という法律がなくてもできることを行うということです。その上で関係法令の整備を行い、令和8年度中に防災庁を設置すべく検討を進めていくということを前提に、11月1日に防災庁設置準備室を立ち上げるということを官邸では申し上げました。その上で具体的に何をやるのかは当日までお待ちいただきたいということで、現時点では特に申し上げたいことがあるわけではありません。総理と相談した結果、明後日の11月1日に立ち上げようということであります。今後、防災庁設置に向けた具体的な議論を進めてまいりたいというふうに思っております。
(問)先ほどの話題に戻りますけれども、資本主義の実現会議の中で、総理のご発言で、衆院選挙の中でも賃上げを求める声が多かったという話がありましたけれども、大臣としてはこの辺り、選挙を通して、どういった声、どのように受けとめられたのでしょうか。具体的にこういった分野に特に要望が強かった、こういうところに取り組んでいきたいというところがあればお伺いしたいです。
(答)大臣就任してから間もなかったので、私が選挙の時に取りあえず最初の4日間、地元にいて回りました。その後は県外に応援に出て、最終日、島根県に午前中に入って、午後からということだけだったので、時間は限られておりました。大臣就任から間もなかったので、出てきてくださる方はもちろん私の支援者たちなので、大臣就任おめでとうございますという声が圧倒的だったのですが、そのような中で幾つか自分として本当に深く思うところがあったのは、一つは私の手を握って、「暮らしていけるようにしてください」ということをおっしゃる方が何人もおられました。私自身、鳥取県からの地方創生ということを申し上げながら、それを公約にして、それをまさにやるのだというのは、この永田町に出てきても変わらないです。やっぱり7大都市圏とちょっと違いがあるのではないかなということを思います。つまり、最低賃金は今、ようやく平均1,000円を超えていっているわけですけれども、1,000円の最低賃金で働いている方は2000時間、年間で働いて年収200万円です。ご案内のとおり、物価が上昇する前の段階でワーキングプアの水準というのは年収200万円ですから、物価が上がった後、今は年収200万にも達していない。最低賃金の平均以下の都道府県で働いている方たちは、最低賃金でフルタイムで働いても、端的に言えば暮らしていけないような状態になっているはずです。
 7大都市圏は議員の数も多いし、今までの議論でいうと、鳥取県は本当に経済力が低い、人口も少ない。そういう県から代表として出ている私が、鳥取県から日本を変えるということを申し上げているのは、そういう声を今まで以上にしっかり永田町で代弁し、また、賃上げについていろいろなご懸念を示される経営者の皆様も本当に大事にするし、私は日本の経営者の皆様の力を心から信じているので、全力でお手伝いをすれば、しっかり賃上げ原資を稼ぎ出していただけると思っています。その上で、暮らしていけない、最低賃金でフルタイムを働いている方たちが、現に私の鳥取県含め、おられるということについても深く理解をいただいた上で、今後の政労使の意見交換を進めていただきたいということを切望しております。
 それ以外に気付いたことといえば、これは地元で手応えを聞かれた時に申し上げたことでありますが、私の街宣車めがけて出てきてくださる方はもちろん温かいです。それはもう、私の大臣就任をものすごい喜んでくださっている方たちですけれども、そうでない方たちに町中で私の街宣車が近づいていって、「自民党です、赤澤です」とやると無視されるという状況でした。それだけの、端的にいうと国民の皆様のお怒りは、それはもう尋常ならざるものがありますし、地元ではずっと、「1円でも裏金をつくった議員は全員、首にしてください」ということを、私の顔を見るといろいろな所で接する方がおっしゃっていました。それはやっぱり私とすると、本当に二極化していると。鳥取県から総理が出て、閣僚が出て、鳥取県として期待するところ大だと私の支持者はもちろん喜んでくれますけれども、そうでない一般の鳥取県民は「自民党、何だ、何やっているんだ。無視だ」と。私が率直に感じたところからいうと、2回目の選挙、民主党政権が誕生した時よりも厳しいです。民主党政権が誕生した時はご案内のとおり、消えた年金とか、後期高齢者という名称を付けてお怒りを買ったりしていましたけれども、その時はまだ怒ってくださったんですよ。反応があったんです。今回は私がそう感じるということで、同じ感じ方をする人も多いと思いますけれども、もう相手にしない、話にならない
、聞く耳がないという感じに受け取れました。そういうものは鳥取県からの地方創生の中に、政治と金で信頼を失うと、ここまでお灸を据えられるのだぞとか。
 我々、ちょっと泣き叫ぶような状況になっているわけですけれども、それをしっかり踏まえて、それでもまだチャンスを与えられているなら、最大限それを活かして、まずそこの信頼回復から始め、その上でやりたい政策をしっかりやっていきたいと、こういうことを強く感じたということであります。
(問)防災庁についてお伺いしたいのですけれども、改めまして、防災庁とその準備室を設置することの意義についてお伺いします。加えて、今後、内閣府の防災機能の強化と準備室が並行して進んでいくと思うのですけれども、これがどう並行して進んでいくイメージを持たれているか、教えてください。
(答)ここはなかなか難しいオペレーションなのですが、一つは総理と私の共通する考えで、事前防災に当たる部分のスピードを、災害が起きた時に落としたくないという思いが強いわけです。防災庁をつくるのはそういう意味もあります。体制強化するのも、そういう意味もあります。端的に言えば、今の73億円の予算で、そして助けていただいている都道府県や市町村からの人たちを全部加えて150名しかいない状態で、西日本豪雨とかは260人以上亡くなりました。あるいは能登半島地震とか、そういうものの対応が見事にできていたか。予算、人員ともに十分かと言われれば、総理と私は当然、大変心もとないと考えています。これから来る南海トラフという地震は一定の確率で、来るか来ないかの問題ではなくて、いつ来るかの問題だといわれている話は、32万3000人が想定死者数で、避難者の想定は460万人です。そういうものがこれから来る時に、事態対処をやるたびにパンクしかけているような状態で臨んでいいわけは、政治家の責任としてありませんので。そこもしっかりやっていきたいということとあわせて、事前防災は分けて、常に中断することなく進めたい。災害が起きるたびにそちらにみんな取られて、事前防災が進まないことは是非やめたい。そういう意味からすると、総理のお考えは多分、私も同じことなのですけれども、今、本当に災害が多い中で、線状降水帯も多いです。能登半島地震の復旧・復興も続いている。東日本大震災の復旧・復興だって続いている。その他の災害もある中で、坂井防災大臣に防災庁の設置準備もやってくださいと言っても、私から言わせれば、あるいは総理も同じ感覚だと思いますが、事態対処と事前防災を一緒の人にやらせるのは、なかなか難しいだろうということはあるように思います。
 そういう意味で、坂井防災大臣には、私も心から尊敬する盟友でありますので、存分に事態対処をやっていただくということとは切り離して、ある種の事前防災ですよね、体制強化をやっていく。それは事態対処とは切り離して、私のほうでやらせていただくと。ただ今おっしゃったように、重なる部分があるのは、今の体制のままでの予算体制というのは、どうしてもよく相談した上で坂井大臣にやってもらわないといけません。私の下に内閣府防災があるわけではないので、そういう意味では本当によく相談しながら、お互い目を見れば分かる関係で、あうんの呼吸でいろいろ分かっていることはあるので、うまく2人で連携して、きちっとやっていきたいなというふうに思っています。
(問)関連しまして準備室なのですけれども、この準備室の正式名称を教えていただきたいのと、設置するのは内閣官房でいいか、教えてください。
(答)「防災庁設置準備室」で私が担当しておりまして、内閣官房に設置されます。
(問)物価高対策についてお伺いします。本日の新しい資本主義実現会議でも、委員の方のご意見でエネルギーコストへの対応など多様な意見が出ています。政府のほうでも電気ガス補助金を含めた、今、経済対策を策定しているところだと思いますけれども、以前は総合的に検討するというお考えでしたけれども、今回、更に踏み込んだ検討状況があれば、よろしくお願いします。
(答)現時点ではまだいろいろ結論が出ていないので、過去と必ずしも変わっておりません。電気・ガス料金についてはご案内のとおり、酷暑乗り切り緊急支援として8月から10月分に限って実施、10月末で終了することにしていますし、燃油もご案内のとおり年内に限って支援継続ということです。しかも、岸田総理は経済対策の策定とあわせて、骨太方針2024も踏まえて早期の段階的終了に着手すべく取り組むと表明されています。
 これについては申し上げたことの繰り返しになりますけれども、エネルギーコストを含めた物価高対策は状況を丁寧に見極めながらやるということで、その下に物価高の影響を特に受ける低所得者世帯向けの給付金とか、地域の実情に応じたきめ細かい対応のための重点支援地方交付金を含めて総合的に検討することとしており、今後、検討を進めてまいりますということで、特に変わっていることはありません。

(以上)