赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年10月29日
(令和6年10月29日(火) 19:03~19:20 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を報告させていただきます。今月は、「景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している」と、先月の判断を維持しております。これは、企業部門は業況感の改善が続き、設備投資意欲も旺盛であるなど、引き続き好調であること、それから、家計部門についても賃上げの効果などにより実質所得が増加に転じる中、個人消費に持ち直しの動きが見られることなどを踏まえたものでございます。
先行きについては33年ぶりの高水準となった春闘の賃上げの効果に加えて、今月から最低賃金の引き上げが適用されているなど、雇用・所得環境が改善する下で緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、中国経済など、海外景気の下振れリスクなどに十分注意をする必要があります。
私は賃金向上担当大臣でもありますので、より少ない労働時間でより多くの賃金が得られる、「稼げる日本」への変革を進めるとともに、最低賃金の引き上げを加速させる役割を担っております。関係大臣にご協力をお願いするとともに、私からは賃金の動向を今月のポイントとして取り上げ、説明をいたしました。その内容について申し上げます。
日本の名目賃金及び物価の上昇率は長年にわたり0%前後で動かない状態が続いてきました。これは日銀の金融政策決定会合などでゼロノルムといって議論されているものです。しかしながら、2022年以降、輸入物価の上昇とそれに対応した価格転嫁、賃上げ促進の効果もあって、いずれもデフレに陥る以前の1990年代の水準の伸びに戻りました。賃上げと物価の好循環が回り始めていると言えます。
また、現金給与総額の統計は雇用者の7割を占めるフルタイム労働者と3割を占めるパートタイム労働者を合計したものの平均値です。パートタイム労働者の比率が少しずつ高まっている現状では、フルタイム労働者とパートタイム労働者を分けて議論することが必要と考えます。そこで両者を分けた実質賃金を見ると、まずフルタイム労働者は夏のボーナスが堅調だったこともあって、6月以降プラスが続いており、ボーナスを除く定期給与で見てもマイナス幅が縮小傾向にあります。また、パートタイム労働者の時給は昨年7月から前年比プラスが継続しています。更に、ビックデータを見ると、パート・アルバイトの募集賃金は毎年最低賃金が上がる10月前後に上昇しています。今年も最低賃金が各都道府県で順次適用される中で、募集賃金が一段と増加し始めています。
この他、会議の詳細については後ほど事務方から説明させます。
2.質疑応答
- (問)昨日10月28日に石破首相から経済対策の策定と補正予算の提出時期について「党派を超えて優れた政策を取り入れていく。その中で検討していく。」といった趣旨のご発言がありました。一方、10月4日に総理は経済対策について「来たるべく総選挙後は速やかに経済対策を決定して補正予算を提出する」といった形で述べられていました。
昨日の発言は選挙前の発言と比べると若干トーンダウンしているように聞こえたのですが、経済対策の策定が今後、後ろ倒しされるということはありますでしょうか。 - (答)経済対策については、前に申し上げたことも含めてお話ししますと、物価上昇を上回って賃金が上昇し、設備投資や人への投資が積極的に行われ、成長と分配の好循環が力強く回っていく経済を実現するために三つの柱、物価高の克服、日本経済・地方経済の成長、国民の安心・安全の確保を柱として策定することとしております。
総理から示された経済対策策定の趣旨や三つの柱に沿って、現在、具体的な施策を検討しているところであります。関係省庁の協力も得て、優れた方策や効果的な施策の積み上げをしているところでありまして、その中で意義ある経済対策となるよう総合的な検討を進めていくこととしております。引き続き速やかに閣議決定できるように進めてまいりたいということが現時点で申し上げられることでございます。 - (問)関連して経済対策について伺います。今、質問がありましたように「党派を超えて優れた方策を取り入れたい」と、石破総理は昨日の記者会見で発言されました。実際取り入れるとなりますと、調整に時間がかかるものも可能性としてはあるかと思いますけれども、これまで政府としては昨年を上回る規模の補正予算を年内に成立させたいという考えでしたが、この方針に現状お変わりないでしょうか。
- (答)石破総理は選挙前には昨年の13兆円を上回る規模というようなことを発言されたと承知をしております。現在している作業は総理から示された経済対策策定の三つの柱に沿って具体的な施策を検討しているところでありまして、経済対策については必要な施策を積み上げていくということですけれども、今後、経済対策の策定の過程で優れた方策を取り入れていく中で規模も検討していきたいということが現時点で申し上げられることです。
- (問)二つあります。与党大敗の要因いろいろあると思うのですが、経済政策的に思いつくものがあれば一つ教えてください。二つ目は、国民民主の玉木雄一郎代表が大変お元気で、あれもやってほしい、これもやってほしいとおっしゃっていますけれども、あちらの政策の中でもこれは取り入れたいというようなもの、現在おっしゃることができるものがあれば教えていただきたいです。逆に、少しこれは難しい、すぐには難しいというものもあるのであれば教えていただければと思います。
- (答)まず、閣僚の立場として会見を行っていまして、選挙結果について分析的なことを申し上げるようなことは差し控えさせていただきます。
あと、これは言い方が難しいですけれども、玉木代表がお元気とおっしゃっていましたけれども、前から元気な方でありますので、そのような意味ではお変わりなくご活躍いただいているということかと思います。私どもは当然ですけれども、国民のためにいい政策があれば、どこから出てきてもそれは取り入れたいという思いで、各党の政策についてもいろいろな機会に勉強させていただいているところでありますので、そのような中でしっかりと国民にとって、石破総理がおっしゃった三つの柱に沿って、最大限効果の高い、そのようなものをやっていきたいと思っているところであります。 - (問)今の関連で伺いたいのですが、優れた政策は取り入れたいということをおっしゃっていましたが、具体的にはどのような政策に関心を持っていて、どのような政策を取り入れられないかと考えていらっしゃるのでしょうか。
- (答)優れた方策ということなので、ここについては不断に我々がやっていることなのですけれども、例えば一つの目的を達成したい時に、低所得者世帯への支援とか、あるいはいろいろな目的の時に、優れた方策という意味は手段がいろいろあります。それを選び取っていくという意味で、例えば、物価上昇の効果を減算しようといった時に、前にもお話ししたことがあるかもしれませんけれども、自治体ごとに例えばエネルギー供給構造が違うと。都市ガスの所もあれば、プロパンガスでやっている所もあります。そのような意味で各自治体の事情に合わせて自治体で工夫してもらおうと思えば交付金の形になります。ところが、特定のことについてぽんと補助金を出してしまうと、それが合う自治体と合わない自治体があるので、そのような意味では全ての自治体が使い勝手良く、実際に、物価上昇、エネルギー部分についてきちっと対策を打ってもらって、物価上昇に苦労されている国民、個人であるとか、企業であるとか、そこに届くようにという工夫は自治体にやってもらうというやり方が、例えば方策としては優れているというような議論は中でよくしております。そういう意味で、優れた方策ということを検討させていただきました。
改めて他の方のご質問と組み合わせてお答えすれば、他党の政策についても一通り私どもは目を通した上で、どの方策がベストかということはずっと議論を続けているということになります。 - (問)経済対策について、他党の政策も取り入れるというお考えのところで、他党の政策の中では消費減税とか、トリガー条項とか、所得控除の引き上げ、178万円とか、税に絡む部分も結構出てきていると思うのですけれども、自民党が大多数の与党であれば年末のインナーのプロセスで決めるみたいなこともあると思うのですけれども、野党と今後協議していく中で、税に関するものは今回の経済対策で織り込むのは難しいのでしょうか。それとも、年末の議論を経て入れることも可能なのでしょうか。
- (答)質問で「他党の」とおっしゃったけれども、私の理解するところは、挙げられたものは全部、国民民主党のおっしゃっていることかなと思ったので、何かそういう念頭に置いて質問されているのかなとも思いました。我々もずっと他党の政策を全部勉強をしていますので。いろいろなプロセスがあり得るので、やり方を工夫しながらやっていくということだと思いますが、税については税制調査会の議論を経ないとできませんので、その辺りのタイミングについても判断しながら何ができるかをよく考えていくということ以上に申し上げられることはないです。
- (問)今、足元でドル円相場は3か月ぶりの水準にまで円安が進んでいますけれども、こうした円安進行が物価とか消費マインドに与える影響やリスクを大臣はどのようにご覧になっているか教えていただけますでしょうか。
- (答)まず為替相場の動向については、いつもこれを繰り返してますけれども、私の立場からコメントしますと市場に不測の影響を及ぼすおそれがあるので、基本的に差し控えさせていただきたいということです。為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要だと考えております。
その上で申し上げれば、円安については実体経済に対して様々な影響があります。為替の動向やその影響については引き続き、我々からすれば十分に注視をしていくという立場になります。これもきっとご案内のことと思いますけれども、具体的には、為替の変動が輸入物価の上昇を通じて国内物価を押し上げる場合、名目賃金・所得が十分に上昇していなければ、家計の実質所得を押し下げて、消費者マインドの低下も相まって、個人消費の下押しにつながり得るということがあり得ると認識はしております。 - (問)選挙結果を受けての防災庁設置について伺います。まだ少し先の話ではあるのですけれども、法案の改正や新法などが必要になってくると、国会での審議が必要になってくると思うのですけれども、令和8年度なので政治情勢がどうなるか分かりませんが、今後どのように野党とも協力して進めていこうとお考えでしょうか。
- (答)まず、閣僚としての記者会見なので、選挙結果についてのコメントは差し控えたいと思います。その上で、民主主義の根幹が選挙でありますので、国民のご意見を聞く本当に最高に貴重な機会であったわけです。今回の結果を謙虚かつ厳粛に受け止めつつ、石破内閣の一員として与えられた職務に全力で取り組んでいきたいと思っております。
これまで申し上げているとおり、石破総理からご指示いただいた防災庁の設置については、まず内閣府防災の司令塔機能の強化、組織・人員・予算などの大幅な体制強化を行うとともに、その上で関係法令の整備を行って、ご指摘のあった令和8年度中に防災庁を設置すべく検討を進めていきたいと考えています。これらの課題は言うまでもなくいろいろな巨大自然災害が待ったなしで、確率のことはよく議論されていますけれども、明日起きてもおかしくないということでありますので、しっかり取り組んでいきたいと思います。
石破総理もおっしゃっているとおり、今後、防災庁設置準備室を立ち上げて具体的な議論を進めていくことになりますが、立ち上げの時期も含めて、また、その具体的な体制や進め方について、現在、検討を進めているところでございます。 - (問)先ほどの防災庁の設置に絡んでお尋ねいたします。立ち上げの時期も含めて検討を進めていらっしゃるというところは重々理解しているのですけれども、今回の選挙結果を踏まえて、スケジュールへの影響であったり、また、かねて言われている準備チームの発足状況であったり、そういったものの進捗であったり、そういったところのスケジュール感をもう少し詳しくお尋ねできないでしょうか。
- (答)なかなか先ほど申し上げたことに付け加えるのは難しいところではありますが、言うまでもなく選挙結果を踏まえて、我々が臨まなければいけないものは首班指名選挙もあれば、今おっしゃったようなことに関係するとすれば、予算も通していかなければなりませんし、防災庁設置ということになれば法律も通していかなければいけないというところもありますので、国民の皆様から示していただいた民意である今度の選挙結果をしっかり踏まえて、全力を尽くしていきたいということだけ申し上げておきたいと思います。
(以上)