赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年10月25日
(令和6年10月25日(金) 10:26~10:50 於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
英国のCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)についてまず私からご報告をしたいと思います。CPTPPに新たに加入する英国については、これまで英国に加えて7か国、日本、シンガポール、チリ、ニュージーランド、ベトナム、ペルー、マレーシアが英国の加入議定書に関する国内手続きを完了し、CPTPPの寄託者であるニュージーランドに対してその旨の通報をしております。これによりまして、加入議定書の発効要件に従い、本年12月15日に加入議定書が発効することとなります。
CPTPPは自由貿易、開かれた競争的市場、ルールに基づく貿易システム及び経済統合を更に促進していく上で大きな意義を有しています。英国の加入はこうしたCPTPPの意義がアジア太平洋地域を越えて更に拡大していく非常に意義深いものと考えております。まだ国内手続を終えていない国に対して、引き続き早期の国内手続の完了を呼びかけてまいります。ご案内のことと思いますけれども、国内手続を終えていない国との間では英国との間にCPTPPを発効しませんので、そのような意味では残っている国にしっかり国内手続を完了していただくということを我々は呼びかけていくという立場でございます。
2.質疑応答
- (問)幹事社から3点伺います。1点目ですが、為替の状況について、円安が足元で152円程度まで進行しております。こうした状況が続けばエネルギーや輸入原材料の価格高騰につながって、物価高に影響する可能性もあると思いますが、この状況をどのように受け止めておられますでしょうか。
2点目です。エネルギー補助金について、先日、石破首相が愛知県での街頭演説で、「ガソリン代や電気代が上がって困る人には十分な支援を行う」という旨の発言をされました。このことについて具体的な検討状況を教えてください。
3点目です。石破政権の2020年代に最低賃金を全国加重平均で1,500円に引き上げる目標について、先日、経団連の十倉会長が、「中小企業などへの影響懸念から明らかに無理だということを強引に進めることはいかがか」といった旨の発言をされました。この目標については、一部、実現性を疑問視するような声も出ていると思いますが、改めてこの政権目標をどのように達成するかということについて教えてください。 - (答)まず、為替については、残念ながら私の立場からコメントすることは市場に不測の影響を及ぼすおそれがありますから、差し控えさせていただきたい。ただ、為替相場はファンダメンタルズを反映して、安定的に推移することが重要だと考えております。円安は実体経済に対して、様々な影響を与え得るものでありますので、為替の動向やその影響については引き続き十分に注視をしてまいりたいと考えております。
そして、2番目のエネルギーについては、電気・ガス料金について、これは前にも申し上げていることですけれども、酷暑乗り切り緊急支援として8月から10月の使用分に限って支援を実施して、10月末で終了するということであります。また、燃料油の激変緩和対策について、年内に限って支援継続とされ、岸田前総理は「経済対策の策定とあわせて、骨太方針2024を踏まえて早期の段階的終了に着手すべく取り組む」と表明をされていることはご案内のとおりです。
ご指摘の総理の発言については承知をしておりますが、エネルギーコストを含めた物価高対策については状況を丁寧に見極めながら、物価高の影響を特に受ける低所得者世帯向けの給付金でありますとか、地域の実情に応じたきめ細かい対応のための重点支援地方交付金を含め、今後、経済対策について議論していく中で総合的に検討していくこととしています。
一つご紹介をすると、日本の中で既に給食費を無償化している市とか、あるいは物価高で給食費が増えてしまったら、その増えた分は市が負担するということを決断している市もあります。数としてはそれほど多くはないかもしれませんが、そのような例が出てきている中なので、まさに重点支援地方交付金などはその給食の無償化であるとか、あるいは物価高で給食費が増えてしまった部分を市が負担する時に有効に使っていただけるようなものです。お子様たちの給食費に関わる部分ですので、有効な物価高対策、物価高の克服に向けて使っていただけるものとしてしっかり積み増していきたいという考えを持っております。今後、経済対策について議論していく中で総合的に検討していくということです。
3点目は最低賃金です。最低賃金の引き上げ目標に関する経団連の十倉会長のご発言や報道は承知をしております。今年の改定後の最低賃金、全国加重平均額が1,055円ということで、51円の引き上げ額で、引き上げ額は2021年以降連続して過去最高額であったということであります。
十倉会長のおっしゃっていることは私もよく理解をしておりまして、最低賃金を更に引き上げていくためには、経営者の皆様からすれば当然ながら賃上げ原資が要るということなので、それを稼ぎ出していただくための適切な価格転嫁に加えて、中小企業等の自動化・省力化投資とか、あるいは事業承継、M&Aの環境整備などによる生産性向上支援が非常に重要であって、これに全力で取り組む中で、明らかに無理だというようなことは当然する気はありません。強引に進めることにはならないので、その辺りをしっかりやっていきたい。
ただ、私が感じるのは、鳥取県でもそうですけれども、物価高が始まる前の状況で働いても暮らしていけないというワーキング・プアの水準が年収200万円というのは一般的に言われていたことです。年間2000時間働くとすると、それはちょうど時給1,000円に当たります。そうすると、ようやく1,000円の目標を達成した我が国でありますが、その全国平均を下回る所だと、物価が上昇し始める前でも生活保護を受けずに働くという貴重な、本当に尊い決断を国民にしていただいたのに、その方はフルタイムで働いても暮らしていけないというようなことが現に起きるわけです。その辺りについての理解もした上で、この制度をどのように運営していくのかということについては、全てのステークホルダーによく考えていただきたいという思いを担当大臣としては持っているところでございます。 - (問)経済対策の規模についてお伺いします。昨年、補正予算が13兆円で、事業規模が37兆円程度でしたが、総理は今年、これを上回る規模の経済対策にしたいと説明されています。なぜ昨年を上回る規模が必要なのか、大臣のお考えを教えてください。
- (答)当然ながら我々はしっかり積み上げをやります。石破総理の発言については承知をしております。その上で、経済対策については物価上昇を上回って賃金が上昇し、設備投資や人への投資が積極的に行われ、成長と分配の好循環が力強く回っていく経済を実現するため、ご案内の三つの柱を立てています。物価高の克服であり、日本経済・地方経済の成長であり、国民の安心・安全の確保を柱として策定をするということであります。
閣議で総理から「取りまとめよ」というご指示をいただいたので、現在、各省、各大臣とも相談しながら積み上げているところであります。石破総理から発言があったとおり、昨年の経済対策の規模も念頭に置きながら、今回の経済対策についてこれから具体的な施策の積み上げをやりますけれども、私もざくっとした、まず確たる根拠というか、数字を全部積み上げて、今ここでご提示はできませんけれども、コストカット型から高付加価値創出型経済へ移行していくためには、本当に兆円単位の継続的な投資が絶対必要で、それはまさに日本経済・地方経済の成長の中に盛り込まれることであります。能登半島地震、あるいは豪雨災害で本当に打ちひしがれている皆様のことを考えて、今後もそのような災害に我が同胞が見舞われた時のことを考えると、国民の安心・安全の確保、防災・減災、国土強靱化のところも相当積んでいかなければいけません。物価高の克服ももちろんであります。
私自身は、必要なものを積み上げると、総理のおっしゃるように、前回の経済対策の規模は超えてくるだろうという感覚を持っていることは申し上げておきたいと思います。ただ、当然積み上げによるので、何に使うか分からないけれどもえいやと積んでしまえという話では全くないことは申し上げておきたいと思います。 - (問)防災対策について伺います。大臣は以前の会見で、先ほどもお話がありました経済対策について、トイレやベッドなどの災害備蓄の状況を少しでも改善できるような方向で予算をつけていきたいとお話しされていました。また、デジタル田園都市国家構想交付金にも言及されたこともありましたけれども、今回の経済対策ではどのような仕組みを活用して、備蓄状況の改善など、防災体制の強化を図りたいか。改めて検討状況をお伺いします。
- (答)具体的な積み上げをやって、逆に言うとどのような仕組みがそれぞれのことをやるのにふさわしいかその時に考えていくということでありますけれども、まず一つは、言うまでもなく能登半島地震、豪雨の被害者の皆様にきちっと手を差し伸べることは大事です。今、日本国全体で元旦から大変なダブルパンチ、トリプルパンチで一番苦しんでおられることは間違いない能登の方たちですので、そこにできるだけきめ細かく、しかも迅速に、どうやって我々がお手伝いさせていただくか、支援の手を差し伸べさせていただくかというのは一番の課題であります。一方で、その教訓を踏まえて、他の地域で同じような災害が起きた時、具体的に言えば他の半島地域とか、そのようなものも含めて何をやっていくのかと。
今後も想定される災害の備えに万全を期すことが大事でありますので、それが事前防災にとってどうしても必要なことなので、防災体制の抜本強化や避難所環境の整備など、防災・減災、国土強靱化の取組を進めると。先ほど申し上げました教訓も踏まえて、今後も想定される災害への備えに万全を期すため、総理から視察の際に言及がありましたけれども、避難所環境を抜本的に改善するための新たな支援策などを考えていく。必要な施策を盛り込むべく関係省庁と連携して検討を進めているところです。
総理がよくおっしゃっているとおり、住んでいる市町村で救われる命と救われない命があるようなことは国として看過できないということです。ただ、財政状況とかがいろいろとあるので、自治体によっては頑張っているけれども、備蓄が十分でないというような所は我々が早めに見つけ出し、そこにどうやって事前防災として備蓄を備えてもらうのか、いろいろなやり方があります。一つ言えるのは、国が全部を用意していて国が届けるのは少し現実的ではないという思いはあるので、いろいろなことを考えながら、どのようなものがベストか、具体的な中身が決まったらどのような支援方策がいいのか丁寧に検討していきたいと思っております。
現時点において、経済対策取りまとめ担当の私から、そのような意味では具体的な施策の取り扱いに言及することは差し控えますけれども、引き続き関係省庁と最大スピードで調整を進めていきたいと思っています。必要な施策を今後積み上げた上で、経済対策の全体像をお示しいたします。 - (問)2点あります。最初は、激変緩和の延長問題で、赤澤大臣の回答で、地方交付金の拡充の給食費のお話などをされていましたけれども、単純延長よりも給付金の拡充で各自治体にやってもらうというほうが、今、どちらかというとそちらに傾いていらっしゃるということなのかお伺いします。
二つ目は、まだ選挙の最中で大変失礼な質問かと思うのですが、選挙結果次第で、三つ目の部分連合というのでしょうか、自民・公明ではない政党ともいろいろと政策ですり合わせをしなくてはいけない局面があるとすれば、取り沙汰される第3党で消費税減税を掲げていらっしゃる所も結構あるので、そのようなものも検討があり得るということなのか。さすがに消費税をいじるのは、今の石破政権としては全く考えていないということなのか。何かお話しできることがあればお願いします。 - (答)まず1点目でありますけれども、これは、要するに、住民の皆様、国民の皆様にとって一番効果的な施策を講ずるという意味から言うと、エネルギー供給構造はその地域ごとで違うわけです。都市ガスであれば都市ガスだし、LPガスでやっている所もあります。そのような地域ごとの違いを踏まえて、有効な対策を講じていただくような、まさにエネルギー関係の施策のようなものは、国が一律に押し付けると、我々が地域の事情を分かってなくて、「いやあ、悪いけれども、国が一生懸命、善意でやってくれたけれども、この制度は使い勝手が悪いね」となってしまいます。そのようなエネルギー供給構造が地域ごとに違うというような話があるものについては、自治体にお任せする形にするのがベストであると考えています。
ただ、ご案内のとおり、本当に命に直結する部分で、絶対にそのようなものは市町村の違いなどあり得ないと思うようなものについては、我々がプッシュ型で国が一律でお願いすることもあります。その辺りは施策次第なので、今おっしゃったように、自治体に全部任せるのだ、国が全部やるのだという何か方針決定があって、そのもとであまり考えずに決めつけてやるということでは全くないことはお話をしておきたいと思います。
2番目のご質問ですが、この会見は閣僚の立場として行っておりまして、選挙、あるいは選挙後に関するお尋ねについては、あらかじめ申し上げますけれども、コメントは差し控えさせていただきます。
その上で、政府においては衆議院選挙中も、今日もまさに閣議が開かれました。署名するのが大変なぐらいの数の案件がありまして、衆議院選挙の最中もその機能を万全に発揮することとしています。選挙を口実に何か国民にご不便をかけることはしないという考え方のもとで、厳しい安全保障環境や能登半島の災害への対応、デフレからの完全脱却への取組など、国民のために全身全霊で臨んできているところです。
選挙について申し上げないと私は申し上げましたけれども、総理は「国民に信を問い、その信任を得て、新政権の掲げる政策に力強い後押しをお願いしたい」というように述べられていると承知しており、私自身も石破内閣の閣僚の一人としてそうした姿勢で臨んでいくことが重要だと考えております。 - (問)最低賃金のことで追加で伺います。先ほど、鳥取県の物価高のことを言及されていましたが、担当大臣として、石破首相の目玉公約でもあるので、選挙戦の中でも訴えられる場面があると思いますが、有権者の反応を今のところどのように捉えていらっしゃるでしょうか。地方経済には非常に影響が大きくて、プラス面・マイナス面もあると言われていますが、先ほど、「強引に進めることはしない」とはおっしゃっていまして、自民党の政権公約にもこの数字自体はしっかり書かれていないところを考えると、この目標自体は思いではあるのだけれども、見直しも検討されていることなのか。その辺りも含めて教えてください。
- (答)党の公約は党の公約ですので、政府として考えていることはそれとはまた別にちゃんと議論をして決まってくることでありますけれども、一つお話をすれば、私は4日間だけ選挙の最初に地元を回りました。鳥取県からの地方創生、鳥取県から日本を変えるということを訴えていますが、私の手を握った若者とか、あるいは女性、シングルマザーの方々もいますけれども、いくつかあった声は、「暮らしていけるようにしてください」ということです。
先ほど申し上げたように、私はその時にすごく申し訳ない思いと、感じるところがあるのは、鳥取県だと最低賃金だとフルタイムで働いても、先ほども申し上げるように、物価上昇が始まる前であっても暮らしていけないような状況だと理解をいたします。その状況を何とかしていきたいということです。
もちろん経営者の皆様は本当に頑張っておられるし、何か無理なことを申し上げる気はないのだけれども、個別の状況で言えば、例えば7大都市圏では最低賃金も高いし、経済もいい状況なので、働いている方たちは十分暮らしていけるということなのでしょうけれども、最低賃金が典型的に全国平均以下のいわゆる地方、過疎地域があるような地域はどうだろうということは、やはり光を当てていかなければいけなくて、私が「鳥取県からの地方創生」と言った時には、別に鳥取県のことだけを考えているわけでは全くなくて、最も人口が少なくて、最も経済力が弱い鳥取県の県民でもしっかり暮らしていけるようにするのは国としての義務です。
そのようなことを考えた時に、7大都市圏中心にそこを見てということではなくて、最低賃金平均以下で生活保護を受けずに働くのだという尊い決断をしたのに、なかなか暮らしていくのが大変な国民がおられるということは、国全体できちっと認識をした上で答えを出していかなければいけません。そのような意味で、私はそこをしっかりお伝えしていきたいと思いますし、2020年代、1,500円ということについては困難であることは当然ながら分かっています。過去最高額を続けてきている、それを更に超えていこうということなので。ただ、困難だからやらないということにもならないし、困難だからこそ石破政権で私が担当して、何とか結果を出していきたい。
そのような意味で、無理なことを何か強引にやろうという気はないですけれども、その辺りの状況を経営者の皆様にもよくご理解をいただいた上で、国全体の問題として、これは国の生産性に本当に関わりますので、しっかり議論をした上でいい結論を出していきたいし、私自身は党の公約はもちろん承知していますけれども、ベストを尽くしたいと思っています。 - (問)衆議院選挙のことで恐縮ですけれども、自民党の派閥の裏金問題を受けて、今回、衆議院選挙で非公認になった候補者を巡り、党本部から各候補者が代表を務める政党支部へ2,000万円の活動費が支出されていた問題が波紋を呼んでいます。野党側は「事実上の公認だ」と批判していますし、非公認となった候補からも反発が出ています。大臣はSNS上でも見解を述べていましたが、今回の党本部の支出は適切だったと考えるか教えてください。
- (答)この会見は閣僚の立場として行っているもので、お尋ねについては自民党の政治活動に関することであり、コメントすることは差し控えたいと思っていますが、その上で、私のSNSの関係は、総理がおっしゃったことをある意味、言い換えているという類いのものでありまして、総理は自民党総裁として、「自民党の公約・政策を国民の皆様に分かっていただくために政党支部に支給をしているものであって、候補者に支給しているものではありません」ということを述べられているものと承知をしておりまして、私もそのように考えております。
- (問)閣議での大臣発言について伺いたいのですけれども、先ほどの閣議で大臣から、閣僚会議及び閣僚懇談会等の廃止に伴う措置についての一部改正についてご発言があったとのことですが、どういった内容であったか詳細を教えていただけますでしょうか。
- (答)月例経済報告等に関する関係閣僚会議の構成員を変えさせてもらいたいという話をさせていただきました。
(以上)