赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年10月2日

(令和6年10月2日(水) 11:34~12:38  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 このたび、経済再生担当、そして、新しい資本主義担当、賃金向上担当、スタートアップ担当、全世代型社会保障改革担当、感染症危機管理担当、防災庁設置準備担当を拝命いたしました。あわせて、内閣府特命担当大臣として経済財政政策を担当することになりました衆議院議員の赤澤亮正でございます。どうかよろしくお願いいたします。
 経済財政政策については、我が国の景気、一部に足踏みが残っておりますが、緩やかに回復をしていると認識をしております。その中で総理も繰り返しおっしゃっていますけれども、GDPの54%を占める消費の伸びがまだ緩やかなのだ、力強さを欠いているのだということであります。また、海外景気の下振れリスクなどにも注意が必要であるという認識をしております。
 そうした中で、石破内閣では「経済あっての財政」という考え方で、デフレ脱却最優先の経済財政運営を行ってまいりたいと思っております。成長分野への官民挙げての思い切った投資によって、「賃上げと投資がけん引する成長型経済」の実現を図る。この「賃上げと投資がけん引をする成長型経済」、これが我々のキーワードでありまして、私としてはあらゆる政策を総動員して、その実現に注力してまいりたいと思っております。
 新しい資本主義については、岸田政権が打ち出された方向は極めて正しいと思っていまして、人への投資を重視して、資本主義のリニューアルを図るということで、私どもは方向性について大いに賛同するものであります。その上で、加速化、あるいはスピードアップ、更には発展させていくという考え方で臨んでおります。関係大臣と協力をして、官民連携のもとで様々な社会課題を成長のエンジンに変えていく。持続可能で力強い成長を実現する新しい資本主義を実行してまいりたいと思っております。
 問われる前に申し上げれば、とにかく岸田政権と比べると加速する部分がかなり出てくるということだと思っております。方向性は一緒です。
 賃金向上については、これも関係大臣と協力をして、付加価値を高める労働への転換、あるいは生産性向上とも言えると思います。リスキリングやデジタル技術の活用を後押しして、より少ない労働時間でより多くの賃金を得ることができる。そういう稼げる日本への変革を進めるとともに、意欲のある高齢者の就労を支援することもしていきたいと思いますし、望まない非正規雇用をなくすための改革も実施していきたいと思います。あわせて関係大臣と協力をして、兼業・副業を促進するとともに、最低賃金の引き上げを加速させていきたいと思っています。
 私と石破総理がお話をする中で、特に強く私が日頃から申し上げていたのが防災関係の体制整備と、最低賃金の引き上げをはじめとする所得の向上ということでありますので、そういう意味では、その点を踏まえて総理がよく私の気持ちも理解をしてくださった上でご指示いただいたと思っております。
 スタートアップについては、スタートアップ政策の司令塔として、これも関係大臣と協力をして、世界に伍するスタートアップエコシステムを作り上げて、持続可能な経済成長と社会課題解決を両立させていきたいと思っております。
 感染症危機管理については、感染症の発生及びまん延の初期段階から迅速かつ的確な措置を講じるための司令塔として関係大臣と協力して、平時・有事一貫してしっかりと対応していきたいと思います。私自身、コロナ担当副大臣を経験しておりますので、本当に皆様にもいろいろお力を借り、ご協力していただきながら何とか乗り切った、本当に国難と言っていい大きな事態でありました。そういう経験も活かして、しっかり感染症危機管理を少しでも質のいいものにしていきたいと思っております。
 具体的には、本年7月に改定された新型インフルエンザ等対策政府行動計画を踏まえた取組状況の確実なフォローアップを行います。そして、より実効性のある訓練の実施でありますとか、国民に向けた情報発信の強化など、平時からの備えの充実に努め、次なる感染症危機への対応に万全を期してまいりたいと思います。
 全世代型社会保障の構築については、全ての世代で能力に応じて負担し、支え合い、必要な社会保障サービスが必要な方に適切に提供されるよう、これも関係大臣と協力をしながら、データに基づく医療行政の推進、EBPMと言ってもいいかもしれません。それと予防と自己管理を主眼とした健康維持のための医療制度の構築。フレイル対策といったようなものが当たってくると思います。また、多様な人生の選択肢が実現できる柔軟な制度設計や、格差の縮小のためのセーフティーネットの構築なども含め、昨年末に閣議決定した「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋」、いわゆる「改革工程」に基づく取組を着実に推進してまいります。
 それから、CPTPP協定につきましては、本協定は自由貿易、開かれた競争的市場、ルールに基づく貿易システム及び経済統合を更に促進していく上で大きな意義を有するものと考えております。
 本年の12月15日までに加入議定書が発効する英国に続き、複数のエコノミーから加入要請が提出されております。今、把握しているだけでも7個あると思いますが、関係国と連携しながらハイレベルを維持しつつ、締約国の拡大に取り組んでまいりたいと思います。
 また、高いスタンダードの経済連携協定である本協定を更に先進的なものとするため、協定の一般見直し、これも主導していきたいというのが我々の立場でございます。これらの取組とあわせて、TPP等大綱を通じて総合的な施策を推進することによりまして、我が国経済成長への一層の貢献を目指してまいります。
 石破総理からは、近年、激甚化・頻発化する風水害や切迫する大規模地震など、自然災害に対処するため防災庁の設置に向けた検討に着手するようご指示を賜っております。防災担当の坂井大臣とも連携し、まずは内閣府防災の司令塔機能の強化、それから、組織・人員・予算などの大幅拡充を進めるとともに、令和8年度中には防災庁を設置するべく検討を進めてまいりたいと思っております。
 その他にも様々な重要な担務を担うこととなり、本当に身の引き締まる思いでありますし、大変なやりがいも感じております。石破内閣の一員として丁寧に、そして一生懸命取り組んでまいる所存でありますし、総理がおっしゃっているように「政治家の仕事というのは勇気と真心を持って真実を語ることだ」という渡辺美智雄先生の教え、これをしっかり胸に刻み、国民の皆様から信頼いただける「納得と共感」の政治を実現していきたいと考えてございます。

2.質疑応答

(問)最初に2点伺います。冒頭とも一部重複いたしますが、大臣の日本経済の現状と、それから今後の課題はどういったことがあるかということを教えてください。
 2点目ですが、日銀の金融政策について、石破総理は総裁選中、これまでの日銀の利上げ方針をおおむね支持するような姿勢であったかと認識しております。一方、昨日の首相官邸での赤澤大臣の囲み取材で、日銀の利上げは慎重であってほしいといったご趣旨の発言がありました。このことについて改めて昨日の発言のご意図を教えてください。
(答)まず、日本経済の現状については、なかなかいい状況にはなってきているということだと思います。いろいろな経済指標を見ても、GDP600兆円を達成したり、あるいは設備投資も100兆円を超えてくるとか、いろいろないいことはある。
 ただ、満点かといえば、それはご案内のとおりそうではないのでありまして、いろいろな点で私も今さっと思うのは、よく言われるのは内部留保がちょっと多すぎませんかとか。その分、賃上げとか設備投資とか、持っている現預金を本当に有効に使えてますかという思いがあって、我々は投資大国ということを打ち出しています。企業も個人も現預金を持ちすぎじゃないのという感覚があって、それをもっと有効に使ったらもっともっとGDPも伸びるし、もっともっと税収も上がるし、国民が豊かになるのではないかという思いが強いので、そういう方向でやっていくにはどうしたらいいかということを考えていかなければいけないということだろうと思っております。
 そのような中で、総理もおっしゃっています。働いている人たちがみんな安心で安全でということを感じながら、やりがいを持って仕事をしてもらえるような、そういう国づくりをしていかなければいけません。私が今一番思っていることは、ざっと今申し上げたようなことであります。
 それから、金利引き上げについては、いろいろな条件が当然あるわけです。その時に、皆様のお仕事としては短く簡潔に記事を発信するという意味で一部切り取ることは当然あって然るべきで、そこに何か文句を言うものではありませんけれども、石破総理が金利引き上げに前向きだということを言われるのは、私からすると、全体の絵として必ずしも正しくないかなと。まず私どもが申し上げなければいけないのは、世界的に見ても、マイナス金利は解除しましたけれども、0.25%という金利が金融政策として、本当にここにいる皆さんが正常と思っておられるかということです。それが正常だという経済理論は多分どこにもないと思いますし、どうもまだ正常ではないですね。非伝統的な金融政策の手法は使うのはやめたけれども、まだ正常とは言い得ない状態なので、条件が許せば正常化をしていきたい。これは何かおかしなことではないと思っています。
 ただ一方で、最優先の課題を我々は持っています。デフレ脱却を確実なものにすると。まだ脱却宣言はできていません。デフレ脱却を完全なものにする。デフレの完全脱却を宣言すると。これは持続的・安定的に、端的に言ってしまえば「デフレに戻らない」と。デフレ脱却の4指標は、今日取材の皆さんはよくご案内と思いますが、あれがたまたま全部プラスになったから、それではデフレ脱却宣言だとはならないということです。
 いろんな意味で、「ゼロノルム」と聞かれたことがあると思いますけれども、物価も賃金も上がらないということを国民がものすごく長い間思い込んでいる。30年思い込んでいるわけです。それを払しょくしないと。欧米だと物価が上がるともっと上がるだろうから今のうちに買っておこうといって消費がぼんと伸びますけれども、我が国ではゼロノルムがあるため反対のことが起きます。物価が上がっても、間もなく下がるだろうからしばらく買うのは控えようと言って、物価が上がり始めた時に欧米と日本で起きることは正反対になる。それは国民の意識なのです。そういうものをきちっと変えていくにはやはり時間がかかって、しっかりとそのゼロノルムはおかしいのだよと。物価も賃金もちゃんと上がっていく、その中で、しかも物価以上に賃金が上がっていくと。そういうことに確信を持ってもらえないと本格的にデフレから抜けるということはなかなかできたと思えないので、私はそこはかなり慎重に考えるべきと思い、総理も同じ考えです。
 だからこそ、私が「金利引き上げについて日銀は慎重に判断してほしいよ」ということを申し上げたのは、その辺を全部含めて申し上げているわけで、総理も繰り返しおっしゃっているように、デフレからの完全脱却と、これが最優先の課題ですので、今から後戻りしている暇はありませんので、それに合った形で連携を取って、政府と日銀がやっていく。その中で期待されることはあるだろうという考えであります。
 冒頭、総論で述べた正常化していくことは必要だよね、最終的には、というのにはちゃんと条件が付いていて、そこだけ切り取られちゃうと総理の本意ではないということは強調しておきたいと思います。
(問)今、デフレ脱却のことについていろいろご認識等をご説明いただき、おっしゃるとおり4指標が一瞬プラスになったからというのもすごいよく分かりまして、他にも実質賃金とか、いろいろな指標があるわけですけれども、今までにデフレ脱却宣言ができないということは、デフレに後戻りしないという確信が持てないからだというふうに説明を受けてきたのですけれども、ちょっと抽象的すぎる部分がありまして、大臣がお考えになる何か指標でも結構ですし、何かデフレ脱却宣言できるという、もしくは宣言するかどうかは別として、デフレ脱却したのだよと言えるようなこういった指標とか、何か姿とか、その辺、何かご認識があればお願いします。
(答)おっしゃった4指標は大事です。私は特に政務でない時も常に4指標は眺めながらやっています。ただ、その上で要は、うまく脱却していくに当たって、日銀総裁などもおっしゃると思いますが、まず第1の力が、働いているのです。コストプッシュ型のインフレが起きる。決していいインフレとは思えないと。GDPデフレーターなどむしろ下がってしまうみたいな世界になっていくということです。それを乗り越えて、賃上げを伴うような、本当にいい形の第2の力が働き始めて、物価も上がっていく、賃金も上がっていくということになっていかなければいけないのだけれども、本当に今そうなっているかというと、国民の皆様は物価上昇について大変つらい思いをされていて、あるいは企業活動もかなり制約されているので、まだまだかなと。
 そういう意味で、いわゆる4指標がありますね。CPI(消費者物価指数)とGDPデフレーターにGDPギャップとユニット・レーバー・コスト。それ以外にも今申し上げた第2の力という意味では賃金上昇、それから企業の価格転嫁の動向、物価上昇の広がり、予想物価上昇率といった様々な指標を丁寧に見ながら、よし、もう後戻りしないと、我が国は完全にデフレの漆黒から解放されたと思わない限り、なかなか脱却宣言はできませんし、安心して何か水平飛行に入ることはできないのかなと。それまではエンジンを吹かして、高圧経済とは言いませんけれども、しっかり経済を支える、温める、全力でやっていかなければいけないと思っています。
(問)経済財政諮問会議について伺います。石破首相は財政健全化を進める観点から発展的な見直しを掲げております。赤澤大臣は、昨日、「足りない部分を補って今後発展させていく」とおっしゃいました。今後どのように発展させていくのか、具体的に、新組織が必要なのか教えてください。
(答)経済財政諮問会議をどう発展させていくか。私自身、内閣府の副大臣として出席をし、逆に言えば事務的な説明者であったことがあります。そういう意味で、今のメンバーを思い浮かべますに、民間の方が4人おられて、どなたも大変立派な方です。柳川範之先生はリスキリングの党の会議をやった時に、上川陽子座長で、私が幹事長で、柳川先生が主にやっていただいたりしました。それ以外の方たちも、とてもいいメンバーだと私は思っています。
 特に、新浪剛史さんは私と同じで賃上げにも大変熱意がありますし、中空麻奈さんもよくマーケットを見ておられる。十倉雅和さんももちろんですけど。いいメンバーをいただいて、しっかり議論した上で。
 ただ、私の思いとして強いのは、最低賃金の部分はあります。これは3者の協議が非常に大事ですし、価格転嫁とか、生産性向上とか、最大限、経営者の皆様をお支えした上で。ただ、私の思いを一つ申し上げると、物価が上がり始める前にワーキングプアの水準は年収200万円だったんです。これって2000時間働くとすると時給1,000円ですよ。ようやく去年、1,000円に全国平均が達しましたといっている最低賃金ということは、物価上昇が始まる前の状態で平均以下の最低賃金の県ではフルタイムで最低賃金で働いても、端的に言うと暮らしていけない状態になっていることを認めざるを得ないのです。それでいいのですかということです。そのことは申し上げておきたくて、私はとても最低賃金については問題意識を強く持っています。
 私が理解するところ、岸田政権もしっかりそれを上げていく方向で最大限努力されて、我々、方向も正しいし、敬意を払いますが、おっしゃっていたのは2030年代半ばに1,500円ということで、今から10年たって1,500円でいいかと。参考になるのはカリフォルニアのファストフードの最低賃金が3,000円ですから、その半分を10年かけて目指す日本で本当にいいのかということはとても問題意識が強いので、関係者のご努力はすごく要ると思います。我々も全力でお支えしなければいけないと思います。ただ、経営者にも頑張っていただき、働いている方たちも本当に最低賃金をもらったら暮らしていけるよと言ってもらわないと、安心・安全を旨とする国民を守る石破政権の国づくりとして十分とは言えないのではないかなというのが私の思いでございます。
(問)すみません。聞き方が悪かったのですけれども、諮問会議を具体的にどう変えていくのかということを教えていただきたいと思います。
(答)これは、まだ私自身が決して全部を見渡せているわけではないので、現時点でなかなか申し上げられることはありません。ただ、大変いい仕組みとして機能しているなと私自身は思っていまして、関係閣僚と本当に高い見識を持つ有識者が集まって話をし、国の方向を出していくというのは大変大事な仕組みだと思っています。経済財政諮問会議を衣替えしなければいけないと思ってここに立っているわけでは全くありません。そういうものも含めていろんな会議がありますので、全体としてその会議がベストの成果を挙げていくにはどのような形がいいか考えるのは責任だと思うので、不断に見直しをしながら考えていきたいと思います。
 経済財政諮問会議は大変重要な会議で、現在参加されている方たちも本当に大きな役割を果たされているし、今後とも経済財政運営の司令塔というか、なくてはならないものだと私は認識しています。
(問)デフレ脱却を最優先とする中で、利上げには慎重であるべきというご認識だと思いますが、日銀との関係とか、アコードの存在をどう考えるか。もう一点伺います。財政規律についてはどのようにあるべきとお考えでしょうか。PB(プライマリーバランス)の黒字化を既に掲げていますが、この点についてもご見解をお聞かせください。
(答)日銀との関係は、これは申し上げるまでもなく、金融政策の具体的な手法については、日銀にお任せをしているということで信頼関係をつくっております。定期的にということなので、まだちょっと先なのでしょうけれども、私の希望としてはできるだけ早く総理と日銀総裁に会っていただけるような、定期会合をやっておられるようなので、それで意思疎通を図っていただきたいという思いがありますし、よく連携をしていくと。
 ただ、金融政策の具体的な手法はもちろんお任せですけれども、基本的なハートというか、あれの部分でデフレ脱却最優先は共有をいただき、物価の目標2%を持続的・安定的に実現するということも、私どもは是非やっていただきたいという思いでいますので、そういう意味で足並みはそろっておりますし、力を合わせてデフレ脱却をしっかりやっていきたいと思っているのが一つです。
 あと、アコードについてお尋ねがありました。これは非常に重要なものだと私は思っておりまして、今後ともこれに基づきしっかりやっていく必要があると思っております。アコードは共同声明という言い方をしていますけれども、だいぶ古いのです。2013年1月に作成したものですが、政策や方向性を共有してやっていこうということで、これに基づいて必要な政策を遂行してきました。そのもとで、我が国の経済・物価は着実に改善してきていると認識をしていまして、私自身は問題ないと。アコード、共同声明は非常に重要な役割を果たしていると。今後ともいい連携関係をやっていきたいと思っています。
 それから、プライマリーバランスについてですけれども、経済あっての財政と言いますけど、当然、財政があるわけですので、そこはしっかり財政規律も考えていかなければいけない。大事なのは両立を図るということだと思います。プライマリーバランスについて言うと、本年7月の中長期試算で2025年度のプライマリーバランスは黒字化する姿が示されましたが、今後、経済対策ということを言っていますので、それを打った後でどんな形になってくるかということも含めて、しっかり経済再生と財政健全化の両立を図っていきたいというのが現時点で申し上げられることであります。
 総理から、経済対策の取りまとめについての指示を受けて、関係省庁と連携しながら検討をきちっと進めたいと。大事な国民の皆様のために、安心・安全を提供できる経済対策をつくることも大事ですけれども、裏にちゃんと財政規律は付いているので、経済あっての財政で、経済経済経済と言っているわけではないので、そこはそういうことだとご理解いただければと思います。
(問)政権の経済政策について伺います。石破総理は岸田政権からの政策を継承し、赤澤大臣も今回、新しい資本主義を担当されるかと思います。先ほどの話でも、政策を加速させるとのことでしたが、前の政権の看板政策をそのまま継続すると独自色が見えにくく、石破政権は成長戦略が見えにくいというエコノミストからの指摘もあります。防災や地方創生の分野などはいろいろ皆さん印象には残るのですけれども、今後、大臣としてはどのように経済政策の分野で独自色を出していく考えでしょうか。
(答)独自色が必ずしも必要なのでしょうか。正しいことをやっておられたらそれを加速するだけで、端的に言えば、国民が経済が良くなればそれでいいので。私も役人の経験がありますけれども、役人にもいろんなタイプがあって、先輩方がやったことをきちっと踏まえてやる人もいれば、必ず前任のやったことを否定しないと気が済まない役人もいたりするわけです。政治の世界で同じかどうかはともかく、大事なのは、前の政権がやったことが本当に国家・国民のためになっているか。
 私が冒頭に申し上げたとおり、人への投資を前面に出されて、それでしっかりやっていきましょう、今までちょっと足りていないのではないですかと。それは本当に私はそのとおりだと思うのです。
 それから、資産運用立国とか。我々は投資大国と加えましたけれども、そういう考え方も合っていると思います。なぜか国民も企業も現預金を手元にすごく置きすぎる傾向があるように見えて、そういうことを正そうという岸田政権の考え方はものすごく私は正しいと思うので。正しいことをやっておられる人の後釜に座って独自色をどうしても出そうとして前よりためにならないことをやるというのは本末転倒以外の何物でもないので、私どもは「イシバノミクス」ということで考えておりますけれども、そこはやはり岸田政権の良い部分を更に発展させて、加速させるということで堂々とそれで仕事をしていると。それがやるべきことであるということで、私は何もおかしなことはないのではないかと思っております。
 ただ、そのような中でも、独自色という意味で言えば「地方創生2.0」も大いに経済に関わります。これは、これから所信表明もしていただきますが、総理がかなり力を入れて取り組まれます。地方創生について言えば、なんで2.0なのだと言われた時に、かける予算の枠も増やしますよと、そういうことも予告編で出されているので、所信表明でどんなことを言われるかというのが今まさに詰まってきているところですが、それは地方にどんとお金を今までよりも多く付けて、地方独自の取組を今まで以上に力を入れて応援することはいろんな価値が生まれてくると思います。
 更に申し上げれば、地方創生1.0と2.0の違いは、総理がそれを認めているわけではないですが、私なりに思うのは、地方に差し上げる額をどんと増やしますと。地方創生推進交付金。2番目、3番目は私が独自に言っていることなのですけれども、2番目は、新しい技術を駆使するということ。3番目は文化にも力を入れると。2番目について言うと、Web3.0とかブロックチェーン技術は地方創生1.0の時はありませんでした。しかし、今それを使えば、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とか聞かれたことがあると思いますけれども、地方の持てる資源をものすごく効率良くキャッシュに変えていける。そういう取組ができると思います。
 今度また関心があれば改めてご説明しますが、地方創生2.0ではそういう新しい技術を使って、同じ地方の有効な資源を使って今までの何倍も、オーダーで言うと本当に10倍ぐらいの価値を生み出せる可能性が高いと思うので、そこをしっかりやっていくことはイシバノミクスの非常に特徴的な、思いのものすごいこもった地方創生2.0の中で、地方の経済を劇的に良くしていく、そういう取組があると思います。
 また、円安になったので、産業の空洞化が円高で起きていたのが国内回帰しますけれども、それも企業だけではなくて、何か文化とか、地方文化都市みたいなことを政策集の中で言いましたけれども、そういうものにも力を入れていきたいと思っているので、じわじわと、しっかり見ていていただければ、イシバノミクス結構やるではないかと、カラーがにじみ出てきたなという感じで受け止めていただける部分も多々あるのかなと思います。
 私の説明があまり「独自色はなくていいのだ」的なことを言い切ってしまうと総理に怒られるかもしれないのであれですけれども、説明の仕方で独自色があるのだと言えば、地方創生2.0にどういう力の入れ方をしていくかはかなりイシバノミクスの独自色になってくると思います。そういう意味では注目しておいていただければと思います。
(問)最初の方の質問と重なるのですけれども、アベノミクスについて、石破総理はどこでも「総括が必要」「どうだったのか」とおっしゃっていて、財務大臣になられた加藤勝信先生は、アベノミクスの真髄が体に染み込んでいるみたいな。割と言っていることが違うように表面的には見えるのですけれども、赤澤先生としてはどちらなのか。
 あと、昨今、与党支持率低迷の理由にはインフレ・物価高があるという見方があると思います。昨今の物価高とアベノミクスの相関関係があるかないか。そこも含めてよろしくお願いいたします。
(答)経済とは生き物なので、今おっしゃったように明確に二つに分けて何か議論をして、あなたは賛成ですか、反対ですかというのはなじまない世界だと私は思います。その上で、言うまでもなく、過去の政権がやってきたことのいい点は継承をし、もっと良くできるとか、まずないですけど、ここが悪いというようなところもちょっと直していくみたいなことは当然必要で、アベノミクスについて言えば、デフレでない状況をつくり、GDPを高め、雇用を拡大し、企業収益の増加につながっていますので、悪くばかり言う人もいますけれども、いい面があったことは間違いのないことだと思っています。そのような中で、どういうふうにものを改善していくかという部分があります。
 あと、物価高との関係について言えば、それはデフレの状況から脱しない日本であれば物価高にならないので、それからは絶対脱すべきだという意味では、デフレでない状況をつくった時点で、インフレのリスクは当然生じてきて、それと戦っているのは欧米の経済も含めてどこもそれなので、何か物価高が今起きていることはアベノミクスが悪いのだみたいな話は少し短絡的というか、違うのかなと私自身は思っております。
(問)経済対策についてお伺いいたします。昨日の会見で石破総理も経済対策の検討を指示する考えを示しておりまして、その中で低所得者世帯への給付金などは触れられておりましたが、今後、経済対策でどのようなことを具体的にされたいのか、今の時点で検討されていることがあればお願いします。
 更に、岸田総理が既に秋の経済対策でやるとおっしゃっておられた政策もあったり、足元で続いている電気・ガス代への補助金などありますけれども、この辺も継続されるのかどうか、今の時点での考えをお願いします。
(答)現時点の考えは、まだ総理から指示が出ていないので、これはなかなか具体的なことが申し上げづらい段階であります。ただ、低所得者の皆様へということははっきりおっしゃっているので、これはきちっと含まれていくことになると思います。一つ一般論として言えるのは、イシバノミクスの経済政策の骨格としてお示ししたものの中で、物価高対策も柱です。要はデフレ脱却が確実なものになるまで、更に言えば物価上昇に負けない賃上げが持続的・構造的に実現する状態になるまでは、国民の皆様の生活、あるいは企業の経済活動を支え切るという決意で我々はこの政権を担わしていただいています。そういう意味で、物価高対策はきちっとやっていくということです。
 私の理解は、ガソリンは年末まで、ガス・電気は酷暑乗り切り緊急支援ということで、8月から10月使用分の補助を決定し、実施していると思いますけれども、冬になれば冬で寒いので、何かしら電気代がかさむような事態も当然出てくると思いますし、ガス代がかさむような事態もある。どれも地域差があると思いますけれども。ただ、国民の皆様が物価高で苦労されるような状態は我々の本意ではないので、そこは最大限できることをやっていくというのが、現時点でお答えできる一般論だと思います。
(問)今までお答えいただいた点なのですが、確認で2点伺えればと思います。1点は財政規律との関係で、経済対策のことにも触れられていましたが、2025年度、プライマリーバランス黒字化という目標は、大規模な補正予算があると黒字化の見通しがだいぶ揺らいでくると思うのですが、経済対策を打ち出すと言っている中で、2025年度黒字化の目標とその方向の基調を維持していくという目標自体は変えるという考えは今のところはないのかというのを確認させていただければと思います。
 二つ目はちょっと大きな話になってしまうかもしれません。昨日から赤澤大臣は「新しい資本主義を引き継いで加速させていく」とおっしゃっていますが、岸田政権が打ち出した新しい資本主義というのが、そもそも何を目指しているのかというのが若干国民に伝わりづらいということも指摘されていると思います。
 赤澤大臣がおっしゃる新しい資本主義というのは何を目指していて、方向性というのはどの辺りを評価していて、加速しなければいけないというのはどこが遅れていて、手を入れなければいけないと考えているのか。これをもう少し具体的に伺えればと思います。
(答)まず、財政規律の話については、今の時点で見直す考えを表明する気はありません。ただ、補正予算を組んでも規模の問題もあれば、執行のタイミングの問題もあります。ということで、来年度予算編成の内容とか経済の状況を全部見ながら、いろんなものが関係してくるので、そのような中で、国民生活、あるいは経済活動を守り抜くことは絶対に外さずに予算編成をしながら、経済あっての財政のほうもしっかり見ていきたいということが現時点のお答えであります。
 それから、新しい資本主義について加速すべき部分は、私自身の念頭にあるのは、一つは賃金の問題です。最低賃金にも問題意識が強いのです。企業の経営者も最大限頑張っておられて、我々も最大限応援しますけれども、物価上昇の前から平均以下の方たちは、フルタイムで働いているのに暮らしていけない最低賃金の水準とは本当にそれでいいのかという思いがあるので、そこについては加速させていただきたい。
 あとは、いろいろな制度全部を通じて、企業が、例えば法人税なども税率を下げて努力をしてきた狙いは賃上げ、設備投資というものだったのが、ふたを開けたら外国の株をいっぱい買って内部留保がたまっているみたいな状況はいいのかという話があります。
 繰り返しになりますけれども、投資大国と私どもが言った時に二つ意味があって、それは家計も企業なのです。要は、個人がものすごく現預金を持って、欧米と比べると全くリスクのある資産に投じないではないかと。それは将来インフレが普通の状態、経済の状況が正常に戻った時にはインフレに負けるというような状態で、物価が正常というものがあるか分かりませんけれども、物価が割と標準的な感じで上がっていくものに、国民が資産形成を負けずにやっていけるかという話もあります。
 企業もとにかく内部留保をため込んで、期待するような設備投資をなかなかやってくださらないというところがあるので、そういう意味では、投資大国を目指すという意味は、家計も企業も現預金を持ちすぎではないのと。それは何とかならないのというようなところについては当然、問題意識は岸田総理も持っておられたと思います。まさに、一丁目一番地は人への投資というのは、企業が現預金を持ちすぎて、もっと賃上げの余地があるのではないかというような話です。あるいは人への投資を含む投資をもっとしてくださいと。その辺のことは方向も正しいし、言っておられることはあれなのだけれども、だいぶ加速する必要があるかなという部分も残されているということだと思います。
(問)つまり、新しい資本主義というのは、人への投資を進める資本主義という理解でよろしいですか。
(答)私はそこが一番大事なところだと思っています。一丁目一番地が人への投資とおっしゃっていたので、そこに対して私は政調全体会議では、そうおっしゃりながら最低賃金の取組はこれでいいのかとか、そういう議論は政府にいない時は割と思い切りやらせていただいていたものなので、そういう思いが残ったまま今ここに立っていることになります。それ以外にも、岸田政権の関係の方が丁寧に説明すればもっとあると思いますけれども、私の思いとして一番あるのはそこで、本当にそれは大事なことではないかなと思っています。
(問)冒頭の質問などにも係る部分があるかと思うのですけれども、日銀の今後の利上げについて、例えば政府としてデフレ脱却宣言をするまでは利上げの判断は慎重にしてほしいなど、節目のようなものは念頭にございますでしょうか。
(答)これは、総合的に判断をしていくということなので、なかなか「こういうことがあれば」と言いづらいのです。皆様からよく受ける質問で「どういう指標がどうなったらデフレ脱却」、それが明確に示さないと「予見可能性がないではないですか」と言われて、それはおっしゃることはごもっともなのですけれども。ただ、やはり経済とは生き物なので、その指標がこうなったらこうするということで機械的に判断していいものではないと思っているのです。
 そういう意味で、利上げは慎重にというのは、私どもとして、現時点においてデフレ脱却が完全にできたと思っておらず、まだ後戻りする可能性が否定できないと。大変、今、大事な時期であると思っているので、定性的な話になってしまいますけれども、私どもがそう思っている間は日銀にも是非利上げは慎重にやっていくという思いを共有していただきたいと。その考え方のもとで緊密に連携をしていく。デフレ脱却最優先ということについては是非共有していただきたいなということです。
 その上で、先ほども申し上げましたけれども、定期的に総理と日銀総裁が、昼食機会などを捉えて意見交換ということはあるので、そういうことをしっかりやりながら、お互いに状況に応じて機動的な対策を取りながら間違いのないデフレ完全脱却に向けた着実な歩みを進められる経済政策・財政政策を取っていきたいというふうに思っております。
(問)防災庁の設置についてお伺いします。防災・減災についてはまさに大臣も思い入れの強い分野かと思います。冒頭もおっしゃっていらっしゃいましたけれども、人員・予算・体制を拡充されるということなのですけれども、具体的なイメージなど、大臣になられたばかりですけれども、もしあれば教えてください。また、今後、設置に向けて検討をどのように進めていかれるか。こちらについても教えてください。
 また、石破首相は総裁選で防災省の創設を掲げていらっしゃいましたけれども、防災省への格上げについて大臣はどのようにお考えでしょうか。よろしくお願いいたします。
(答)まず、おっしゃるとおりで私のライフワークです。防災とか、女性活躍とか、いろんなことをライフワークとしてやってきましたけれども、防災はある意味で一番思い入れが強くて。話が長くなって恐縮ですけれども、私は役人になって2年目に御巣鷹山の事故を経験しています。東京航空局から500人以上乗ったジャンボの機影が今レーダーから消えましたと。これは落ちたということなのですけれども。その第1報が入った時にその場にいた人間なので、今でもその時の感覚は、氷の粒が無数に血管の中をざあっと流れるような感覚が蘇ります。その10年後は阪神・淡路大震災で、その10年後に議員になっています。
 本当に多くの人が死ぬ。多くなくてももちろんなのですけれども、そういうことは絶対に防ぎたいという思いがものすごく強いのです。結果、危機管理型の政治家になって、成長戦略も大事だけれども、何か大きく破綻するようなことがないかということばかりを中心に考える政治家なので、そういう人もいていいなと自分では思っています。
 防災はおっしゃるようにライフワークです。頭の中で本当に占めていることは、例えば南海トラフの地震が起きた時、想定死者数は32万3000人です。ご案内の東日本大震災、2011年ですが、死亡・行方不明者合わせて1万6000人です。ということは、その20倍が亡くなる。
 我々、東日本大震災で正直、心が折れかけましたよね。あんな目に我が国が遭うのだと。その20倍のものがこれから来るのです。その時に少しでも国民の心が折れないように、犠牲者を減らすように、万人単位でその犠牲者を減らしたいというのが私の、ある意味、政治家人生の半分以上を懸けている、それに懸けて20年やってきているつもりなので、そこを何とかしたいという思いが強いです。
 防災庁について言えば、具体的な進め方という意味で言うと、専任の大臣がいることはすごく大事だと思っています。これは役所は決して認めないですけれども、今の状態で事態対処、大きな災害が起きた時、私はパンクしているとまでは言わないけれども、今の人員ではパンクしかけていると思います。予算が73億円しかなくて、人数的には地方からいただいている研修員全部集めて150人とかそういう世界です。対応はとてもできません。
 事態対処の面でもパンクしかけていますし、そして更に大事な事前防災。これをやる人員がいるのだけれども、事態対処に全部巻き込まれると。大きな災害が起きると事前防災をやっている人たちはそちらに全部、例えば取られかねないと。何が起きるかというと、事態対処はパンクだし、事前防災はしばしば中断という状態で臨んでいるわけです。
 そのようなことで今から来る首都直下型地震、南海トラフの地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、あるいは富士山の噴火、備えが十分にできるかというと私はできないと思っています。そういうことなので、専任の大臣を置いて、そして予算や定員を抜本的に拡充して、さっき申し上げた32万3000人をできるものならば万人単位で減らすと。できればゼロにしたいのです。そういうことを全力でやっていくのだという思いに揺るぎはないので、やっていきたいと思います。
 検討の進め方は私1人がわあわあ吠えていても事は成らないので、それはよく役所の諸君と相談をしながら、多分、チームをつくることになると思います。具体的に何か名前のかちっとした組織とか、そういうものかどうかはともかく。それは少し難しいと思いますけれども。きちっとそれについて考えてくれるチーム。当然、内閣府防災からも代表者に来てもらうことになると思います。具体的にはそういったチームをつくって、そのチームに防災庁への移行の仕方を考えてもらう。ポイントは専任の大臣を置くことと、予算・定員を今よりも格段に補強するということになると思います。それが1点目。
 あと、防災省についてはなかなか難しいところがあって、いつもこれをやるといろろな議論に巻き込まれるのですけれども、「いや、赤澤さん、あなたの防災省は間違いだ。今ある国土交通省やそういう所に対応させたほうが絶対いいに決まっている」と言う人がいるわけです。一理はあって、災害の時も、例えばこの池、今から雨であふれるだろうかとか、このダムは決壊するだろうかって、普段からそこの土を触っている地方整備局の人間のほうが判断できるとかあるわけです。地質も全部知り尽くしていると。いきなり内閣府防災を使って国土交通省と同じ規模のものをつくるわけにもいきません。だから、現場を普段から触っている人間のほうがいいのだという意見は一理あります。だけど、それだと事態対処しかできないのです。
 事前防災の取組を徹底的にやるには、防災技術の研究開発もあれば、ボランティアをきちっと育てて、データベースを作って、これから来る32万3000人が亡くなる南海トラフも1700のうち700以上の市町村が被災するような時にボランティアの数は十分か、避難所がちゃんと設営できるかも含め非常に大きな問題です。あるいは、国民全体に防災教育を就学前からやるとか。
 2021年に私が五つの提言を出していますけれども、内閣府防災はそれをベースに今もう動いてくれていて、それをきちっとやればいいのだけれども、結局、進まないのです。ということがあるので、とにかく事態対処の面では、現に事態対処をやっている役所がよくやってくれている所はあるが、それだけではどうしても足りないので、事前防災のところの機能を強化した組織は絶対に要る。専任の大臣も要ると。
 ただ、防災省と称して各省から切り出してこようとすると、今ある役所に属している組織を移すとか移さないとか、なかなか難しい議論になってくるので、その辺は防災庁をつくり、事前防災を徹底的に進める、予算も定員もすごく増やした状態でそれをやってみるという中で、防災省にどうやって移行していくのかというのは見えてくるのではないかと私は思ってやっています。
(問)防災庁ないし防災省と地方自治体との連携についてお考えをお伺いしたいのですけれども、石破総理が総裁選期間中も全国1718市町村どこでも災害対策に差が出てはいけないというような考えを繰り返しおっしゃってきました。赤澤大臣がおっしゃる防災庁とか、あるいは将来的に格上げする防災省というのが永田町ないし霞が関に司令塔として存在することになると思うのですけれども、実際、地方の自治体に指示を出すとか、連絡を取るとなった時に、どういうような形になるのかというお考えがあればお伺いしたく。例えばプロパーの職員が常駐のような形で出向するとか、そういうようなことも現時点でお考えなのか。あるいは何か別の考えがあればお願いします。
(答)大変大事な点だと思います。私が総理と話をしていてすごく感じるのは、ああ、その思いが強いのだなというのは何かというと、住んでいる自治体によって救われる命と救われない命があっては絶対にならんということです。これは、自治体によっては規模も小さかったり、財政力がなかったり、あるいは、これは茶化し気味に言うので、どこの自治体がどうとは言わないのですけれども、防災担当は定年間近の総務課長が充て職でやっていますみたいな。防災対応がいざという時に全く機能しないような状態にあるわけです。
 災害は大体皆そうなのですけれども、正常性バイアスがあって、起きたら起きた時のことだよね、俺は大丈夫だからって、皆が思うようにできているのです。本当に災害が起きた時のことを真剣に考えて対応できる適性のある人はあまり多くなくて、だけど、本当に対応していかなければいけないのです。
 足りない自治体について言うと、例えばそこの自治体で災害が起きたら全く備蓄とかができていないと。それこそ段ボールのベッドすら出てこないと。食料もない、水もないということがあったら大ごとなので、石破総理の強い思いは、防災庁をつくって、もっとマンパワーを増やせたら、全ての1718の自治体、都道府県はそういうことはないと思いますけれども、調べて備蓄とかが足りているか、なければ国からプッシュ型で送れというようなこともよく議論をしていると出てくるので。とにかく自治体ごとに差があって、食料が届かなければ、高齢者の方などは体力が弱っていれば脱水症状を起こしたり、衰弱したりして亡くなるので。熊本地震で2016年に初めて災害関連死が8割という災害が起きましたけれども、人口が高齢化しているとああいうことになってくるので、その備蓄も本当に重要です。そういうことをパワーアップした防災庁で少なくともやっていくことが必要なので、総理の思いはそういうところにあります。
 どう連絡していくかというのは、実は2021年に私が提言をしたデジタル防災、防災DXで手を打ってまして、それは何をやったかというと、今までは総合防災情報システムは専用端末が1000ぐらいあって、災害が起きるとそれを持って貸し出すみたいなことをやっていました。全くそれは機動的ではないので、私が提案をしたのは、2021年の提言で言ったことは実現しているのですけれども、令和4年の補正予算で20億円のお金が付いて、総合防災情報システムを「SOBO-WEB」というWebシステムに切り替えて、新総合防災情報システム、都道府県を通じて全ての自治体、国の全ての省庁、そして108ある指定公共機関、NHKなども含みますし、電気・ガスとか、公共交通機関とか、ありとあらゆる災害の時に連絡を取り合ったらいい。それが全部ネットで結ばれるという仕組みを作りました。それが令和6年から動き始めています。
 すごくいいのは、災害とは72時間の最初が勝負で、最初にタイムゼロで何が起きているか分かれば72時間を有効に使えるけれども、今までは、例えば文部科学省とか厚生労働省もやる気になってくれていますけれども、災害情報システムを作れと言っても「検討します」みたいなとぼけたことを言っていたので、それは断固としてやってくれと。それができないと何が起きるかというと、どこそこの学校、病院が崩れていて、下にこどもたち、あるいは高齢者が生き埋めになっていますなどということが72時間たって分かったら全く意味がなく、負けですので、そういうことをやっていると。だから、そこはそのシステムを作ってかなりパワーアップしたつもりです。
 あとは、緊急物資の輸送・調達の調整システムも作っています。そういう意味では、だいぶデジタルを活用して、地方との連絡が瞬時にできるようになり、どこかの端末で1個打てば、今言ったものが全員一気に共有します。官邸の下の危機管理センターもそうですけれども、一気に国の全省庁が、全部の市町村が、そして指定公共機関全部が、情報共有をするようになるので、それを2021年に提言して、何とかやり遂げてきたつもりでして、だいぶ良くなっている。
 あともう一つあるのは、人事交流とかをやったほうがよくて、出向した先で災害対応を経験している職員が戻ってくると自治体のすごい財産になります。これは劇的に違うので、かなり人事交流をやっていただいているし、例えば私がやったのは、内閣府防災の副大臣だった時に「防災女子の会」という女性のネットワークをつくってもらって。それで良かったのは、彼女たちもやる気になって、自治体の女性たちと防災女子の会の、国と地方の職員のネットワークとかもつくってもらったり。そういうことも全部通じて普段から連絡を取り合っている。普段から連絡を取り合うことが大事なので。普段から機能しているネットワークがあって、いざ使おうとしてみたら、本当笑い話で実際にあるのですけれども、国の中央省庁で訓練してばんとやってみたら「ソフトウエアをバージョンアップしてください」とかいうのがついて、全く取りかかれなかったみたいな訓練も。そういうことになると困るので、しっかりやっていく必要があると思っています。
 そのようなことでお答えになっていましたか。この辺の話は話し始めると10時間でも20時間でもしゃべるので、ほぼ簡潔にやりたいと思います。
(問)石破首相が、地震予知体制の強化も打ち上げていらっしゃると思います。ですが、予知に関しては、政府は1970年代ぐらいから膨大な予算をかけて研究を進めてきたけれども実現ができず、2017年には予知は困難と判断したと思います。予知や予想ができるという思い込みが逆に防災意識に油断を生んでいるという指摘もございます。
 この予知体制の強化というのはどういう意味合いでおっしゃっているのか。あるいはどのような方針を具体的に検討されているのか。分かる範囲で教えていただければと思います。
(答)私も石破総理もこの話になるとお互い思いがこもりすぎるとことがあって、よく議員に冷やかされるのは「石破茂は安全保障をおろそかにすると国が滅びると思っている。」とか言われて、「赤澤は自然災害の備えをおろそかにすると国が滅びると思っている。」とか言われて、本当にこうなったらいいなという思いも交えてあれをしてしまうので、若干分かりづらい点があったかもしれませんが、おっしゃるとおりで、石破総理本人も地震の予知が難しいことは十分分かっていると思います。ただ、彼は本当に新しい技術に期待したり、未来に向けてものを考えているので、地震も予知できるものならしたいという思いは彼の中でものすごい強いということです。
 あとは線状降水帯。これはスパコンが入り、なおかつ水蒸気の量を正確に測れるような、そういうものを積んだ衛星が上がると劇的に良くなるのです。間もなく、半日前に線状降水帯の予想ができるような状態が、令和何年ぐらいだろう、衛星があともう一個上がるとできるみたいなことがあったり。これは劇的なのです。今まで線状降水帯について言えば、多分、数年前までは起きた後で起きたということしか言えなかったのが、今はかなり、一時ブロック単位だったものが、今は県単位ぐらいで予測できるようになっていて、それが市町村単位でできるようになってきているのです。だから、技術の進歩。防災とは本当に命がかかっているので、ハイスペックで最大・最高の技術を注ぎ込んでやってきているところがあります。
 あまり話がずれるとよくないですが、台風の予測がきちっとできるようになるまで、気象衛星ひまわりが上がり、スパコンが出てくるまでは日本は大きい台風が来ると5000人とか人が死ぬ国だったのです。伊勢湾台風とか、知っておられると思いますけれども。それが台風が来るだけでは人は死なない国になっているわけです。それと同じような何か技術の進歩でできないかということは常に総理と私は話をする、夢を見るようなところがあるので。
 地震の予知について何か肯定的にできるのだという話をしたのだとすれば若干誤解を招くところはあると思います。そこが難しいのは分かっていると思いますが、技術が進歩したことで劇的に人命を救うという意味で進む部分が出てくるので、できる努力は最大限やると。予知ができるようになるとは言わないのだけれども、やるということは大事だし、思いとしてはあるという言葉だと思います。
 多分、念頭にあったのは、線状降水帯で劇的に良くなってきているので、ああいう進歩が地震の予知でも出てこないかという思いがあふれているのではないかと理解はしますけれども。そのようなところです。本人に聞いてみないと、何を考えて地震の予知と言ったのか少し分からないところはあります。
(問)防災庁についてなのですが、設置時期の目標について、冒頭で2026年度中という・・・。
(答)令和8年度中に設置すべく検討を進めるということです。
(問)令和8年度中ですね。
(答)はい。
(問)こちらの時期というのは、石破首相とも意識合わせはできているものなのでしょうか。
(答)はい。政策集にも書いてありますし、恐らく所信でも言うのではないかと思います。最速でやると。まずできることは予算と定員を増やすことは割と法令がなくてできますので。ただ、防災庁をつくろうとすると、これは法律をいじらないといけないので、法律を提出して、通常国会で通してという世界になりますから、それはいきなり今言って、令和7年度中は無理なので、令和8年度中。そういう意味で、彼と私の思いが一致しているのは、総裁の任期は3年ですので、一応、在任中にできるぞという思いで言っているものと理解をいたします。
(問)今後の流れのイメージなのですけれども、人員・予算の拡充というのは、まず内閣府防災の人員・予算を拡充した上で、2026年度中を目指して庁に格上げするというイメージですか。
(答)非常にざくっと言ってしまうと、おっしゃるとおりです。内閣府防災の人員・予算をまず増やします。人員は法律が要らなくて、実は政令をいじると増やせます。今、全体に定員規制はかかっているのですけれども、政令をいじれればいけるので、これは内閣の仕事として、国会の手をわずらわせることなくできるところはあります。予算についてもいろんな工夫をしながら増やしていくことはできるだろうと思います。
 その上で、イメージとしては、内閣府防災をころっと切り出して、そこに専任の大臣が配属されるイメージで捉えていただければいいかと思っています。スピード感が要るので、30年以内に7割、8割と言われても、明日起きてもおかしくない話なので、私自身は政治家としてそういう32万3000人、南海トラフ地震に間に合うまでに万全の事前防災を敷けなければ政治家として負けと自分でも思いますので、急ぐに越したことはないと。急いでという意味で言うと、防災省の議論はやっていると時間がすごくかかる可能性があるので、現時点できちっと決まった形が、私としてこれであれば国会の同士、あるいは代表者の皆さんに理解いただけるというものまでまだ出来上がっていませんので。ただ、防災庁ならば割と早く合意した上で法律を通してつくることができると思い、そこに専任の大臣を置くということに大変大きな意味があり、予算・定員を格段に増やす専任の大臣を置くことは大事だと思っています。
 今までは、行政改革と大臣が兼ねるとか。平時は行政改革をやっていて、災害が起きたらちゃんとやるからと言われても、それだと事前防災は事実上進まないです。むしろ、平時の時こそ事前防災を徹底的にやってもらわないといけないので、それに本当に専心する大臣を置くことも大いに意味があると思っています。

(以上)