新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年10月1日
(令和6年10月1日(火) 10:13~10:36 於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
先ほどの閣議で内閣総辞職が決まりました。昨年9月13日の就任以来384日間にわたりまして経済再生担当大臣、新しい資本主義担当大臣、スタートアップ担当大臣、感染症危機管理担当大臣、全世代型社会保障改革担当大臣、更に経済財政政策の内閣府特命担当大臣と、六つの大臣を拝命いたしまして、様々な重要課題に全力で取り組んでまいりました。退任に当たりまして、これまでの取組について少し振り返らせていただきたいと思います。まず、マクロ経済政策について申し上げますと、これは新しい資本主義の旗印のもとで長年続いたコストカット型経済、デフレからの脱却を図る、これをまず第一至上命題といたしました。そして、デフレから脱却するだけではなくて、少子高齢化・人口減少のこの国において、それでも成長していくという、少子高齢化・人口減少を克服するための新たな経済ステージをつくりたい、これを標ぼうしてあらゆる機会で追求してまいったわけであります。
その一丁目一番地として賃上げを持続的・安定的なものにするという構造的賃上げの実現。そのための大前提として価格転嫁をしっかりと進めていくことが重要であり、大企業だけではなくて中小企業や地域の経済にこれらの賃上げの流れが波及できるようにする。そして、それは結局、給料を払う側の企業が収益を向上させて、賃上げをできる体力を強めることが重要でございます。そのために省力化投資のカタログ型の補助金もつくりましたし、産業を引っ張るための先端半導体だとか、大規模な産業支援、更には中堅企業の地方における工場立地政策、こういった支援策を矢継ぎ早に出させていただきました。
こういう環境を整えた中で、今度は一人一人の働く皆さんが自分の能力や自分の希望に沿った形で仕事に就ける、報酬を得られるジョブ型の人事。そのジョブ型を活用するためには自身の能力を更にブラッシュアップするという意味でのリスキリングを推進しました。リスキリングも失業中の転職対策ではなくて、今、在職している皆さんでもそれを活用していただきながら、そして若い人たちも高齢者も、全世代型のリスキリングをしなければいけないというふうなところまで展開をしたわけでございます。
最後に、新しい技術を社会実装しなくてはならない。これまでの延長線上での経済では市場が小さくなります。そして、購買意欲が下がってしまう。そういう中で実需を増やしていくことが大事だということで、新しい技術の社会実装を徹底して進めようとしました。企業だけでなくて、私たちの暮らしの中に新しい技術を浸透させながら、そこで新たなサービスや製品を作っていかなければならない。
そして、今、私が申し上げたことは全て潜在成長率を改善するものです。先進他国に比べて日本がまだ追い付いていない潜在成長率を高めていくことが極めて重要だということ。これを根幹に置いて経済政策運営をやってまいりました。
こうした取組の中で、本当にありがたいことでございますけれども、賃上げは33年ぶりの高水準になりました。また、設備投資も106兆円、これも33年ぶりでございますが、過去最大を更新したということです。そして史上初めてGDPは600兆円を超えるということで、間違いなく日本経済は一つの転換点を越えて次に向かっていける。ですから、今やらなければいけないのは、これまでのところから脱却するのではなくて、その先に目掛けた新しいステージを実現させるための歩みを着実に進めていかなければいけないということを訴えたわけであります。
そして、賃金と物価の好循環が回り始めています。実質賃金がプラスになりました。デフレ脱却に向けた歩みは着実に進んでいるということを度々申し上げております。更に新しい政策をこれに加えるために、私のもとで「経済財政検討ユニット」、「日本の『元気創造』実現のための有識者会議」をつくりまして、その中から得られたアイデアや意見を経済財政諮問会議にぶつけて、また、その中で意見交換をする、このように議論を深める経済財政諮問会議にさせていただきました。そこから練り上げたのが今年の「骨太の方針2024」でございます。今までは経済財政の再生計画でございましたが、今般初めて骨太の方針を「経済・財政新生計画」として、全く違う新しい形に移行しようということを強くアピールさせていただいたつもりでございます。
政策を打ち出し、戦略を立てたとして、それを効果的に使うためには横串連携とともに、何のためにその政策を行うのかという目標を明らかにして、それに進捗がどこまで進んだかということを把握していかなければなりません。したがって、EBPMの手法を本格的に採り入れて、今やっておりますけれども、予算編成の前の各省の要望段階からEBPMを入れて、アドバイザリーボードとチェックをしながら、より実効性の高い政策を打ち出せるようにと、こういう様々な工夫をしながらやってまいりました。結果として今、昨年と、またその2年前と比べて全く違う経済が目の前に広がっているということでございまして、これをこの先どこまで伸ばしていけるか、私も見届けたいと思っております。
それから、新しい経済の刺激として、スタートアップが重要です。これも既に国内でも様々な取組がなされておりますけれども、これをより世界の中に出ていく、それから世界の流れを日本に取り込む、そのための象徴として「グローバル・スタートアップ・キャンパス構想」を打ち出しました。この構想を実現するための有識者会議を開催いたしまして、また私自身、カリフォルニア、サンフランシスコ、ボストン、そこでスタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校、ハーバード大学、MIT(マサチューセッツ工科大学)、そういった大学を回りながら、更にはイギリスに参りまして、インペリアルカレッジロンドン、ケンブリッジ大学、エジンバラ大学へ行ったり、更にはフランス、イタリア、スイス、フィンランド、シンガポール、ドバイ、アブダビと世界中を回りまして、スタートアップを日本と一緒にやろうと、こういう問い掛けをしてまいりました。
結果として、今、既に各大学や研究機関との先行研究をしようという合意がなされて、スタートアップの新しい流れができます。日本をハブとしてグローバルスタートアップネットワークをつくろうと。こういうことを今回、グローバル・スタートアップ・キャンパス構想の基本方針を打ち立てて、それを決定したところでございます。
それからもう一つ、私は感染症危機管理担当大臣という大事な役を頂戴しております。平時において様々な準備をし、分析をするとともに、いざ感染症有事となった時に実効性ある、そして効率的な対策をスピーディーに展開すると。このための準備をするのが私の仕事でございましたけれども、まず新たに内閣感染症危機管理統括庁が私の就任と同時にできているわけであります。これはCAICM(ケイクム)という略称にいたしまして、ロゴマークを作って、扇の要のように政府の司令塔になるべしという思いを込めて、こういったものを決定させていただきました。
それから、私は「訓練が極めて大事だ。訓練でできないことは本番でできない」を合言葉にしっかりと訓練をやっていこうということで、当初、本当に小規模な、まずは第1弾の訓練という計画だったのですけれども、一番最初から47都道府県、それから国立感染症研究所と地方の衛生研究所、更には保健所だとか民間企業も含めた全国的な感染症危機管理の訓練を第1回目から始めました。これは是非今後も引き続き、より精度を高めて実施されていることと思います。こうした枠組みを作らせていただきました。
また、感染症のいざという時の対応をする政府の計画は、新型インフルエンザ等対策政府行動計画というのがあるわけでございますが、約10年ぶりに初めて全面改定をさせていただきました。約10か月間の様々な協議をしたわけで、私もほぼ全ての会議に出まして、有識者と議論を重ねて今年の7月には閣議決定することができました。
また、次に全世代型社会保障改革の担当大臣でもあるわけでありますけれども、従来の社会保障は現役世代が負担のみ、そして給付を受けるのは高齢者、これが固定観念になっていたのではないかなという問題意識のもとで、社会保障は高齢者だけではなくて、将来世代を含む、若い方も含めた全ての世代が安心して活躍できる、若い世代にも恩恵があって、全ての世代が能力に応じて公平に支え合う仕組みが新しい社会保障の概念、本来あるべき社会保障の概念だということで、全世代型社会保障のこういった枠組みを新たに整理させていただきました。昨年の末には改革工程を取りまとめまして、働き方に中立的な社会保障制度の構築、また医療・介護制度の改革、こうした取組を示しました。
また、少子化の流れを反転させなければなりません。これは国家的課題でありますけれども、そのためにはまず我が国のこども・子育て政策をOECDのトップとなるスウェーデンに匹敵する水準に抜本的に強化する「こども未来戦略」の予算と計画を作り上げて、強力に位置付けを行わせていただきました。
更に、少子高齢化・人口減少と日本の経済成長は密接・不可分であると。経済施策と社会保障政策と子育てと地域づくりとか、あらゆる課題が一つになってこの国を変えていかなければならないという観点から、国民的な運動をしていこうと。人口減少の克服と経済の新しいステージを一緒に考えていこうという気運を醸成するための計画を作りまして、基本方針を策定させていただいたわけであります。
更に、CPTPPにつきましては、自由で公正な経済秩序の構築、世界のハイスタンダードの、私たちとすればとても素晴らしい経済連携協定を持っているわけでありますけれども、新規加入やルールの一般見直しについて作業を更に掘り込みました。加入手続きの際に日本がリードいたしましたイギリスの加入について各国の理解を得るために、世界のCPTPP加入各国を回り、また、閣僚会議の折あるごとに働き掛けをした結果、ありがたいことにこの12月にはイギリスの加入に必要な各国の手続きが終了するというところまでこぎ着けたわけであります。こうしたTPPを活用して、農林水産品の輸出とか、工業製品の輸出、中小企業の海外展開が更に拡充されることを期待しております。
また、デジタル市場についても私が担当させていただきまして、昨年6月にデジタル市場競争会議で取りまとめた「モバイル・エコシステムに関する競争評価最終報告」を踏まえた上での「スマホ特定ソフトウエア競争促進法」が本年6月に国会で可決・成立したことは極めて大きな出来事であったと。EUに次いで日本がこういったルールを定めることが世界のこうしたデジタル市場についての一定の秩序を作れるのではないかなと期待しているわけであります。
様々申し上げましたが、様々な分野を担当させていただきましたので、まだまだございますけれども、総括して、何といっても私が度々申し上げておりますけれども、これらの政策を全て連携させる。経済再生も新しい資本主義も、そして全世代型社会保障も子育ても、いざという時の感染症有事も、こういったものも含めて、これをいかに政府内で横串連携をしながら政策調整を進めていくかが大事だと思っています。そして、一つの政策ではなくていくつもの政策をストーリーとしてつなげていって、そこから大きな政策的リターンを得るんだと。これを各省にお願いをし、また私のスタッフの皆さんと一緒に取り組んでまいりました。
私がここまでいろいろなことができましたのは、何といいましても、内閣府・内閣官房の職員が本当に一生懸命、それから、「これまでの延長上にない予定調和ではない仕事をしよう」という合言葉のもとに精いっぱい協力してくれたおかげだと思っております。改めて私を支えてくれた秘書さんをはじめ、多くの職員に感謝を申し上げたいと思います。
そして、記者の皆さんにも様々な会見やその機会を通して関心を持っていただいて、素晴らしい報道をしていただいたこと、また記事を作っていただいたことには感謝を申し上げたいと思っております。
岸田内閣の一員として、岸田総理と様々な連絡を取りながら官邸におけるたくさんの会議を運営してまいりました。一定の効果を得て、大きな節目をつくり、これを乗り越えていく。これができたならばこんな幸せなことはないと思っております。
2.質疑応答
- (問)約1年間、経済再生その他、大臣としてのお仕事、誠にお疲れ様でした。いつもお忙しいところに会見に応じていただいて、誠にありがとうございます。
2点伺います。1点目ですが、今回、総裁選に伴って大臣を交代されるわけですが、日本経済、経済・財政政策に関しまして積み残しはどういったものがあるか。また、今後の課題はどういったことがあるとお考えでしょうか。
それから2点目、後任として経済再生相、赤澤亮正次期大臣の印象、それから期待されることを教えてください。 - (答)今、縷々申し上げました、岸田内閣においては新しい資本主義の旗印のもとで長年続いたコストカット型経済、デフレが染み付いてしまっていると、これをいかに払拭しながら、成長型の新しい経済ステージをつくるかということに取り組んでまいりました。その意味において、構造的賃上げ、実質賃金がプラスになったこと、それから、設備投資が史上最大を更に更新していること、GDPがこれまで届かなかった600兆円を超えたということ、様々なところからその成果が出せたのではないかなと思っているわけでございます。
そして、最重要政策課題は何といっても賃上げでございます。賃上げが労使間の最大の努力があって大きな成果が出ました。これをいかに中小企業や全国に波及させていくかということ。あわせて価格転嫁と、更には三位一体の労働市場改革を進めていくこと。これをやってまいりました。これらが一つずつ別々の事柄ではなくて、全てつながっていくのだということを強く私どもは申し上げて、それは今、様々な企業も含めて受け止めを変えていただいていると承知しております。
スタートアップをはじめ、イノベーション、更に宇宙や海洋、こういうフロンティア、そういったところへの大きな投資がこれから進むことになりますけれども、こういったものを連携させながら、しっかりとした政策が展開していくのではないかと。既に私とすれば、今年の骨太の方針でこれからの2030年、そして2040年代を見据えた成長戦略は新たなものを取りまとめさせていただきましたので、これが一つずつ実行に移っていく。その時に必要な検討や、まだまだ工夫は必要だと思いますけれども、大枠のシナリオは示されているのではないかなと思っています。
閣議決定をした大事な計画でございますし、それは複数年度にわたって将来も見据えた戦略になっています。ですから、こうした取組が一過性に終わらずに、次の内閣でも引き継がれていくと思いますし、これは日本国として、政府としてしっかりと取組が続いていくことを確信しております。ですから、私がやり残したというよりは、やるべきことは全てやりましたので、それを今後、実現に向けて更に進めていっていただきたいと、こういうことを思っているということでございます。
それから、後任と報道されております赤澤新大臣につきましては、これまでも財務副大臣で、私は日銀の金融政策決定会合では常に一緒でございました。また、経済財政諮問会議や様々な所で私が何をしているかは赤澤さんはご一緒いただいておりましたから、元々非常に関係も深く、様々なことでもってご相談いただいたり、私のほうからもお話をしたりという関係でございましたから、これまでの流れを把握して、より良い、私よりもまた良い仕事をしていただけるのではないかなと期待をしております。
(以上)