新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年9月18日
(令和6年9月18日(水) 17:52~18:02 於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
私から、月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要をご報告いたします。今月は「景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している。」と、先月の判断を維持しています。これは、企業部門は経常利益、営業利益が過去最高を更新するなど引き続き好調であること、家計部門についても、実質賃金が前年同月比で2か月連続のプラスとなり、実質個人消費が5四半期ぶりの前期比プラスとなっていることなど、個人消費に持ち直しの動きが見られることなどを踏まえたものであります。
先行きにつきましては、33年ぶりの高水準となった春闘の賃上げの効果が引き続き見込まれること、10月からは全国加重平均で51円という過去最大の引き上げ幅となった最低賃金が適用されることなど、雇用・所得環境が改善する下で、緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、中国経済など海外景気の下振れリスクなどに十分注意する必要があります。
加えて、私から閣僚会議で説明した内容のうち、我が国のマクロ経済の姿がこの3年間で大きく変容したことについて申し上げたいと思います。まず、我が国経済は1990年代以降、デフレと長期停滞に陥り、20年以上にわたって、名目賃金、物価の上昇率は共に0%前後、物価も賃金も据え置きで動かず、価格をシグナルとした市場メカニズムが働かない、「ゼロ・ゼロ経済」ともいうべき状況が続いてきました。
しかしながら、コロナ禍後の世界経済の回復や2022年の資源価格高騰を機に、輸入物価が上昇いたしました。こうしたコストプッシュ型物価上昇に対し、岸田内閣において価格転嫁や賃上げを強力に進めた結果、名目賃金の伸びも上昇に転じ、デフレに陥る前の水準まで伸びが高まりました。更に2024年6月には、名目賃金上昇率は物価上昇率を超え、実質賃金はプラスになりました。このように日本経済が30年ぶりに正常な姿に戻っていく中、金融政策の主な手段も他の多くの中央銀行と同様、短期金利に戻り、現在、政策金利は0.25%程度になっています。
更に岸田内閣の3年間の実体経済の動きを見ると、名目GDPは年率換算で56兆円増加し、史上初めて600兆円を超えました。また、設備投資は33年ぶりに過去最高を更新し106兆円となり、個人消費は名目実質ともに増加をしています。また、GDPギャップは2024年4月-6月期にはマイナス0.6%程度にまで縮小いたしました。一方、潜在GDPの伸び、すなわち潜在成長率は0%台半ばにとどまっています。このため、潜在成長率を構成する資本、労働、全要素生産性の各側面から課題を解決することが重要です。
また、将来の成長の源泉である研究開発費のGDP比は過去10年間、ほぼ横ばいとなっています。研究開発投資など無形資産投資の促進を通じ、生産性向上につなげていくことが極めて重要と考えています。更に、価格や賃金をシグナルとした市場メカニズムを通じて、より生産性の高い分野に資本や労働などの生産資源が向かっていくという、市場経済が本来持っているはずのダイナミズムを活かして、新たな成長型の経済ステージへの移行を確実なものとすることが不可欠と考えています。
総理からの締めくくりの発言につきましては、お聞きをいただいたとおりであります。この他、会議の詳細については後ほど事務方から説明をいたします。私からは以上であります。
2.質疑応答
- (問)岸田政権最後の月例経済報告ということで、デフレ脱却に向けた現在地についての認識を改めてお伺いします。政府はデフレ脱却を目指して、賃上げの他、大臣もやられた経済対策を講ずるなどしてきました。消費者物価指数、今お話もありましたけれども、政府が重要視する指標など改善が見られ、実質賃金もプラスとなっておりますと。一方で、過去には月例経済報告で政府の公式見解としてデフレの認識を示してきましたけれども、今回の9月を含め、現在はその記載がございません。
改めまして、現在はデフレなのか、そうではないのか。脱却したのか、そうではないのか。ご見解を教えてください。 - (答)今ご説明したとおり、我が国経済が短期ではなくて長期的な、いわゆる1990年以降の「ゼロ・ゼロ経済」ともいうべき状況を脱してきたと。そして、新たな経済ステージに移行させるためには、そのスタート台としてGDPは史上最高を更新し、設備投資も更新をする。更に、懸案でありました実質賃金も2か月連続でプラスという形で、良い状況が見えてきているというわけであります。まさに価格や賃金、こういったものをシグナルとした市場経済の本来持っているダイナミズム、これを取り戻しつつあるということを強く感じておりますし、また、それを実現させるために、私の就任以来、精いっぱい仕事をしてきたつもりでございます。
私たちが毎回申し上げておりますのは、デフレに再び戻らない状況をつくることが重要だということでございます。そして、戻らないだけではなくて、これまでの景気の延長上に新たな経済をつくれるかというと、そうではないのだと。少子高齢化、人口減少の中で、人々の生活に対する意識だとか、お金の使い方も変わっていくと思います。ですから、そういう意味で新しい経済のステージをつくり、そこで更にまた成長していく、こういう形をつくらなければいけないと。それが、私が取り組んできたことでございますし、総理を先頭にして、少なくとも1990年代から始まりましたが、自分たちの原点とすれば、やはり安倍内閣、2013年の始まりの502兆、ここが始まりだったのです。
アベノミクスをはじめとして様々な対策を打ちながら、菅政権、岸田政権と続けてきて、ここでついにデフレの状況というのは、目の前の点で言えばもう脱していると、このように思っていますけれども、これを更に続けるとともに次のステージに移行する。これがとても重要で、そこのところをしっかりと取り組まなければいけないし、今年の骨太方針は思い切った新しいことをたくさん入れました。
そして、「経済・財政再生計画」から「経済・財政新生計画」となって、2040年代を目がけた1,000兆円というものも出しました。こういったものを進めていくことがとても重要であって、これは一内閣の一過性の動きに終わらせてはいけないものだと。日本経済全体がしっかり前進していくように、それを続けていただきたいと思いますし、私もまた引き続き、この問題には取り組んでまいりたいと、このように考えているわけです。 - (問)ちょっと聞き漏らしたというか、聞き間違えてしまったかもしれないのですが、現在、デフレ脱却という意味では、目の前の点で言えば脱却しているとおっしゃったと思うのですけれども、これは詳しくはどういう意味なのかと。つまり、もうデフレ脱却を果たしたということなのかどうかというのを、改めて確認させていただけますか。
- (答)これは既に日銀総裁が予算委員会においても、経済事象で言えばデフレではないと、こういうことをお話しされています。その状況はまだ続いているわけですから、私はその経済的な状況を申し上げたわけであります。そして、今、お尋ねになっているデフレ脱却宣言というのは、もう少し違う意味合いがあるのかなと思っております。それについては再び後戻りする状況にないということを判断するために、しっかりとした経済の地力を付けて、更に前進させていくこと、これが重要であるというふうにお答えしたわけです。
(以上)