新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年8月15日

(令和6年8月15日(木) 10:56~11:13  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 まず私より、本日公表の2024年4-6月期のGDP1次速報値について御報告をいたします。実質成長率は前期比プラス0.8%、名目成長率は前期比プラス1.8%となりました。この結果、名目GDPの実額は年率換算で607.9兆円と史上初めて600兆円を超えたということでございます。
 我が国経済を振り返りますと、名目GNP・GDPは、1973年度に100兆円、そして、1978年度に200兆円、更に1983年度に300兆円、1988年度に400兆円と、約5年ごとに100兆円を増加してきたということでございます。しかし、1992年度に名目GDPが500兆円を超えてから、我が国経済は長引くデフレ、金融システムの危機、リーマン・ショック、また、東日本大震災や新型コロナウイルス感染症など、様々な困難に直面いたしました。この結果、長期にわたりまして名目GDPは500兆円前後で推移を繰り返してきたということになります。
 反転のきっかけはアベノミクスです。第2次安倍政権、アベノミクスを開始した2013年の1-3月期に502兆円でございました名目GDPは、2017年度に550兆円を超えて、更に岸田内閣の新しい資本主義の取組を進めた結果、今回、32年の長きを経て600兆円を超えるに至ったということでございます。これは、私が毎回、また、私どもが取ります新しい経済ステージへの移行の実現に向けた大きな一里塚になったのではないかなと思っております。
 私の談話はお手元にお配りしておりますけれども、今回のGDP1次速報においては、まず民需による押し上げが顕著であるということであります。個人消費が2023年の1-3月期以来、1年と1四半期ぶりにプラスに転換いたしました。また、設備投資も半年ぶりにプラスになりまして、名目GDPの実額が史上初めて600兆円を超えたということであります。また、設備投資の実額も106兆円に達し、これは約33年ぶりの過去最高を更新したということでございます。それから、実質雇用者報酬も約3年ぶりに前年比でプラスに転換するなど、新たな経済ステージへの転換が進んでいることを明確にデータが示すことになっておりますし、象徴的な結果になっているのではないかなと考えております。
 先行きにつきましては、引き続き春季労使交渉の賃上げの反映がいよいよ本格的に進みます。これに加えまして、10月には最低賃金の引き上げがございます。また、12月には人事院勧告に伴う公務員給与の遡及改定が見込まれるわけでありまして、雇用・所得環境が改善する中で、緩やかな回復が続くということを期待しております。一方で、海外経済の下振れリスク、それから、金融資本市場の変動による影響などには引き続き十分注意をしていきたいと考えています。
 政府といたしましては、この骨太の方針2024に基づきまして、物価上昇を上回る賃金上昇を実現する、また、官民連携投資による社会課題の解決と生産性の向上を図っていくということ、そして、それは力強い賃上げの動きを中小企業や全国各地域、地方経済に広げて定着させていくとともに、企業の稼ぐ力を高めるためにも、国内投資の拡大、新たな省力化投資などの充実・強化、労働市場の改革を進めることによって潜在成長率の引き上げを目指していく。この中で、民需主導の成長型の新しい経済ステージ、これを構築させていきたいと考えています。
 引き続き、経済・物価情勢や、また、金融資本市場の動向を注視しつつ、日銀とも緊密に連携しながら、機動的なマクロ経済財政運営を行っていきたいと考えております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)先ほども大臣からお話がありましたが、名目GDPが600兆円を超えまして、こちら、2015年に安倍政権下で目標として掲げられておよそ9年かかったということで、そちらについての受け止めをお願いいたします。
(答)ただ今も申しましたけれども、これまで、1973年度に100兆円、以降5年ごとに100兆円を増えていく、こういう成長の軌道から、1992年度に500兆円となってからの非常に厳しい停滞の期間があったということであります。その中で今般、この名目GDPが600兆円に到達したということ。しかもそれは内実が内需を引っ張り、それから、新しい様々な取組が功を奏した結果、物価の上昇と、そしてまたそれに負けない賃金、そうしたものが実現しつつあり、それを踏まえた消費の拡大や、更に新たな設備投資の流れというもの、こういったものが見えてきているということでございまして、私はこれをとても大きな兆しが見えていると判断しております。
 ただ、大事なことは、今後の新しい経済ステージというのは、従来の景気が良くなって、今までの売れ筋の商品がきちんと売れるようになったと、それだけでは少子高齢化・人口減少の到来する私たちは、この国の経済において、従来の延長線上には大きな成長は厳しいわけであります。ですから、こうした新しい経済の再生のきっかけが見えている今だからこそ、生産性向上に向けた投資や働き方の改革、そして、新しい需要をつくっていくこと、イノベーションやスタートアップ、そして、GXやDXなどの大きな取組、こうしたものを着実に進展させながら、次の人口構造を持つ日本に対してでも成長ができる、そういう経済をつくっていきたいと。今回の600兆円を到達したというのは、その大きなきっかけになっていると受け止めております。
(問)関連して、名目GDP600兆円についてお尋ねします。先ほど大臣は、「反転のきっかけはアベノミクスだ」とおっしゃっていましたけれども、その点について、もう少し具体的に、アベノミクスのどういったところが600兆円に達する要因になったかというところと、実質GDPについては今回554兆円となかなか伸び悩んでいて、名目GDPと実質GDPの差が開いている状況です。この点についての課題などあれば、大臣として実質も増やしていく上でどのような課題があると考えているか教えてください。
(答)そこは基本的かつ重要な質問だと思っているのですけれども、名目GDPは数量に価格を掛けた額面ベースの経済規模を示すものですから、企業活動で言えば、売上高に当たるということになります。一方で、実質GDPは、ある時点における価格で評価した経済規模を示したものですから、実質GDPの動きは企業で言えば販売数量の動きにつながるということであります。したがって、物価が毎年上昇する通常の経済では、名目GDPと実質GDPは徐々に乖離していく、こういうものなのです。つまり、名目GDPの伸びが実質GDPの伸びよりも高いというのは通常の姿とも言えるわけです。
 その上で、近年の我が国経済は、まず2022年にロシアのウクライナ侵略が始まって、これを契機とした輸入物価の上昇、そして、価格転嫁を通じて国内の物価上昇に波及が見られる中で、名目GDPが増加してきたわけです。他方、実質GDPは、これまで賃金上昇が物価上昇に追い付いていないということもありまして、個人消費の持ち直しに足踏みが見られて、実質GDPは力強さを欠くという状態になったわけであります。
 しかし、本日のQE、4-6月期の1次速報というのは、実質個人消費が前期比プラス1.0%、物価が上昇するもとでも1年と1四半期ぶりのプラスとなったと。更には、実質の雇用者報酬が前年比で2年と3四半期ぶりにプラスに転換しました。明るい兆しが見えたと思います。安定的に物価が上昇するもとで、名目も実質もGDPが増加していくという、通常の経済構造への転換が見られつつあるというふうに私たちは分析しているわけであります。
 その上で重要なことは、この動きを一過性に終わらせてはならないと、構造的なものとして定着させる必要があります。ですから、物価の適度な上昇がある中で、それを上回る持続的・安定的な賃金上昇を実現して、消費の喚起を図っていく。そして、それのために民間の皆さんの御努力があります。それに加えて、賃上げ税制や中小企業の省力化投資支援、価格転嫁対策、こういったものの総合的な取組を我々は政策で後押しをしている。まさに、民需主導の経済の構造改革が進みつつあるという意味において、また、それが持続的・構造的な賃上げのもとで、消費や投資が増加する。それがまた好循環をつくっていくという、所得と成長の好循環を実現していきたいと思っています。
 そして、アベノミクスは、やはり、あのタイミングで株価は8,000円ぐらいまで落ちて、まさに経済が冷え切った状態になって、先行きの投資も見込めない、そういう中で価格も上がらない、賃金も上がらないと。そこに、政策を大胆に転換して、経済の浮揚を図るとともに、新しい大胆な規制緩和とかイノベーション、そうしたものを埋め込んでいこうと。今、私たちがやっていることの源流はそこにあるわけであります。その苦労のもとで、それを菅内閣、岸田内閣で受け継いで、私たち岸田内閣は3年間で大きく軌道に乗せて、また、経済運営も金融の運営も異次元から通常の状態に戻していきながら、私たちの経済を安定的に次のステージに移行させると。こういうこれまでの蓄積があって、その努力のもとに今があるのではないかと。
 何よりも国民・企業がこれまでのずっと厳しいところを努力をし続けてきた結果だと思いますけれども、国とすれば、やはりそういう明るい未来を示す、そういう政策をしっかりと堅持しつつ、常に具体的な策をそれに打ち込んでいく、このことが重要ではないかなと考えているわけです。
(問)GDPと別の話題です。昨日、8月14日(水)に岸田総理が総裁選への不出馬を表明しました。その大臣の受け止めと、今日、閣議などで総理から直接報告があったのかどうか。最後に、今後、総裁選が始まっていくと思います。政策集団に移行するということですけれども、大臣は茂木派に所属しているというお立場の中でどのように総裁選に向かっていくか教えていただけますでしょうか。
(答)昨日の岸田総理の発言は突然のことでしたから、驚きとともに、私は一言で言えば、残念だと思っています。そして、総理・総裁として、日本経済を最適な道で次のステージに持ち上げていくために、また、自民党の総裁として信頼を回復させるとともに、新しい自民党の姿を示す。そういった意味で、総理・総裁として大きく重い決断をなされたのだなと思います。私どもとしては、受け止めるしかないわけです。
 しかし、今、先ほどから説明しているとおり、私たちの経済政策は、この何年間かの努力によって功を奏しつつあり、この流れを更に拡大させていく時でありますから、これは途絶えることなくしっかりとやり遂げなければならないと思っています。
 また、今日、閣議後の懇談、その終了後に岸田総理から昨日の記者会見における表明についての御説明がございました。残る期間をしっかりやっていきたいというお話がありましたので、私から総理のお言葉に対して率直に閣僚として、残念だと、みんなで力を合わせてやってきた結果であって、良い兆しが見える中で、私たちは胸を張ってしっかりと仕事に取り組んできた結果だということ、そして、引き続き総理であられる限り、我々が閣僚でいる限り、全力でしっかりと結果を出していこうということを申し上げまして、総理からも、「是非、自分としても頑張っていくので、みんなで力を合わせていこう」というようなお言葉をいただきました。

(以上)