新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年8月2日
(令和6年8月2日(金) 11:28~11:42 於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
本日の閣議におきまして、令和6年度年次経済財政報告を報告いたしました。副題を「熱量あふれる新たな経済ステージへ」としております。日本経済は33年ぶりとなる高い賃上げなど、前向きな動きが随所に見られ、投資や賃金を抑制してきたコストカット型経済から、民需主導の成長型経済という新しいステージに移行するチャンスを迎えているというふうに記しております。一方で、賃金の上昇が物価上昇に追い付いておらず、消費は力強さに欠けています。更に、歴史的な水準にある人手不足感による日本経済の成長制約を乗り越えるためには、省力化投資の促進や労働力の円滑な移動の実現が必須の課題です。
こうした観点から、本報告ではマクロ経済の現状、人手不足に対する企業部門の対応と課題、また、金融資産や住宅ストック、高齢者などの人的ストックを活かした豊かな経済社会の実現に向けた課題など、様々な角度で広範な分析を行っております。この報告が日本経済を熱量あふれる新たなステージに移行させていくために、政策を立案・遂行していく上での客観的データとして広く活用されていくことを期待しております。私からは以上です。
2.質疑応答
- (問)今年度の経済財政白書についてお伺いいたします。デフレ脱却に向けた歩みは着実に進んでいるとされていますけれども、このデフレ脱却に向けた見通しと取組についてお伺いできますでしょうか。
- (答)デフレの脱却というのは、「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないということ」と定義しております。現在、我が国は明らかにデフレの状況とは言えないわけでありますが、この物価の基調や背景を総合的に判断し、今後もデフレに戻る見込みがないことを確認する必要があるということを私は従来から申し上げております。
本日公表いたしました経済財政白書によりましては、今回の物価上昇局面はこれまでと異なって企業行動が変容し、価格転嫁と賃上げを通じて物価と賃金が共に上昇するというノルム、社会規範が定着しつつあるということなどから、我が国のデフレ脱却に向けた歩みは着実に進んでいると分析をしております。また、この流れを確実なものとすべく、再びデフレに戻らない、民需主導の自律型成長経済、これを実現するための経済構造の改革や、そのための施策の推進が必要だと思っているわけであります。
私たちが目指しますのは、デフレ下で定着した賃金も物価も変わらない、そういう社会通念を変えて、これまでの延長線上ではない新たな経済ステージ、人口減少・少子高齢化、そして地方の過疎や都市の過密があっても、それでも成長していく、そういう新しい経済ステージをつくりたいと。そのための策として、骨太の方針2024においては、様々な課題に対する挑戦を記したつもりでございますし、これを今、良い兆しの中で着実に進んでいると思いますが、まだそこは道半ばだということで、しっかりと進めていきたいと思っております。 - (問)昨日、岸田総理大臣は視察先で物価高への対応をめぐりまして、秋の経済対策について、地方の中小企業などへの支援策を盛り込む方針を明らかにしました。大臣としましては、こうした岸田総理の表明を受けまして、どのように経済対策の取りまとめに進めていかれる御予定でしょうか。
- (答)この方向性につきましては、既に6月21日の総理の会見の中でそうした考えが示されております。我々は累次にわたってきめ細かな物価高対策をやってまいりました。物価高に負けない家計支援、こうしたものを行ってきたわけでありまして、特に昨年の総合経済対策では重点支援地方交付金を措置して、物価高の影響が特に大きな低所得者世帯への給付、更には地方公共団体における地域の実情に応じたきめ細かな対策を可能とするような、そういった支援を講じてきているところであります。
加えて、より幅広い低所得者世帯への給付と、低所得子育て世帯への上乗せ給付なども行ってまいりました。これとあわせて、6月からは定額減税により家計を支援し、また、賃上げの波及とあわせて、家計所得の伸びが物価上昇を上回る状況、これをつくり出そうとしているところであります。
更に加えて、先般は、地方経済や低所得者世帯に即効性の高いエネルギー補助といたしまして、燃料油価格激変緩和措置の年内継続、また、酷暑乗り切り緊急支援としての電気・ガス代、8月からになりますけれども、この3か月間の補助、こうしたものを決定してまいりました。まずはこうした取組の着実な実行に全力を挙げていきたいと思います。
その上で、秋に策定することを目指す経済対策で具体的にどのような対策を盛り込んでいくか。これは、更に経済・物価動向等をしっかり見極めた上で、関係省庁と連携をして取り組んでいきたいと考えています。 - (問)先日、日銀が追加の利上げを決定しました。このことに関して大臣のお受け止めと、今後の日本経済への影響についてどのように見通しを持っていらっしゃるかということについてお尋ねします。
- (答)今回の政策金利の引き上げにつきましては、日本銀行において2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整することが適切、このように判断をされたと私は承知をしております。
実際に、政策金利の変更後も実質金利は大幅なマイナスが続いておりまして、緩和的な金融環境は維持されるという状態です。ですから、引き続き経済活動をしっかりサポートしていくということだというふうに承知をしております。
私どもは、ただ今も申し上げましたように、日本経済が30年ぶりに大きな成長型の新たな経済ステージに転換できるチャンスを迎えているわけであります。その実現に向けまして、日銀との連携が非常に重要だと思っておりますけれども、政府としても強い覚悟を持って政策運営をしていきたいと考えています。
物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向けまして、日銀におきましては2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策を期待したいと考えています。 - (問)政府・日銀の共同声明について、見直しは現段階では特にお考えになっていないということでよろしいでしょうか。
- (答)日銀の政策決定、また、運営方針、そして政府との経済財政運営方針、これは密接に連携しながら様々な相談をしながら進めております。そして、この方向性については既に一致をしておりますし、物価安定を実現しつつ、我々は新たな需要をつくり出して、成長型経済をつくっていく。こういう大枠の中で進めております。現状において両者の連携はしっかりできているのではないかと考えています。
- (問)日銀の利上げの関連でお伺いします。日銀の利上げは物価の引き締め方向に働くわけですけれども、デフレ脱却を目指している政府の経済政策と日銀の金融政策は矛盾するものにならないのかどうか。そこの点について御所見をお聞かせいただければと思います。
- (答)日銀が行いました今回の決定は、中長期的な視点から2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現し、そして、我が国経済の持続的な成長につなげるために、足下で輸入物価が上昇に転じ、物価が上振れするリスク、こうしたものも考慮した上で利上げを行ったのではないかと理解しています。
植田総裁は、そうした観点から、今回の利上げに関しまして、金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断したと発言されております。また、政策金利の変更後も実質金利は大幅なマイナスが続いていて、緩和的な金融環境は維持されるということ、これもあわせて発言をされています。
現在、我が国は明らかにデフレの状況にはないわけでありますが、デフレに戻る見込みがないとは言えず、デフレ脱却の実現に取り組んでいるわけでありますから、日銀が引き続き緩和的な金融環境を維持されるということ、この点において、私たちの方針と矛盾することはないと考えています。 - (問)過去、日本銀行の利上げというか、金融引き締めの政策は、日本経済が回復途上にある中で引き締めが早すぎたということで、日本経済の停滞が長引いたのではないかという批判もかつてありましたが、今回も足下の消費はそれほど強くない中での金融引き締めの方向の判断になりました。今回の利上げの判断が早すぎたのではないかという意見も出てくると思うのですが、大臣はどうお考えでしょうか。
- (答)今日、私がこれまでお話ししたことと同じことになるのですけれども、今回の利上げは、金融緩和の度合いを調整するという観点だということ、それから、政策金利の変更があっても実質金利はまだ大幅なマイナスであって、緩和的な金融環境は維持されているということで、単純に利上げ・利下げがどういう効果かということとは、もう少し更に全体的な評価ができるのではないかなと思っております。いずれにしても物価安定目標を達成しつつ、経済活動を拡大させていく。それを私たちが投資や設備投資、生産性の向上、更には労働制約、こうしたものを流動化させる。こういう中で実需を増やしながら消費の拡大を強めていきたいと考えていく中で、今回のことは我々との整合性を図った上での決定ではないかなと考えているわけです。
- (問)本日、日経平均株価が一時2,000円以上下落しまして、この背景にはアメリカの景気後退への懸念があるとも言われています。まず2,000円下落したことの所感と、アメリカの景気後退への懸念の日本経済に与える影響について御所感をお願いします。
- (答)日経平均株価が大きく変動したことは私も承知をしておりますが、それについてのコメントは従来から私は行っておりませんので、御了解いただきたいと思うのですが、報道等によれば、昨晩のアメリカの株式市場において経済指標が事前の予想を下回った、また、様々な背景があって株価の下落があったと。その影響というものもあったのではないかと認識しております。
しかし、私どもとすれば、株価の動きに一喜一憂することなく、やはり将来への期待を示すものですから、私どもの経済構造改革、そして、新しい経済のステージに移行する、この取組をしっかりと着実に日本の経済の中に植え込んでおくこと、そして、実行していくこと。その中で実体経済を強めて、日本の経済の地力を高めることでこうした日本の株価はいい結果が出てくるのではないかなと思っておりますし、そうしたいと思っています。
(以上)