新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年7月25日

(令和6年7月25日(木) 13:43~13:57  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 まず月例経済報告についてご説明いたします。配布資料の1ページ目をご覧いただきます。
 今月は「景気はこのところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。」と、先月までの判断を維持しています。これは、企業部門については経常利益、営業利益とも過去最高を更新し、投資意欲も旺盛であるなど、引き続き好調さが続いている一方で、家計部門につきましては、現時点では賃金の伸びが物価上昇を上回る状況には至っておらず、力強さを欠いていると、こういう状況を踏まえたものであります。
 先行きにつきましては、33年ぶりの高水準となった春闘の賃上げの効果が引き続き見込まれるなど、雇用・所得環境が改善する下で、緩やかな回復が続くことを期待をしております。ただし、中国経済など海外景気の下振れリスクや為替の変動等が、輸入物価の上昇を通じて国内物価を押し上げるリスクなどに十分注意する必要があるということであります。
 次に、今月のポイントでございます。3ページ目は賃金の動向についてであります。
 左上の1図。昨年、2023年の春闘の賃上げ率は定昇込みで3.56%、ベアで2.12%と、30年ぶりの高水準となりましたが、今年はこれを更に上回り、定昇込みで5.10%、ベアで3.56%と、1991年以来の、実に33年ぶりの高水準となりました。
 左下の2図。5月のフルタイム労働者の所定内給与は春闘の賃上げの反映もあり、前年比プラス2.6%。これは1994年以来の最も高い伸び率となっております。産業別で見ますと、人手不足感の大きい建設・運輸等で特に高い伸びとなっています。
 右上の3図。実質賃金の伸びを就業形態別に見ますと、パート時給は昨年半ばより前年比プラスに転じ、フルタイム労働者でもマイナス幅が着実に縮小しています。特に30人以上の事業所につきましては、定期給与の前年比を見ると、26か月ぶりに前年比プラスに転じています。
 右下の4図でございます。この夏の民間企業のボーナスも全体でプラス3.7%、中小企業でプラス7.8%と高い伸びとなり、平均支給額も97万円と過去最高額を更新しています。今後、公的部門への広がりも期待されるところです。
 続いて4ページ目、職種別の求人動向と、AIの雇用への影響についてです。
 左上1図、2図。人手不足感は全体として歴史的な水準にありますが、ハローワークにおける職種別の有効求人倍率を見ますと、建設や介護等では3から4倍。つまり、1人の求職者に3つ、4つの仕事がある状況である一方で、事務職は0.4倍ということであります。1人の求職者に0.4の仕事しかない状況になっている。民間職業紹介における転職求人倍率におきましても、事務やアシスタント部門は0.5倍以下と低い水準になっていることが分かります。
 更に左下の3図をご覧いただきますと、内閣府のアンケート調査でありますが、今後、多くの企業が定型的な書類作成やスケジュール調整等の事務職の業務をAIに代替する意向というものを示しています。AIの導入は、職種や仕事内容によって影響が異なると考えられ、国際的にも話題になっているわけでありますが、右側の4図。このIMFの研究によりますと、英国においては、例えば専門職では法律業務における判例検索や、医療における画像診断など、AIから多くの便益を得る可能性がある一方で、事務の補助員はAIに代替される可能性が高いとされております。この点、我が国はAIに代替される可能性がある事務職が就業者に占めるシェアは2割となっておりまして、事務職などのホワイトカラーの労働者のリスキリングの促進、これが喫緊の課題であるということでございます。
 この他につきましては後ほど事務方から説明をさせていただきます。私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)デフレからの完全脱却に向け、実質賃金が注目されていますが、今月の月例経済報告で示された実質賃金の動向について、大臣の見解をお願いいたします。
(答)私たちが最終的に目指しておりますのは、デフレ下で定着した賃金も物価も変わらないという社会通念を変えて、従来の延長線ではない新たな成長型の経済ステージ、これに移行させていくことを目標にしているわけであります。物価の上昇を上回る賃金上昇を実現する、これがまず第一のことだというふうに考えておりますが、その意味におきまして実質賃金の動向というのは、我々も丁寧に注視をしているところであります。
 今月の月例経済報告の資料におきましては、業種・就業形態別に見た実質賃金の上昇率をお示ししているわけでありますけれども、まずパート労働者の時給は昨年半ば以降に前年比でプラスになりました。また、フルタイム労働者の月給についても、前年比のマイナス幅が着実に縮小をしています。特に30人以上の規模の事業所で働くフルタイム労働者については、振れの大きいボーナス等を除く定期給与は、本年5月に26か月ぶりに前年比プラスになったということでございます。
 今後につきましては、33年ぶりの高水準の春闘の結果、これが7月、8月と本格的に給与に反映されてまいります。また、6月には診療報酬改定による医療職、10月には最低賃金引き上げによるパートタイムの労働者、12月には人事院勧告に伴う公務員給与の遡及改定など、賃上げが順次反映されていく。こういう中で実質賃金の持ち直し傾向が続くことを期待をしているわけでございます。賃金を含めた家計所得の伸びが物価上昇を上回る状況、これを確実につくり出せるように、また経済の好循環につなげていけるように、我々としても努力していきたいと考えています。
(問)最低賃金についてお伺いします。昨夜の厚労省の審議会で過去最大となる50円の引き上げとなり、平均の時給で1054円となる見通しとなりました。物価高が続く中ですけれども、こうした最低賃金の引き上げ、十分なのかどうか含めて、大臣のご所見をお伺いできますでしょうか。
(答)今年度の最低賃金の引き上げ額につきましては、昨日、公労使三者構成の中央最低賃金審議会で、全国平均で5.0%、50円の引き上げとする目安が取りまとまったと承知をしております。春季労使交渉の5.1%という力強い賃上げに加えて、賃上げの裾野を広げる、また、非正規雇用労働者の方々の賃金の引き上げ、男女間の賃金格差の是正を図る上で、最低賃金の力強い目安の取りまとめを私としても歓迎したいというふうに考えております。
 これに加えて重要なことは、最低賃金の引き上げに加えて、何といっても、30年にわたって縮み志向といいましょうか。なかなか賃金も上がらないと。物価も上がらないが、賃金も上がらないと。こういうマインドをいかに転換をし、所得の向上が見えていく中で、消費意欲というものをしっかりと力強く高めていく。これが重要だと考えておりますし、そうしたものを実現させるためには、まずは賃上げのノルムというもの、社会通念を皆さんで共有するとともに、賃上げの実現を可能にする企業の稼ぐ力を伸ばしていく。生産性を向上させるための投資の拡大ですとか、それから、働く方々も自分の能力や希望に添った形での給与を得るため、また職務に就くためのリスキリング。その意味では、ジョブ型の導入というのは非常に重要だと思っているのですけれども、こうしたものをやりながら、新しい経済、それは、次のステージに向けて実需をつくっていくことがとても重要だと思っています。
 少子高齢化、人口減少、そして都市が過密となり、地方の過疎が進んでいっても、それでもやはり必要なもの、私たちがそれぞれお金を使っても、これを得たいという需要をしっかりと取り込んでいくことと。また、それらのサービスを、新しい技術を社会実装する中で享受すると。こういうような形の中で経済のステージというのをつくり上げていきたい。民需主導の力強い成長型経済、これを実現させていきたいと、このように考えているわけであります。
(問)今月の指標4のところで、定額減税のことについて触れられております。6月に本格的に定額減税が始まってから、初めての月例経済報告ということで、民間データですと、ちょっと個人消費が上向きになっているような印象を受けます。定額減税の効果について、まだ始まったばかりだと思いますが、効果があるかどうか、どういうご見解かということ、今後への期待感についてお伺いできますでしょうか。
(答)今月の月例経済ではオルタナティブデータを用いて、消費支出の動向を週次でお示しをしました。定額減税が実施された6月の下旬からは、この消費支出が増加傾向で推移しているということは確認ができるわけであります。この原因はやはり様々なものがあるというふうに思います。賃上げが確実に進んでいるということ。やはりボーナスの月に定額減税が合わせて実施されたことによって、可処分所得が上がっていくといったこと。それから、景況感の持ち直しという中で、将来の安定的な期待というものが見えてきたことで、消費というものが全体的に上がっていく。定額減税もその一定の役割を果たしているとは思いますし、様々な要素が絡み合って、日本経済を上向きにさせていきたいと、このように考えているわけです。
(問)今の定額減税のところで改めて伺いたいのですけれども、冒頭でも家計部門の賃金の伸び悩みで力強さを欠くということをおっしゃっていましたが、定額減税をそもそも始める時に、恐らく物価が上がって、それに対して賃上げのペースが少し遅れてくるだろうから、それを補う意味でも定額減税という制度が導入されたと思いますけれども、現状、やはり規模ないしは額が不十分だったということで、思ったような効果が出ていないという評価なのか。それとも、これから消費に回っていく、つまり、効果が出ていくということなのか。現時点での大臣の定額減税の政策に対する評価を教えてください。
(答)今年度、私たちの目標は物価上昇を上回る所得の向上をつくることで、それにはやはり賃金の上昇とともに、まだそこが行き渡らないところを定額減税という形で補おうと、それはタイミングとして6月のボーナス月に、しかも、これから賃金が上がる、そのタイミングで減税を合わせることによって、可処分所得が上がる実感を得てもらおうということがございました。
 これはすぐに消費がというよりは、今後、順次、こうした効果が相まって所得は上がっていくだろうと思っておりますし、私どもとすれば、こうしたきっかけをつくりながら経済を後押しして、何よりも、そもそもが、自分たちの給与の上昇率が物価上昇率を上回ると、こういう状況を持続的・安定的につくっていきたいという目標に向けての一環だと。一定の効果が出てきていると思いますし、これらを更に後押しするための様々な政策を総合的に展開していきたいと考えております。

(以上)