新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年6月27日

(令和6年6月27日(木) 18:07~18:17  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 ただ今、月例経済報告等に関する関係閣僚会議を開催いたしました。その概要を報告いたします。
 今月は「景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。」と判断を維持しています。企業部門については経常利益、営業利益ともに過去最高を更新するなど、引き続き好調さが続いております。一方で家計部門については、現時点では賃金の伸びが物価上昇に追い付いておらず、力強さを欠いている状況にあることなどを踏まえたものです。
 先行きにつきましては、33年ぶりの高水準となった春闘の賃上げや、今月から実施されている所得税、住民税などの定額減税、この効果が見込まれるなど、雇用・所得環境が改善する下で、緩やかな回復が続くことが期待されています。ただし、為替の変動等が輸入物価の上昇を通じて国内物価を押し上げるリスクなどに、十分注意する必要があるということでございます。加えて、私から閣僚会議で説明した内容のうちで、賃金の動向と、それから雇用と労働時間の動向について申し上げたいと思います。
 まず、賃金の動向ですけれども、就業形態別に実質賃金の動向をみますと、雇用者の3割を占めるパート労働者について、昨年の秋以降、時給ベースの実質賃金の伸び率は前年比で1%弱のプラスが続いています。雇用者の7割を占めるフルタイム労働者についても、時給ベースでは前年比はゼロ近傍にまで回復し、月給ベースでもマイナス0.4%とマイナス幅が着実に縮小しています。
 一方で、全体に占めるパート労働者の比率でございますが、上昇傾向が続いており、雇用者平均で見た時には賃金上昇率を下押しする要因になっているということが分かります。もっと働きたいと考えているパート労働者について、所得向上の後押しを進めることが重要と考えています。
 次に、雇用と労働時間の動向については、パートタイム労働者の時給は増加しているものの、年収の壁の範囲内で収入を抑えようとする就業調整もあり、労働時間は緩やかな減少が続いております。その結果、月給、つまり、現金給与総額の上昇が抑制されているということになるわけであります。35歳から44歳の既婚女性の就業者のうち、年収200万円未満で働いている割合は、高校卒では6割以上、大学卒でも4割弱となっています。これには就業調整も影響していると考えられ、こうした方々が本来の能力を発揮できるような環境を整備することで、世帯所得を向上させていくことが重要です。
 内閣府による試算においては、妻が年収の壁を超えて働く場合、給与所得に加えて年金所得の増加が配偶者手当等の減少を大きく上回り、世帯の生涯可処分所得が大きく増加することが示されています。例えば、妻が年収の壁を越えて年収150万円で働いた場合、年収の壁の範囲内で働いていた場合と比較して、世帯の生涯可処分所得は約1,200万円増加します。人手不足への対応という観点に加えて、世帯の生涯可処分所得の向上という観点からも、女性が年収の壁を超えて働くことをためらうことがないように、情報の周知、そして環境整備が重要ではないかと考えているわけです。
 今後の詳細につきましては、後ほど事務方から説明をさせていただきます。私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今回、景気判断を据え置いた一方で、国交省による統計の遡及改定を背景に公共投資の判断を引き下げました。1日には1-3月期のGDP2次速報の改定値を発表するわけですが、政府としては現段階で経済見通しそのものに大きな影響はないと捉えていらっしゃるのか、御見解をお聞かせください。
(答)この25日に公表されました、建設総合統計の遡及改定による本年1-3月期までの昨年度のGDPの影響については現在、担当部局において精査をしております。7月1日にGDP改定値公表、そのように申し上げておりますけれども、その際にお示しをしたいと思っています。月例経済報告では、足下で利用可能なデータやヒアリング等の情報を最大限活用して景気判断を行っているわけであります。
 我が国全体の景気は、個人消費は賃金の上昇が物価上昇に追い付いていないことから力強さを欠いているものの、経常利益、営業利益ともに過去最高を更新し、投資マインドも堅調であるなど、企業部門の好調さが続いています。そうしたものを踏まえるならば、緩やかな回復基調が続いているというふうに私たちは判断しているわけであります。なお、建設総合統計については月例経済報告では公共投資の判断材料としております。したがって、今回の遡及改定を踏まえて公共投資の判断を下方修正いたしました。
 また、景気の先行きにつきましては、33年ぶりの高水準となった春闘賃上げ率、今月から実施されている定額減税の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されています。私どもとすれば、「骨太方針2024」等に基づきまして、物価上昇を上回る賃金上昇の実現、官民の連携投資による社会課題解決と生産性向上に取り組んでいきたいと思います。あわせて足下の物価動向の中で、やはり年金生活世帯や中小企業の方々にとって厳しい状況が続いていると。そういう意味では、まずは早急に着手可能で即効性のある対策を講じるなど、二段構えでの対応を行っていきたいと考えています。
(問)今の質問の延長線上なのですけれども、民間エコノミストの間では、おとといの建設総合統計を踏まえて独自にGDPの修正の予測を出しているところがいくつかあります。その中で、7-9月から3四半期マイナスとなる可能性もあるのではないかという見方もあります。仮に1日の集計結果で3四半期マイナスのような結果が出た場合、今年3月以降の日銀による緩和修正は時期尚早だったということもあり得るのではないかと思いますが、大臣として適切だったと考えるのか、現時点でお話しできる範囲でお願いいたします。
(答)まず金融政策の具体的手法、これは日銀に委ねられているわけであります。その上で、日銀は3月に2%の物価安定目標が持続的・安定的に実現していくこと、これが見通せる状況に至ったと判断し、金融政策の変更を決定いたしました。その際の変更の決定に当たりましては、日銀はGDPのみならず、経済、物価、金融情勢に関する幅広い指標、またヒアリングの情報、更には先行きの見通しなどを踏まえて総合的に判断がなされたものと、このように承知をしております。
 いずれにしても、日銀には引き続きまして政府と密接に連携を図りながら、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて適切な金融政策の運営、これを期待したいと思っております。
(問)足下の為替水準がドル円160円を超えたということで、更なる物価上昇を懸念する声もありますが、大臣として足下の為替について、もしコメントいただければよろしくお願いします。
(答)為替相場の動向について、私の立場では従来よりコメントを控えさせていただいております。一般論として為替相場、これはファンダメンタルズを反映し、安定的に推移することが重要であって、過度な変動は望ましくないという考えがございます。円安は様々な影響があると認識しておりますけれども、為替の変動等が輸入物価の上昇を通じて国内物価を押し上げるリスク、これには十分注意する必要があると考えます。
 また、先ほども申しましたけれども、足下の物価動向の中で年金生活世帯ですとか中小企業の皆さん、こうした方々にとって厳しい状況というのがあると推測されます。まずはその意味でも、早急に着手可能で即効性のある対策を講じるなどの様々な対策、二段構えの対策も含めて行っていきたいと考えております。

(以上)