新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年5月28日

(令和6年5月28日(火) 10:01~10:24  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 (冒頭発言なし)

2.質疑応答

(問)自民党の木原幹事長代理が日曜日の報道番組で定額減税について、「デフレに戻る可能性があれば来年も考えないといけない」と発言されました。来年もこうした家計支援が必要かどうか、現時点での大臣のお考えを伺えますでしょうか。
(答)私どもとすれば、まさに今、日本が30年ぶりの経済転換の大きなチャンスを迎えている中で、企業の収益が最高水準になり、株価が上がり、GDPが599兆円まで名目でいきました。こういう中で、物価の適切な上昇とともに、それを上回るよう賃金を上昇させる。そして、国民の可処分所得を上げていく中で消費を拡大させる。また、そうした賃上げを行うために必要な企業の力を更に強めていく。そのための投資であるとか、生産性の改善、こういったものをやっていく。あわせて、国民の働き方を変え、ジョブ型であるとか、自分のスキルをアップするためのリスキリング。こういったさまざまな合わせ技で新しい経済のステージをつくろうと思っているわけです。
 そういう中で、これを確実にするためには、まず春闘の大きな成果が出ましたので、これを着実に世の中に浸透していってもらう。そして、中小企業や全国津々浦々に行き渡らせていく。それが来年も続く。そういう流れをつくり出そうと思っているわけでございまして、まさにデフレから次の新しい成長の経済のステージをつくろうと考えておりますので、現状において、今何かまた次なる別のことをやろうということは考えておりません。
(問)関連して定額減税についてお伺いします。減税額が4万円に満たない人について、対象となる人が2300万人と大臣も以前おっしゃっていましたが、その抽出して給付する作業の負担が自治体のほうで大きいという声が上がっていますが、どのようにお考えなのかということと、4万円に満たない人の給付について事務作業を減らすために切り上げて1万円からとなっていますが、その点について税としては4万円以上の恩恵を受ける人もいるということで、不公平ではないかという声もありますが、その点どのようにお考えか教えていただきたいです。
(答)まず、6月から定額減税が始まるわけですけれども、定額減税しきれないと見込まれる方々への調整給付、これを順次行っていくということであります。この調整給付については、地方自治体の実務の実情を伺いながら、できるだけ分かりやすく、そして事務負担が少ない制度にしたいということで心掛けてきたつもりでございます。
 まず、自治体の事務負担の軽減、それから、分かりやすいという意味において、給付額については1万円単位にいたしました。そして、調整給付を行うときには、その方の所得税額を見込む必要がありますが、これを自治体が活用しやすい個人住民税の所得金額だとか控除等の情報、こういったものを使って、自治体が持っている情報を使って、そして、定額減税しきれない調整給付の額を簡易で一括算定できる、そういう新しい算定ツールをデジタル庁のほうで開発してもらい、『調整給付のための算定ツール』という名前なのですけれども、これは1741自治体の中で1500を超える自治体が使って、これで事務負担をできるだけ軽減しながら、デジタルの力で一括でそういったものが算定できるような仕組みも採り入れてます。
 それから、何よりも、個々の住民が支給対象かどうか判定する場合には、必要な情報を関係機関から入手しなければならないです。従来はそれを個々に自治体が申請をして、その認定を受けて情報を得ていました。これを私どものほうで国が全自治体分を特定公的給付制度といいますが、包括指定いたしました。自治体からの申請のある・なしに関わらず、私どもとしては包括指定するという形で情報を取りやすくするということで、自治体の負担をできるだけ減らしています。それから、更にデジタルをできるだけ使っていただいて、既に自治体の皆さんは3万円給付から始まって何度かやっております。そのルートを使いながら、更に工夫できる自治体にはデジタルを入れて、ファストパスとか、そういった従来の手続きももっと簡単にできるようにしたところです。
 それから、1万円単位で切り上げて給付することで不公平感が出ないかということですが、これはまさに今最初の質問と真逆のことになりますけども、できるだけ簡単に、適切に簡便に迅速にと、これは私のコンセプトとして打ち上げたのですけれども、そういう意味で、できるだけ簡単に給付をできるという仕組みを作ったこと。それから、1万円単位にしたのは、それが個々人の1円単位で何か給付を、減税をということではなくて、そこは可処分所得を増やして、所得の厳しい方々にとっては賃上げの恩恵がまだ行き渡らない前に、厳しい状況のときにできるだけ素早くご支援しようということで、給付と減税を組み合わせたわけですので、そういう意味で迅速に、そして、簡潔に、適切にと、こういう観点に沿ってわれわれは支給しているということです。
(問)定額減税について、デフレ脱却の観点からお伺いします。岸田総理は「デフレ脱却の完成のためにどうしても必要だ」と言って、定額減税を実施されるわけですけれども、デフレ脱却には実質賃金のプラス転換が大事な点だという指摘もあります。定額減税は実質賃金そのものにはあまり影響しませんので、こういった観点も含めて実質賃金がずっとマイナス、24か月続く中で、デフレ脱却についての定額減税との関係でご見解をお願いします。
(答)まず、実質賃金をプラスにする、そして、物価上昇率を超える賃金上昇を実現する。その中から消費を意欲的にして、経済を活性化していくと。それは、つまるところ企業の稼ぐ力を伸ばして、企業の収益が上がらないと賃金も上がらないわけですから、その意味で企業側の生産性の向上のための設備投資、これに支援をする。それから、世の中を引っ張っていくための半導体だとか、そういった大規模投資への支援、中堅・中小企業の新たな工場立地、こういうものに対する補助制度、そういうものを総合的に組み合わせて、経済を大きくしていこうということをやっているわけです。
 給付金と定額減税はその動きが始まる最初の段階で、まだ投資も本格化していません。投資は100兆円を超えたわけですけれど、でも、もっと大きくなります。そういう本格的な経済の動きが始まる前に、所得の厳しい層の方々にまず給付をして家計を支援しようと。それから、給料も上がりきらない、まだ少なくとも春闘の結果、あの数字が実際に給料に反映されるのは来月、7月、8月と順次浸透していくわけです。しかも、春闘に参加してない企業には、それを見ながらその次の段階で給料の上昇というものをわれわれは期待しているわけですから、そういう順番があるわけです。
 まず目の前の、一番、目先の厳しいところには国として支援をすると。それ以降については民需を主導に経済が自律的に大きくなっていく中で自然に給与水準が上がっていくだろうと。それは一括の給与水準を上げることに加えて、ジョブ型を導入して、自分の職種に合わせて給料を得られるようにする。そして、能力を磨いて、スキルアップをして、生産性を向上するということは、新しい設備を使いこなしていく人材には応分の報酬が出せるようになるということです。それをジョブ型で規定をし、一律の賃上げとは違う、それぞれ一人一人の努力・能力に応じた所得が得られるようにすると。こういったものを組み合わせて新しい経済をつくっていこうと考えています。
 今までの流れの延長では、生産性は必ず労働力人口が減ってしまうし、飽和状態で皆さんかなりのものをお持ちです。ですから、新しい実需をどうつくっていくか。それには社会的課題の解決、医療や教育の水準、交通過疎だとか、そういったものを直していく中で、そこに新しい経済がつくれないかと。さらには、半導体やイノベーション、そういった中で投資を活性化させる。ありとあらゆるものを組み合わせて、日本の経済を次のステージに上げるのだと、それをわれわれはずっと訴えているわけです。
 現実に、それは一歩ずつ強い力となって今、生まれてきていると思っています。ですから、それを確実に進めていくためにも、こういう一つ一つの施策を説明しながら、それは全てつながっていくということを丁寧に説明していきたいと考えています。その中で国民の皆さんが、そういう経済が大きくなるのだとすれば、自分もこの際投資をしよう、消費をしよう、そしてそれが安心してできるような形を作らなければいけないと思います。その大元は所得が上がる、賃上げが行われる、ですから、物価の上昇に併せて賃上げが行われることは当たり前だという、社会通念、ノルムを、この30年来、真逆に、われわれは体に染み付いてしまったその感覚を変えていこうではないかということを私たちは訴えているわけです。
(問)全く話題は変わりますが、日銀の金融政策の変更に伴って、ETFの活用について話題が最近出ておりますので、そのご所見を伺いたいです。ETFは長く購入を続けてきて、莫大な含み益とか分配金だとかが出ておりまして、それを少子化対策の財源等に活用してはどうかという意見はずっと続いていますけれども、このことについての現状の大臣のご所見をお伺いします。
(答)まず、日銀が保有するETFは金融政策の一環として日銀の判断で保有しているものです。子ども・子育て財源としてのETF活用ということをもし検討するのだとするならば、ETFの売却を含めた取扱いは日銀において検討されるべき事柄であって、政府がコメントすることではないと思います。
 その上で、ETFの分配金収入を活用できるかというご意見があると聞いておりますけども、これは日銀法に基づいて、ETFの分配金収入は日銀から国への国庫納付金の一部として既に一般会計の歳入に計上されているわけであります。国の一般財源として既に活用されているものを別のものに使うということは、今まで使っていたものに、一般財源に穴があくということとイコールなわけでございまして、じゃあ、そちらの財源はどうするのかと。すぐに思い浮かべるのは、それはまた国債を出しますかということになってしまいます。ですから、その議論は非常によくよくご検討が必要ではないかなと思います。
(問)新型インフルエンザ等対策政府行動計画改定案について、19万件ものパブリックコメントが寄せられ、先日の国会で質問が出ておりましたのでお尋ねしたいと思います。
 先週もここでお尋ねしたリスクコミュニケーションの偏見・差別等や偽・誤情報への対応についてです。この部分は偏見・差別等や偽・誤情報に惑わされがちな一般国民への啓発を念頭に置かれているものと思います。しかし、私は法律家でもあり、ファクトチェックという活動に長く取り組んできた人間から見ますと、コロナ禍の間、政府・自治体などの公的機関からも偏見・差別等や偽・誤情報に寄与したと見られる事例が少なくなかったと考えています。
 ちょうど2年前の6月2日、新藤大臣が与党筆頭幹事を務めておられました憲法審査会でも、私は参考人として招かれ、いわゆる偽・誤情報対策について意見陳述を求められました。その際にもこのことは申し上げさせていただきましたが、たくさんある事例のうちの一つだけ申し上げます。例えばコロナ感染で亡くなったとされる方のご遺体の取扱いです。
 コロナ禍の初期から厚生労働省は非透過性の納体袋にいれるように推奨していました。これでご遺族の方々の最後の対面の機会が事実上制限されてきたわけです。こうした遺体の差別的な取扱いは3年近くも公的機関により推奨され続けました。遺体から感染するリスクに科学的根拠などないということは分かっていたにもかかわらずです。
 これは一つの事例であって、他にいくらでも挙げることができますけれども、大臣、今回のコロナ禍を振り返って、政府・自治体など公的機関から偏見・差別等、偽・誤情報に寄与したことは一切なかったとお考えでしょうか。今回、この政府行動計画改定案を作成するに当たって、そうした反省すべき点があったのかどうか。調査や検証というものはなされたのかどうかという点をぜひお聞かせください。
(答)まず、公的機関が偏見や差別等の意思を持って情報発信すること、これはあり得ないと考えています。それから、偽情報についても、本来の情報を承知していながら、あえて偽の情報や誤情報を発信するということ、これも公的機関が行うことはあり得ないわけであります。ただ、新たな感染症につきましては、科学的知見が不十分な中で、常にその時点で得られる医学的・科学的知見に基づいた、最適な情報に基づいて対処方針を策定してきたということでございます。
 ですから、新たな知見が得られ次第、対処方針を変更してきてもおります。また、出回っている情報を一つ一つ政府機関がファクトチェックをするというようなことは、あの情報が間違っているということも、そのようなチェックをしているわけではなくて、政府は、これが今、医学的・科学的知見に基づいた専門家による最適な知見ですということを常に発表してきたということだと私は承知をしております。
 ただ一方で、それが結局振り返ってみれば、その時点でまだ分かっていなかったことに基づいた対処であれば、分かり次第変えてきたとなれば、その変化はございます。またそれに基づいてさまざまな情報が飛び交うと。ですから、今回の有識者会議におきましては、そうした情報が錯綜する場合があると。それから、政府といえども全てを承知、要するに、医学的にも分からない状態があるならば、それは不確実性の中で、こうしたものが今あるのだということを正しく丁寧に伝える。その意味でのリスクコミュニケーションをきちんと取るべきだということです。
 それは国民の皆さまに、いろいろな情報が乱れ飛んでいるが、そこをぜひご自身でよく判断してくださいと、こういうことを心掛ける。また、政府としても心掛ける。このリスクコミュニケーションが重要だということで、これは大きなテーマの一つになりました。ですから、そういったものを政府行動計画の中に文言として入れて、これを対処していくようにしてきたということでございます。
(問)大臣、ありがとうございます。もう終わりますけれども、政府が必ずしも正しくない、正しいとは限らないわけですよね。ですから、ファクトチェックをするわけではないとおっしゃっていました。これはきちんとお調べいただければ分かりますが、やっていました。政府というか、厚生労働省をはじめ、ファクトチェックもどきのことを情報発信も含めてやっておられました。ただ、情報公開していないです。
 そういったことも含めて、きちんと政府がこの3年間何をやってきたのか、どういう間違いをしてきたのか、そういうことが検証されていないまま次に進もうとしています。この政府行動計画においてそういった公的機関側が間違ったことをした場合に是正するための対処。例えば先ほど一例申し上げました。ご遺体をご遺族から引き離す。これ、大臣、どう思われますか。3年間も続けたこと。もっと早く是正すべきだったと思いませんか。3年間も続ける必要あったのかどうか。それは分かった時点でさっさと取りやめるべき話をなぜ3年間も続けたのか。そういったことをどういうふうにしたらこの政府行動計画では是正できるのかということは盛り込まれているように私には見えないんですが、大臣としてはその点どうお考えでしょうか。
(答)まず、詳細は厚生労働省にお尋ねいただかなければならないと思いますが、私が承知している範囲においても、まず埋葬の事例については、当初のガイドラインでは、遺族が遺体に直接触れないように納体袋に収容し火葬するということがガイドラインとして策定・公表がなされたわけであります。
 それが、科学的・医学的知見が判明し、その中で修正していった、改正したと。最終的には5類になった時点でガイドライン自体も廃止をされて、その他の感染症のご遺体と同様の扱いになったということでございまして、まさに「作動中の科学」という言葉を今回、行動計画の中でも触れられましたけれども、やはり不確実な状況の中で感染症の場合はそうした何人もまだ分からない状態のもの、これが生まれるわけでありますから、それをできる限り速やかに、医学的・科学的な知見を持って分析し、その対処を決めていく。それには、分かり次第、速やかな対応が必要なことは当然のことだと、このように思います。

(以上)