新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年5月27日
(令和6年5月27日(月) 18:25~18:33 於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)
1.発言要旨
月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要をご報告いたします。今月は、「景気はこのところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している」と判断を維持しています。これは上場企業の決算において経常利益が過去最高を更新するなど、企業部門の好調さが続いている一方で、家計部門については、現時点では賃金の伸びが物価上昇に追い付いておらず、力強さを欠いている状況にあることなどを踏まえたものです。先行きにつきましては、33年ぶりの高水準となりました春闘の賃上げや、来月から実施される所得税・住民税の定額減税などの効果が見込まれるなど、雇用・所得環境が改善する下で緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、中国経済の先行き懸念などの海外景気の下振れリスクや、資源価格や為替の変動が輸入物価の上昇を通じて国内物価を押し上げるリスク、こういったものに十分注意する必要があると考えております。
加えて、私から閣僚会議で説明した内容のうち、GDPと個人消費の動向について申し上げます。まずGDPですが、2024年の1―3月期の結果をみると、名目では2四半期連続のプラス成長となり、名目GDPの実額は599兆円と過去最高を更新いたしました。
一方、実質では前期比マイナス0.5%ということで、2四半期ぶりのマイナス成長となりましたが、これは景気の動きによるものとは言えない特殊要因が影響していると思っています。具体的には能登半島地震の影響、これに加えて、個人消費と設備投資が、一部自動車メーカーの生産・出荷停止事案の影響もあって、前期比でマイナスになっています。さらには輸出も、昨年10―12月期にみられたサービス輸出の大幅増の反動もありまして、前期比でマイナスとなりました。
個人消費については、1―3月期は耐久財が先ほど述べた自動車の生産・出荷停止等により大幅に減少し、耐久財だけで実質成長率を0.6%押し下げた一方で、消費の過半を占めるサービス消費は外食等を中心に増加傾向が継続しています。加えて4月の動向をみますと、新車販売台数は一部自動車メーカーの出荷が徐々に再開される中、持ち直しの動きがみられており、家電販売においては1月に落ち込んだ携帯電話が増加したほか、平年比で高めの気温が続いてることもございまして、エアコン販売が例年よりも早めに動いているなど、足元では明るい兆しもみられます。
このほか、会議の詳細につきましては、後ほど事務方から説明させていただきます。私からは以上です。
2.質疑応答
- (問)企業収益の関連で伺います。実質賃金のマイナスが続いて家計が厳しい中で、上場企業の収益は昨年度過去最高となり、現預金残高も増加傾向にあります。企業には賃金や投資により多くの資金を回す余地があると思いますが、これに対する大臣のご認識と、政府としての対応があれば教えてください。
- (答)昨年度の上場企業の経常利益、全産業でみると過去最高でございます。企業部門の好調さが改めて確認される結果がみて取れるわけです。こうした中で、企業が保有する現金・預金の水準は国際的にみても高く、増加傾向にあると、また、総資産に占める現金・預金の比率としても、2000年代後半以降、上昇傾向にあるということが数字として出ています。
こうした背景にはこの30年間にわたる、GDPも伸びない、物価も上がらない中で、デフレ心理とコストカット、この縮み志向が染み付いて、企業の行動が慎重化し、設備投資や賃金を伸ばすことを控えてしまったのではないかと、このように感じておりますし、その結果として、いざというときの備えもあって、利益が現預金として企業にため込まれたのではないかということがございます。
しかし、現預金が今、それだけあるということは、伸びしろがあるということにもつながると思いますし、現在、我が国経済はバブル期の最高値を回復した株価、33年ぶりの高水準になっている春闘の賃上げ率、それから、年率換算で名目100兆円を超えた設備投資などの明るい動きがみえているわけでございます。デフレから脱却して、経済を熱量あふれる新たなステージへ移行させる千載一遇のチャンスを迎えていると、このように考えています。
賃金が上がり、家計の購買力が上がる。これによって消費が増えていく。そして、それが企業の売上げの増加になり、その元手を新たな投資に回すということで、企業が次の成長段階に入る。また、それによって賃金が上がる。こういう好循環をぜひ実現させたいと思っておりますし、好調な収益に加えて、企業部門が保有している資金を賃上げや人への投資、設備投資などの形で未来に向けて活用することが重要だと考えています。
この流れは既に賃上げで動き出しているわけでして、私たちとすれば、春闘で出た高い賃上げの結果を中小企業や全国のそれぞれにいかに浸透させていくかと。また、春闘に参加していない企業も含めて、それを全国津々浦々に波及するようにしたいと考えておりますし、そのためにも価格転嫁対策の強化、サプライチェーン全体での適切な価格転嫁、製品価格の設定、こうした設定を行うときの商慣習、こういったものもきちんと整備していかなければならないと思っております。既に経済対策の中においては賃上げ税制ですとか、中小企業の省力化投資支援、こういったものも出しているわけであります。
それから、やはり労働市場を改革して、人への投資、これをしっかりと進めるためにもリスキリングを充実させたいと考えておりますし、これに加えて、半導体や脱炭素の大型投資に対する集中的支援、中堅・中小企業の大規模成長投資補助金、省力化投資支援、カタログ型補助金ですとか、こうした国内投資の拡大に向けた施策を着実に実行していきたいと考えています。
(以上)