新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年5月21日

(令和6年5月21日(火) 10:16~10:41  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 私からまずご報告がございます。5月14日から18日にかけて、米国のワシントンDCとボストンへ出張いたしました。昨年の9月の就任以来、日本の経済政策・成長戦略、この新しい動きを対外的に発信することで国際社会から日本への関心を高めることと経済連携を進めること、そして関係各国との信頼構築、これを進めるために精力的に行っているわけでございます。
 また、各国のスタートアップ関係者・機関とさまざま協議をさせていただいております。その中で、グローバルネットワークというものをスタートアップにおいてつくれないか、そして私たちが進めておりますグローバル・スタートアップ・キャンパス、これを中心とした日本全体のスタートアップと各国との連携をさらに強化していきたい、こういう思いでそれぞれの関係者と意見交換を重ねてきたところでして、今回もこの2点を目的として米国に参りました。
 まずワシントンDCにおきまして、大統領経済諮問委員会のバーンスタイン委員長と日米経済協議を行いました。私からは、今、岸田内閣が挑戦している新しい経済ステージへの移行、これについて説明をしまして、先方からも非常に興味を持って質疑応答をいただいたわけでございます。また、米国の今後の経済政策の展開についても意見交換をさせていただきました。率直かつ活発な意見交換ができたと思っておりますし、日米の経済協議が定期的に今後行われていくように私から提案をし、ぜひそういったことで進めていこうということになりました。
 それから、さらに、スタートアップにつきましては、ワシントンDCにおいて中小企業庁、スタートアップを含む中小企業を支援するSBAという組織がございまして、日本の閣僚として初めて訪問し、グズマン長官と会談をいたしました。それに加えて、米国の科学技術に関する省庁横断的な政策の企画・立案を行うOSTPという科学技術政策局でコイズミ副局長とも会談をいたしました。
 また、ボストンに移動しまして、マサチューセッツ工科大学では、引き続きMITとの連携を確認し、今後さらに具体的な協議を進めていくことを合意いたしました。ハーバード大学におきましては、これまではあまり接点がございませんでしたが、スタートアップにおいて新しい連携をつくっていこうということで、方向性が一致いたしまして、今後、具体的な協議を進めていこうということになりました。
 また、さらにはスタートアップの支援機関でございますCICという世界最大の機関がございます。さらにはラボセントラルという非常に先端的な研究を行う、また、その実験の場所を提供するような支援機関がございまして、ここと綿密な意見交換をしました。そして、さらにワシントン・ボストンにおいて、日本人で現地で大活躍されている方々がいらっしゃいます。その皆さんとの意見交換をしたということで、各都市において合計6機関、約20名との意見交換を行ってきたわけでございます。
 米国においては、シリコンバレーやボストン以外にも、全国的なスタートアップの支援をしているという米国政府の取組を今回改めて実感できるところもございましたし、何よりもスタートアップのエコシステムがそれぞれ工夫しながら成り立っているわけであります。我が国においてもこのエコシステムの強化がとても重要でございまして、ここのところを今後もさまざまな情報を取りながら、また各機関との連携を深めていきたいと思っています。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)冒頭でも言及のあった先週の外遊に関してですが、渡米前に大臣が「日本への関心を高めて、投資や経済連携を進めるきっかけにしたい」といった趣旨の発言をされていました。改めて実際の成果・手応えを伺えますでしょうか。
(答)まず、私たちが今、新しく大きな変革を遂げようとしているということをヨーロッパ、OECDの閣僚理事会において、持続的・包摂的な社会という新しい資本主義の考え方をテーマにさせていただきました。それから、ロンドンではアジアハウスというシンクタンクへ日本の閣僚として初めて訪問して、そこで講演をいたしました。エコノミストや金融関係者がさまざま集まっている中で、日本が具体的に変わろうとしているということがすごく伝わったと思っています。今回、米国の経済政策の大統領へのアドバイスを担う大統領経済諮問委員会の委員長とお話をする中でも、その認識を深めていただいたのではないかと思います。
 私どもが思っている以上に世界各国が、日本がどのように変わろうとしているのか、それが具体的に現実になるのかということにとても強い関心を持っているということを私も肌身で感じております。
 一方で、スタートアップも含めまして、そういう変わろうとしている日本の中にさらに投資やビジネスのチャンスをつくりたいという機運はとても高まっていると思います。それから、世界全体の経済の中で、やはり中国の問題がございます。さまざまな経済不安も含め地域情勢の不安定なところがございます。そういう混沌とした世界経済の中で、日本が力を発揮して新しい経済について世界の中で更なる大きなプレーヤーになるということは、各国からの期待が大きいし、私たちはその役割として貢献できると考えているわけです。
 経済政策、中小企業政策、そしてスタートアップと、いずれも繋がっているところでございまして、新しい技術を徹底的に社会実装する、そして、社会的な課題をも解決することも経済活動の一環として捉えながら、少子高齢化・人口減少であっても成長していく、そういう経済をつくることは必須ですし、必ずやり遂げなければいけないということで、それには国内だけでは終わらずに世界との連携を深めていくことが重要でございます。
 CPTPPも同じようにそういう経済の可能性を伸ばすために行っているわけでございまして、今回の米国ではTPPの協議はいたしませんでしたが、しかし、行った先々ではフランスにおいてもTPPの関連のバイ会談も行いましたし、私とすれば就任以来一貫したテーマの下で海外と協議をしながらご理解を深めていただいているのではないかなと思っています。
(問)来月から始まります定額減税についてお伺いします。定額減税の金額を給与明細に記載することを義務化するというようなお話もあります。こうしたことを行う意図や狙いについてと、どのようにこの定額減税を発信していきたいか。あと、給与明細に記載することで企業の負担も増えるのではないかという声もありますけれども、どのように来月から進めていくのか教えていただけますでしょうか。
(答)定額減税につきましては、構造的賃上げを実現するその一環の中で、我々が今、目の前で行えることとして取り組んでいるわけであります。年末から始めました給付金、これによって所得の厳しい層の方々に直接的な支援を素早くやるということで行いました。これは従来を超えるいろいろな工夫をして速やかに進み、むしろ進んだことによってあまりご意見をいただいていないということもありますが、極めてスムーズに進んでいて、これはとてもよかったなと思っています。
 それから、6月の減税というのは春闘の三十数年ぶりに出た高い数字、大きな賃上げのムーブメント、その中で春闘の成果は一番早くて来月から、そして、7、8割の企業が春闘の結果を給料に反映するのには7月から8月、こういうタイミングが見込まれます。ですから、まずは所得の厳しい層の方々に対しての給付金とともに、可処分所得を素早く上げる。そのためには6月のボーナス時期に合わせて、まだ給料が上がりきってないわけですから、このタイミングで減税をすることで可処分所得をかさ上げするという効果を期待しています。
 それによって、その先に給料は必ず上がっていくし、また、1人4万円で、家族構成によっては、例えば扶養が3人いらっしゃれば、ご本人を入れて16万円、そういうボーナスプラスアルファの所得増の効果が出る。これが消費につながっていってほしいと考えています。そういう中で企業も予防的賃上げではなくて、業績を上げていく中で賃上げをしていく。春闘に参加する企業だけではなく、中小企業や全国のそれぞれの企業にそうした賃上げの流れが届き、さらにそれは来年度以降も続けていかなくてはならないわけですから、そのためのきっかけであり、後押しをするためのタイミングとして6月からのスタートを見越しているわけであります。
 これも従来でいけば、例えば年末調整まで待たなければならなかったとか、それから、タイミングは考え方によって、今年度の減税は場合によると遅くなった場合もあるわけです。ですから、さまざまな工夫をしながら6月に実施すること。これはかつて記者会見でも申しましたけども、その結果、この6月というのは大いなる意味があると私は思っておりますし、国民の皆さまに減税を通じて可処分所得が上がっていくということを実感していただきたいと。その実感をきちんと自らの肌で感じてもらうためにも給与明細等にこうしたものが分かるようにしてほしいということは、これは電気料金の支援についても電気料金の領収証の中に工夫をしながらその部分を記載しております。それと同様の流れの中で自然の結果としてやらせていただくことになるのではないかと考えています。
(問)労働需給環境が逼迫する中で働き控えが生じていることについてお伺いします。第3号被保険者制度に関わることですが、40年前の導入当時から見直し議論が続いていましたが、今年の議論でも社会保険の適用拡大で段階的に対象者を徐々に減らすという議論の方向になっています。大臣、先ほど、「少子高齢で人口減少であっても成長を実現する」とおっしゃいましたが、成長と賃上げ上昇の好循環に向けて正念場である今、経済成長の観点からこの問題についてどうあるべきだとお考えでしょうか。
(答)控除を受けるために就業調整をするというのは残念な結果だなと、このように思っています。ただ、やはりご家庭にとっては切実な問題にもなると思います。これから賃金の単価が上がっていきます。最低賃金だけではなくて単価が上がっていくと。そもそも単価が上がってしまえば同じ時間でも働けなくなると。こういう悪循環が起きてはいけないと思っています。なので、まずは「年収の壁・支援強化パッケージ」という、これは昨年の10月から始めて、令和8年3月まではこのパッケージを適用して、今の106万円や130万円の壁に対しての対応は行っています。
 私が時々申し上げるのは、例えば106万の壁というのは、106万円の所得が110万円になると急に可処分所得が下がってしまうわけです。しかし、125万円を超えれば可処分所得は上がります。それから、130万円の壁ということが言われておりますけれども、これも世帯構成や就業状況によって違いますが、一般的なサラリーマンの場合は160万円の所得があれば可処分所得は上がるのです。ですから女性の方であっても高齢者の方であっても、働きながら働き方を改革していくことでより積極的に所得を増やしていくという方向になっていくことがいいのではないかなと考えています。ましてや今度はジョブ型を入れようということですので、自分の能力に合った所得を得られるようになってほしいと、このように思っております。
 そういったことから、私は現行の枠の中で控除を受けながらではなく、控除を受ける方はいろいろな事情があって、働き方もそれぞれ選択していいわけですけれども、少なくとも外形的要因によって働けるのに時間を抑えるということは、これはやはり労働投入という意味において押し下げの結果になりかねないという心配がございますので、そういった心配がなく働いていただけるような、そういう環境をつくっていきたいと考えています。
(問)今、政府が検討している新型インフルエンザ等対策政府行動計画の改定案についてお伺いします。本日は中身についてお伺いしたいのですが、今回の改定案には初めて偽・誤情報の対策が盛り込まれています。偽・誤情報を平時からモニタリングして、それからプラットフォーム事業者への対処を要請するなどの規定が盛り込まれています。
 政府が何が正しいか正しくないかを判断して、偽・誤情報と見なしたものの発信を抑制するというような、政府がいわばファクトチェックを行うということなのでしょうか。そうなれば、表現・言論の自由を脅かすのではないかという懸念も出ておりますが、大臣のご見解をお聞かせいただけますでしょうか。
(答)まずこの偽・誤情報というのは総務省のほうで定義がございます。ですから行動計画の中でも偽・誤情報等を含めた、いわゆるリスクコミュニケーション、これをきちんと取るべきだということの記述はございます。ですが、表現の自由の確保は憲法に保障された権利でございますから、これは大前提でございまして、そこを侵すことは全く考えておりません。
 そして、国民の関心事項という意味においては、やはりコロナのまん延時にもこの問題は一体何が正しい情報なのか、これをきちんと理解したいという声は非常に高かったと思いますし、今回の有識者会議においても、こういったリスクコミュニケーションをしっかりと準備しておくことが大切だということは、有識者の皆さんから強い要請がありました。そうした中で、政府とすればこれにきちんと対応していこうということを行動計画には記載しております。
 ただ、行動計画はそれ自体が何か法的担保をもって政府が何か行為制限を行ったりするものではございませんので、この対策は従来の総務省や法務省、さまざまな所管官庁が行っている一環としてそうした対策は行われていくことになるだろうと思います。ファクトチェックを行うというようなこと、それを想定しているのではなくて、何が誤っているかではなくて、正しい情報は何なのか、正しい情報として見解を出すことを心掛けると、これがリスクコミュニケーションだと思います。
(問)リスクコミュニケーションは大事だと思いますけれども、そうすると、何が偽・誤情報かを政府が判断して、それを抑えるとか、そういうことではないということであれば、そういうふうに読み取れる表現が入っているので、そこは検討は必要ではないかと思いますけれども、その辺はもう一度いかがでしょうか。
 文言としては、はっきりと「偽・誤情報のモニタリング」と、それから対策として、「SNS等プラットフォーム事業者に対して要請や協力を行う」ということが書いてありますので、通常これは偽・誤情報というものをSNSの事業者に何らか削除してくださいとか、抑えてくださいという要請を含むというふうに読むのが自然ではないかと思いますので、その辺はもし違うというのであれば見直しが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
(答)まず、それは偏見、差別などや偽情報、誤情報への対応ということで、そういう記述がございます。こうしたものについては必要な要請や協力を国が行うということで関係省庁があるわけでございます。そういう中で従来の枠組みの中で、表現の自由を守りながら、やはり社会の混乱を招いてはいけないということからさまざまな対処がなされたと思いますけれども、その一環として進んでいくことだと思います。ですから、新たにここで特別な何かをやるということではなくて、政府行動計画はそういうことを気を付けてくださいということを言っているわけです。
 実際には、仮にまた感染症のまん延が起きたとすれば、前回のときもそうでしたけれども、正しい情報を医学的・科学的見地からそういう分析をして、国は努めてそれを公表するようにしてまいりました。そういったことは、例えば特措法だとか、法律に基づいた対策本部ができますが、そういう中で正しい情報を国民にお伝えするということの一環で行っていたことは、これは今後も起こり得ると思いますけれども、それをあらかじめリスクコミュニケーションをきちんと取りましょうと、そのことが大切だということを今回は行動計画としてきちんとうたい込んだというふうにご理解いただければと思います。
(問)新型インフルエンザ等対策推進会議、この議事録は今、1月25日開催の第9回までしか公開されていません。閣議決定がいつ行われるのか、来月にもと言われる中で、きちんと閣議決定よりもかなり前もって推進会議、これは非公開ですから、議事録がないと何が議論されているか分からないわけですから、議事録はきちんと全て公開されるのでしょうか。
(答)今、第9回までということですけれども、第10回の会議が3月26日、それから、第11回目の会議が4月24日に開催して、ホームページでの公表に向けて議事録を作成中と承知をしています。これは準備ができ次第速やかに公表することは当然でありますし、そのように進めております。
 閣議決定の日程と議事録の公表は関係するものではありませんが、当然、会議は既に3月と4月に行ったものですから、これらの作業を粛々と進めて、速やかに公表がなされるのではないかと考えています。

(以上)